TASは異世界に行くそうです。 作:西国 龍
「さて、東部連合とやりあう前に、一つ、イベントを片付けないといけなさそうです」
「イベント……でございますか?」
ほんの少し前に、自らを下し、主となった幼女の言葉に、ジブリールは首をかしげる。
「ええ、ステフさんのイベント回収です。特別何かがもらえるわけではありませんが――いえ、これはジブリールにも見せてあげたいですから」
「はて?」
にこりと笑う主に、しかし要領を得ないジブリール。
「とりあえず、ジブリール。前国王についての情報をください」
と言いはしたものの、ムービースキップ機能があるならば、スキップしないはずもなく。
「――と、最後には国王選定戦を遺言として、その命が尽きた。といった感じでしょうか」
「なるほど。ありがとうです」
幼女は、情報を得たというフラグだけを回収して、王の寝室へと向かっていた。王の寝室は、幼女とステフが一緒に使っている場所で、壁から現れた幼女とジブリールに、ステフは本を読む手を止めるもすぐに読書を再開した。
今更人間が壁からにじみ出た程度で驚くほどステフは軟ではない。
「ちょっとステフさん鍵をいただきに来まして」
「鍵? ですの?」
ステフは鍵と言われて、祖父から譲り受けた希望の鍵の存在を考えるが、何かを答えるより先に幼女がろうそく立てを傾け始めた。あっけなくろうそく立てが外れると、ダイアルを回して、おもむろにろうそく立てを壁に投げつけた。
すると、本棚が動いて、鍵のある扉が現れ――。
「もはやこの程度で驚かなくなった私はだめかもしれませんわね」
その様子を傍観していたステフは、どこか遠い目をしてつぶやいていた。
「して、マスター? これはいったい?」
「さっきジブリールから聞いたことについて、正直ステフさんは残念な人ですけれど、その人間性は素晴らしいと思います。私みたいな人の面倒を見てくださってますし、私が内政をしている時も手伝ってくれますから。まあ、内政も何も、農具も畑も金貨もいくらでも増殖バグで増やせますが」
残念な人呼ばわりされたと思うと、感謝を述べられ、どう反応していいか困っているステフに。
「そして、ジブリールから聞いたステフさんのお祖父ちゃんは、かなり誤解されていることも理解できましたからね。ここらで王を継いだ私がその意を汲むべきでしょう」
開けていただけますか? と、壁抜けで向こうに行くことができるはずの幼女が、尋ねるのだから、ステフとしては、開ける以外の選択肢を思いつけなかった。
だが、この向こうに何があるのかわからない中、いくら希望の鍵と言えど――。
鍵穴に鍵を差し込んでもしばらく、回すことを躊躇っているステフに、幼女は珍しくゆっくりとした口調で優しく声をかけた。
「ステフさん、大丈夫です。人間ってすごいんですよ」
十分な説得力を伴った発言は、ステフの背中を押すには充分であった。
☆ ☆ ☆
鬼気迫る何かを、ジブリールも感じていたが、残された記録を見て、流石のジブリールも絶句するほかなかった。
「……? マスターはお読みにならないので?」
「ええ、私はこの空間に入った時点で、東部連合のゲームを推測するフラグを有していますから。
そんな卑怯者が、それを見る権利なんてありません」
珍しく悲し気な雰囲気で言う幼女にジブリールはどうしていいかわからなかった。下手な慰めをするほど、ジブリールでは愚かではない。
「人間ってすごいんです。たまにとはいえ、ただの人間がTASを超えることだってありますし、実機で再現することだってあり得ます。動きが派手なTASですけれど、裏の努力は見えませんしね。けれど、その派手な結果すらも捨てて次につなぐなんて、私には真似をしようと思ってもできないことです。
ね、ジブリール、ステフさん。TASにもチートにも人間が勝ることがあるんです」
言っている意味の分からない箇所もあったが、幼女が人類をどう思っているかは伝わった。尊敬し、愛し、誇りに思っている。にっこりと笑う幼女に、ステフは祖父を思って涙を流し、ジブリールは目を伏せ、何かを考えている。
故にどちらも気づかなかった。
すぐにその柔らかい笑みを消して、今までにないほどの獰猛な表情を浮かべる幼女に。
(そうですか、東部連合のゲームは、TVゲームですかぁ♪)
あまり考えると、満足いかなくなるので、書いちゃったらすぐ投稿という形です。故に、それだけ文章とストーリーの完成度は下がってしまってますが、考えすぎてエタったことから、とりあえず、終わらせて、いつかまた書き直すという感じでもいい気がしてます。
このままだと次回終わっちゃいそうなんですが。超急ぎ足。