無職転生if ―強くてNew Game―   作:green-tea

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今回の内容には多分にオリジナル設定が含まれます。


第045話_白い夢

---取り返せぬものもある---

 

俺が元に戻るかは分からないが心を閉ざした時間と同じくらいは休みながら過ごそう。妹たちの5歳の誕生日もある。転移事件が終わったら、やりたいことがいろいろあった気がする。でも、オルステッドが俺に何も言ってこないなら俺は何もしなくて良いのかもしれない。ルイジェルドさんに髪を剃って呪いを消せることやビヘイリル王国にあるスペルド族の集落について伝えたかったな。その辺りのことはオルステッドに渡した書類に書いておいた。いや……オルステッドは集落の位置は知っていて教えなかったのだっけ。悩ましい話だ。

これから起こることはまったく予想できない。それでも出来ることをやろう。ルード商店だって5年は続けなければいけない。フィットア領の3店舗が失われている今はその分の資金も不足する。

そもそも当初の金貨80万枚で十分かどうかフィリップに聞いてこなければいけないな。足りなければ金策ではなくて復興の実務方を手伝う方法だってある。

日記を書き終えた俺は眠りに着いた。

 

--

 

地平線すら分からない真っ白な空間。俺はそこに立っていた。周囲を見回すと黒い穴が1つぽっかりと空いていた。あそこにあった未来が失われた。そんな暗示な気がする。

 

--

 

目が覚めるとまだ外は暗いがそろそろ朝だった。夢の中で誰かが立っていた気もしたし、何かを言われた気もした。だがそれだけだった。中途半端だな。もっと会話を楽しむヤツだと思ったのに。

あれはただ俺の願望が見せた夢だったのか、それともヤツが何かをしようとしたのか。もしかしたら他の人の夢にヤツが出て来たのを見たのかもしれない。

あの黒い穴が何を意味するのか。俺の潰した未来である気がした。不思議だ。ヒトガミの未来を潰していってもこんな判り易いことにはならなかったはずだ。夢の世界は夢の世界だったはずだ。

わからない。でも、直観を信じて俺の未来について少し考えてみよう。

俺は前世で3人の嫁を持った。俺はシルフィに操を立てたはずなのに、状況に流されて1人だけを選ばなかった。彼女達のおかげでそれが許された。

現世で俺は転移事件から皆を救うと決めて、その作業に邁進し、転移事件のためだといってエリスに近づいた。

エリスに近づいてフラグ管理をしようとして、心を弄びたくないと気が付き、それ以降は弄ばないようにした。そうしていく中で癒しとなるシルフィを強く愛するようになった。そしてシルフィも俺を選んでくれた。だから俺はシルフィを選んだ。そう決めた。

でも俺はエリスの10歳の誕生日が来るまで、その先がどうなるのかってことに気付いていなかったし、シルフィだけを選ぶことが意味することが何なのかにも気付かずにいた。

シルフィだけを選ぶということは結局、エリスやロキシーを選ばないということだ。ロキシーには連れ添いができないとオルステッドは言っていたが、エリスにはルークという旦那ができる。いや、それらはオルステッドの知っているルートでのことだったし、俺が居て運命が変わってしまえば定かではない。別にそれで良いと思えるように心境は変化したはずだった。彼女たちは彼女たちで自分の人生を選び取って欲しいと俺は心底願っているはずだった。

だけど。俺が前世で彼女たちを愛した約50年間の気持ちは嘘じゃなかった。

だから。愛する彼女たちを選んではいけないという事実に俺の心が耐えられていなかった。

そういう身勝手さ。心を弄ぼうとした相手の心配じゃなくて、結局は自分の弱さが原因。そんな事実を考えたくなかった。

でも認めよう。最低なヤツ。一生恨まれても文句は言えない。それでもエリスもロキシーも愛している。

それに気付いたらヒルダの言葉で不調を来したのも理解できた。俺は現世でパウロ、ゼニス、リーリャにしっかり親孝行しようと決めていた。エリスにとってそれはフィリップとヒルダとサウロスだ。転移事件のせいでエリスだって彼らに親孝行なんてできていなかった。そんな親子だ。その子の心を弄んだとも知らずにその子の親がまるで家族みたいに俺の心配をしてくれた。自分の息子のように思っているなんて言われて、その人たちに嘘や誤魔化しばかりして騙した。

 

もし自分の息子がそんなことをしていたら許せるはずがない。

もし自分の娘がそんなことをされていたら許せるはずがない。

 

心の奥では判っていたのに知らない振りをしていた。彼らの命を救うためだと大義を振りかざして自分すら騙した。でも自分を騙すのも限界があった。自覚してしまったら自分の脳と心が耐えられなかった。そんなツマラナイ話だ。相談できるわけもなかった。

シルフィが居ても俺は壊れるのかもしれないが、それでも何をするつもりもなかった。自分のやって来たことに責任を取らねばいけない。

 

自分の心に整理がついてからの数日間、俺はヒトガミとオルステッドについても考え直して日記にまとめた。それはほとんど逃避だったが、俺なりの考察をし直すことはこれからの俺の良く知らない未来のために価値のある作業だと言い聞かせることができた。

俺はまず『ヒトガミの能力』について復習することにした。ヒトガミ曰く、『人間は1つのモノを無理に分類したがる』らしい。だから、別にあいつに従う訳ではないが、能力のことを呪いとか神子と呼ぶのではなく、権能と呼ぶことにする。

ヒトガミの権能は、遠視、未来視、夢の中で相手の心を読む、夢の中であった生物に自分を無条件に信じさせる、の4つだと思う。

 

それから『ヒトガミが認識する未来』について考察した。

現世の転移事件が終わって、前世の転移事件以後についての日記を読み直すと、少し判らないことがある。それは前世で俺が初めてオルステッドと遭遇し、死にかけて、夢の中でヒトガミと話した時まで遡る。ヒトガミ自身の言葉を信じるならヤツはオルステッドの現在も未来も見ることはできない。

【オルステッドの現在】というのは、ヒトガミの遠視によってオルステッドを見ることができないという事だ。ではオルステッドが居る部分に対して何が見えているのか。真っ黒に塗りつぶされた空間か?それならある意味では見えているということになるだろう。だとすれば、つまり何もないように見えるのだ。

同じように【ヒトガミが見ている未来】にオルステッドは登場しない。オルステッドが関わって変化するはずの未来については間違った未来を見ることになる。

何も見えないように見える、間違った未来を見る、どちらも少しわかり難いかもしれない。ヒトガミの見ているだろうモノを判り易く説明するなら、オルステッドが200回以上体験した時間と俺の関係に似ている。オルステッドはルーデウス・グレイラットが死産する歴史を何度も体験した。そして俺が前世と呼ぶ回ではそこにいきなり俺が現れた。前世においてオルステッドが俺と出会ったとき、その先に起こるはずのイベントをいくつも知っている状態だったはずだが、俺が存在することによってそれらの知識は全て不確定な状態になってしまった。

同様にヒトガミが未来視で見ているのはオルステッドが居ない世界の未来だ。無限に分岐を持つ未来をどのように見ているかは判断が付かないが、オルステッドが世界の理から外れているがためにその未来視にオルステッドの存在は含まれない。でも実際の未来にはオルステッドが含まれる。

ヒトガミが見ている未来については2つの意味で捉えることができる。1つ目はヒトガミがオルステッド自身の未来を見ようとしたときに、オルステッドの未来が見えないということだ。これは、そもそも遠視ができないのでオルステッドを未来視の対象にできないと考えることができる。2つ目は誰かの未来を未来視で見ることによって、その誰かの未来に出てくるオルステッドは見えないということだ。ヤツ自身の言葉を信じるなら俺の胸に大穴が開く未来はヒトガミからは判らなかった。つまり、そのときまでにヒトガミが見た俺の未来ではオルステッドは映っていなかったし、オルステッドが原因で起こることを無視した未来が見えるということだ。想像するに、ヒトガミが見ていた俺の未来では平和に赤竜の下顎を越えているように見えていたかもしれない。そうだとすると1つの疑問が残る。ヒトガミはいつオルステッドを認識したか?という疑問だ。

オルステッドが行動すると、ヒトガミからは見えないものが勝手に動いているということになる。そして、今まで確認していた未来が気付かぬ間に変わってしまうように認識するのではないか。このような状況ではヒトガミはオルステッドを敵対視することが出来ないと思うし、よしんば敵対視できたとしても、今見ている自分の未来が本当にオルステッドに殺されない未来かどうかの確度に信憑性が無くなってしまう。

話を戻そう。

まずはヒトガミがオルステッドを見ることができず、かつオルステッドが関わって変化した未来を見ることができないとして、どうやってオルステッドを認識するかだ。オルステッドが自分に関わった者をすべて虐殺する虐殺ルートを選ぶと、もしかしてどうやってもヒトガミに勝てなかったのかもしれない。そのため関わった者を生かす非虐殺ルートを進めている途中だとする。するとオルステッドと関わった者の中で、後にヒトガミが夢に現れる者がいて、そのときヒトガミがその者と対話し、心を読む。記憶は読めないかもしれないが、ミリスの神子と同じで何かを質問されて心にオルステッドのことを思い浮かべればオルステッドの存在を認識するという可能性が考えられる。もしくは、過去にオルステッドが理を外れて見えなくなったときから怪しいと思っていて、未来が勝手に書き換えられている状況を確信はないにしてもオルステッドのせいにする可能性が考えられる。後者の場合でもヒトガミが俺と出会った頃には既にヒトガミもオルステッドが暗躍していると確信していることになる。

さて、ヒトガミがオルステッドを認識できた――つまり、自分を殺そうとする者が本来変わるはずのない未来を変えていることに気付いたとき、オルステッドの映らない自分自身の未来視はどれだけ信憑性があると思うのだろうか。もし俺なら未来視の信用はガタ落ちで使い物にならないと判断すると思う。だから、ヒトガミがそれでも未来視を信用できる理由があるのではないか。その理由について3つ考えてみた。こういうときは3つの考えを用意する。

1つ目は、ヒトガミ自身のことならオルステッドが関わったとしてもはっきりわかるというものだ。この場合はヒトガミ自身の未来についてならオルステッドのことが見えているとなり、ある程度使い物になる。しかし、どこまでがヒトガミの未来に関わることなのかを定義するのが難しいように思う。基本、オルステッドはヒトガミの未来に関係する行動をする。ならほとんどの未来にオルステッドが見えてしまう。これでは前段の予想も覆ってしまう。その通りだから未来視は使い物になるという話は大いにあり得る。

2つ目は、はっきりと判らないが自分が死ぬ可能性が僅かでもあるなら、その歴史ルートを諦めているというものだ。そもそもヒトガミが無の世界に引き籠っていることから考えて、オルステッドが現れる随分前から未来視で自分を確認していたという可能性がある。この時点でヒトガミが視た完全に安全な未来をそれぞれ、X1、X2、X3……Xnと表現しよう。そして、自分が死ぬかどうかに関わらず、あるタイミングで新しく視た未来X'1、X'2、X'3……X'nを用意し、X1とX'1、X2とX'2、X3とX'3……XnとX'n、の歴史の流れに少しでも異なる事象が含まれた場合は、それはオルステッドが介入した曖昧なルートとしてどんどんと切り捨てていく。この場合、切り捨てる量が増えて残った安全な未来が減ることで逆にヒトガミの未来視に割く能力や作業量は減っていき、使徒が増える気がする。また、違いがなくとも時間が進むことで無数に枝分かれした未来は収束していくので同じく使徒は増えて行くだろう。

3つ目はヒトガミもそこまで考えていないというものだ。ある瞬間から先の未来で自分が生きているならば少なくとも安全だという認識で、ヒトガミはオルステッドが介入したと気付くか、または定期的に未来視をやり直す。そして自分が生き残れないルートに行かないように使徒を使って歴史を操る。

俺の考えは考察を始めた当初、3番目に最も近かったと思う。だが、3番目の方法で排除しているルートは単にオルステッドがいなくてもヒトガミが死ぬルートなのではないかと思って止めた。そんなルートは存在しえないように思うが、無限の可能性を持つ未来ではそれがあり得るならなんでも良い。ただ、それならオルステッドが少し介入するだけで楽勝で勝てたはずだ。だから3番目は無いと思う。次にシンプルなのは1番目だが、そこまでのルートをヒトガミが把握できているならあいつはもっと上手く立ち回ることが可能で、面倒な俺に関わった前世の意図が良く分からない。最後に2番目の予想にも問題は残る。2番目の作業をしている場合、切り捨てなかったルートとはオルステッドが介入した結果と未来視として見えたものが一致するルートだが、オルステッドの在・不在の違いは残ってしまう。それをどう判断しているかはやはり判らない。

俺が思いついた3つの考えのいずれでもない可能性が大きいかもしれない。謎は深まっただけだ。

 

さらに使徒とマイルストーンに関しても考えてみる。先に述べたことから判ると思うが俺はヒトガミが行う使徒化やマイルストーンについてはヒトガミの権能だとは考えていない。

オルステッドの言う"使徒とそれをリセットするマイルストーンという仕組み"についてもおさらいしてみると、俺は勘違いしていることが判った。

オルステッドの説明によると、使徒の枠はマイルストーンが来るとリセットできる/される。だからマイルストーンというのがヒトガミの能力に何か影響を与えているとか、刻の流れの中で何かを表すようなものと最初はそう思っていた。だが俺が考察を終えた上での推測はそうではない。

理解するためにマイルストーンという言葉を使わずに使徒化する作業を表現すると、『一定期間に夢に出て使徒にできる人間の人数は有限である』となる。ここで使徒化するというのは、『人間にヒトガミ自身の言葉を信じさせ、歴史を改変したい、もしくは改変させないために使徒にしたい人間を使嗾(しそう)する』ことと定義できる。

これまでのヒトガミと使徒の関係から判るように、言葉は妄信的に信じ込ませることができても心を催眠術で操れるわけではない。結局、使徒はその言葉を信じながら未来での選択を迫られて神の御告げを頼りに動く程度のことで、ずっと先の例えば百年後の御告げをしても忘れられてしまうし、あまり直前に御告げをしても、それが使徒にとって受け入れ難いものだと言葉通りに動かずに終わってしまう。そもそも使嗾しなかった場合は別の選択をするはずだった人物に別のことをさせるわけだから俺のようにヤツの権能が効きにくいという話がなくて、信じやすい体質であったとしても俺のときと同じように何度も夢に出てきて信じ込ませる必要がある。前世でアスラ王国に行ったとき使徒化したルークをみたが、あれは確かに使徒として不十分だった。本来ならばもっと何度も夢に出なければいけなかったのに、俺という運命力が強くて龍神の腕輪で見えなくなっている者が近くに居たためにヒトガミからすると信じ込ませるための未来視による予言と助言が行えなかった可能性が高い。

ただし、オルステッドにぶつけるための使徒は基本的に闘気が使えることを勘案すると、ルークの扱いは場を混乱させる程度の捨て駒だった可能性もある。

さらなる疑問になるが、それが大事な使徒化の1枠を使う程だったとはどうしても思えない。その辺りは、ヒトガミが十分に未来視できないイベントへの対応の弱さを露呈しているように見える。もしくは直前のマイルストーンに全力を注ぎ過ぎて、アリエルの王位簒奪阻止の準備に力を割けなかったか。

とにかく、これらの分析からマイルストーンとは『ヒトガミが改変したいもしくは改変させたくない歴史』であると定義できる。そう、客観的に見ればただの歴史の1つに過ぎない。

だからマイルストーンまでの期間で使徒の枠が決まるのなら、ヒトガミの使徒化にマジックポイントみたいなものが必要だとして、そのマジックポイントが自然回復する時間と捉えると良い気がする。

ヒトガミは自分の未来を視てマイルストーンとなるイベントを決定し、そのマイルストーンまでに必要な使徒を用意する。逆算して作業しているからマイルストーンが終わるとマジックポイントは次の作業に必要な分まで回復していて、新たな使徒を準備することが可能になる。

余談だが、現世で意気揚々と俺は権能が効きづらくて、使徒化しようと何度もヒトガミがアクセスしてきたとオルステッドに自分の意見を伝えたが、そこがガッツリ間違っていた可能性があり、恥ずかしくて仕方ない。

しかも、俺は「どう思いますか?」と問うて先に自分の意見を述べただけで、オルステッドの意見を聞き忘れている。マヌケは見つかったな。

 

時期的には前世で俺がヒトガミに見つかった時期だから、『ヒトガミの俺に関するこれまでの行動』についても考えてみる。

この時期のあいつが世界に対してどんな干渉をしていたかは知りようもない。もし前世と同じなら俺を使徒化するための枠が1枠空いている。オルステッドの予想を信じるなら使徒枠の入れ替えはマイルストーン毎で、上限は3人だ。もしギースのような裏方をオルステッドに知られずに何人も操っているなら4人以上かもしれない。もし上限が3人だったとしてもヒトガミが自分の未来を見る力を多少なりとも手放せばその数は増やせるだろう。そして途中で使徒がリタイアしても追加の補充はできない。転移事件が1つ前のマイルストーン。判り易い話だ。

さて、ヒトガミが俺に気付いていた場合について考えてみよう。その場合、転移事件で被害を最小限に防ぐ俺の行動はヒトガミの意図通りで、本来変わらないはずの歴史だったがヒトガミにとって改変したい歴史だった可能性がある。つまり、俺が動いたことで助かった人物の中にヒトガミにとって有用な人物が居るという可能性だ。それでも俺は構わない。それと同時に俺の両親もシルフィの両親もエリスの両親も助かったのだから。そして、俺は俺が関わったことで生き残ったヒトガミの使徒が顕在化したならば、それを打倒する義務を持つだろう。オルステッドはどう思っているか判らないが、俺からしたら社長は仲間だ。同じ目的を持った同志だった。ならば俺のせいで増えた障害は俺の手で排除することはやぶさかではない。

もう一つ、この時点で枠が1つ空くならば転移事件前まで使徒だった人物が居たか、オルステッドに殺された使徒の枠かヒトガミが見る未来を少し諦めて新しく枠を作ったかのどれかとなる。最後のは考えにくい。なら転移事件までの間に裏で暗躍し、ヒトガミの使徒だった人物が居る。オルステッドに立ち向かったのならそいつは闘気を纏える戦士だったということだし、そうではないなら裏方タイプのやつで、おそらくオルステッドに殺されずにこの転移事件まで何かをしていたと思う。

薄々気が付いてはいたが転移事件を防ぐ俺の活動が随分と順調だった。貴族の介入、騎士団の横槍、商人組合からの妨害、魔術師ギルドの嫌がらせ。いくらでもあり得る話だ。それらがヒトガミの使徒による裏工作の結果、抑えられたとしてもおかしくはない。

 

ヒトガミのこれまでの行動について考えたので『ヒトガミの俺に関する今後の行動』についても考えてみたい。まず、次に使徒化するのは次以降のマイルストーンのためだ。それが何なのか。前世において俺の見えていないところにあるマイルストーンは判らないが、この時期に俺にアクセスしてきた意図、その先にあるマイルストーンは俺とロキシーの間に生まれる救世主であり、それを産ませないようにするためだった。

しかし、今回はロキシーとの関係が変化しているため全く同じ子供、前世のララが産まれるかは判らない。もしかしてロロが産まれるかもしれない。産まれたララが救世主ではないという運命もあり得る。そうだとしても俺はララのことが好きだったし、今回ロロが産まれても、それはそれで好きになる覚悟がある。否……今の状況では目を逸らしたかったが、ロキシーともう会えないという可能性も考えておくべきだろう。とにかく、俺が救世主を産みだす要因ではないとすれば、俺のところにヒトガミが来て俺を使徒にする理由は極めて低い。

一方で、別の視点で考えてみることもできる。前世においてヒトガミは未来視の力を使って異世界人で運命力の強い魂を持った俺の未来を視た。そしてヒトガミの権能を使って強固な運命に守られた歴史を改竄しようと画策する。オルステッドがヒトガミから見えないところで改竄した歴史をヒトガミの都合の良い状態に戻す。そうしたやり取りの中で俺自身も信用させて完全に取り込んでから、救世主が産まれるのを阻止させる。逆説的に考えると、救世主が産まれる未来というのは相当の運命力を持っている。わざわざ信用させにくい俺の運命力を使わないと改竄できない程なのだ。

そこまで強い運命力ならばやはり俺の子供に救世主は産まれるかもしれない。では俺が救世主の親となるという仮定でさらに考えてみよう。

前世と同じようにヒトガミが現世の俺の未来を視た。その未来の中でララかロロかそれとも他の誰か。とにかく運命力が強い救世主が産まれるのを視たとする。ヒトガミはどうにかしてこの運命力が強い救世主が産まれるのを阻止しようと画策する。現世の俺は前世の俺よりもヒトガミの言うことに耳を傾けない。だから権能が効きづらく言葉で惑わせない現世の俺の未来を視たとするなら、俺にアクセスしても救世主の誕生を阻止する未来を妨げられない。よって、俺の夢の中にヒトガミが現れて使徒化しようとはしない。

さらに言えば、もっと効果的な方法を考える/効果がある未来が別に存在するのではないか。それが何なのか。俺の近くにいる人達に干渉するという事は有効ではないと思う。これは前世のルークを使徒化しようとした話に似ている。彼らを信用させて操ったとしても俺の運命力でそれを阻止できてしまう。大事な1枠(マジックポイント)を使ってそれをする必要性があるなら別だが、そうでなければやらないだろう。そして、それをするなら随分と前から動かなければならない。だとするなら一番簡単で確実な方法は、このまま俺とロキシーを引き離しておいてどちらかを殺してしまうことだ。やはり、ヒトガミが俺の夢に現れてこようとしてくる可能性は低い。

 

最後に『オルステッドが俺に接触してこない理由』について考えよう。オルステッドは「そう遠くない内にどうするかを伝えに行く」と言っていた。だが、数か月が経っても来る気配はない。

まず第1に考えなければならないのは、オルステッドにとって今回が色々試して適当にミスルートも通るつもりのテストパターンなのか、それとも今回が攻略に全力を注いでいるパターンなのかということだ。前者ならオルステッド自身の目で見ながら色々試して検証する必要があるから来ない、となる。俺は前世でヒトガミを打倒できるつもりで動いたが、オルステッド自身が毎回全力でやっているとは限らない。前世にしたってヒトガミはオルステッドのことを大したことないヤツと評価していた。それをヒトガミの見る目がないと思うこともできるが、オルステッドがわざと敗北ルートの中で見えてくるヒトガミを倒すためのヒントを探していたからと捉えることもできる。ヒトガミを過小評価するよりはオルステッドがそのように動いたと捉える方が前向きだ。そして後者、つまり攻略に全力を注いでいるパターンの場合でも、俺より有用な人物が居てその人物に龍神の腕輪を渡すなら俺に会いに来る必要はない。

第2に考えなければいけないのは彼の予定だ。転移事件の後のオルステッドについてもどこで何をしていたかは正確には良くわからない。ほぼ3年後に赤竜の下顎でナナホシを連れてアスラ方面からシーローン方面に行ったのだから、アスラ、剣の聖地、ラノア方面、北方大地、ビヘイリル王国のいずれかでイベントをこなした後、シーローン、紛争地帯、ワイバーン方面で何かをする予定だった可能性が高い。後は熱帯雨林やその近くにある転移の遺跡を使おうとした可能性もある。ナナホシの話では、アスラ王国に居る最初の1年でこの世界で生きるために必要な技能をマスターし、次の1年もアスラ王国に滞在して一生暮らせる分の資産を稼ぎ出し、3年目の1年で転移魔法陣を使って世界を周り、どこかでペルギウスに会って召喚や転移魔術について習った。そういう話だったはずだ。つまり前世で俺が最初にオルステッドに会ったのはナナホシとの世界一周旅行中ということだ。そして、ナナホシが来てからの2年の間、ずっと彼女と一緒に居たとはどうも考えにくい。その間にも必要なフラグ立てやイベントをこなす作業をしていたと思われる。しかも、その作業は俺の書類束に書き記した転移ネットワークを使うことで能率を上げることが可能だ。これでは現世のオルステッドの予定は余計に判らなくなったと言える。

第3に考えるのはオルステッドの性格や性質だ。オルステッドは呪いのせいで人に嫌われやすく動きが取りづらい。俺と対立して魔力を消費した前世では、仕方なく俺を使って色々な歴史の改竄を行った。一方、現世のオルステッドは魔力が十分にあり、転移ネットワークで能率も上がる。他人を頼る必要を感じないかもしれない。

状況的な理由だけではないだろう。彼から見て俺が信用に足る人間に映っただろうか?転移災害直後の俺は精神的にボロボロだった。子供のことが好きなればこそ、瞳の暗い子供を信用しなかった。そういうことかもしれない。

最後にそれでもオルステッドに会う方法はある。転移ネットワークで待ち伏せしておけば良い。いろんな遺跡にある転移魔法陣を破壊してしまえばもっと確実になる。そこまでやるかは状況で考えよう。

 

 

 




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