異世界転生物語~運命の世界に招かれし魔法使い 作:GAWAIN9694
私は二つ驚いていた。なぜ敵を前にして令呪を用いてまで止めるのかというサーヴァントとしての驚き、そしてもう一つは目の前の男が・・・サーヴァントとはいえ見えないはずの私の剣をいとも簡単に見切り、最小の動きでよけられたセイバーとしての驚き。
「あら、こんばんわ衛宮君。」
「遠坂!?お前休学してたんじゃないのか!?」
私のマスターと相手のマスター・・・トオサカという名前らしい・・・が言い争っている…というよりもトオサカが一方的に受け流している中、私は相手のサーヴァントを警戒していた。・・・が・・・
「凛、なんか話がかみ合ってないように見える。ひとまず現状の把握と情報のすり合わせをするべきだと思うんだが。」
相手のサーヴァントは呆れたように自らのマスターと私のマスターを見ており私に対して無防備にも見える。・・・私は相手にすらされていないのだろうか・・・
結局相手のサーヴァントの言った通り、居間に上がり自己紹介することとなった。とはいってもマスター同士は知り合いらしいのでそれほどしゃべることはなくサーヴァント同士の挨拶となった。
「私はセイバーのサーヴァントです。」
挨拶とは言ってもクラス以上にしゃべることはない。聖杯戦争においては名前だけでも弱点に直結する可能性がある以上相手もクラスだけを名乗る・・・と思っていた。
「名前は天宮 司。クラスはキャスター・・・らしい。職業は魔導師、所属は特にないフリーだ。現在はそこの凛の護衛をボランティアでやってる。」
私の中で常識と思っていた考えから大きく逸脱した自己紹介をされた。
「だからアンタは何でそんなあっさり名前を出しちゃうのよ!?」
「む?いや、自己紹介しろと言ったのは凛だろ?とりあえず問題がある自己紹介ではなかったと思うが・・・」
「っていうかボランティア!?私の護衛がボランティアなの!?」
「当然だろ。本来は守ってやる義務なんか無いんだ。今はあくまで善意のボランティアだ。」
・・・マスターが困った顔をしている。トオサカとそのサーヴァントが話を脱線させたせいだろう。
話が戻ったのはそれから15分後だった。
とりあえず私のマスターは魔術師としては未熟であり、聖杯戦争についての知識がないことが分かった。が、驚いたことにサーヴァント・・・ツカサ(そう呼べと本人から言われた)も聖杯戦争についての知識がなかった。サーヴァントである以上聖杯から相応の知識は与えられているはずだという私の問いにも「凛がバカやったせいで・・・」と言ってはぐらかされた。トオサカ本人も気まずそうな顔をしていたので心当たりがあるのだろう。
そしてトオサカの提案によりマスターとともに聖杯戦争を監督している神父がいるという教会に行くこととなった。が私はある事情により霊体化できないうえに今着ている鎧しかないため雨が降っているわけでもないのにレインコートを羽織っていくこととなった。もう少しまともなものはなかったのだろうか?
四人が歩く。トオサカはマスターに大まかな説明をしながら。私は周囲を警戒しながら。とりあえず見晴らしがよく、周りに敵の気配も感じないため警戒を緩め、自分の隣を歩いているサーヴァントに意識を向ける。
成人男性の平均よりも高い身長。黒いコート、指にはそれぞれ碧、黄、赤の宝石の様なものがついた指輪が三つ、首にはネックレス、腰から垂れているベルトには剣、鎧、羽が模られたアクセサリーがついている。キャスターのサーヴァントなのだから魔術的意味があるのだろうが普通の瀟洒な若者にも見える。そこまで考えてふと思い出す。
この男はキャスターなのだ。
全サーヴァントで最弱と言われるキャスターが最優と言われるセイバーである私の攻撃を見切り、半歩ずれるだけでよける。ランサーですら見きれなかった剣を。いったい何者なのだろうか・・・?本人を見ていた限り偽名などではない、しかし聖杯から与えられた知識にもその様な名前はない。
「どうした?何か気になるのか?」
「いえ、なんでもありません。」
いつの間にか私を見ていたツカサと目が合い、私は目をそらす。横目に見えたツカサは面白そうに私を見て笑っていた。
教会に着くとマスターとトオサカが中に入るとのことなので私とツカサは外で警戒していることにした。
「いい月だ。」
ツカサが呟くように言った。見上げると確かに綺麗な月が見えた。なぜ司はこうも私を警戒しないのだろうか?キャスターである司にとって私の持つ対魔力は天敵の筈なのに。
「ツカサは何を聖杯に願うのですか?」
気がつけば私は司に問いかけていた。が思い直し、すぐに訂正しようとして他ならぬツカサに遮られた。
「特に願いなんてないな。そもそも俺は聖杯なんかに興味はないし。」
またしても驚いた。
「ならばなぜ聖杯戦争に?」
「さっきも言ったろ?凛がバカやったって。俺は本来はサーヴァントですらないんだよ。何の因果か、凛の召喚に巻き込まれただけの人間だ。現在進行形で生きている、な。」
・・・もはや並みのことでは驚かないと思っていたが一周回ってどうでもよくなる事もあるんですね。
その後マスターたちが出てくるまで無言で警戒を続けた。
マスター・・・シロウは無関係な人たちを守るために聖杯戦争に参戦することを決め、共に闘おうと私に言ってくれた。トオサカ・・・リンはこれでなれ合いは終わり、次に会うときは敵同士だと言って別れ・・・ようとしてツカサが立ち止り、前方を見据えていることに気がついた。
私たちのはるか前方に、一人の少女と巨漢が道をふさぐように立ちふさがっていたからだ。
「こんばんわ。リンにお兄ちゃん」
デバイスsのおしゃべりコーナー 今回はオーラ、文、リゲルの三名。
オーラ(以下オ)「いやー久しぶりだね~」
文「ちょくちょく更新しようとしたらしいんですけどねえ」
リゲル(以下リ)「しっかし聖杯戦争ねぇ・・・実在の英雄たちとの戦いなんてシグナムあたりが喜びそうよね。」
オ「あー・・・そうだね。」
文「簡単に想像できますねぇ。」
リ「司も災難というかなんというか・・・」
文「でも司さんも十分サーヴァントになる可能性はあるんですよね。」
リ「・・・へ?どういうこと?」
文「だってほら、司さんって一回地球を救いましたし。」
オ「そういえばそんなこともあったねぇ。」
リ「どういうことなの!?」