無職転生if ―強くてNew Game―   作:green-tea

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※セウト!
 R-15の範疇だと思いますがいざ自分で書いてみるとラインがわからないです。
 苦手な人はご注意ください。

今回の内容には多分にオリジナル設定が含まれます。


第048話_内密

---年下のリードに身を委ねろ---

 

為すべきことで迷っていると、いつの間にかにルディと一緒に研究する時間になっていた。それでも今、どんな顔で会えばいいのか心が決まらなかった。即断即決派の私をこんなに悩ますルディ。どうして悩んでいるかの理由は判っている。人生で受け入れてもらえた事が一度もない私は、自信がないのだ。

そうしているとルディが来た。目が合わせられない。見た目が幼いままの私と10歳の彼。傍から見たらお似合いじゃないか。

胸の鼓動が大きくなる。私の好みはもう少し上だったはず、でも人族は成長が早い。自分と釣り合うのはあと数年。それを過ぎたらルディも出会った頃のパウロさんのようになってしまうのだろう。パウロさんはゼニスさんとお似合いだ。その、リーリャさんとも。きっとその頃にはルディも私を捨てて、仲違いしている子たちとヨリを戻すに違いない。こんなちんちくりんな私をずっと愛していてくれるわけがない。そうだ今しかない。

自分の唯一の弟子。剣術もパウロさん以上で魔術も凄い子。自分に懐いていて魔族だからと忌避もされていない。再会したときに強く抱きしめられたのは心地よかった。毎晩一緒に寝て、私は何も感じていないわけじゃない。この子に愛されたい。今だけでもいい。愛しています。私の想いだけでも叶わせてほしい。我儘かもしれない。でもきっと聞いてくれる。

 

「ロキシー。もう離れるのは嫌です」

 

私もそうです。でも言葉は裏腹で。

 

「い、いいんですか? こんなちんちくりんで……」

 

「あなたがいい」

 

心にすっと入って来た。待っていた言葉。返事をしなきゃ……ルディの顔がどんどん近くなっていく。

キィ。

ふいに扉が開いたのでルディとの距離が一瞬で開いてしまった。同時に夕食の知らせをもってきたアイシャちゃんとノルンちゃんが飛び跳ねてくる。

もうそんなに時間が経っていたの? 先程のやり取りを聞かれたかもしれない。子供は容赦がないから、今のことを家族に漏らしてしまうかもしれない。

 

そんな想いは杞憂で、何事もなく食事は終わった。さっきの続きがあるかもと思って待っていたけど、何事もなくルディとただ一緒に寝ることになった。眠れなくて、こんなに期待しているのに、肩透かしがショックで朝に部屋へ戻って静かに項垂(うなだ)れていた。そういえば5年前は毎晩のように隣から嬌声が聞こえてきていたっけ。パウロさんたちもようやく落ち着いたのだろうか。認めよう。身体はルディを求めている。

 

--

 

次の日から2人の研究で何を話したのかさっぱり覚えていない。上の空だ。私はこんなに阿呆の子だったのか。大学の同級生たちが浮かれていたのを「何のために学び舎に来ているんだ」と思っていた。恋に(うつつ)を抜かしている奴らだと冷たい目で見ていた自分こそ滑稽じゃないか。あの出会いにはあの時でしか味わえないものがあると皆、理解していたことだった。それが理解できずに杓子定規の頑固さを貫いた自分こそが阿呆の子だ。

あぁどうしよう。年上だもの私がリードしなくちゃいけない。でも経験値ゼロの私が? そんな風にグルグルと思考を巡らせていると、あっという間に1週間が過ぎて、そしてルディに先手を打たれることになる。―― 昼食後のルディの家族と彼の会話に私は耳を疑った。

 

「災害で無くなったお風呂を作り直したので使いたいときは教えてください。僕がお湯の管理をしていますから。ロキシーは入り方が判らないなら僕と一緒に入りましょう」

 

「え?」

 

「ダメですか?」

 

私は一瞬、ゼニスさんとリーリャさんの顔を見た。『ダメでしょう? やっぱり』と心の中で思い、彼女たちが(たしな)めるべきだと思った。そんな家族公認なんて、まずいですよね?

 

「ハハハ、いいじゃねーか。風呂なら久しぶりに俺たちも3人でしっぽり入ろうぜ?」

 

パウロさん!?

 

「子供たちだけでは心配ですから、ルディ以外は5人で入りましょう」

 

なぜそうなるのですか! リーリャさん?

 

「まぁ……今日だけですよ」

 

そんな……ゼニスさんまで。最後の牙城が崩れる音がした。

 

「わーい、ひさびさのお風呂だー」

「パパ、今日は髪洗ってくれる?」

 

そんな仲睦まじい会話が展開していた。普通なんだろうか。私とルディが一緒に入るのを止める大人は1人も居なかった。

 

「ロキシー。どうしてもというなら1人で入ります?」

 

「いえ、そういうことなら……」

 

「決まりですね」

 

ルディは昔みたいに飛び切りの笑顔で私に微笑んだ。ううっ、流されてしまった。リードするはずが、こんな大胆すぎる。恥ずかしいし、股の辺りがムズムズしてしまう。今日……あるかもしれない。どうしようノープランだ。

急遽、夕方の研究は中止にした。一緒に居られるわけがない。残された時間でいろいろ考えなくちゃ。リーリャさんかゼニスさんにアドバイスをもらおうか……いやいや相手の母親に相談する内容ではない。

 

--

 

そしてお風呂の時間は無慈悲にもやって来た。パウロさんの勧めで2人で先に入ることに。

 

「ロキシー、ここが脱衣所です」

 

「うわぁすごい立派ですね」

 

「着替えを置いて、脱いだ服は別の籠にいれちゃってください。身体を洗うためのタオルを用意したので恥ずかしかったら前を隠しても良いですよ」

 

「え、全部脱ぐんですか? 以前、川で入ったときみたいに下着で入ったら不味いのでしょうか?」

 

「この後、父さまたちも入りますから……でも、どうしてもというなら僕が湯を入れ替えますから良いですよ」

 

「いえいえ! どうしてもなんて」

 

「あぁそうだ。とりあえず、下着になってここに座ってください」

 

言われるがまま私はとりあえず下着姿になって石の椅子に座った。ルディが後ろに回り込むと私の三つ編みを解く。

 

「髪の毛も洗いますから少し髪を梳きますね」

 

そう言って櫛で髪を梳いてくれる。なんだか手慣れている。妹たちにもしていたのかもしれない。薄暗いせいか胸のドキドキが止まらない。いや止まったら死んでしまうかもしれない。もう髪を梳かれる時間が終わる。

 

「どうします?」

 

「脱ぎますからあっちを向いてください」

 

ここで脱がなかったら負けた気がする。

 

「判りました」

 

服を脱ぐと、言われたようにタオルで前を隠しながら振り向いた。

 

「もういいですよ」

 

振り向いた先には全裸のルディが居た。前! 前を隠してください!

 

「じゃぁ、入りましょう!」

 

呑気なルディの声。駄目だ。恥ずかしくて指摘することもできなかった。お風呂(ここ)は向うのフィールド。私がリードされていても仕方ない。そう考えながらお風呂に入り、背中を洗ってもらって湯船につかる。恥ずかしくて肩までしっかり浸かった。髪を纏めもせずにいたため、肩から下の髪がびしょびしょになって湯面に広がってしまったけど構うもんか。遅れて身体を洗い終えたルディが隣に並んだ。近い。少し動いたら彼とくっついてしまう。

 

「どうですか? 前に川で入った時と比べて」

 

冷静に、冷静に。

 

「そ、そうですね。前は大自然の中と言う感じで解放感がありました。こちらは落ちついていて湯加減も最高というか。私は……こちらの方が好きですよ」

 

「良かった」

 

しばしの無言。屋根まで昇って行った湯気が雫となって戻ってくる音がした。

 

「ねぇ、ロキシー」

 

ちょっとルディの声が艶っぽく感じる。ルディがこっちを見ているかも。だけど私は真っ直ぐ前を向いたままだ。

 

「はい」

 

「お風呂を上がったら僕の部屋に来てください」

 

「いつも通り2人で眠るだけですよね? あの、もし、そーいうことをするならゼニスさんたちに聞かれてしまうので……」

 

何言ってるんだ私。期待しているのバレバレじゃないか。顔が紅潮しているのが判る。けれども口から出た言葉は取り返せない。

 

「まぁあの2人はいつもの事なので、他人のことも別に気にしないと思いますけど……でもロキシーが恥ずかしいなら秘策があるのです。大丈夫ですよ」

 

もう声を出すのも恥ずかしい。私はコクリと頷くのがやっとだった。お風呂を出てから髪の毛を丹念に拭く。脱衣所が寒くないのはきっとルディの魔術だろう。彼の魔術は本当に器用だ。

 

「じゃぁまた後で」

 

「はい」

 

ルディは先に脱衣所を出て行った。胸がドキドキして熱に浮かされたようだ。リードとかどうでもいい。2人で溶け合ってしまおう。

自室に脱いだ服を片付けて、パウロさんたちがお風呂に入っている隙にルディの部屋へと向かった。ノックをすると、彼に招き入れられてベッドに2人で座り、そのまましばらく見つめ合う。

 

「ロキシー、あなたが好きです。愛しています」

 

「私もルディを愛しています……」

 

言い終えて目を閉じたら、唇が塞がれて息ができなくなる。背中に手が回って、逃げられない。一瞬身体が硬くなったけど、自然に受け入れて力がゆっくりと抜けた。十分に長い口づけが終わり、そのまま抱きしめ合う。

 

「他の人に聞かれるの、やっぱり恥ずかしい……」

 

甘えた声が勝手に出た。

 

「判っています。こちらへ」

 

抱擁を解かれると、腕を掴まれてベッドから立ち上がる。そして部屋の隅にある1つの石板の上に2人で乗った。一瞬で見ている景色が変わり、薄暗い洞窟のような場所に立っていた。これは転移魔術だと思うのだけど今はそれ以上に頭が回らない。身体がフワフワする。

 

「ここは?」

 

「転移魔法陣を繋げて作った転移ネットワークのノードの1つで、場所はブエナ村から半日程いった森の地下です。だから誰にも声は聞こえないので安心してください」

 

見ている先に衝立(ついたて)に囲まれたベッドが置いてある。周りには灯の精霊が舞っていて僅かな灯りしかない。きっと部屋全体はダンジョンみたいなところだろう。まぁ全体が見えなければちょっと幻想的で良い雰囲気だし、少し怖さもあるけど他の人に声が聞こえるよりは良い。

2人で服を脱いでベッドに入ると優しくて温かくて切ない時間が始まった。彼は私にぴったりだった。今だけかもしれない。けれども今は私のものだ。最初は痛みを感じた。そこからは夢のようだった。1人で満たしていたときにはなかった感覚に貫かれる。首筋から鎖骨あたりに舌を這わせられると下腹部の奥がぎゅっとなる。それいい。好き。ルディもきっと初めてのはずなのにこっちでも彼は天才なのかもしれない。

 

時々、彼が耳元で囁いてくる。

 

「ロキシー、俺だけのものになろう?」

 

バカ……もうなってます。

 

「……はい」

 

漏れ出る言葉はそんな短い言葉だった。私が満足するまで彼は動き続けた。そして、甘い疲れが押し寄せると2人で眠った。お互いの肌の熱を感じながら。その日、ルディがうなされることはなかった。

 

--

 

起こされた気がして意識がボンヤリと覚める。私は朝が弱い。彼が私を持ち上げていた気がした。案外力持ちなんだ。

また寝てしまって、次に覚醒したとき私は自分の部屋のベッドで寝ていた。そっか、ルディは朝練に行ったんだ。私がお寝坊だから隠し部屋においておけなくてここまで運んでくれたんだ。1人で納得すると着替えて朝食を作る手伝いに行った。股からお腹にかけて感じたことのない違和感があるけど、それがものすごく幸せだった。

 

 

--ルーデウス視点--

 

夢に見た未来視の部屋はその日からぱたりと出てこなくなった。

どうにもならない俺の愛を受け止めてくれて、それが嬉しかった。彼女は初めてだっただろうがあれが窮屈じゃなかったし、それほど痛みを覚えなかっただろう。たぶん。俺にとってもこの新しい肉体での行為は新鮮で刺激が強かった。ロキシーは満足してくれただろうか。満足していてくれてたら良いのだが。経験は沢山あるから自信はあるが、人の気持ちは状況や立場で変化するし、それに脆い。

この時を大切にしたい。

ロキシーを幸せにする。

彼女が何をしたいのか相談する必要を感じる。肉体的に繋がったなら結婚かとも思うが、まだ俺は10歳である。両親への説明も上手くしないと拗れるかもしれない。少し考えよう。

それから俺は半月ほど毎日ロキシーと風呂に入ったが行為には及ばず、毎日の日課と研究をしながら、ロキシーのやりたい事、俺がどこまでそれに応えられるか、両親への説明、いつ結婚すべきか、について整理した。

あ、それと初めてのときのシーツは大切に神棚へと封印した。失敬しておけば良かったという反省を活かさねば、また俺はダメになるかもしれない。

 

--

 

「あのロキシー、そんなにジロジロと物欲し気に見ないでくれますか?」

 

「そ、そんな風には見ていません!」

 

2人で並び、泡立てた布で身体を洗っていたが、やっぱり見ていたのか。

 

「本当ですか? 涎がでてますけど」

 

彼女は口元を拭う素振りをしてから、からかわれたことに気付いて頬を膨らませるのが見える。拭ったせいで口元に泡が残りヒゲみたいで可愛らしい。

 

「出てないじゃないですか! それにこんなにおっきくなってますし、本当はルディがしたいと思ってるんじゃないかと思っただけです」

 

「僕はしたいですが……」

 

少し言い淀む。

 

「シルフィやエリスのことが気になるんですか?」

 

「え?違います。ロキシーとの将来の事や両親へどう説明するか考えていただけです」

 

俺が彼女達を忘れていないことを気に病んでいるのだろうか。それはそうか。

 

「わ、私は今のままでも良いんですけど……」

 

そう言うとようやくロキシーの視線が俺の股間から外れて浴場の方へと向いた。俺は重力魔術を使ってロキシーの身体を持ち上げる。

 

「うわわっ、なんですか!?」

 

そのまま彼女の身体を空中で操作して自分の膝から太ももの上に彼女のお尻が乗るように降ろし、彼女の肩の下に右腕を差し入れて重力魔術を解除する。泡まみれのまま。俺は彼女の顔を覗き込んで瞳を見つめる。

 

「なっ、嫌ですっ」

 

彼女の右腕はほぼ平原にある2つの頂点を、左腕は浅い断崖を即座に覆い隠した。そして恥ずかしさが限界に来たのか目を閉じるロキシー。俺は構わず、そのまま語りかける。

 

「本当に今のままで良いのですか? ロキシーがシーローンでやりたかった事とかブエナ村で無事を確認した後にしようとしていたことがあるなら僕はそれを知りたいです」

 

俺はロキシーのお腹を空いた左手でゆっくり撫でながら質問する。いつまでも目を瞑ったまま顔を背けて黙っているロキシー。ならば俺から想いを伝えてしまおう。先に言って、彼女のことを聞いたほうが話し易いかもしれない。

 

「ねぇ、ロキシー聞いて。大事な話があるのです」

 

お腹を触るのを止めた左手で彼女の右手を握る。彼女がゆっくりと目を開き、完全に見つめ合う。

 

「結婚して夫婦になろう」

 

「結婚、します」

 

ロキシーの手の握りがギュッと強くなり、頷いてから同意した。俺はそのまま彼女にキスをした。抱かれたままのロキシーと自分の身体についた石鹸の泡を魔術で作ったお湯で落として、そのままお姫様抱っこで浴場に浸かる。

 

「ロキシーはこれからどうするつもりだったのですか?」

 

彼女を湯船の中で膝の上に載せて、見上げながらもう一度、同じ質問をする。

 

「そうですね。ルディたちの無事を確認したら久しぶりにラノアに行ってジーナス師匠と仲直りでもしようと思っていました。今なら素直に謝ることができる気がしているのです。それからはまた冒険者生活をして、その、旦那さんになる人を探していたと思います」

 

「ロキシーの冒険者生活って夫探しの旅だったのですか?」

 

「そうです。これでも1人って結構、寂しいので」

 

「なら僕と結婚することでその旅は終わりでも良いのですね」

 

「そうですね」

 

ちょっと笑いながら生意気なことを言ったかもしれないけど、ロキシーも笑いながら同意してくれた。しかし先生になりたいわけではないのか。いや、俺には言いづらいだけだったかもしれないので決めつけは良くないな。

 

「少し落ち着いたらラノアにも行きましょう。知り合いに大事な話もありますし、ギゾルフィにもまた会いたいですから」

 

「賢者ギゾルフィと面識があるんですか!?」

 

「お金を稼いでいた時に途中でラノア大学に行ったのでジーナスさんに便宜を図ってもらって彼に会いました。彼とは無詠唱魔術について議論したから論文に僕の名前もあるかもしれませんね」

 

そんな話をして風呂から上がり、夫婦になると誓い合ったこの日、またあの地下室で2人だけの夜を過ごした。

 

--

 

次の日、俺は日課を取り止めてロキシーと2人でベッドでまったりと過ごし、それからじっくり今後のことについて話し合った。今日の夜に両親に対して結婚の報告をする。でも俺がまだ10歳だということでロキシーは2人で住むことには難色を示し、このままこの家で家族とともに2人で住むということになった。3年も旅に出ていたならもっと親孝行が必要というのが彼女の意見だ。随分と自分のことを棚上げした意見だなぁと思ったが、ロキシーの親にも会いに行きましょうねと伝えると相当狼狽えていた。狼狽えるロキシーはレアだし、なかなかコミカルで好きだ。

さらにロキシーが奇妙な条件を示した。

 

「この結婚ですがパウロさん達には対外的には秘密にしてもらいましょう。それに、まだ秘密を守れるかわからない妹さんたちには内緒にしたほうが良いと思います」

 

「どうしてそんなことを?」

 

「今のシルフィさんはあなたが結婚したと知ればどう思うか分かりません。彼女はまだ世間知らずの子供なのでしょう? 今は少し怖がっているとして、自然にルディの気持ちがわかるようになったとき、彼女が自分自身と私についてどう考えるか、それが問題です」

 

俺がシルフィのためにエリスの愛を諦めた流れを聞いたなら、ロキシーが自分にも当てはめることでそういう結論を出した気がする。

 

「でも……」

 

「良いのです、ルディ。私はあなたの心を癒したくてこういう関係になりましたけど、あなたと彼女の心の繋がりを分かってもいます。そうですね。彼女と仲直りするまでは私だけのモノでいてくださいね。それが私の役得ということです」

 

「判りました。だけどロキシー。シルフィと仲直りしても僕はあなたと別れるつもりはありません。だからちゃんとロキシーのご両親にも胸を張って挨拶に行きたいと思います」

 

ロキシーは、ふっと諦めたように笑顔を作った。

 

「……ありがとう。ルディ」

 

ロキシーにはロキシーの考えがあるかもしれない。でも結婚はお互いの人生だ。これまでよりお互いがちょっと我慢するくらいになりたいと思う。

 

--

 

ロキシーの希望が叶うように妹たちが眠りに着いた後、俺とロキシーはパウロとゼニスとリーリャの3人をリビングに呼び出して結婚を報告した。毎日2人で風呂に入り、親密にしていること、俺の復調、それに今朝の朝食時の不在。だいたいの事は大人達にはお見通しだった。まぁそれでも結婚というのは予想の斜め上と顔に書いてある気がする。

 

「それで、この家を出て行くのか?」

 

「いえ。ロキシーは僕が3年旅した話を聞いて、僕と父さまたちの時間ももう少し必要だと言ってくれましたので、お言葉に甘えてしばらくこの家で新婚生活をしながら父さまたちとの時間を過ごしたいと思ってます」

 

「気にすることなんてないんだぞ」

 

「良いんです。パウロさん、私がそうさせたいのです」

 

「……そうか」

 

ロキシーが自分の希望として同じことを言ったのでパウロも納得するしかなかった。

 

「シルフィちゃんのことはどうするの?」

 

結婚を宣言したロキシーの前でするのはデリカシーが無いとも思ったが、ゼニスとリーリャはシルフィを応援していた。そういう質問も出てくるだろう。いや、今だからこそはっきりした俺の気持ちを聞きたいかもしれない。

 

「シルフィはまだ世間知らずの子供です。僕はシルフィも愛していますし、彼女もまだ僕のことを愛しているかもしれない。それでも彼女が僕を失った後の人生をちゃんと生きていけることが確認できるまで彼女との関係をこれ以上前に進めるつもりはありません」

 

「ロキシーさんはそれに納得しているの?」

 

「私は2人の関係も想いも判っていてルディの胸に飛び込みました。だからシルフィさんがもう少し成長して、私とルディの関係と想いを知って、それでも飛び込んでくるなら、それを受け入れる心積もりがあります」

 

「そう……」

 

「奥さま、でも結婚の知らせを聞いたシルフィちゃんのことも私は気掛かりです」

 

「リーリャさん、この結婚のことは対外的には内密にしたいと思っています。ノルンちゃんとアイシャちゃんにも内緒にして欲しいのです」

 

「ルディ。お前、ロキシーにここまで言わせてその上にあぐらかいてんじゃねぇか?」

 

「判っています。父さまの息子のルーデウスはロキシーを幸せにすると誓います」

 

「10歳で結婚……30前でおじぃちゃんにしないでくれよ」

 

「その辺りは節度を持って暮らしていきますのでご安心を」

 

両親への結婚報告は終わり、晴れて俺とロキシーは夫婦になった。いや、まだ半分しか終わってないな。

 

 

 




次回予告
本来変わるはずのない未来を大きく変えれば
反動は計り知れず、張本人は死の淵を彷徨った。
しかし、彼には彼女と結ばれるという別の運命があり、
運命が相互に作用し、彼は死を遠ざけた。
・・・・・・のだろうか。

次回『新婚旅行1』
そして次なるは。
災害がなければ起こるはずだった未来という運命の作用。
・・・・・・かもしれない。
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