ポケットモンスターspecial 氷の少女 作:眠猫の玉手箱
『国際警察』
目の前の死んだ目をした男が言った言葉に最初に思い出したのは、ハンサムという男だった。ゲームにてシンオウではギンガ団の捜査をしていたり、イッシュでは主人公に七賢人を捜索を依頼したり釣りざおをくれたりしたカッコいいオジさんなのだか、
目の前の死んだ目をした(自称)国際警察をもう一度見やる。
やっぱり、記憶に残っているハンサムのグラフィクとは似ても似つかない。容姿もカッコいいと言うよりは
もっともゲームでは(少なくとも私が知る限り)ハンサム一人だけしか登場してないとは言え、さすがに国際警察もハンサム一人だけではない筈だ。.....本当に一人だけの組織じゃないよね?
「助けてくれてありがとうございます。それであなたは本当に国際警察ですか?」
そして、ゲームに登場していない以上、目の前の男が本当に国際警察であるかは分からない。あくまでも、(自称)であり、
そもそも、あのストライクの存在は変だ。あのままだったら私はあの場で口なき死体になってしまっただろう。サカキの反応からしてサカキ、というかロケット団は恐らく私がどこでデオキシスの存在をしったか知りたい筈だし、聞き出すまでは口封じはしないはず。.....しないはず(二回目)。なんとなく不安になってきたがしないはずである(三回目)。
「彼女を助けてくれたことに感謝します。それで、失礼ですが国際警察であることを証明するものを見せて貰っても構わないでしょうか?」
意外といってはなんだが、横のシゲユキ巡査部長も同じことを思っていたらしく、慇懃な口調ではあるが、身分を照明させようとする。
そして、この場にいるほぼ全員(と全ポケ)に見つめられた(自称)国際警察さんは意表をつかれたように目をぱちくりとさせたあと、大儀そうに懐に右手をやって
「あれ?」
ズボンの前ポケットに左手をやって
「あれ?」
慌てたように鞄の中を探ぐり、
「ちょっと待っててくれ」
私たちの目はどんどん冷ややかになっていく。アコなんかストライク氷像化を中止して今にも冷凍ビームを撃ちたそうにしている。止める気はない。
「おおいぃザングースお前手帳持ってる?」
その後数分の間目の前の自称は再び出したザングースと何かを探していたが、諦めたように調べていた右靴を地に置いて
「申し訳ないいな。今手帳____身分を証明できるもん持ってないんだ。」
頭を掻きながら頭を下げる。全く誠意を感じないのはなぜなのだろうか?そのとなりのザングース呆れたようにやれやれとやっている。
にしても、目の前のこの人は国際警察のなかのよっぽどのバカか?それとも国際警察と言っておけば簡単に騙せると思ったロケット団のしたっぱか?どちらにしろ
「なるほどでしたらお話することはなにもございません。どうしても知りたければ、そこのシゲユキ警部補にでもお聞きください。」
帰ろう。意味なき同じ供述をするのは嫌いだ。
「おいちょいぃちょいっと待っ__「アコ帰るよー」
自称国際警察の制止を無視してアコを抱っこしながら帰ろうとして、
ポヨヨンとした弾力性のある何かに跳ね返される。
「ハリテヤマァ~」
それは突っ張りポケモンのハリテヤマ。どうやらその大きな弾力性のあるお腹に跳ね返されたらしい。これも野生ではないな。恐らくこれも自称国際警察さんの手持ちであろう。これも先程のザングースと同様に相当鍛え上げられている。
「__ってくれ、と?ハリテヤマお前どうしてここに?」
「ハリテヤマァ~」
困惑したように呼び掛けを中止して、ハリテヤマを方を向く自称国際警察。そこにハリテヤマが近づいて黒い手帳を差し出した。
「おいぃ。お前が持ってたのか、もっと早めに出してくれよ。 レモンちゃんこれで信じてくれてもいいかい?」
差し出された手帳はかなりぼろぼろで、今にもカバーと、本体が分離しそうだった。けれど、それがかえって本物っぽさを出していた。手にとって見ようとしたが、その前に
「一応中身を確認させていただきます。」
シゲユキ巡査部長にとられてしまった。
そっと彼は人差し指で背表紙をなぞってから、中を改める。中身を見ようとするが見えない。
ちょっと立ち位置を変える。よし見えた。そう思った瞬間にシゲユキ巡査部長がほんの少しだけ動き、見えなくなる。
..もう一度ちょっと立ち位置をずらす。見えた。と思った瞬間にまたシゲユキ巡査部長が動いたことにより、見えなくなる。
....もう一度立ち位置をずらす。見えたと思った瞬間に
パンと、乾いた音をたてて手帳が閉じられた。
「確かに確かめさせていただきました。」
「では、俺が国際警察ってことを認めてくれたってことでいいんだな?」
「あの私まだ見てないんですが」
「ええ。確かに確かめさせて頂きました。どうします立ち話もなんですし室内に移動しますか?」
「.....」
「いや、ここでいい。さて、レモンちゃん。今度こそ話聞かせて貰ってもいいかな?」
.....。少し目の前の警察官に膝蹴りを食らわせるか否か悩んたが流石に国際警察の目の前でやるわけにはいかない。その代わりにモンスターボールからカロを出す。
「わぁー。てがすべってモンスターボールおしちゃったー(棒)カロアイツに向かってじたばた」
「わっこのやろ!」
そのとたんに真っ先に目の前のシゲユキ巡査部長の顔にしがみつき、 じたばた する。 わざといいえ違います。偶然です。グウゼンデスヨー。
「こらーカロだめだよー。人にじたばたうっちゃー(棒)」
「いやてめぇ普通にロコンに指示だしてただろ!」
「?なにを言っておられるのですか?私が人に攻撃の指示を出すわけないでしょう。」
無実な女の子を疑うなんてなんて酷いんだ(棒)わたしはむじつだー。
「ふざけるなこのクソガキ!ぶっ殺してやろうか!」
「国際警察さん。こいつです。殺人未遂で逮捕してください。」
「シゲユキ殿に判決。
ざわ...
ざわ...
1050年地下行き!」
「オイ」
この世界にもカ○ジあるのか。
まぁそれはどうでもいいとして、とりあえずカロをグズシゲユキ巡査部長から取り上げてから目線を(自称)国際警察に向ける。
「分かりました。あなたを信頼して話しましょう」
全部は話さないけどね。信じてもらえないだろうし。胸のなかでそう嘯いてから、
「まずは..「ハリテヤマァ~」
話出そうとしたその瞬間にハリテヤマに割り込まれる。
差し出したのはなり続ける電話の子機。
「あれ?それのじゃ.....」
「ハリテヤマこれ俺が出てもいいのか?」
困惑する男二人。それにハリテヤマは「ハリテヤマァ~」と首を振りながら言って
「私?」
「ハリテヤマァ~」コクコク
誰からだろうと思いながら、とりあえずスピーカーボタンを押して他の人にも通話の内容を聞こえるようにしてからから通話ボタンを押す。
「もしもし、あんさんか?あんたが『3の島』で「
とたんに、繰り出されるのはタネマシンガンもかくやといった勢いで繰り出される関西弁__ではなくコガネ弁トーク。思わず耳を大幅に受話器から放す。命ではなく鼓膜が破壊されるところだった。
「えっとすみませんどこのどちら様でしょうか?」
「ワイはみさきの小屋のマサキや。」
マサキ。どうにも聞き覚えがあるような.....?!
「マサキってあのマサキさんですか?道具預りシステムとかポケモン預りシステムとか開発したあの?!」
「せや」
私の驚いた声に 気をよくしたかのようにマサキ、いやマサキさんが一瞬嬉しそうに答えるが
「ワイはこのナナシマに仕事で来たんやが、その時にレッドたちが
直ぐに真面目な声で事情を説明してくれる。敵か。
「
「多分それや!」
あぶない。また知る筈のない実機知識を晒すところだった。近くに警察がいるから更に失言要注意。
「あんさんはいまどこにおるんや?できれば直接会って話したいんや。ちなみにワイは、1の島のポケセンにおる。」
「2の島ですね。」
マサキさんの声に少し考える。.....シーギャロップ号は..ちょい時間合わないな。こちらが行くにしろ、あちらが来るにしろ。そもそも2の島はキワメさんの家(島の大半を占める)と極少数の民間しかないので便数自体が少ないのだ。
「2の島やて!ちょうどいいやないか。実はレッドたちもその島に居るんや。」
そういや、船長さんがレッドとグリーンはあのキワメさんに着いていったって言ってたな。そう一瞬思案してから了解の返事をしようと思ったその瞬間。私が意識せずに固く握りしめていた手を僅かに緩めたその瞬間。
「お電話変わらせていだいてもいいでしょうか?。この子の保護者ですか、私も同行してもいいでしょうか」
パッと横の国際警察さんに子機を取られる。 保護者という言葉に引っ掛かりを覚えたが気にしないでおこう。
「では.....良いです。...半時間後に港で.....その条件で良いです。」
スピーカーをoffにされたのか、あのマサキさんのコガネ弁は聞こえなくなり、時折 国際警察さんの相づちが聞こえるだけになり、
「これでいいな。レモンちゃん。悪いが説明する人が増えたがいいか?」
「分かりました。」
説明する手間は変わらない。それに ちらりと先程のストライクを見る。今はザングースによってノックアウトされた挙げ句、アコによって氷像と化しているが、先程は本当に危なかった。
「よろしくお願いいたします。
だからこそ、私は頼る。頼る相手がある程度信頼できるならば。
かなり頼りなくても、仮にも国際警察ならば、トレーナーですらない無力な女の子一人の
そんな思いを胸に抱きつつ私は国際警察さんの方に一歩歩み寄った。
「そういえばなんとお呼びすればいいですか?」