かばんとサーバルはスナネコの家である洞窟に辿り着くと、背中を合わせて座り込んだ。
「はぁ…はぁ…もう大丈夫だよね、かばんちゃん」
「うん。影は追ってきてないみたいだし、多分大丈夫なんじゃないかな」
この言葉はサーバルの質問に答えたつもりだが、半分は自分に向かって言ったということに、かばんは気付かなかった。
すると、洞窟の奥からスナネコとツチノコが現れた。と言ってもツチノコは岩陰に隠れたままだが。
「二人とも、どうしたのですか?何か面白いことがあったのですか?」
「ど、どうしたんだお前ら、そんな息切らして」
かばんはこの二人を見た途端、安堵で力が抜け、倒れそうになった。
「スナネコ、ツチノコ!セルリアンが出たんだよ!それで逃げてきたんだけど…」
「セルリアンですか?」「セルリアンか?」
「はい、実はフレンズさんみたいな形の黒いセルリアンを見たんです。そしたらラッキーさんが逃げてって…」
「ふむ、黒いフレンズ型のセルリアンか…」
そこまで説明したところで、岩陰から新たなフレンズが現れた。
「お前、まだいたのか」
「ふふ、作家の勘が働いてね」
ツチノコの横に立つのは、ロッジアリツカで出会った作家のタイリクオオカミだった。
「オオカミさん、どうしてここに?」
「新しいネタを求めて遺跡まで来たんだ。お陰で良いネタがとれたよ。特にツチノコの良い顔、沢山いただいたよ」
そう言うと、タイリクオオカミはオッドアイの片目を瞑り、ツチノコを見た。
「お前ッ、それは言うなって!」
「ふふ、悪い悪い。お、その顔もいいね」
「クソッ!」
タイリクオオカミが意地悪く微笑み、スケッチブックとペンを取り出すと、ツチノコはそっぽを向いて岩陰に隠れてしまった。
タイリクオオカミは前へ進み、丁度いい岩を見つけるとそこに腰掛け、今までのクールでシニカルな笑みを消した。
「ところで、さっきの黒いフレンズ型のセルリアンの話だが」
「え?あ、はい」
かばんは惚けていたが、タイリクオオカミの真剣な表情と声で引き戻された。
「私は遺跡を調べていたと言ったね。実は調べてる途中、本を見つけたんだ」
「本…何のですか?」
聞くと、タイリクオオカミはどこからか薄汚れた灰色の無地の表紙に『日記』と書かれた本を取り出した。
「これは、見て分かる通り日記だ。私は職業柄、文字が少しだけ読めるのだがね、少し解読したとこ、この中にフレンズ型のセルリアンについて書かれているらしいんだ」
言いながらタイリクオオカミは本をこちらに手渡した。
「君…かばんはヒトのフレンズなんだってね。なら、その中に書いてある事がわかるんじゃないかな。もしかして君達が見たセルリアンと関係することかもしれない」
かばんは言われて本に目を落とした。
『日記』としか書かれていないこの本は何か重々しい雰囲気を感じる。
本をひっくり返し、裏表紙を見ると表と同じく灰色が広がっていたが、右下に文字を見つけ、その文字を声に出して読んだ。
「『ミライ』」
「え?かばんちゃん急に何言いだすの?ミライさんは今居ないよ?」
「え、あぁ、ここにミライって書いてあるんだよ。もしかしてこの本ミライさんが…?」
タイリクオオカミは腕組みをして少し考え、不意に「あぁ」と声を出した。
「ミライ、というのは君達がロッジに映した君と同じ帽子を被ったあのヒトかい?」
「えぇ、多分そうだと思います」
かばんが頷くと、タイリクオオカミは「そうか」と言って、大きな耳を動かした。
「まぁ、取り敢えず読んでみてくれ。私達はあまり読めないからすまないが声に出して読んでくれるか?」
「分かりました。では…」
かばんは『日記』を開いた。
最初のページに書いてあったのはこうだった。
かばんはそれを声に出して読んだ。
「パーク・セントラル、セルリアン襲撃事件」
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