君と青空を見る   作:ふくつのこころ

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□□の世界―4

 リントは、なぜ人のことを思うことができるのだろう?

 

「そろそろ死んでしまえ!グラデ!」

 

 シアクの攻撃を受け流すように双剣を振るう。

 

 グラデは、グロンギの中でもおとなしい部類に分類される。しかし、完全に戦闘に対する欲求を失ったわけではなく、戦いの中で戦いへの高ぶる気持ちを抑え切れないというような気持ちを表さないだけだ。

 

 その証拠に触れれば身を引き裂くようなシアクの身体に双剣をぶつけるようにして振るいながら、どこが一番柔らかい部位なのかを探している。

 

 グラデはシアクに痛めつけられている間、常にチャンスを窺ってきた。

 

 どういった癖で攻撃をするのか?

 

 どういったことをきっかけに逆鱗に触れるのか?

 

 それは、長くの付き合い――腐れ縁から手に取るように分かる。

 

 だからこそ、これで確実に仕留めるといった一撃を獲物に避けられると必ずシアクは怒り出すのだ。

 

 どうして、思い通りに死なないのだと言って。

 

「クソッ!お前なんぞに手間取らないぞ!」

 

 恨みを込めた声色でシアクの一撃を回避したグラデに人差し指を突きつける。

 

 グラデはシアクと戦闘に入るにあたり、シアクと行動を友にしていたリントの女性の表情の変化に気がついた。

 

 よほど仲の良かったのであろう、シアクの変化に戸惑っている様子が見受けられる。

 

 しかし、その顔には恐怖が滲み出ており、グロンギのゲゲルにおいてリントの戦士を除いたものは一様に違いはあれども浮かべていた表情だったので、グラデも良く知っていた。

 

「そんな……、シアクさん……」

 

 もしも、グラデがヒーローであったならば。

 シアクの正体が化け物だと伝え、彼と関わることを避けるように伝えたうえで逃げることを薦めていただろう。

 

 

 しかし、ズ・グラデ・バはグロンギである。

 

 シアクが騙して得た恋人が、絵里がどのような感情を抱いていても心を揺さぶるには至らず、時折、視界に入るだけで「恐れるならば、なぜ逃げないのか」と不思議に思えて仕方がなかった。

 

 逃げ惑うリント、襲うグロンギ。

 

 それは、なにがしかの技術が進んで武装がすることができるようになった今代のリントであっても、グロンギの餌食となることは変わらない。

 

 それがかつてから続く、人間と人間とわかりあうことのできない殺戮者の化け物の関係なのだから。

 

 ただ一つ、グロンギからリントを守る戦士・『クウガ』を除いては。

 

 

「そろそろ、終わりだ。ゲゲルに戻らなくては」

 

 肩で呼吸するように震わせる、グラデとシアク。

 

 元々、モーフィングパワーの扱いが上手いという点以外ではグラデはあらゆるパロメーターから見てもグロンギの中で弱い部類に入る。

 

 シアクのほうが平気そうに装ってはいるものの、実際にはそのとおりで、グラデは大振りに双剣を振り回しているので体力の消耗が激しく、ここまで持ちこたえることができているのは、シアクのパターンを痛めつけられていたときに見ることができたからである。

 

 肩での呼吸からやがて地面へと座り込んでしまうグラデ、戦意はシアクのほうをしっかりと見据えていることから失っていないものの、身体はそれ以上言うことを聞かなかった。

 

 その表情の分かりにくい姿でもシアクが笑っていることが窺える声色、グラデはシアクの弱いもの虐めを好む性根が気に入らなかった。

 

 クワガタの大顎のような剣を地面に突き刺し、杖代わりにするようにしてふらふらと立ち上がろうとする。

もう、すでに立っていることで精一杯の体力しか残っていない。

 

 おとなしく、この陰湿なシアクに殺されるつもりはもちろんないが、反撃に出ようとしても身体が動かなくては意味がない。

 

 

「そこまで弱っておいて諦めが悪いと言うか、なんというか。まあ、大したものね。褒めてあげるわ」

 

 それは、女の声だった。

 

 ただし、雪菜と名乗ったリントの少女の、笑顔を浮かべた表情と快活そうな声ではない。

 

 女は黒いライダースジャケットを羽織り、白いワンピースを下に来た上ですらりと伸びる黒タイツに包まれた長い足とクールビューティーともかわいらしいともいえない、ちぐはぐな印象を与える服装である。

 

 長い黒髪は癖っ毛気味ではあるものの、手入れはそれなりにされているようで街灯に照らされて光っていた。

 

 表情は面倒くさそうで、声色は投げ槍。

 

 顔立ちはいいので、ダウナー系美人といったほうがいいだろう。

 

 手には、シアクにグラデ、二人をはじめとするグロンギのベルト、仇敵クウガのつけているベルトとも違う、異質で機械的なベルトを持っている。

 

 中心には赤い小さな玉のようなものが光り、そこを中心にいくつかの紋章が刻み込まれている――ように見える。

 

 一枚のカードを手に取り、腰にそのベルトを当てれば、ベルトが腰を覆うようにして装着される。

 

「生きる為の手助けをしてあげるわ、クワガタムシ。ただし、それは気味悪いサカナ野郎が好みじゃなかっただけと言うだけであって、助けているつもりじゃないから。まだ、この世界の仮面ライダーには会えていないけど、末よりはマシでしょう。ああ、向こうのほうから来てくんないかしら。面倒ね」

 

 仮面ライダー?

 この世界?

 

疑問が絶えないが、女はーーカードを手に構える。

 

どことなく、今の姿やクウガに変身したリントと似ていた。

 

「……?」

「ああ、私?」

 

『KAMENRIDE!」

 

女がカードをベルトに差し込むと、音声が起動し、その姿をマゼンタの人型へと変える。

 

 

「通りすがりの仮面ライダー。覚えておきなさい、クワガタ……あとサカナ野郎」

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