枯れない桜 もう一つの物語   作:メレリア

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12月31日(昼) 前半

「ん~、こんなものかなぁ? あと足りない物って何かあったかな?」

「うーんと、メモを見る限りは大丈夫だと思うけど……」

「……」

 

 あれから順調に買い物を済ませていく音姫さん達。それに対して俺は買い物が進むほどに焦ると言うか驚いた。そりゃ年越しの買い物だからある程度は覚悟していたがビニール6袋分も買い込むことになるとは思っていなかった。

 

「翔也君、大丈夫? 私も持とうか?」

 

 苦しさが顔に出てたのか愛梨が言ってくる。だがこの重さを単純に持てるだろうか考えてみると答えは

 

「いや、大丈夫だよ……」

 

 という形になってしまう。それに納得しないのか愛梨は引き下がらず

 

「大丈夫じゃないでしょ? 私に任せて」

「そうだよ翔也君。愛梨ちゃんだって私と同じで年上なんだから」

 

 音姫さんの言い分を聞いて自信が付いたのか愛梨はなかば強引に俺から袋を取った。

 

「わっと……!」

 

 しかしおそらく1番重いのを取ったのだろう。愛梨はバランスを取ろうと必死になっている。俺は支えるように愛梨の背に腕を持っていった。動かした分袋が揺れ手が苦しくなるが仕方ない。

 

「大丈夫か?」

「あ、ありがとう……」

「大丈夫?愛梨ちゃん」

「へ……平気……だよぉ」

 

 まだ言うのかと俺は思うがここで無理やり取り返してもただ機嫌を損ねるだけかもしれないし年越しに悪い雰囲気は避けたい。

 

「……そうだ!」

 

 考えを巡らせていると思いついたように音姫さんが手をポンと叩いた。

 

「愛梨ちゃん、一緒に持とうよ」

「え?」

「だから2人で一つを持つの。それなら問題ないでしょ?」

「ふむ……」

 

 音姫さんの案を聞き俺は考える。確かに今の状況ならそれが1番穏便に事を運べるだろう。そうなると、後は

 

「だったら、軽いのをお願いして良いですか?」

「え? いいよ。2人で持つんだし重いのを持つよ」

「そうだよ翔也君。この重いのは音姫ちゃんと私が持つから」

 

 そう言って2人がかりで持ち出したが、それでも袋の下を引きずりそうだ。やっぱり2人とも女の子なのだろう。

 

「あの音姫さん、愛梨。底引きずりかけてる」

 

 そう言うと二人は

 

「へ? う、うそ!」

「そ、そんなことないよ!」

 

 それぞれ似たような言い分だ。気付かないくらい持つことに必死なのだろうか。

 

「とにかくそれは俺が持ちます。どうしても持つなら1番軽いのでお願いしますよ

 

 俺は先程やられたように二人から強引に袋を取り返した。

 

「あっ……」

「むぅー」

 

 袋を取られて驚く音姫さんとむくれている愛梨の奥から

 

「あれっ? 音姫に翔也君?」

「え? あっまゆき」

 

 声の主は高坂先輩だった。その奥にはエリカの姿も見える。

 

「生徒会の見回りか何か……ですか?」

「ふーん。翔也君は私がいつも見回りをしてると思ってるんだー」

 

 実際そうじゃないかと思うが言葉には出さない。

 

「まぁ、間違っても居ないけどね。そんなにガツガツやってる訳じゃないけど。それで? 奥の子は確か音姫の友達の……」

「あれ? 話してなかったっけ?」

 

 音姫さんがポカンとして言う。お願いだから誤解を招くような発言はしないで欲しい。

 

「私達と由夢ちゃん。今、弟くんの家に泊まらせてもらってるの」

「へぇー。それは面白いことを聞いたにゃー」

 

 ニコニコしながら言う音姫さんとニヤニヤとしだす高坂先輩。同じ笑いなのにどうしてこうも違うのか。それにエリカにいたっては

 

「な……あんな変態の家に……」

 

 怒っているのか恐れているのか良く分からない表情を浮かべている。義之の言う誤解とやらはまだ解けて無いようだ。その後はお互いに年越しの予定なんかを話していた。愛梨もその中に混ざっており一種の女子会みたいな光景だ。

 しかし、女性陣はそれでいいだろうが荷物を持った状態で待たされるのはこの上なくきついものがあるのだ。先に行くわけにも行かないし出来ることは早く話が終わることだろう。

 

「あれ? 音姫、それってパジャマ?」

「うん。これね、さっき買ったの。これね――」

 

 どうやら話は先程のパジャマの件に移ったようだ。これなら先に済ませてから寝具店に行ったほうが良かっただろうか。そうしたらそこで休憩が出来たのに……

 

「ところで、三人はもうお昼食べた? もしまだだったら、一緒にどう?」

「どうしよっか音姫ちゃん」

「そうだね。翔也君どうする?」

 

 どうやら話が終わったようでこっちにまわってきた。俺はご一緒するのも気が引けたので

 

「俺はこのまま運びますよ。長い時間外に置けないものもあるし……」

「そ、そっか! ごめんね、気付かなくて。でも1人で大丈夫? やっぱり――」

「だったら私が付いてくよ。音姫ちゃんは楽しんできて」

 

 音姫さんが迷っていると愛梨が名乗りをあげる様に言った。実際に言えば居ても労働的には変わりないが

 

「うーん……じゃあ……2人とも、お願いね」

「了解です。音姫さんも楽しんできてください。息抜きも必要ですよ」

「任せといてよ。翔也君に何かあったら私が何とかするから」

「へぇー」

 

 小さくガッツポーズを作る愛梨を見て高坂先輩が感心したように言った。

 

「どうしたんです? 先輩」

「へ? あぁ何か翔也君がこんなに尻にしかれてるの珍しいなーって」

「しかれてますかね?」

「うん。私から見たら見たこと無い光景なきがする」

「はい。少なくとも私ははじめて見ます」

「そういうものですかね……」

 

 散々言われてる気もするがとりあえずは流すことにした。

 

「じゃあ、俺達はこれで失礼します」

「うん。お願いね」

「変なことしちゃダメだぞー?」

 

 生徒会メンバーに見送られながら俺達は家へと向かった。途中で

 

「翔也君。私も持とうか?」

 

 と愛梨がやる気に満ちた表情で言ってきたが

 

「それは、1人じゃなくて2人で持つなら良いって話だっただろう? ダメだ」

「むぅー」

 

 隣で先程のようにむくれる愛梨。だが突然

 

「えい!」

 

 そう言って俺の持つ袋に手を伸ばしてきた。とっさの事もあり不意に動くと色々危険なので様子を見ていると愛梨は端の袋の取っ手を片方取った。

 

「何してるんだ?」

「1人じゃダメなら翔也君と2人で持てば良いかなって。それなら良いでしょ?」

 

 子供のように言う愛梨。そういう発想で来るとは思ってなかったがそれなら倒れそうなときは支えられるし問題は無いだろう。

 

「なるほどな」

「どう? 私の発想に驚いた?」

「十分驚いたよ」

 

 実際に重さが変わったかどうかを問われればそう変わらないだろう。むしろ愛梨に歩く早さを合わせたりするなどする事が増えたかもしれない。だけど現金なもので俺はそんなに重さは感じなかった。

 そんな状態で進みやっと家が見えてきた。

 

「もう……ちょっとだね」

「そうだな。大丈夫か?」

「大……丈夫」

 

 少し無理をしてるように見えるがもう少しだし問題ないだろう。

 

「はぁ……やっとついたー」

「お疲れ」

 

 家の前まで来た時愛梨は疲れたのか手を離してパタパタさせている。俺は空いてる指で玄関のドアを開けようとしたときドアが勝手に開いた。

 

「おっと、悪い翔也」

 

 中から出てきたのは義之と由夢だった。由夢が着替えているのを見ると出かけるようだ。

 

「いや、それより出かけるのか?」

「ああ、ちょっと大掃除の道具の買出しに行こうと思ってな」

「……珍しいな。ものぐさコンビが揃って大掃除の準備とは」

「俺はものぐさじゃねえよ」

「そうです。兄さんなんかと一緒にしないでください」

「はいはい、分かったから気をつけて行ってこうよ」

「おう」

「行って来ます」

 

 そう言って商店街に向かう二人に

 

「変なことしちゃダメだよー」

 

 愛梨は先程俺達が言われたことを言っていた。その言葉を聞いて先日のさくらさんとの話を思い出した。義之は果たして誰を取るのだろうか……

 

「って、他人の心配してる余裕もないか……」

「ん? どうしたの?」

「いや、それより中に入るぞ。今度は買ったものの整理が待ってるんだから」

「そうだね。運ぶよりは楽だろうし早く終わらせて私達もお昼にしよ」

 

 そう言って愛梨は一足先に中に入って行った。その後愛梨と協力して整理していき終わる頃にはだいぶ時間が経っていた。

 

「だいぶかかったな……」

「そうだね」

「昼はもう軽めでいいか?」

 

 この時間でいつものように食べると夕食に響くと思った俺は愛梨に言った。

 

「あ、だったら食べたいものがあるー」

「何だ? 手がかからないなら作るが」

「ホットケーキ」

 

 その単語を口にした瞬間に食べるとこまで想像したのか愛梨の目はキラキラしている様に見える。ホットケーキとは一体どこまで子供というかなんと言うか

 

「分かった。じゃあ作るまで居間で待っといてくれ」

「ううん。ここで見てる。ホットケーキって作るのも作るのを見てても楽しいよねー」

「そうか?」

「そういうものなの」

 

 そう言われた俺はそうなのだろうと納得しておいた。そのままホットケーキの調理に入る。とは言ってもさくらさんが買い置きしていたホットケーキミックスがあるので大した作業は無かったが作っている間愛梨の目というか視線を凄く感じた。そして出来あがったホットケーキを食べながらゆっくりと時間は過ぎていった。

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