俺の名前は圭。
わけあって勇者として召喚され、いまは国際指名手配されている。
追われてこの方2か月と数日なんと懸賞金額は堂々のナンバーワン。聞く話によれば、城を一つ買ってもお釣りがくる額らしい。
そのこともあってか行く先々で賞金目当ての冒険者や央都から派遣された王直属の暗殺部隊に狙われ、今日もまた安息のできる地を探し求めていた。
たどり着いたのは魔物の住まう森といわれるところ。ここに来るのは金に目がくらんだ命知らずか、よほど自信家の冒険者のどちらかだ。
そんな森をさまようこと数刻。開けた場所に出る。
家発見。赤い屋根の小さな家だ。
ちょうどいい。歩き疲れたところだ。少し休ませてもらおう。
“こんなところに家?”という普通なら湧くであろう疑問や不信感、危機感よりも休みたい気持ちが上回っていた。もし襲われてもなるようになるだろう。
「立ち去れ、ここは我の縄張りだ」
近寄ると家の脇にあった岩が動き出し家との間に立ちふさがった。
ただの岩かと思っていたのは竜だった。龍だ、ドラゴンだ。
まだ勇者を生業としていた時に央都図書館で見たことがある。巨大なトカゲのような体にコウモリの翼、カギ爪と尾を持ち、炎を吐くと書かれていたはずだ。あと貪欲で、洞窟などで黄金を守っているとされるらしい。
見たところ翼は生えてないが、ドラゴンの中の種類が違うのだろう。
家を守っているのは単に近くに洞窟がなかったからだろうか?それかちょっとアホな子なのかもしれない。
まぁ、いい。とにかくドラゴンだ。やっと異世界らしいものをこの目で拝めた。
「ここに住んでいるのか?」
その巨体で?無理があるだろう。
「この家は我が友の物。友の許可なく踏み入る者は我が許さん」
「じゃあその人と話をさせてくれ」
「今はまだ輪廻転生中で話すことはできない」
「ん、どゆこと?」
ドラゴンが言うにはその友とかいう人物は10年前に亡くなり、今は死後の世界にいるらしい。あと何百年かしたら再び赤子として生まれ変わるそう。普通ならその前に死んでしまうが、そこはドラゴン。百年などそれほど長い時でもないそうだ。
うん、ファンタジーファンタジー。
「じゃあ交換条件だ。そのお友達が生き返るまででいい。家の管理をするから住ませて」
「ダメに決まっておるだろう」
ですよね~~~。
しかしここで食い下がるわけにはいかない。なにせこの家に住めれば、自動的に近づく追手をドラゴンが追い払ってくれるのだ。なんとも好物件ではないか。
手に入れずしてどうするというのか。
「そこをなんとか。お願いします」
「今すぐここから立ち去れ。死にたくなければな」
「俺は殺せないよ」
「ほう、それは面白い冗談だ!」
辺りが暗くなり、頭上からドラゴンの腕が振り下ろされた。
あんなのにあたればひとたまりもない。
「はいっとな!」
掛け声とともにドラゴンの腕は土から生成された腕に止められた。
「馬鹿な!それに無詠唱だと!?」
「当たり前だ。なんぜわざわざ詠唱しないといけないのだ。今からこの魔法使いますよって宣言しているようなものだ」
「っく。しかしまだ負けたわけではない!」
「じゃあ俺が勝ったらいい?」
「ほざけ」
勝った。ドラゴンは完全にのびていた。
「さて、じゃあ約束通り………って聞こえてないか」
今ここに俺は安息の地を手に入れた。
〇
その夜。「うぎゃ」という声とともに目覚める。
玄関に設置していたトラップに何かが引っかかった。
眠い目を擦りながら確認しに行くとと裸の少女がつるされていた。
「夜這いか?今日はそういう気分じゃないんだ。帰ってくれ」
「なわけあるか!」
「その口調。あのドラゴンか?」
しかし見た目は緑髪の裸少女。人化の魔法でも使ったのだろうか?
「そうだ。もう一度勝負しろ!我はまだ負けてはいない!」
「じゃあ次負けたら、なんでも一ついうことを聞いてよ」
「よかろう!我が勝ったらお前を八つ裂きにして殺してやる!」
「えぇー、それは勘弁してほしいんだけど」
「その余裕も今に後悔へと変わるだろう。さぁ、まずはこれを外せ」
「外せねぇのかよ」
はい、勝った。
「ま、負けただと。我が友ならいざ知らず、こんな、こんな奴に我が………」
「落ち込むのは勝手だけど約束聞いてもらうよ」
「な、なんだ」
「人化できるなら一緒に中で暮らさない?」
「何!?」
「一人より二人のほうが楽しいしね」
「………食えないやつだ。我は2度も負けた身。もう好きにせい」
そういってドラゴンはため息吐く。
「俺の名前は圭。お前は?」
「アンだ」
「よろしくアン。それじゃあまず服を着てもらおうか。いつまで裸でいるつもりだ?もう十分だ。眼福眼福」
「へ?………///。早くそれを言わんか!」
そんなこんなで俺の再スタートを決めたのだった。
続きが読みたいと思ってもらえれば、幸いです。