「不知火さん、あの雌豚をどうにかして学園から排除する方法を思いつきませんか?」
「残念だけど思い付かないな」
「そうですか……使えない」
「毒を吐くのは構わないが、せめて俺に聞こえないように吐けよ」
珠雫の停学処分が解けた翌日、彼女は夜になると俺の部屋にやって来て開口一番にとんでもない相談をして来た。どう考えても玄関先でする話ではないので珠雫を部屋に招き入れ、座布団を敷いてそこに座らせる。
「いやね、何も考えずに排除する方法なら幾らでも思い付くんだよ。だけどヴァーミリオン皇国との確執とか、一輝が傷付かない方法でとか条件が付くとゼロになるだけだ」
「お兄様……」
ヴァーミリオンとの模擬戦で一輝は彼女と賭けをしていた。負けた方が勝った方に服従するという内容だったが、なんやかんやあってヴァーミリオンが一輝の友人になるという事で落ち着いたらしい。しかし、側から見させて貰えばヴァーミリオンは一輝に対して女の顔をしているのが分かる……つまりは、ヴァーミリオンは一輝の事を異性として意識しているのだ。
黒鉄の家の事が原因で、一輝に対して行き過ぎた愛情を向けるようになった珠雫からしてみればヴァーミリオンの存在は不愉快極まりない。黒鉄一輝という人間を才能の有無で差別しないという点に関しては喜ばしいかもしれないが、そんな理屈で納得出来るようなものならば彼女はここまで拗らせはしなかっただろう。
来客用の湯呑みを出し、お茶を注いで珠雫の前に置く。本当だったら茶菓子の一つでもあった方が良いかもしれないが、今の時間は夜。太る事を気にしているだろうからお茶だけにしておく。
「一輝は優しいからな。あんな過去があったら捻くれてもおかしくないっていうのにガキの頃から魔導騎士になるって目標を掲げたまま変わらない。ヴァーミリオンが居なくなったら気落ちするだろうし、下手をしたら自分のせいだと責任を感じてヴァーミリオンの後を追いかけかねないぞ」
「……私だって、分かってるんですよ。あの女がちゃんと1人の人間として、1人の男性として色眼鏡無しでお兄様の事をちゃんと見てるんだって」
他人が嫌いで、一輝の事になると盲目的になる珠雫だが、だからと言って他人のことを見ていないわけではない。ちゃんとどんな人間なのかを見分けられるほどの目は持っている。
「でも、だからと言って諦められる程に、私は大人じゃないんですよ。私はお兄様の事が好きで、好きで、大好きで……妹としてではなくて女として見てほしいんです」
「良いじゃないか。命短し人よ恋せよ、だ。一般的におかしいと指を指されるような恋だと理解していながらも、それでも好きだと胸を張って言えるのならそれは立派な愛だよ。俺は応援するよ」
顔を伏せていた珠雫の頭を手荒く撫でる。一輝と知り合った頃からの付き合いである彼女が気落ちした時には姉ちゃんとこうやって珠雫のことを慰めていたなぁと過去を懐かしみながら。
「……ありがとうございます。そうですよね、肝心なのは私がそれを貫けるかですよね」
「そもそもひと昔前なんて近親相姦とか普通にあったから大丈夫だろ。ウチの一族でも時折血を濃くする為とか、兄妹もしくは姉弟でガチの恋愛感情が生まれてとかであったらしいし」
「あ、ごめんなさい。不知火さんのところの変態一族と私を同じにしないで下さい」
「悔しいけど否定は出来ないんだよなぁ……」
新城の姓を語っているが俺の元々は漣の一族だ。その漣は最新である俺からしてみてもドン引きするレベルの変態っぷりを誇っている。〝
〝
「そう言えばルームメイトの方はまだ帰らないのですか?それに火乃香さんも」
「綾辻と火乃香なら訓練場でぶっ倒れるまで模擬戦やらせてるぞ。寧音が見てるからやり過ぎるって事は無いと思うけど」
綾辻はそう区分して良いのか分からないが、火乃香は俺の弟子だ。新城の剣ではなくて
基礎を教えたら、あとはひたすら模擬戦をやらせる。
基礎というものはあらゆる武芸の始まりになる。それを教えて、完全に修めたと判断したらそれからは経験を積ませ、自分にあった形にへと研鑽していくだけだ。それが漣の血から知った漣の鍛錬であるし、俺も姉ちゃんもそれに習って鍛錬をしてきた。それが正しいのかは分からないが、それにより俺が強くなった事は確かだ。
「模擬戦って、確かルームメイトの方は三年生でしたよね?8歳の火乃香さんと模擬戦だなんて……」
「普通だったらそうなんだろうけど、生憎と俺は火乃香の事を漣として育てるって決めたんだ。本人もそれに了解して、漣として育てられている。あいつが決めた事だ。あいつが泣き喚いて必死に嫌がるまではそれを続けるって決めたんだよ」
「そう、ですか。だったら私がとやかく言うのは無粋ですね」
「物分りが良くて助かる。自称弱者の味方の連中は児童虐待だって言って火乃香の意思を無視して俺の事を責め立てるからな」
「17歳の男性が8歳の少女と模擬戦……確かに虐待しているように見えますね」
「……改めて言葉にするとヤバい絵面だな」
今度から火乃香の鍛錬をする時には人目に付かない場所でしようと決めた。
そこから暫く話をして、良い時間になったので今日はお開きにする事になった。玄関での別れ際の際に明日、一輝とヴァーミリオンと珠雫のルームメイトと一緒に遊びに行くから一緒に来ないかと誘われたが俺はそれを用事があるからという建前で断った。本当だったら行きたかったのだが、珠雫のルームメイトが問題なのだ。
珠雫のルームメイトの名前は
有栖院と……〝
「おーい、倒れた2人連れて来たぞー」
珠雫と別れて有栖院の監視をしている〝眼〟と視界を共有し、妙な事はしていない事を確認して安心していると、力尽きて動けなくなった火乃香と綾辻を担いだ寧音がやって来た。見た目幼女の寧音が人2人を担いでいる光景は信じられないものかもしれないが寧音の能力は重力。それに魔力を使って身体能力を強化すれば2人を担ぐことなんて容易いことだ。
「ありがとな。また今度お礼でもするよ」
「じゃあ身体で」
「ハハッ、せめてもちっと色気込めて誘えよ」
「うちの魅惑のボディーで勃たないというのか……!?」
「何度もヤられてるけど、俺の好みは我儘ボディーだからな?」
のっけからフルスロットルで俺の身体を狙ってくる寧音の獣の如き視線を出来る限り見ないようにしながら2人を受け取ってベッドの上に放り投げる。
「む〜……あ、だったら明日うちとデートしてよ。ちょっと気になる映画があるから、それを観に行きたいんよ」
「映画ねぇ……寧音が気になるなんでどんな映画なんだ?」
「〝ガンジー怒りの解脱〜許す事は強さの証と言ったな?あれは嘘だ〜〟って映画」
「何それ、凄い気になる」
タイトルを聞いただけでもどんな映画なのか気になってしまい、俺は寧音に誘われてデートをする事にした。
妹様のカウンセリングを修羅ヌイがするとかいう事案。こいつにやらせても背中にブースターを付けるだけで事態を悪化させそうなんだよなぁ……
みんなのオネエ様、凪ネキが名前だけ登場。凪ネキの正体を知ってる修羅ヌイからすれば、友人のルームメイトがリベリオンという。心配になって監視をしても仕方ないよネ?思いっきり覗き見だけど問題無いよネ?
原作であった映画のタイトルがどれも面白かったので採用する事に決定。〝ガンジー怒りの解脱〟とか、〝男たちの失楽園※Rー15〟とかパワーワード過ぎる。