英雄伝説 時幻の軌跡   作:にこにこみ

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63話 騎士人形

レト達VII組はトリスタに攻めて来た帝国解放戦線から士官学院を守るため、二機のドラッケンと交戦を開始していた。

 

「くっ、やっぱり装甲が硬い……!」

 

「……導力銃じゃ歯が立たないね」

 

「形は違えど、導力戦車を相手にしているのと同義だからな」

 

『どけ!』

 

『はあっ!』

 

一機はブレード、もう一機は導力銃を所持しており。 銃でレト達を撃ちその隙にブレードで攻撃を仕掛けてきた。

 

「っ!」

 

「やっぱり攻撃範囲が広い……!」

 

「接近して撹乱する……近距離武器の者は俺に続け!」

 

「了解!」

 

一番槍をもらったリィンが疾風を繰り出し接近し装甲に傷をつけ、続くようにレト達が前に出る。

 

「そこだ!」

 

「はあっ!」

 

「せいっ!!」

 

『ちょこまかと……!』

 

ガイウス、ユーシス、ラウラが攻撃を繰り出し、操縦者は鬱陶しそうに彼らを振り払おうとする。

 

機甲兵は巨大で機械である分どうも動きが遅くなる、レト達は小回りを活かし着実にダメージを与えて行く。

 

『動くな!』

 

「——ラ・クレスト!」

 

ライフルのドラッケンの制止で動きを止め、その隙に威力を弱めたライフルが火を噴く。 その瞬間にエマが地のアーツを発動してレト達を守った。 そして仲間ごと撃っているが装甲で弾かれて実質無傷だった。

 

『喰らえ!』

 

「うわわっ!!」

 

「なんて弾幕だ!」

 

追撃をかけ、距離を取ったレト達に銃撃を浴びせる。 相手は銃のつもりでも向けられているこちらは大砲を突き付けられているのと同じ……圧倒的に火力負けしている。

 

「はあああっ!!」

 

迫り来る砲弾にレトは立ち向かい、槍を高速で振るい砲弾を弾き返した。 その人並み外れた行動に一瞬怯むも、狙いをレトに集中させた。

 

「レト!!」

 

「大丈夫! この隙に皆は……!」

 

『そこだ!』

 

「しまっ——」

 

引き付けている間に攻撃を仕掛けようと仕向けるも……先に抜かれてしまい、ブレードのドラッケンが後衛のアリサ達の前に立ち突きの構えをとり、振り抜くと地面を抉るほどの突きを繰り出して来た。

 

「うわっ!」

 

「な、なんてパワー……全くとんでもない物を作ってくれたわね!」

 

「これほどの力なんて……」

 

構えが大きいため避けられない訳でもないが、抉れた地面から破片が飛び散り

 

「ほっ!」

 

「はあっ!」

 

後ろに回り込み、レトとガイウスが膝裏に向かって槍を薙ぎ……強制的に膝カックンさせて体勢を崩した。

 

学院を出る前に教えて貰ったジョルジュの助言の通り、可動部である関節が狙い目のようだ。

 

「それー!」

 

膝をついた事で顔までの高さは低くなり、ミリアムはアガートラムを眼前までに飛ばし、重いストレートが顔面に直撃した。

 

『なっ……カメラが!』

 

今の一撃は倒す事が目的ではない。 外の状況を中の操縦士に映すカメラを破壊する事が重要であった。 ドラッケンの顔面は凹み、操縦士が動かそうとするもデタラメにもがくだけだった。

 

「セブンラプソディ!!」

 

「うおおおっ! マキシマムショット!!」

 

それを機に一気に畳み掛け、エリオットが魔導杖の特殊モードを起動しバイオリンのような形状に変え、弓を取り出し弾き始めた。 すると導力が活性化し、ドラッケンを取り囲むようにそれぞれが7つの七耀の属性を有した球体が現れた。 音楽で魔法を(アーツ)を巧みに操り、一斉にぶつけて虹色の爆発を起こす。

 

マキアスはショットガンを乱射し、最後に大型の導力ライフルを取り出して構え……トリガーを引き銃弾がドラッケンに直撃し爆発した。

 

そしてこの2つの強力な戦技に、とうとう一機目のドラッケンは沈黙した。

 

「やったー!」

 

「まずは一機!」

 

「この調子で行くわよ!」

 

自分達でも機甲兵が倒せる……それだけでもVII組の士気が上がる。

 

「アークス駆動——アクアブリード!」

 

「孤影斬——せいやっ!」

 

「はあああぁ——朧月牙(おぼろげつが)!!」

 

「グランドプレス!」

 

『ぐっ……!』

 

エリオットが詠唱の短いアーツを顔面にぶつけて視界を塞ぎ、リィンの抜刀により飛来する斬撃と一瞬で六刀振り威力を一点に集中させた斬撃で身体を揺らし、さらにエマの地のアーツにより地面を揺らし体勢を崩しさせた。

 

「今です!」

 

「風よ……俺に力を貸してくれ! うおおおおっ!!」

 

隙を狙いガイウスが空高く飛び上がり、翼のような闘気を解放させ十字槍をドラッケンに向けて構え……

 

「カラミティ——ホークッ!!!」

 

ドラッケンに向かって一直線に落下し、直撃すると巨大な竜巻が巻き上がる。

 

「今だ!」

 

『調子に乗るな!!』

 

両足のローラを駆動させ、その場で高速に回転し接近していたレト達を弾き返した。 そして、機を見た頷いたレトが叫んだ。

 

「——よし、今だルーシェ!」

 

「ナァー!」

 

『な……!』

 

『魔獣だと!? ぐっ……!』

 

ルーシェの名を叫ぶと……ルーシェが藪から魔獣の群れと共に飛び出て来た。 ルーシェはドラッケンの股下をくぐり抜け魔獣の群れをぶつけるとレトの肩の上に戻った。

 

「いつの間にルーシェを!?」

 

「ちょっと街道の魔獣を集めてもらってたんだ。 お疲れ様」

 

「ナァー」

 

『この……学生ごときが!』

 

纏わりつく魔獣を回転して一掃し、頭にきた操縦者が導力ライフルをレトに向け……爆発した。

 

『な、何っ!? なぜいきなり導力銃が……』

 

「——的が大きかったから狙わせてもらったわ」

 

銃口の射線上で弓を構えていたアリサが得意げに髪をかきあげる。 アリサはライフルを構えた瞬間を狙い矢を射て、矢を銃口からライフル内に入れて誘爆させたようだ。

 

「行くぞ、レト!」

 

「始めるよ、ラウラ!」

 

2人は顔を見合わせて頷き、駆け出しながらドラッケンに接近する。 ラウラの大剣に白光する導力が纏われ、レトの槍が十数本までに増殖させ

 

「我が渾身の一撃……喰らうがよい! 奥義——洸刃乱舞!!」

 

「天月が迷夢……どうかご照覧あれ! 秘技——連羽朧切!!」

 

ラウラの怒涛の斬撃とレトの激流の刺突がドラッケンに叩き込まれ……ドラッケンは身体から火花を散らしながら膝をついた。

 

『くっ……しまった……よもや学生ごときが……ここまでやるとは……!』

 

『どうなっている……この力、一体なんなのだ!?』

 

「はあはあ——やったか!」

 

「……やはり関節部が狙い目だったようだな……!」

 

『フフ、さすがは《C》のクラスメイトという所かしら?』

 

女性の声を出しながら今度は観戦していた青い方の機甲兵が前に出て来た。 ドラッケンとは細部が異なる事から別の機体であることが見える。

 

「ちっ……」

 

「その嫌味っぽい声……」

 

「帝国解放戦線の《S(スカーレット)》か」

 

西にV、東にS……どうやら帝国解放戦線は本気でトリスタを落とそうとしているようだ。

 

『フフ、ガレリア要塞での借りもあることだし……お次はこの隊長機《シュピーゲル》で遊んであげましょうか?』

 

「な、なんだ……さっきのヤツとは違うぞ!?」

 

「隊長機……特別な装備でも積んでいるの!?」

 

『とっておきをね。 無駄だとは思うけど……せいぜい足掻いてみなさいな!』

 

いくら幹部が搭乗しているとはいえ対処法は先程と同じ、接近戦を行う者はシュピーゲルを取り囲んで関節部を狙いに向かう。

 

全方位からの波状攻撃。 それを見たスカーレットは何かを念じると……シュピーゲルを覆うように結界が張られると全ての攻撃を防いしまった。

 

「なっ!?」

 

「これは……」

 

「……攻撃が通らない」

 

『——リアクティブアーマー 。操縦士の意志で展開できる防御結界みたいなものね。 本来は対戦車用の装備だけどこういう使い方もできるってわけ!!』

 

「そんな!」

 

「この!」

 

中距離からショットガンや弓での攻撃を試みるも結果は同じ……するとシュピーゲルは足のローラを回転させて剣を振り回し、周囲にいたレト達を一蹴する。 その時、アークスを駆動していたエリオットとエマの詠唱が完了した。

 

「きゃああああ!」

 

「ハイドロカノン!!」

 

「ファントムフォビオ!!」

 

『無駄よ!』

 

再びシュピーゲルが結界を展開し、2つのアーツは防がれ弾き返されてしまった。

 

「え……」

 

「うわあああああ!!」

 

「このーー!」

 

走り出したミリアムはアガートラムをハンマーに変形させ、担ぐと同時に炎を噴射して飛び上がった。

 

「ギガント——ブレイクーー!!」

 

シュピーゲルの頭上を取り、推進力で加速したハンマーを振り下ろした。 しかし……

 

「なっ!?」

 

「そんな!」

 

『無駄よ!』

 

ミリアムによる渾身の一撃もまるで効かず、シュピーゲルは大振りにブレードを構える。

 

『さあ、これで終わりよ!』

 

するとブレードに炎が纏わり……強烈な一撃で全体を薙ぎ払った。 レトは跳躍して回避したが、リィン達は一掃され、大きなダメージを負ってしまった。

 

「皆!」

 

『よそ見している場合!』

 

「——っ! ケルンバイター!」

 

迫るブレードを紙一重で避け、ブレードを足場に駆け上がり……すれ違い際にシュピーゲルの装甲を斬り裂いた。

 

『っ!? リアクティブアーマーを斬り裂いた!?』

 

「ケルンバイターは《外の理》によって造られた魔剣……絶対障壁を斬り裂いたこの剣の前にはそんなの紙装甲だよ!」

 

唯一シュピーゲルと対抗できるレト。 気を抜けばやられるとスカーレットは警戒を強めながら一人納得する。

 

『なるほど……あなたは解放戦線に物資を提供している組織の一員——』

 

「違うから」

 

『あらそうなの? ——なら』

 

「なっ!」

 

すぐに結社に属していないと否定すると……スカーレットは視線を上げて蹲るリィン達の方を見た。

 

シュピーゲルがレトを飛び越えてブレードを振り上げながらリィン達の前まで肉薄し……振り下ろされたブレードを間一髪の所でレトが受け止めた。

 

「ぐううっ……!」

 

「レトー!」

 

『フフ、確かにその剣には驚かせたけど……足手まといがいては話にならないわね。 このまま押し潰してあげる!』

 

スピードならともかくパワーでは完全に負けているも、レトは負けじと地面を砕き、徐々に沈みながら踏みしめて踏ん張る。

 

このままではレトが倒れる……そう思ったリィンは地面に突き刺した太刀を支えにして体に鞭を打ってでも立ち上がった。

 

「リィン……?」

 

「お、おい……」

 

「ううっ! ま、まさか……!」

 

すると、リィンの体から闘気が溢れ出した。 疲労困憊の状態でこの闘気……全員が“あの力”を使うのだと察した。

 

「……まさか……」

 

「“あれ”を解き放つつもりか……!?」

 

「だ、ダメです……!」

 

「やめるのだ、リィン……!」

 

『ふふ、Cが言ってた黒髪のボウヤの潜在能力……このシュピーゲル相手にどこまで通用するのかしらね?』

 

「なっ——」

 

『じゃあね!』

 

「うああああああ!!」

 

「レト!!!」

 

突然レトを推し潰そうとしていた剣が離れてつんのめってしまい、その隙に体を捕まられて持ち上げられて大きく振りかぶり……トリスタの南にある湖まで投げ飛ばされてしまった。

 

「ブハァ! 引き離された!」

 

着水すると同時にすぐに水面から顔を出し、投げ飛ばされた方向を睨みつける。

 

「早く戻らないと——痛ッ! 思いっきり握ってくれて……肋骨がやられた……」

 

陸に上がるとすぐにアークスを駆動し、水の回復魔法アセラスで傷を癒した。

 

湖からトリスタまでは約2000アージュ、クロノバーストを使えば2分で到着する。 治療を終え、立ち上がった時……

 

「よしこれで——」

 

「おっと、そうはいかないよ」

 

「!!」

 

パチン!

 

突然、辺りに指を鳴らした音が響いた。 次の瞬間、レトは真っ暗な空間に閉じ込められてしまった。

 

「これは……!」

 

これが誰の仕業かすぐに検討がつき、レトはその人物に向けて叫んだ。

 

「カンパネルラ……! これは何のつもりだ!」

 

「やぁー、僕も気が乗らないけどさー、これも幻焔計画を進めるために必要なんだよ。 もちろん、この後に君の出番もあるから心配しないで」

 

待ってもらえば出してはくれるようだが、そんなの今のレトには待てるわけもなかった。

 

「僕は今すぐに行きたいんだ! 邪魔をするなら容赦はしない!」

 

「おお、怖い怖い。 でも君にこれが破れるかな?」

 

「………………」

 

挑発に乗っては時間がもったいない……レトは目を閉じて集中し、力の流れを読みこの空間の核となる中心を探し出し……

 

「——そこ!」

 

虚空に向かってケルンバイターを振り下ろし、閉鎖空間を斬り裂いた。 脱出するやすぐに駆け出す。

 

「やれやれ、せっかちなんだから。 でも、充分に時間は稼げたかな?」

 

その背を、宙に浮くカンパネラが首を振りながら見送り……

 

「これは……!」

 

2分かけてようやく街道に戻った時、レトは目を見開いた。 目の前には……

 

「灰の騎神と……蒼の騎神」

 

蒼の騎神が地に膝をつき、その眼前にブレードを突き付きている灰の騎神がいた。

 

『約束だ——戻ってもらうぞ!』

 

どうやら勝敗は決したようだが……次の瞬間、膝をついていた蒼の騎神から膨大な霊力(マナ)が溢れ出して来た。 そして立ち上がり……力を解放した。 それは機体にも変化が現れた。 まるで鎧が開いたかのように装甲の蒼くない部分が黒くなった。

 

『あ——』

 

『お前はソイツに乗ったばかり……だが俺は3年前からコイツを乗りこなしている。 悪いが——“奥の手”を出させてもらうぜ』

 

『っ……!?』

 

リィンが驚く間も無くクロウはダブルセイバーを振るい……灰の騎神は倒された。 一撃、たった一撃で形勢は逆転された。

 

「今ので(ケルン)が傷ついた……っ! マズイ!!」

 

すぐさまレトは林から飛び出し、トドメを刺そうとするクロウの前に出た。 他の皆も同じ気持ちのようで、リィンを守ろうと立ち向かおうとしていた。

 

「皆!!」

 

「レト! 無事だったのか!」

 

「投げられたくらいで死ぬもんか。 湖には落ちたけどね」

 

「……だからビショビショなんだ」

 

『もう来たか……足止めを喰らわせた筈だが、この程度じゃ無理か』

 

「十分に足止めされたよ」

 

レトが話を伸ばして時間稼ぎをしている間にアリサはリィンに何かを伝えると……灰の騎神は起き上がり、ブレードを捨てて飛び立った。 そしてレト達は蒼の騎神と得物を手にして対面し……

 

『やめろ、やめてくれええええッ!』

 

悲痛なリィンの叫びに心が痛みながらも、全員が得物を手にクロウの前に立ち塞がる。

 

『やめとけ。 レトならいざ知らず、お前らが束になってもコイツには勝てない』

 

「百も承知!」

 

奥の手を使っている蒼の騎神。 1分でも稼げれば上出来だろうが……レトは誰も犠牲を出さないために再びケルンバイターを取り出そうとする。

 

「………………」

 

『——おっと、あの黄金の魔剣は出さない方がいいぜ。 Sの時と二の舞になりたくなければなら』

 

「くっ……」

 

「ごめんなさい、レト……」

 

「僕達が足手まといだから……」

 

「気にしないで。 だったら、VII組としての力だ立ち向かうまでのこと!!」

 

「その通りだ!」

 

決死の覚悟で、相討ちに持ち込ちこんでも倒そうと駆け出そうとすると……

 

『——今は斃れる時ではない!』

 

「なっ!?」

 

「この声は……!」

 

上空から力強い声がレト達に降りかかった。 空を見上げると……そこには真紅の飛行艇《カレイジャス》が飛行していた。

 

「あれは……カレイジャス!」

 

「父上!」

 

『未来を掴むためにも、落ち延び、機を伺うがいい!』

 

「!!」

 

アルゼイド子爵の言葉で、レト達はハッとなる。 一瞬迷ってしまったが……顔を見合わせて頷き、離脱を決意した。

 

「——総員離脱! 三手に別れてトリスタを脱出する!」

 

『了解!』

 

カレイジャスから砲弾が発射され、蒼の騎神に直撃すると……広域に煙幕が張られ、それを機に全員が散開してトリスタを脱出する。

 

レトは南に逃げ、その際にラウラ、エマ、ユーシスと合流したが……

 

『逃すかよ!』

 

煙を飛び出してクロウが追いかけて来た。 カレイジャスが引きつけているとはいえ、クロウはVII組の中で一番厄介なレトに目を付け……レト達は蒼の騎神を振り切れなかった。

 

「チッ……しつこいぞ!」

 

「ハアハア……このままじゃ……!」

 

「僕が引きつけるから、その間に皆は逃げて!」

 

「そんなこと、出来るわけ無かろう!」

 

「大丈夫。 こうするから!」

 

次の瞬間……レトの姿がブレ、複数のレトに分裂し四方に散って走り出した。 どうやら分け身を使って逃げ切るつもりのようだ。

 

『面倒な真似しやがって!』

 

「ほらいこう」

 

「はい!」

 

『チッ…………ん?』

 

撹乱している隙にラウラ達の姿も見失ってしまい、背後に迫るカレイジャスを一瞥して舌を鳴らしていると……逃げるレトの分け身の1体がチラリと、思わせぶりに目配せを送ってきた。

 

不審に思ったクロウはその分け身を追いかけ……ケルデイックの穀倉地帯で分け身は足を止めた。 振り返ってクロウを見つめるレトは……分け身ではなく本体であった。

 

『たっく、思わせぶりに目配せしたと思ったら……いいのかよ? 後でラウラ嬢がキレるぜ?』

 

「怒られた時に言い訳を考えておくよ。 今はクーさんを倒す、ただそれだけ」

 

『邪魔者がいなくなり、ケルンバイターが解禁されたからって勝てると思うなよ?』

 

「そんなの知っているよ。 ——だから、彼を呼ぶのさ」

 

レトはクローバーの形をした銀耀石(アルジェム)を取り出して上に放り投げた。 クロウの視線が銀耀石に向けられる中、レトはケルンバイターを構えて一振りし、背後に落ちてきた銀耀石を砕いた。

 

「さあ——出ておいで」

 

すると、レトの背に四葉を模した陣が展開された。 しかし……その陣は次第に緋に染まっていく。

 

『なっ!?』

 

『これは……』

 

蒼の騎神にのるクロウとカレイジャスに乗るアルゼイド卿もこの現象には驚き、次の瞬間……

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

帝都ヘイムダル。 バルフレイム宮・地下区画最奥

 

「グルル……」

 

光も届かないその場所に、一機の銀獅子……ウルグラが足を踏み入れていた。 ウルグラは顔を上げ、目の前で膝をついている巨大な緋色の人形を見つめる。

 

その時、ウルグラの背後に銀色の陣が現れた。 主人であるレトが呼んでいる……しかし、本当にレトが呼ぼうとしているのはこの緋色の人形。 その眼を光らせると、まるで意志があるかのように立ち上がり陣の前に立った。

 

すると陣の色は銀色から緋色に染まり、人形は片手を伸ばして陣に触れ……そのまま吸い込まれて行った。

 

「グルル……」

 

再び静寂が包まれる中、ウルグラは踵を返してその場を去る。 そして誰もいなくなったその場には、脈動する支柱があった。 そこには……四肢が支柱に埋まり、拘束されている黒い光沢を持つ緋い騎神が残されていた。

 

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