枯れない桜 もう一つの物語   作:メレリア

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12月19日(夜) 前半

「これで、後は一時間くらい寝かせてと」

「義之、ちょっといいか?」

 

 台所で夕食の準備をしてる義之は振り返らずに

 

「なんだ? 味見は既にしたぞ?」

「そんな由夢みたいなことしないから。夕食をひとり分追加してくれないか?」

「そんなことか。今日はカレーだし多めに作ったから問題ないぞ」

 

 笑顔で、義之は言ってくれた。

 

「ありがとうな」

「ただし、条件がある」

「条件?」

 

 先程の笑顔の理由はこの条件にあるんだろうか。

 

「簡単なことだよ。俺の質問に答えてくれれば良い」

 

 この流れでの質問は大体予想がついてしまう。念のため先に言っておいた。

 

「愛梨のことか?」

「そうそう。夢宮さん、あの子ってさ……」

「ただの友達だぞ?」

 

 この一言に義之は予想外といった感じで

 

「そうじゃなくて、夢宮さん。今、何歳なんだ?」

 

 言われてから考えてみると、そんなささいな事も俺は知らなかった。

 

「……分からん」

「分からんって、マジで?」

 

 俺が頷くと、義之は

 

「じゃあ、この後上に戻るだろ? その時までに聞いといてくれ」

「分かった」

 

 上への階段を上がろうとした時、玄関のチャイムが鳴った。

 

「はーい」

 

 とりあえず俺が一番近いところにいたから玄関へと向かいドアを開ける。

 

「……義之いる?」

 

 開口一番そう言ったのは、雪村杏だった。その後ろには、花咲茜・月島小恋の通称雪月花三人の姿があった。

 

「義之ね。ちょっと待っとけ、寒いなら中に入ってもいいから」

「いや、もう一回ドアを義之に開けてもらうから大丈夫よ」

 

 よからぬ事を考えている笑顔で雪村が言う。こういう時は深入りしない方が身のためだ。そう思い俺は台所に向かった。

 

「義之お客さん。外で待ってるぞ」

「俺に? 誰?」

 

 ここで、雪月花といってしまったら面白くないだろう。

 

「それは、会えば分かるよ」

「……」

 

 頭に?マークを浮かべる様な顔で義之は玄関に向かった。

 

「後は、大丈夫だろう」

 

 そう確信した俺は、夢宮がお腹を抱えて待っているであろう自分の部屋に戻った。

 

「夢宮。聞きたいことがあるんだけど」

 

 そういいながら部屋のドアを開けた。そこで俺が見たのは

 

「…………」

 

 静かに寝息を立てている夢宮だった。しかも俺の布団を使っているのが驚きだ。

 

「……」

 

 黙って近寄ってみる。よほど眠たかったのか起きる気配がしない。そのままベッドの横に腰掛ける。

 

「少し疲れたな…」

 

 朝からのウインドウショッピングの疲れが出たのかもしれない。

 

「しかし、本当に良く寝てるな…」

 

 近くで寝顔を見ると、その顔は幸せそうに見えた。邪魔をすることを躊躇うくらいに邪気がない。

 

「本当に何歳なんだろうな」

 

 これだけ見ると小学生のような印象をうける。

 

「それは、ないと思うけどさ」

 

 これを本人に言ったら。夢宮は怒るだろうか。そんなことを考えていたら

 

「あ……」

 

 いつの間にか、俺の手は夢宮の頬に触れていた。心のどこかに起きない確信があるのだろうか。

 

「……柔らかい」

 

 夢宮の頬は、触れるだけで分かるほど柔らかく透き通るように白かった。

 

「……って。何してるんだ俺は」

 

 自分の行動がおかしいと思った俺は、夢宮から手を離そうとするが離す途中で俺の手は、引き戻す途中で夢宮に掴まれて止まった。

 

「愛梨?」

 

 声をかけてみるが夢宮は動かない。少しの沈黙の後、夢宮は目を閉じたまま

 

「ダーメ、この手は離さない」

「そうは言ってもな……」

「やっと見つけたんだから」

「……?」

 

 言ってることがいまいち理解出来ない。その時俺の頭にある可能性が浮かんだ。

 

「もう……ずっと……一緒だよ」

 

 そう言い。夢宮は俺の手をよりいっそう強く握ってくる。

 

「……寝言か」

 

 焦って損をした気がする。タイミングがあまりにも良すぎた。それなら心配は無いだろう。ひとつ、あるとするなら

 

「動けないな……」

 

 無意識だからか夢宮の握る力は強くこれをはずすとなると夢宮は確実に起きるだろう。

 

「ずっと、どんな時も……」

 

 俺の状況も知らず、寝ている夢宮は幸せそうに微笑んでいる。

 

「……はぁ」

 

 これ以上悩んでも無駄だろう。腕の拘束を解かないなら後は、夢宮が起きるまでこの状況でいる事だ。

 

「夕食までには起きてくれよ……」

 

 俺は夢宮の睡眠にそう願い、体の力を抜きベッドに上半身を預け座った。

 

「ずっとだよ……約束だから……」

 

 その間も夢宮は、こんなことを言っていた。そこから、俺の人生の中で一番落ち着かない沈黙の時間が始まった。

 

「……ん」

 

 沈黙が始まってから10分ぐらいだろうか。後ろで夢宮が動いた。

 

「目が覚めたか?」

「……しょうやくん?」

 

 寝ぼけ眼で夢宮は俺を見る。

 

「あれ?……わたし……」

「寝てたんだよ。まだ頭が動いてないみたいだな」

「……そっか~」

 

 いつも以上にやんわりと夢宮は微笑む。

 

「そういえば、夕食は家で食べていけ。カレーだから問題ないってさ」

「……うーん」」

 

 よほど寝ぼけているのか、夢宮の反応は曖昧だった。このままじゃまともな話は出来ないだろう。

 

「とりあえず、顔洗いに行くぞ?」

「は~い……」

 

 その後、俺達は一階に降りて夢宮の顔を洗わせた後部屋に戻った。

 

「えと、ご迷惑をお掛けしましたー」

 

 悪びれる様子も無く夢宮は言う。気にはしていないという訳ではないが今は他に聞きたいことがある。

 

「それより聞きたいことがあるんだが」

「何々? スリーサイズとか以外なら答えるよ」

「お――」

 

 お前と言いそうになるのを寸前でとめる。これを言ってしまったら不機嫌になって答えてくれないだろう。

 

「愛莉は何歳なんだ?」

「……」

 

 何かおかしなことを言っただろうか。夢宮は呆然と俺を見つめてやがて

 

「あ、そっか。説明してなかったね」

 

 ひとりで納得したのか大きく笑った。

 

「年齢だよね? 私の年齢は秘密だよ」

「は?」

「だから秘密だよ。だいたい、女性に年齢を聞くのはマナー違反だよ? だけど私は本校生だから君よりお姉さんなのは確実だよ」

 

 とてもそうは見えないと言ったら怒るだろうか。ま、言わないでおこう。

 

「それより、翔君。お腹がペコペコなんだけど」

 

 お腹の辺りを押さえながら夢宮は言う。呼び方がちょっと違っている等、他にも聞きたいことはあったが、義之との約束は果たしたし問題ないだろう。

 

「じゃあ、一階に行くか。もう準備は出来てるだろうし」

 

 そう言った途端、夢宮は嬉しそうに立ち上がり

 

「やったー。急ごう急ごう」

 

 そう言って、勢い良く一階に向かった。

 

「あれだけ見たら年上って感じではないよな……」

 

 部屋に残された俺は、そう呟き一階に向かった。

 

「おいし~」

「うん。義之ってやっぱり料理、上手だよね」

「だって、私の弟くんだもん」

 

 全員がカレーを食べ、義之の腕前に感心している。

 

「……お代わり」

 

 雪村が静かに義之に告げる。義之は驚き

「って、お前3杯目だろうが」

「私、いつもそれぐらい食べるし」

 

 にわかには信じがたいが黙っていおこう。

 

「ほんとにおいしい」

 

 隣では、夢宮が食べているがペースは雪村と違いゆっくりだ。

 

「小食なのか?」

「いや、熱いのがちょっと苦手で」

「そっか」

 

 義之と呆れるように言う。

 

「そんなに食ってるのに、その栄養分はいったいどこに消えているんだか謎だよな」

「それは、聞かないほうがいいだろう」

「それでも、特に胸とかさ~」

 

 雪村は気にしてないのか言う。

 

「いいのよ。『ないちち』には『ないちち』の良さがあるから。一番悪いのは中途半端に小さいヤツ」

 

 雪村と義之は、黙って音姫さんを見る。

 

「な、なんで私を見るのよ! さんにんで!」

 

「いえ」

「別に」

「何も」

 

 音姫さんは悔しいのか

 

「む、むーーーっ!」

 

 悔しそうに唸っていた。ふと夢宮を見てみる。

 

「ん? どうしたの?」

 

 さっきの話を聞いてなかったのか不思議そうに俺を見る。

 

「いや」

「ふ~ん」

 

 夢宮は気にしてないのか、視線をカレーに戻し食事を続けるその時に胸元を見た。少なくともその隣で黙々と食べている由夢には負けている感じだ。

 

「……似たりよったりだな」

 

そんな感想が漏れた。

 

「ところで、翔也」

「ん?」

 

 雪村が話しかけてきたのでそちらを向く。

 

「その子、誰?」

「あ、それ私も気になってた~」

「月島も……」

 

 雪月花三人が言う。よく考えれば初対面だし説明しとこう。

 

「ああ、この子は夢宮愛莉。俺の友人だ」

「友人……ね」

 

 意地の悪い笑みを浮かべる。何か嫌な予感がする。他の女性陣もいつもより目が輝いているように見える。雪月花だけでなく

 

「怪しいよね、お姉ちゃん」

「うん……」

 

 こちらのふたりもだった。

 

「翔也。夢宮さんをちょっと借りていい?」

「物じゃないんだから。愛莉、いいよな?」

「あ、うん。いいですよ」

 

 部屋の隅っこに、女性陣が移動する。

 

「秘密の話ってヤツか…」

「もしくは、妙な知識を植えつけてるとか?」

「それはまた……」

「で、あの子何歳なんだ?」

「本校の生徒だってさ」

 

 義之は驚いて夢宮を見る。

 

「同い年か下だと思ってたんだけどな…」

「それは、同感だ」

 

 女性陣の話が終わるまで、俺は義之を夢宮について話していた。

 

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