戦車は結構ジャンプする。戦時中の写真を見ても、クロムウェルやBTシリーズなど、足の速い車種は見事なジャンプを披露している。勇壮な光景なので宣伝には丁度良いだろうけど、大抵の戦車は空中での安定性や着地などを考慮した設計ではない。サスペンションや履帯・転輪に多大な負荷を強いる結果となるため、乗員としては極力避けるべきだ。90km/h以上の速度が出る現用MBTでは、操縦手は稜線を超える際に細心の注意を払うという。
それでも戦車道では、必要に迫られて行う場合もある。特にローズヒップは。だからここで足回りの強度をテストしておくのも必要と言えば必要なことだった。
だが、半分は私自身が遊びたかっただけだ。彼女と一緒に。
「いやー、超最高の1日でしたわ!」
クルセイダーの側に腰掛けて、ローズヒップは満足げに笑っている。クルセイダーに損傷はなかった。着地時も履帯を回し続けていたため、いくらか衝撃が緩和されたのもあるだろうが、それにしても運が良い。ただ帰ったら、足回りには入念な点検とメンテナンスが必要そうだ。
いつもの調子で地べたに座り、お行儀悪く脚を開いている我が後輩。引き締まった綺麗な脚なのに全く品がない。
「ブルーマロウ様、本当にありがとうございます! これでもっともっと、ダージリン様のお役に立てますわ! そして……」
私の目を見て、ニコリと笑う。何かを決心した様子で。
「わたくしに後輩ができましたら、みんながこの改造クルセイダーに乗りたがるような……そんな活躍をしてみせますわ!」
その言葉を聞いてふと、ダージリン様の言ったことを思い出す。私が職人、ローズヒップが芸術家。私の作ったものがこのグロリアーナで、先輩から後輩へと受け継がれていく。それがまた、新しい伝統となる。
その絆があれば卒業した後も、私はローズヒップたちと『家族』でいられる。そんな気がした。
おもむろに、彼女の脚をつついてみる。するとアッサム様に注意されたことを思い出したのか、開いた脚を閉じ、真っ直ぐに伸ばした姿勢に改めた。私はその隣に腰を下ろし、草の絨毯の上に体を横たえる。ローズヒップの白い脚を、枕の代わりにして。彼女は驚いたようだったが、嫌がることなく膝を貸してくれた。
粗野で、下品で、せわしない、ちょっと羨ましい私の後輩。
「これからもよろしくね」
「はい! こちらこそ!」
「……スピード狂と技術バカを同じ戦車に乗せるのは危険だって、ダージリン様に言っておかないと……」
「……同感です、ルクリリ様」
お読みいただきありがとうございます。
「RWBY」を見ているときに思いついたネタで、連載の息抜きに書いていたものですが、お楽しみいただけたでしょうか。
ブルーマロウは最初、ワイス・シュニーをお人好しにしたようなキャラの予定だったのですが、気が付いたら男装が似合いそうな感じに。
メカニックが主体の話だからというのもありますが、戦車の機構関係の説明が多すぎたかな、というのが反省点ですかね。
ご感想・ご批評などあればよろしくお願い致します。
鉄脚少女の方も完結目指して頑張ります。