10月23日——
前日、レト達VII組のメンバーは2日間夜遅くまでエリオットからオーケーを貰うまでリハーサルを続け。 加えて予定になかった3曲目の練習を行った日から1日……今日は待ちに待った学院祭。
VII組のバンドとI組の劇は2日目からなので、初日は学院祭を楽しむ事となっている。
「ふぁ〜」
「くぁ〜」
そんな中、本校舎の屋上でレトはベンチの上で寝そべっており、その腹の上でルーシェが丸まっていた。
「結社との戦いが嘘になるくらい平和だねぇ」
「——こんな所にいたのか」
そこへラウラがやって来た。 ラウラはレトの前まで歩み寄るとレトの顔を見下ろした。
「学院祭だというのに、お前は相変わらずだな」
「面倒な授業もなくてちょうどいい日和……これで寝ないなんて人生の損だよ」
「やれやれ、本当にマイペースだな」
呆れながらもラウラはポケットからチケットを取り出してレトに見せた。
「このチケットは?」
「生徒会が発行した学院祭の出し物を優先して遊べるチケットだ。 会長殿にレトに使って欲しいと渡されたのだ」
「ふうん? 二人一組のペアチケットかぁ……ラウラ、一緒にどう?」
「え…………ま、まあ、レトがそういうのなら……受けるのはやぶさかではないな」
突然のお誘いにラウラはソッポを向き、髪をいじくりながら誘いを受けた。 そしてレト達は学院祭に参加し、IV組が出し物をしている喫茶店に入った。
「東方茶屋《雅》……東方風の喫茶店のようだな」
「んー、リィンの八葉一刀流と太刀、僕の天月流と和槍がまさしく東方風なんだけど……これが和風というものなのかな?」
中はししおどしや竹などがあり、これが東方風なのかとレト達はそう思う。
「うーん! このおまんじゅう美味しいね!」
「この緑茶というのも美味だ。 紅茶とは違った味わいがある」
「これなら毎日でも食べたいかもね」
「にゃぁ」
運ばれて来たお茶と茶菓子をゆったりと食べ、味わいながらのんびりと過ごすレトとラウラ。
と、そこへヴィヴィとリンデがそれぞれ箱を持って2人の前にやって来た。
「はーい、お2人共。 当店自慢の占いをやっていかない? どっちかの箱から1枚ずつ紙を引いて、そこに書かれた内容が結果よ。 こっちが恋愛、リンデのご開運よ。 どっちにする?」
「おみくじねぇ……ラウラ、どっちにする?」
「うん、どちらも興味があるが……」
「にゃ」
どちらを引こうか悩んでいると、ルーシェがレトの膝の上に乗り、前脚をヴィヴィの持つ箱に乗せた。
「じゃあそっちにするかな」
「ふふ、恋愛運ね。 猫ちゃんも分かってるぅ♪」
「にゃふ」
どちらを引くかルーシェが決め、2人は恋愛運を試すためにおみくじを引いた。
「なになに? “共通点を持つ相手が吉。 互いを補い、高めあえるよき関係を目指すべし”ねぇ」
「ふむ……私は“ひたむきな強さが魅力——だがそれだけでは縁は遠のく。 自分らしさを忘れず、誇りを持って己を磨くべし”……」
読み終えたラウラは……みるみる顔を真っ赤にさせて行き、レトはよく分からず頭をひねった。
「な、な、な……!」
「うん? うーん……共通点、写真、導力ネット、考古学者……剣? うーん……ラウラ、分かる?」
「し、知らぬ!」
「お、おおう……」
物凄い剣幕で迫まってくるのでレトは思わずたじろいでしまう。
「ま、占いだしね。 そんな深刻にならなくても大丈夫でしょう」
「う、うん……そうだな……」
「にゃあ?」
何故か気不味い雰囲気になってしまい、その2人のやり取りを双子が慌て、面白がりながら見ており……とにかくレトは膝上のルーシェの背を撫でるのだった。
◆ ◆ ◆
「ふふ……」
先程、レト達はギムナジウムの練武場でみっしぃパニックというV組が作ったアトラクションで遊んだ。 それで高得点を取り、みっしぃ人形を手に入れラウラにプレゼントしたためラウラは上機嫌で人形を抱きしめていた。
(なんとか機嫌が直ってよかった……)
喜ぶラウラを見てレトは一安心する。 しかし、みっしぃパニックを遊ぶ際にレトが少しばかり本気を出してしまい……何体かのみっしぃは天に飛び立ってしまってたりする。 ちなみに、死因はピコハンによる撲殺である。
だがその甲斐ありラウラの機嫌は良くなった……儚い犠牲である。
「ラウラってみっしぃそんなに好きだったんだね」
「ん、そんなに可笑しいか?」
「ううん。 女の子らしくていいと思うよ」
「そ、そうか……そうかそうか……」
嬉しかったのか、ラウラはうんうんと何度も頷く。 その後、2人はフィーと合流し、そのまま一緒に学院祭を周り……今は学生会館で一休みしていた。
「ふう、流石に疲れたな」
「……ん。 こんなに楽しめたのは久しぶり」
「そうだね。 ジェニスも悪くなかったけど、これはこれで」
少し昔を思い出しながらもレトは喉が渇きを感じ立ち上がった。
「飲み物を買いに行こうかな……2人も何か飲む?」
「それでは紅茶を頼む」
「……オレンジジュースで」
注文を聞いて飲み物を買いに席を外し、カウンターに向かおうとすると……
「——ん?」
ふと、ガラス越しに見覚えのある人物が写っていた。
「ほーほー、やはり祭りはええもんじゃー(ハグハグ)」
「………………今のは……」
レトはもしやと思いながらその影を追いかけると……そこには地に着きそうな程長い金髪の少女……ローゼリアがいた。
その両手は学院祭の屋台で売られている食べ物で埋まっていた。
「なーにしてるんですか、ローゼリアの婆様」
「ふむん?(ゴックン)。 なんじゃ、レミィではないか。 久しいのー、息災であったか?」
「全く……こんな所で油売ってていいんですか?」
「ワシだってたまのばかんすだってしたいんじゃよ。 エリンの里は娯楽がなくて仕方ない」
「学院祭がバカンスって……まあいいか。 ここに来たのはエマの様子を見にきたんですか?」
既にレトはエマが魔女だということは知っており、ローゼリアは少し驚いたような顔をする。
「なんじゃ、知っとったのか。 それもあるが、ここに来たのはレミィが
「ヴィータ? 誰ですか、その人は」
「エマの姉弟子じゃ。 まあ、本当に姉妹同然のような関係じゃったが……この町近付いた時に感じられた呪いの気配……あれは間違いなく魔女の秘術。 エマには扱えん、となれば残るは奴しかおらんのじゃ」
エマやローゼリア以外にもこの地に魔女の末裔がいる……しかしそれが誰か分からず、その人物を知っている事を前提に話しているローゼリアの話にはついて行けなかった。
「よく分かりませんけど……その人を探せばいいんですか?」
「——いや、あの娘の事じゃ、もうこの町にはおらんだろう。 ワシは何の呪いか探る、レミィは祭りの催しを楽しんでおれ」
「その割に婆様もとてもお楽しみのようで……」
両手に視線を向けると、ローゼリアは慌てて背の後ろに隠したが……目の前で隠したので当然意味はなく、少し恥ずかしそうにする。
「コホン……レミィよ、心しておけ。 祭りの後というのは、その次にさらに巨大な出来事が起こるものだ」
「あんまりシャレにならないですね、ソレ」
「フフ、まあ年寄の戯言程度くらいに思うが良い。 ではな」
言いたい事だけを言ってローゼリアは学院祭の人混みの中に消えて行った。
「……あ、飲み物」
呆気にとられてしまったが、レトは飲み物を購入しに再び学生会館に入った。
この時期でローゼリアに祭りに行かせるとこう言わせたくなる。
ローゼリア「……はむはむ。おぉー、いとおかし」
うーん、似てなくもないかな?