枯れない桜 もう一つの物語   作:メレリア

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12月23日(夜)

「ただいまー」

 

 特に寄り道もせず俺は家に帰った。明日もあるし寄り道する気も起こらなかった。そのまま居間に向かう。

 

「あ、おかえり翔也」

「おかえりなさい翔さん」

 

 居間には義之と由夢が居た。ただ音姫さんの姿は無かった。

 

「あれ? 音姫さんは?」

「なんか、生徒会の用事で遅くなるってさ……」

「はい、私もお姉ちゃんから遅くなるって言われました……」

 

 確かに生徒会室にお世話になったときも音姫さんの姿は無かった。今回は杉並もだいぶ力を入れてるのだろうか。

 

「義之は絡んでないんだよな?」

「当たり前だよ。そんなことに構ってられないしな……」

 

 真剣な目で義之が言う。

 

「何かあったのか?」

「小恋の体調がな……今日の練習中も辛そうだったし……」

「月島が? 知らなかったな」

「それは、早退した日は翔さんも休んでましたからね……」

「ま、とにかく今は劇しか考えられないかな……ここまで来たら成功させたいし……」

 

 手をグッと握って義之が言う。

 

「まぁ、お姉ちゃんも練習に付き合ってたしいざとなったら代わってもらってもいいかもね」

 

 由夢が言う。確かにあそこまで練習したのを見れば十分に代役は出来るだろう。

 

「それはありだけど……まあそれは最後の手段だよな。基本はクラス内でやらないといけないからな」

 

 自分の発言に自信を持てない。実際自分達は愛梨を手伝わせてしまったのだから。俺の発言に聞いた義之はニヤリとして

 

「そうなのか? 俺が聞いた話だと翔也のクラスは本校の美人さんが手伝ってたって話なんだけどなー」

「う……それは……」

 

 戸惑う俺を見て義之は笑う。その後表情を引き締めて言った。

 

「ま、そうならないようにしないとな。そこは子恋に頼むしかないんだけど……」

「そうだな……当日は俺も見に行くからへましないようにな。なんたって主役なんだから」

「気をつけるよ。そんじゃ俺そろそろ寝るわ……」

 

 義之は立ち上がる。時間的にはいつもよりだいぶ早い時間だ。

 

「兄さん、もう寝るんですか?」

「ああ、明日は朝から練習とか最終確認があるからな。早いんだよ」

「そうですか……じゃあ仕方ないですね……おやすみなさい、兄さん」

「ああ、おやすみ」

 

 義之は2階に上がっていった。部屋には俺と由夢が残る。

 

「あの、翔さん。今日はありがとう」

 

 そう言って由夢は頭を下げる。おそらく学校での件だろう。

 

「別にいいよ。ああいうのはほっとくと周りに迷惑かけるし」

「でも……」

「それに、俺が行かなかったら多分愛梨のほうが飛び出していくから変わんないよ」

「そうですか……愛梨さんが……何だか翔さんに似てますね……」

「そうかな?」

「そうなの。困ってる人に迷わず手を貸したりする所とか……」

 

 しみじみと由夢が言う。確か会った最初の頃に本人から似ているもの同士といわれた気がする。

 

「そう見えるかな」

「見えますよ」

 

 即答する由夢を前に俺は反論できなかった。まあ否定する気も起こらないが

 

「さてと、私もそろそろ寝ようかな……」

「由夢も早いな。何かあるのか?」

「や、明日も朝から保健委員の件でいろいろあるから……」

「なるほどな……」

 

 学校では清楚に振舞ってる分、朝が早い分早く寝ようという考えだろう。

 

「送ろうか?」

「いや、隣だし大丈夫だよ」

「なら、玄関先までな」

「それならいいかな」

 

 由夢と一緒に外に出る。朝倉家のほうを見ると2階の明かりがついている。

 

「音姫さん帰ってきてるみたいだな……」

「そうだね……それじゃ……」

「そうだ、由夢」

 

 そう言って朝倉家に戻ろうとする由夢を呼び止める。

 

「何ですか?」

「その、音姫さんにお手数かけてすみませんって伝えてくれないか?」

「……いったい何したんですか?」

 

 由夢がジト目で見てくる。何って昼の由夢の件なのだが

 

「いや……それは……」

「ふふ、分かってますよ。昼の件ですよね。伝えときます」

「悪いけど頼むな」

「はい、じゃあ……おやすみなさい翔さん」

 

 そう言って由夢は朝倉家に戻って行った。1人になり空を見上げる。夜空に星が輝いている。予報では明日は雪が降るかもしれないとのことだ……

 

「俺も戻るか……」

 

 さすがに冷えるので俺は家の中に戻った。それから風呂を済ませてベッドに横になる。

 

「明日はクリスマスイブか……」

 

 今までは特に意識することも無かったが今年は少し違った。

 

「しかし……答えが見えないな……」

 

 考えるのは愛梨の事。あの日から変わって欲しいと言われて考えてはいるがこれといえるものはない。

 

「俺の中にある。かぁ……」

 

 今の俺の中にあるのは愛梨への気持ち。風邪を引いたときに親との夢の中で気付いた大きな気持ちぐらいだ。ただ気持ちで言えばそれ以前から好意というか気になるという気持ちはあった。

 

「……ん?」

 

 考えに耽っているとふと携帯の着信有を伝えるランプが光っていた。確認してみると愛梨からだった。慌ててこちらからかける。数回のコールの後

 

「もしもし? 翔也君」

「ごめん、出れなくて……」

「本当だよー。何かあったのかと思ったよ。それで、何かあったの?」

「いや、ちょっと前愛梨から言われたことを考えたらちょっとな……」

「言われたこと? あー……」

 

 電話の向こうで納得したのか愛梨が言う。それから少し間をおいて

 

「それはね? そんなに難しいことじゃないよ?」

「そうなのか?」

「そうだよ。それよりさ、明日一緒に登校しない?」

「明日か?」

「うん。今日一緒に帰れなかったし良いでしょ?」

 

 電話の向こうで駄々をこねる愛梨。俺も特に断る理由も無い。

 

「いいよ。待ち合わせは何処にする? 枯れないさくらが良いか?」

「ううん。私が翔也君の家まで行くよ」

「それだと愛梨が大変じゃないか?」

「いいの! 私が行きたいんだから。それとも私が家まで来たら困る?」

「いやそれはないけど……」

 

 俺の意見を聞き電話から弾んだ声が聞こえてくる。

 

「なら決まりだね。じゃあ電話切るね。おやすみ翔也君」

「え? ああ……また明日」

「うん。また明日、じゃあねー」

 

 そう言って電話は切れた。あっさり切られて少し面食らう感じだ。携帯を置きもう一度考えてみる、そんなに難しいことじゃない……か

 

「明日で確信が掴めるかもな……」

 

 そんな楽観的な考えにして、明日の愛梨の迎えに寝坊しないように目を閉じて眠りについた。

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