英雄伝説 時幻の軌跡   作:にこにこみ

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90話 紅蓮の魔王

最後の決戦、紅蓮の魔王に挑むVII組。 飛び込んだ先は太陽のような焔の球が宙に浮いており、目の前に煌魔城、魔王が用意した舞台に足を踏みいれた。

 

「こ、ここは……」

 

「まるで旧校舎最奥での試練と似た……」

 

「ここは紅蓮の魔王によって作り出された空間よ。 どうやら相手もここで決着をつけるようね」

 

一斉に目の前の紅蓮の魔王を見上げる。 その大きさは騎神の大きさを優に超えており、異常な霊圧も相まって戦う前から強烈な威圧感をレトたちに与えていた。

 

「な、なんだか勢いのまま来ちゃったけど……やっぱり勝てるのかなぁ?」

 

「ちょっと、後悔してるの?」

 

「この後悔は思い出にしておけば? 大人になったらきっと酒の肴になると思うから」

 

「ら、楽観的だな……」

 

「お喋りはそのくらいにしろ。 来るぞ……!」

 

エンド・オブ・ヴァーミリオンは咆哮を上げながら右手を振りかぶる。

 

魔剣プロパトール——異空間から片刃の剣を取り出し、前方を薙ぎ払った。

 

「うわあっ!!」

 

「ヒュ」

 

後方にいた者は距離を置いて避け、身軽な者は跳躍して魔剣を回避する。

 

「はっ——ミリアム!」

 

「てやあっ!!」

 

剣を振り切った所をレトがケルンバイターで防ぐように押し返し。 止め切った剣の上からアガートラムが地面に叩きつけるように殴りつけた。

 

「そこっ!」

 

「はあっ!」

 

「はああっ!!」

 

とにかく先ずは攻撃を始め、ダメージの程度の具合を見計らう。 矢、散弾、大剣と喰らわせ……

 

「……前から思ってたけど、機甲兵や人形兵器、騎神に攻撃が効果的なのか分かりにくいんだけだ!?」

 

「岩を攻撃しているようで意味が見出せなくなりそうだ……」

 

「それでも、ただ己が信じる道をこの剣で切り開くのみだ!!」

 

ラウラは呼気を高めると同時に闘気を集め、剣先を地面に突き刺した。

 

「光よ——貫け!!」

 

熾洸剣——地面に大剣を突き刺して闘気を送り、エンド・オブ・ヴァーミリオンの足元から白い大剣が飛び出す。

 

「はっ! リィン!」

 

「ああっ!」

 

追撃を仕掛けたレトは脇腹を斬り、さらにリィンが追撃、反対の脇腹を斬り。 続けてエマとエリオットはアークスを駆動を開始する。

 

「アークス駆動……」

 

「はああぁ……!」

 

「疾き風よ——唸れ!」

 

畳み掛けるようにガイウスが右手の十字槍とは別にもう一本、十字槍を左手に持ち二槍構えると、槍から風が吹き、2つの竜巻を起こす。

 

「はあああっ!!」

 

槍を振るい2つの竜巻を左右から遅い、自身は正面から切込み2つの十字槍による乱舞を喰らわせ……

 

「——イクスペルランサー!!」

 

十字槍を目の前で交差させ、エンド・オブ・ヴァーミリオンの周囲を回っていた2つの竜巻を襲わせ、2つの竜巻が合わさり大きな嵐を巻き起こした。

 

「今だ!!」

 

「——ソル・イラプション!!」

 

「——ロストオブエデン!!」

 

竜巻で身動きを封じている隙に、エマとエリオットによる2つのロストアーツが発動。 この空間にもう一つの太陽が現れ、天から無数の武器が降り注ぎエンド・オブ・ヴァーミリオンを取り囲む。

 

太陽は徐々に落下し、地面に刺さった武器によって巨大な陣が形成……太陽の落下と虹の爆発が同時に襲い掛かろうとした、その時……目の前に半透明な壁が現れた。

 

「え……?」

 

「ええっ……!?」

 

「防がれ——ぐああっ!!」

 

「っ……」

 

マイティリフレクト——エンド・オブ・ヴァーミリオンを取り囲むように六角形で構成された障壁が展開し、物理、魔法攻撃、全ての攻撃を防ぎきり、反射して全体へと跳ね返る。

 

「させるか! プラチナムシールド!」

 

「月の光よ——クレセントシェル!」

 

前衛は喰らってしまったが、後方にいたユーシスとエマが物理と魔法に有効な障壁を展開、反射してきた攻撃から身を守った。

 

「そんなのありぃ!?」

 

「お前も似たような事が出来るだろう」

 

「思いっきりブーメランだね」

 

「規模や硬度は桁違いだけどね」

 

すると、エンド・オブ・ヴァーミリオンは両手を広げると、背後の空間が歪みだし……無数の武器を投擲してきた。

 

「おっと!」

 

「はあ!」

 

「うわわ!」

 

それぞれ回避、防御や迎撃で身を守るが、一体いつ終わるのか、剣の雨はまだまだ降り注いでくる。

 

「千の武器を持つ魔人。 名前に偽り無しか」

 

「どちらかと言えばそれはレトの方だけど」

 

「うるさいやい」

 

「だがっ……なんて弾幕なんだ!?」

 

「それを言うなら剣幕だけどね」

 

「それ別の意味になるから。 とは言え、これじゃあ近づけてないわ」

 

「なら……これで! レト、あの壁を!」

 

「了解!」

 

「助太刀する!」

 

レトとリィンが剣の雨を掻い潜りながら飛び出し、後方にいたアリサは同時に4本の矢で弓を引いた。

 

「踊りなさい!!」

 

4本の矢を射ると、炎の鳥となり剣の雨を物ともせずに弾きながらエンド・オブ・ヴァーミリオンに襲い、羽根を舞き散らしながら爆発を起こす。

 

「斬り裂け——ケルンバイター!」

 

刀身が輝く魔剣が一呼吸で縦横無尽に振り抜かれる。 この魔剣を握ってから久しく感じなかった衝撃が左腕を揺らしながら障壁を幾度となく斬り、バラバラに破壊した。

 

「肆の型——紅葉切り!」

 

間髪入れず太刀を納刀したリィンが居合いの構えを取りながら肉薄し、すれ違い側に膝裏を斬り膝を付かせる。

 

そしてその間に、アリサは空へと飛び上がり……その背に白き翼を広げる。

 

「大いなる輝きよ! 我が弓に宿れ!!」

 

弓が黄金に光り輝き、絢爛な装飾が施された弓と化し、また同じ槍のような黄金の矢をつがえ両腕を限界まで広げるように引き……

 

「——レディエンス……アーク!!」

 

風を切りながら放たれた矢は、エンド・オブ・ヴァーミリオンに直撃すると、巨大な火柱を上げながら爆発する。

 

「そこだぁ!! スレッジインパクト!!」

 

「切り刻め!! 紫電——一閃ッ!!」

 

サラ教官が紫電を纏った一閃で円形の紫電がエンド・オブ・ヴァーミリオンを取り囲み、そこへ大玉に変形したアガートラムが頭上に落下してくる。

 

エンド・オブ・ヴァーミリオンが落下してくるアガートラムを受け止めると、紫電が狭まり胴体を締め付ける。

 

「凍てつけ!」

 

「はあぁ…………はっ!!」

 

続けてガイウスとユーシスが武器の刃に氷や風を纏わせ攻撃を繰り出す。

 

「よし、このまま!」

 

「……! まて、様子が……」

 

勢いに乗り、このまま押し切ろうとした時……エンド・オブ・ヴァーミリオンは急速に霊力を貯め始めた。 そして、咆哮と同時に解放、全身がさらに緋色に染まり、蝶の翼が熱せられている剣のように白くなり、さらに大きくなる。

 

「きゃああ!!」

 

「なんて霊圧……! 今までとは比べ物にならなりません!」

 

「紅蓮の魔王の第2形態って所ね。 全く、厄介ったらありゃしないわ」

 

「愚痴を言う前にとにかく戦う!」

 

「エマ!」

 

「暗き炎よ——アステルフレイム!」

 

黒ではなく、暗い炎が杖にまとわりつき、振り放つとエンド・オブ・ヴァーミリオンの眼前に広がり、視界を塞いだ。

 

「行くぞ!」

 

その間にマキアスが走り出すとエンド・オブ・ヴァーミリオンの周りを回りながら、ショットガンを3度発砲する。

 

「ナイト! ルーク! ビショップ!」

 

エンド・オブ・ヴァーミリオンを取り囲むように三方向の地面に着弾すると、チェスの3つの駒の幻影が出現。 3つの駒が結界を形成し、トライアングル状の結界が紅蓮の魔王を取り囲んだ。

 

そしてマキアスは大型の導力ライフルをリロードしながら抜き構え、銃口に導力が集束し……

 

「——-チェクメイトだ!!」

 

トリニティクローズ——導力砲が結界をすり抜けてエンド・オブ・ヴァーミリオンに直撃し、拡散されるはずの力は結界によって内に留められ……結界の崩壊と同時に導力の本領が周囲に放出された。

 

「どうだ、見たか!」

 

意気揚々にマキアスは拳を握る。 が、光が収まって行くと……そこにはあまり代わり映えのしない姿の魔人が立っていた。

 

「あまり、効いているようには見えないな」

 

「く、くそ……」

 

「第2形態になった事でさらに硬さ等のスペックが上がっているみたいだね。 まあ、当然だけど」

 

「サラ、右お願い」

 

「ええ、このまま——」

 

フィーとサラ教官は左右から接近しようとすると……2人の目の前に緋が、エンド・オブ・ヴァーミリオンの手が広がっていた。

 

カオスディソーダー——左手に呪いのような黒い霊力が集束し、目の前で放たれ、爆発する。

 

「きゃああ!!」

 

「ぐあっ!」

 

「っ——」

 

さらに黒い霊力が無造作に連発。 場を荒らし、直撃せずとも余波を何度も受けてしまった。

 

「し、しまった……」

 

「くっ、このままだと……!」

 

「大丈夫——さあ、始めるよ!」

 

魔導杖の柄頭を地面に叩きつけ、小さなパイプオルガンを召喚した。 そして、指を弾き旋律を奏でる。

 

「清廉なる女神の息吹よ。 我が旋律に宿り、仲間たちに癒しを……」

 

鍵盤を弾く事に、エリオットの周囲に二色の魔法陣が展開し……

 

「フィナーレ!!」

 

終幕、魔法陣から七色の光が爆発し、虹のオーロラとなって仲間たちに降り注ぐ。

 

レメディオラトリア——魔導杖の特殊モードによる戦技により、七色の光が仲間の傷をみるみると癒していき、武器を振るう気力を与えていく。

 

「この光は……」

 

「傷が……」

 

「これなら、行ける!」

 

再び立ち上がり、気力の満ちた目で紅蓮の魔人を見る。

 

「ありがとう、エリオット」

 

「えへへ、どういたしまして」

 

「しかし、反応速度まで上がっているとはな……」

 

「奴はあまり足を動かそうとはしない。 その分の力を上半身の動きや防御に回しているんだろう」

 

レトはサラ教官とフィーに目配せをし、意図を察した2人が銃口を向けると同時に走り出す。

 

「鳴神——はあああっ!!」

 

「そこ」

 

導力銃と双銃剣による銃撃。 銃撃の間に抜けながらレトは駆け抜ける。

 

「シャイニング!」

 

アリサから援護の魔法、視界に映る動きが明確に見え、地面から飛び出す槍を最小限の動きで避け、懐に飛び込み……

 

「——刹那刃!」

 

刹那の間に、ケルンバイターによる防御無視の7連撃を喰らわせた。

 

ダメージが目に見え始めた時……エンド・オブ・ヴァーミリオンは片手を掲げ、再び霊力を貯め始める。 それも先程とは比べ物にならないくらいの量を。

 

「っ……! なんて霊圧!」

 

「来るぞ!」

 

そして、両腕を交互に振り上げるように振るい、レトたちの足元から取り囲むように無数の槍が出現した。

 

「と、閉じ込められた……!」

 

「! 来るぞ!」

 

オブリビアンアームズ——跳躍すると右手に霊力が集束し、振り抜くと……背後の空間から、先程とは比べ物にならないくらいの数の剣が雨のように降り注いでくる。

 

「なっ!?」

 

「出し惜しむ事なく、随分と大盤振る舞いな事だ!」

 

「そんな事を言っている場合か!?」

 

「——はああぁ!!」

 

離れていたため檻に囚われなかったラウラは飛び出すと、剣の豪雨に向かって飛び込んだ。

 

「ラウラ!?」

 

「受けてみよ——我が全霊の奥義!!」

 

裂帛の気合いと共に目にも留まらぬ速さで大剣を振るい、降り掛かる剣の雨を直撃するものだけ斬り落として行く。

 

「吼えろ!! 獅子洸翔斬!!」

 

獅子の如く飛び上がり、渾身の大剣を振り下ろし……大地ごと、エンド・オブ・ヴァーミリオンを斬り裂いた。

 

「す、凄いや……」

 

「凄まじいの一言だな」

 

「……待って、様子が……」

 

——ウオオオオオオッ!!

 

怒り狂うように咆える。 呼応するように緋い霊力もその勢いを増してレトたちに強い圧を浴びせる。

 

その時、3機の騎神がこの空間に転移してきた。 どうやら霊力の充填が完了したようだ。

 

『霊力ノ充填完了——待タセタナ、リィン』

 

「ヴァリマール——!」

 

『コチラモ完了——クロウヨ、乗ルガイイ』

 

「よっしゃ、行くぜ——!」

 

『今こそ——呪いを撃ち破り我が半身を救い出そうぞ』

 

「終わらせよう……この戦いを——!」

 

準起動者は後退して戦線を離脱し。 リィン、クロウ、レトはそれぞれ片膝つく騎神の元に駆け寄り、転移して騎乗。 得物を抜き《紅蓮の魔王》と再び向かい合う。

 

生身の時は台の上で戦っていたため気付かなかったが、騎神に乗って改めて大きさを見ると《紅蓮の魔王》の方が一回りも二回りも大きかった。 単純に倍ほど離れている。

 

「図体ばかりデカくなりやがって……これじゃあいい的だな」

 

「だが、その分パワーは圧倒的にあちらが高い。 まともに喰らえば一溜りもない」

 

「数とスピードで押して、勝機を見出すしかないね」

 

半歩下がりながら右腕を引くと、その手に緋い槍が出現する。

 

魔槍エンノイア——赤黒い槍が3機纏めて貫く。

 

「闇よ——斬り裂け!!」

 

カオスセイバー——双刃剣の刃に闇が纏われ、双刃を一振りし、一撃目で槍を払いのけ、二撃目で斬撃を浴びせた。

 

「……! マジか——ぐあっ!」

 

だが、モロの食らっているのにも関わらず怯みもせず、反撃を返された。

 

「クロウ、大丈夫か!?」

 

「ッ……タフすぎんだろ」

 

「……ん?」

 

すると、エンド・オブ・ヴァーミリオンを取り囲むように障壁が展開される。

 

「生身ならいざ知らず、騎神なら!」

 

障壁を前にしても果敢にリィンは立ち向かい、太刀に霊力を集める。

 

「砕けちれ——やっ! せいっ! 斬っ!」

 

天衝剣——強烈な三段斬りを喰らわせ、障壁を破壊する。 だが、障壁が破壊された瞬間、剣が飛来し、ヴァリマールの手から太刀が弾かれてしまう。

 

「リィン!」

 

「危ねぇ!!」

 

無防備なヴァリマールに向かって剣を振りかざすエンド・オブ・ヴァーミリオン。 ヴァリマールに剣が振り下ろされようとした時……

 

「——ッッ!!」

 

伍の型・残月——紙一重のところで振り下ろされた剣を躱し、空いた懐に掌底を放ちエンド・オブ・ヴァーミリオンの体勢を崩した。

 

追撃をかけようとレトとクロウが左右から挟み込もうとするが、エンド・オブ・ヴァーミリオンの左右から剣が射出され、近付けなかった。

 

「意外に隙のない奴だ」

 

「……ん? この感じは……」

 

「……!」

 

霊力が急速に高まり始める。 この行動に、レトとリィンは見覚えがあった。

 

「同じ手が2度も通じると思うな!!」

 

「行くぞ、レト!」

 

レーヴァティンによる焔の剣が飛来、各部の関節に突き刺さり動きを封じた。 その隙にリィンが頭上を取り、刃を返し峰打ちをエンド・オブ・ヴァーミリオンの首筋に撃ち下ろした。

 

「クロウ!!」

 

「喰らいやがれ——クリミナルエッジ!」

 

峰打ちにより頭は垂れ、そこにクロウが刀身に霊力を集め、自身ごと双刃剣を振り回し一転して切り裂き、封じの焔の剣ごと吹き飛ばす。

 

「そこ——!?」

 

追撃を仕掛けたレトが、後一歩の所で踏みとどまり。 一瞬遅れて目の前に槍のような鋭い尻尾が突き刺さっていた。

 

「尾!?」

 

「チッ、どこまでも獣じみた奴だ!」

 

「にゃろう!」

 

負けじと挑み掛かるが、召喚される武器と尾による連携は凄まじく、接近は難しかった。

 

「ヤロウ!」

 

ブレイドスロー——双刃剣を投擲する。 高速で迫る双刃剣を、エンド・オブ・ヴァーミリオンは……

 

「はっ!?」

 

「身軽ぅ」

 

後ろに跳躍して避け、続けて弓矢を構える姿勢をとる。

 

魔弓バルバトス——エンド・オブ・ヴァーミリオンは後退と同時に弓矢を出し、風が渦巻く矢を射た。

 

「——行けっ!!」

 

「レト!?」

 

矢の射出と同時に、自分に言い聞かせるようにレトは飛び出す。 矢がテスタ=ロッサの眼前に広がると……剣を盾に真下に潜り込むように滑り込み、剣の軌道を上に逸らしながら距離を詰める。

 

「ひとーつ!!」

 

エンド・オブ・ヴァーミリオンの目の前に出るとその真上を飛び越え、前転しながら剣を振るい右翼を斬り落とし……

 

「ふたーつ!!」

 

着地し、振り回された尻尾を避けながらすれ違い側に左翼を斬り落とした。

 

「今だ!!」

 

「リィン——決めるぜ!」

 

「分かった!!」

 

レトの離脱と同時にリィンとクロウが交差するようにエンド・オブ・ヴァーミリオンを順に斬り、さらに背後から追撃をかけた後距離を取り……

 

「おおおおおっ……!!」

 

「はああああっ……!!」

 

オルディーネは双刃剣を頭上に掲げ、ヴァリマールは両手を広げながら太刀を構え……

 

『蒼覇・十文字斬り!!』

 

ヴァリマールの抜刀による斬り抜きと、オルディーネの十字の斬撃がほぼ同時に交差した。

 

「吹っ飛べ魔王——!!」

 

間髪入れずテスタ=ロッサが走る。 肩に担ぐようにレーヴァティンを掲げ……

 

「斬り裂け——レーヴァンティン!!」

 

胴体を右斜めに斬り付けた。この一撃で、エンド・オブ・ヴァーミリオンの腹部の装甲が剥がれ落ち、その中から球体……(ケルン)を見つけ出す。

 

「あれは……!」

 

「皇太子を取り込んだ“核”だ!」

 

「道は僕とクーさんが拓く——行って、リィン!」

 

「判った——頼む、クロウ、レト!」

 

すると、エンド・オブ・ヴァーミリオンの背後から無数の穴が開き……機関砲を掃射するが如く、高速で剣を射出してきた。

 

『おおおおおおっ……!』

 

『行けっ!!』

 

クロウは頭上で双刃剣を回転させて盾としながら直進させ、レトはレーヴァティンの力で無数の焔の剣を生み出し、奴と同じように掃射させて撃ち落として行く。

 

その時、エンド・オブ・ヴァーミリオンは尻尾を地中に突き刺し……直進していたオルディーネに槍のように鋭い尾が腹部を貫いた。

 

『ぐっ……』

 

『クロウっ!?』

 

『…………!!』

 

くぐもった声が聞こえるが、クロウは振り返るとリィンに投げ掛ける。

 

『カスっただけだ! ——立ち止まんな! 前を向いて、お前にしかできない事をやれ!』

 

『っ——ああ!』

 

(あの位置は……そんな……)

 

クロウの叱咤激励を受け、リィンは太刀を握り直す。 そして、レトは飛び交う剣の対処をしながら、最悪の事態を予想してしまった。

 

『ッッ……リィン!!!』

 

『八葉一刀流・漆の型——』

 

今だに襲いかかる剣の弾幕に対処しながらレトが叫ぶび道を切り開く。 その道をリィンが駆るヴァリマールが駆け抜け……

 

『無 想 覇 斬!!』

 

エンド・オブ・ヴァーミリオンの懐に潜り込み、何度も全力で太刀を振るい、執拗に腹部の装甲を狙い切り裂いて行く。

 

そして、最後の一太刀を振るい……納刀すると同時に紅蓮の魔王は膝をつく。 その腹部の装甲は全て剥がれており、核が丸見えだった。

 

『おおおおおおおっ……!』

 

リィンは腹部に両を入れて核を掴み、全力で引っ張り……エンド・オブ・ヴァーミリオンから核を引き剥がした。

 

『今だ!!』

 

後退するヴァリマールと入れ替わるようにテスタ=ロッサが懐に入り、胸部をレーヴァティンで貫いた。

 

「その呪い——断ち切らせてもらう!!」

 

核か取られた事で消え行く紅蓮の魔王の力を吸い出し、レーヴァティンに呑み込ませて行く。

 

そして、紅蓮の魔王が作り出してた空間が消滅。 元の煌魔城、緋の玉座へと戻ってきた。

 

「ハァ……ハァ……や、やっぱり……キッツい……ローゼリアの婆様が別かった理由が身に染みたよ」

 

『紅蓮の魔王の力をこの霊剣に封じ込めた。 我が半身は、この次元に顕現できなくなってしまったが、な』

 

周囲を見渡すと、核から出てこられたセドリックの周りにリィン達がいた。 レトは急いでテスタ=ロッサから降り、フラフラになりながらも弟の元に駆け寄る。

 

「レト、大丈夫か!」

 

「だ、大丈夫……!」

 

「そんな訳でないだろう! そんなにフラフラで……」

 

ラウラ達が心配するも、レトはセドリックの元に歩み寄る。 頰に青アザが出来ていて霊力の枯渇で憔悴していたものの、命に別状は無かった。

 

「セドリック……良かった、本当に……良かった……!」

 

レトはセドリックの無事を確認し、ホッと一安心し……真後ろに倒れ込んだ。

 

前のめりに倒れてはセドリックを押し潰してしまう、レトは最後の力を振り絞りなんとか仰向けに倒れた。

 

「レト!!」

 

「……ご、ごめん……霊剣との融合……マクバーンとのジャレ合い……紅蓮の魔王との死闘に呪いの封印で……もう、流石に……限、界……」

 

「レトさん!」

 

「ああもう! 何度霊力をすっからかんにすれば気が済むのかしら、この子は……」

 

何度繰り返せば気が済むのかと、セリーヌは呆れ気味に怒っている。 だが、その呆れ声に耳を傾ける前に、最後の力を振り絞ってレトはリィンのジャケットの裾を掴む。

 

「……リ、リィン……」

 

「なんだ、レト?」

 

「……ク、クロウは……もう……」

 

「え……」

 

「レト!!」

 

そこで、レトの意識は途絶えた。 その後、何があったかは知る由もなかったが……これだけは予め、予想していた。

 

クロウ・アームブラストは……もう助からないと。

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