「なっ…いつの間に!?」
助手は驚愕した。
全く気付かなかった。あのセルリアンは飛んできたにも関わらず、物音を一切立てずに索敵能力の高いほうであるツチノコを押さえつけたのだ。
誰にも気付かれずそんなことを成し遂げるなどほぼ不可能だ。
博士は唖然としていたがすぐにセルリアンを指差し、叫んだ。
「こいつなのです!私を襲い、『輝き』を奪ったのは!」
それを聞いて咄嗟に身構えたかばんの横をサーバルは烈風の如く駆け抜け、セルリアンに飛び掛かった。
「このっ!」
しかしセルリアンは翼を羽ばたかせ、ツチノコを足で掴んだまま飛び上がり、ひょいとサーバルの爪を躱した。
「くそっ!離せ!離しやがれ!」
ツチノコは腕を振り回すが背中を掴まれているため、当たることはない。
セルリアンは空中で器用に体を捻ると、元に戻す勢いを利用して掴んでいたツチノコを投げ飛ばした。
「ツチノコさんッ!!」
紙のように軽々と飛ばされるツチノコの先には大木が生えていた。
「がはっ!」
ツチノコは凄まじい勢いで背中から木に叩きつけられ、地面に落ちて動かなくなった。
助手はこちらを見下ろすセルリアンを睨むと野生開放し、叫びながら地を蹴り、飛び上がった。
「かばんはツチノコの介抱を頼みます!他はヤツを倒すのです!」
聞いて三人も野生開放するが、タイリクオオカミが叫び返した。
「駄目だ、私たちじゃ届かない!」
空を見上げるとセルリアンはジャンプ力が売りのサーバルでも届かない位置まで飛び上がっていた。
「私がヤツを落とします!博士とお前たちは一斉攻撃の準備を!」
そう言って助手は手にサンドスターを纏わせ、セルリアンに打ちかかった。
セルリアンは素早い機動でそれを躱す。しかし、助手は羽根を広げて急制動をかけると方向転換し、セルリアンに次々と爪を打ち込む。
「グルアァッ!」
セルリアンは咆哮すると縦に回転し、助手の爪を足の鉤爪で的確に弾いた。
助手は手を跳ね上げられ、完全に体が無防備になった。
その絶好のチャンスを相手がみすみす逃す訳もなく。
「しまったッ!」
セルリアンは翼を大きく羽ばたかせて助手の無防備な腹に凄まじいキックを叩き込んだ。助手の体から力が抜け、自由落下を開始する。
「助手!」
博士は叫んだが、助手は目を閉じ、力なく落ちていく。
セルリアンはそんな状態の助手に完全なる止めをさすべく、翼を折り畳み、急降下を始めた。
「危ないっ!」
サーバルは無意味だと分かっていながら駆け出す。
セルリアンはあと数秒もしない内に助手を仕留めるだろう。
感情の無いセルリアンの顔に勝利を確信したような笑みが浮かんだように見えた。
博士はがくっと地面に膝をついた。
その時、その場に確かな声が響いた。
「大丈夫ですよ、博士」
助手は野生開放によって輝く眼を見開いた。
助手は最大限引き付けたセルリアンの攻撃を躱すと、その勢いを利用して気合の掛け声と共にセルリアンに渾身のかかと落としを喰らわせた。
「おおらあぁぁぁっっ!!」
「ゴアァァァァァッ!」
セルリアンは急降下の勢い+助手のかかと落としの勢いで凄まじい速度で地面に叩きつけられ、断末魔をあげながら爆散した。
助手は皆の前に静かに降り立つと腕を組み、可愛らしく鼻を鳴らした。
「お前たちが心配しなくても私はあの程度じゃやられはしないのです。それにあれは作戦の一つですよ」
「…作戦?」
「敢えて攻撃を受けてヤツが油断して近付いてきたところを叩き落とす作戦だったのです。賢いので。まぁ叩き落とした時点で粉砕しましたが上手くいって…」
助手が自慢げに話していたのを遮って博士は助手に抱きついた。
助手は一瞬驚いたが、助手も博士の背中に手を回す。
「博士、どうしたというのですか」
博士は涙交じりに叫んだ。
「助手!心配したのですよ!助手がやられてしまうと思ったらどうにかなってしまいそうで…!」
助手はは博士の頭を撫でると、いつものような不愛想な声ではなく、優しく慈愛のこもった声で囁いた。
「博士、私は博士のそばを離れるつもりはないのですよ。私は博士の助手、なので博士がいないと私は何者でもなくなってしまうのです」
「助手ぅ…!」
助手は博士が泣き止むまで博士の頭をずっと撫で続けていた。
タイリクオオカミは二人をスケッチしようとしたが、いつの間にか横に立っていたかばんに凄まじい力で手を押さえつけられた。
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ツチノコ…