TASは異世界に行くそうです。   作:西国 龍

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エンディングだぞ泣けよ

「よし、覚えました!」

「――はい?」

 

 

 ステフは、自身の書斎に金髪幼女と共にいた。昨晩この幼女に散々追い掛け回され、どうにか自身の部屋に帰ったステフであったが、当然幼女からは逃げられない。

 

 すでに部屋で待っていた幼女にあっけなく捕まって、『フラグ』とやらを立てるための手伝いを要求された。

 まずは文字を勉強しなきゃと言い出して、書斎に案内したのだが。

 

「まだ本を開いただけではありませんの!?」

「? 見るという状況を作ったのであとは覚えるだけですよ? 簡単です。エンディングを作るより簡単です」

「……意味が分かりませんわ…………」

 

 昨日の動きから、人類種(イマニティ)ではないのだろうと思っていたのだが、本人曰く『地球から来ました!』とのこと。地球とは異世界らしいのだが、『この程度当然普通のこととしてできるものです』という発言から、きっと魔窟なのだろうと予想する。

 

「……それで、ほかに何をさせるつもりなんですの?」

「んー、そうですね。でしたら魔法とかあります? 教えていただきたいんですけど」

「いえ、えっと……人類種(イマニティ)は魔法を使うことはおろか、感知することすらできませんわ」

「ふむ……」

 

 

 

 そういうと目をつむってしばらく考えていた様子の幼女だったが。

 

「ああ、これはだめですね。ルールのようです。さすがにルールから逸脱してしまってはただのチートですから」

 

 人の家に気づいたら入ってたり、人間には絶対不可能な動きをしたり、一瞬で文字を覚えたり、十分チートではないのか。なんてステフが思っていると、幼女はにこりと笑ってステフに答える。

 

「いえ、私ができるのは理屈の上では人類でも真似ができることだけですよ? 読心も理屈上可能です」

 

 

 ステフは乾いた笑いを上げるしかなかった。

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 それからしばらくして、国王選定戦の勝者クラミー・ツェルの戴冠に異議を申し立てた幼女。

 

(かなり動揺していますね)

 

 わざと、人類種(イマニティ)に不可能な挙動で現れた幼女に、大きく動揺しているクラミー。うまく隠してはいるようだが、幼女には通じない。

 動揺が、急速で展開されている思考が、手に取るように分かった。

 

 だが――。

 

 この時、幼女自身も己の動揺を気取られないように必死であった。

 

「――いいわ。異議があるなら、ご希望通り勝負しましょ」

「んんー……勝負するのはいいんですけど、お仲間さんがいる相手に勝つのはちょっとばっかりきついんですよねー。個人的にはきっちり手を引いてもらいたいから、完璧に勝っておきたいんですよー。それともどうです? この衆人観衆の中で、私とやって、『十の盟約』その八で――負けます?」

 

 今度はほぼ完ぺきに感情を隠したクラミーだが、目の動きから図星を感じる。

 

 ちなみに、幼女に人の心を読み取るなんて芸当は不可能。人間の脳波から、人間の思考を読むことは理屈上可能ではあるが、それをするには少しばかり時間がかかってしまう。

 ステフに言ったものはハッタリ。ステフの性格上あり得ないことだが、虚偽情報の伝達を少しでも減らすために言ったものだ。繰り返し嘘をつかれることがあったり、何かの拍子でバレたとしても、それまでに信頼関係を築くことは可能であるし、その気になれば、好感度なんて次の瞬間にはMAXだ。

 

 けれど、表情から人の感情を読み取ることなど、TASじゃなくても訓練を積めばできること。TASにもなれば考えていることの表面を救い上げて読むことすら容易である。

 

(さあ、仕切り直しを言え)

 

 まだ悩んでいるクラミーに幼女は半ば祈るような気持ちで言った。

 

「分かったわ。あなたが何をして来るかわかったものではないわ。故に――イカサマなど介入する余地のない、実力を証明するのに最適なゲームで勝負しましょう」

「ええ、ゲームは挑まれた方に決定権がありますからね」

 

 幼女は、にこりと微笑み――――己の勝利を喜んだ。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

「しかし、どういうことですの!?」

「ですから、おそらくですけれど、クラミーさんは魔法がお得意なお友達がいるようでして――」

「じゃ、じゃあ、私、彼女に魔法を使われたんですの!?」

「――声抑えて……その通りですね。イヤー流石に焦りました」

「へ?」

「いえ、何かあっても大丈夫かと思ってたんですが、少し考えなしでした。向こうがどこかの間者という可能性があったので、こっちも人類種(イマニティ)以外の協力者なりがいると誤解させる必要があったんです。そっちの方が警戒して、魔法も使えないでしょうからね。私は魔法が使われたことくらいはどうにかわかりそうですけれど、詳細がどうにも分かりそうにない気がしてますから、場合によっては一発で詰んじゃいます」

「は、はあ……」

「ですけど、あの場に入って、勝ち筋を探して――なかったんですよねー。あれ、あの場でクラミーさんと戦ってたら負けてた可能性が高いです」

「へ!?」

 

 幼女の発言を、いまいち要領を得ない――というよりはイマイチ言っている内容がわからない様子のステフであったが、負けてたかもという発言に驚きの声を上げる。

 昨晩、『暇です』と言う幼女と、ゲームをやってボロッボロに負けたステフとしては、その言葉は意外過ぎた。

 

「あの場所でクラミーと戦って勝つことは理屈上不可能だったんです。『お仲間さん』という言葉に反応していたことから、確実に仲間がいるようですね。耳を隠してた人でしょうかね? だったらエルフか。

 あっ、安心してくださいね。もしあの場で無理やり勝負を始めてた場合、スマートじゃない手を使ってでも協力者を追い出してましたから。それができるかが不確定要素だったので、仕切り直してほしかっただけです。

 まあ、どちらにせよ。理屈上勝てるゲームに向こうが乗った時点で、勝ちなんですけどね」

 

 

 そういって、幼女は――――すでにクラミーとのゲームにおいて、勝てる状態を作り上げていた。




 TASさんがのんびりしているということはほぼあり得ない。
 もし、TASさんがのんびりおしゃべりをすることがあったとしたら――それはすでにゲームが終わっている時だ。

 ゲームを始める前に勝っている。

 幼女は結構ドS。これ世界の常識。



 これほど簡単にゲームが終わったことについて言い訳するとしたら、チェスのTASだと単純に強い場合の方が多くて、見た目の派手さがない。
 ストラテジーだと、まあ、そこそこあるけれど、この時のクラミー達の魔法に対して抵抗する方法がない。

 故に、金髪幼女TASは、チェスを格ゲーにした。

 それならば、一瞬で敵の首をはねてもおかしくない。だってチェスの駒のHP1だし。
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