無職転生if ―強くてNew Game― 作:green-tea
--- 旅の小さな発見達が何を示すのか、価値ある物にせよ ---
ロアを出立してからロキシーの提案で夜番の時間を均等な3つの区分に分けることにした。
1区分をロキシーとエリスが日替わりで、俺と息子は毎日どこかの区分を担当する。
元冒険者の俺、魔大陸から魔法大学まで冒険者として旅をしたロキシー、3年間の旅をした息子。そこまでは判る。エリス以外は旅慣れている。
なぜこの面子にエリスを入れるのか、俺にはその意図がわからなかった。
いくらギレーヌを剣の指南役に付けていたとしても彼女は良家、四大貴族のお嬢様だ。
「エリス、夜番をやった事がないならルディにやり方を聞いておくんだぞ」
「夜番くらいできるわ」
俺の言いつけにエリスはそう返した。
俺はその応えに、あぁそう言えばと思った。彼女はギレーヌと息子とアルスまでの旅をしたのだ。おそらく俺が息子にフィールドワークをさせたように、きっとギレーヌもエリスに旅の基本を教え込んでくれたのだろう。
俺はそう理解し、それでも若干心配になり、エリスの夜番の初日に彼女の仕事ぶりを陰ながら観察した。
焚火の維持、周囲への警戒。どれも申し分ない。
出来ない前提ではなく、出来るかもしれないと予想して話すべきだったな。
嫌われていないといいが。
ドナーティ領に入るまで息子が2,3日に1度は川辺に露天風呂を作ってくれた。
裸の付き合いをしたのが功を奏したのだろう。娘達と義理の娘達はそれなりに言葉を交わすようになり、まるで姉妹のようだ。
そんなエリスが妹達に自分の冒険譚を話しているのを漏れ聞いて、どうやらギレーヌと迷宮探索をしたということを知った。
冒険の目的が息子の10歳の誕生日プレゼントを買うためだったというのだから健気な話じゃないか。
その時、俺と同じように話をきいたロキシーが「私も誕生日プレゼントを送ろうと思いますが、何が欲しいですか?」と律儀に聞き、息子が耳打ちすると顔を真っ赤にして黙ってしまうというやり取りを目撃した。
そのリアクションと息子の「やってやりましたよ」という誇らしげな表情。何と答えたかはだいたい察しはつく。息子よ、よくやった。
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旅の馬車はドナーティ領のやや北側中央にある町ラロシェルに着いた。
この町はフィットア領とアスラ王領から来た2つの道が合流する場所にある。
それ故に商業的な要衝の地となり、商人組合を筆頭に名だたる商会の支部が門戸を開いている。
町の規模はドナーティ領で最も大きく、賑やかだ。恐らくシャリーアに着くまでに立ち寄る場所の中で最も栄えているだろう。
人が集まれば商売だけでなくトラブルも仕事も増える。そうして冒険者ギルドも設置されたのだ。
そんな冒険者ギルドに俺は情報収集をするべく向かった。
入り口のスイングドアを気持ちよく左手だけで押し開けると、受付近くに座った人相のあまり良くない男たちがこちらを盗み見た。
どこでも余所者の冒険者やルーキーが来れば同じ歓待を受ける。
それにあまり頓着せずに依頼の内容をさらさらと見ていく。
妙なことをすればそれだけで怪しまれ、目立つ。冒険者なら誰でも行うことをするのは肝心だ。
低ランクの依頼はこの町のトラブル対処とお遣い。そして数は少ないが高ランク依頼が数個。高ランク依頼はどれも商隊の護衛任務。思った通りだな。
視界の隅には転移災害の後、行方不明者になった者のリストがそこそこの大きさで張り出されている。またフィットア領での仕事の斡旋を伝えるチラシもある。
依頼の傾向を掴んでから、冒険者特有の陽気さを纏い、先程の人相の悪い男たちの輪に入って行った。
ギースの真似をして情報収集をする。右腕の肘から先を失った俺がやれば中々様になるようで、割とすんなり欲しい情報は手に入った。人相は悪いが気のいい奴らだ。元は剣士で鳴らした男が腕を失って剣士稼業を引退しつつも
手に入れた情報は魔法三大国へと行く道。
道程における補給可能な村の位置、そこまでにかかる日数、順路、魔物の種類など。
それらはロキシーも知っているはずだが、8年以上前の情報となれば色々と変わっている部分もある。
そう思って最新情報を手に入れたわけだ。
だが、これからの旅に必要な情報はあまり芳しいものではなかった。
ラロシェルからシャリーアへ行くためには、まずドナーティ領の領主の住む町アムドへと向かう。ゼピュロス家は北方の守りを万全にするために領内の商業地とは離れたやや北側の場所に住み、大きな練兵場で砦の勤務に耐えられる精強な兵士を育てているらしい。それに伴いアムドには武具の工房や馬を育てる厩舎があるという。そんなアムドまでラロシェルから馬車で3日。
さらにアムドから5日かけた所に北方砦があり、砦を抜けると小さな森を挟んで赤竜の上顎へと辿り着く。
赤竜の上顎を抜けるには登りと下り合わせて10日を要するだろう。
山を越えた先に広がる針葉樹林。どこの国でもない未開の土地を貫く長い道はうねりながらも馬車で40日ほど続く。
40日行った先もまだ森の真っ只中だが、そこで剣の聖地との分かれ道があり、さらに馬車で道なりに東進すること20日、ようやくネリス公国の西端の町エルズミーアに入る。エルズミーアは宿場町なのだとか。
一旦、エルズミーアで補給した後は2つのルートを取ることができる。
公国の大動脈である大通りをそのまま走り、ラノア王国の北からシャリーアへ入るルート。
もう1つは公国をすぐに出てラノア王国の西からシャリーアを目指すルート。
どちらも所要日数は8日と変わらないなら、これからのことを考えて後者のルートが良いだろう。
町がない区間だけでも70数日に及ぶ長距離の旅だ。馬の休養や馬車の故障を考えるとさらに時間をとられてしまう。
以前からこんなに厳しい旅路だったのかというと実は違うらしい。森の中には7年前まで5つの拠点があって、およそ10日ずつ拠点間を旅していけば良かったそうだ。だが森の浸食や魔物の襲撃、盗賊・山賊の跳梁により5つ全てが潰されてしまった。
このままでは交易に支障をきたすんじゃないか? と思える。しかし冒険者たちの話を解釈すると、拠点管理者の横領に嫌気がさしていた商人組合は静観の構えを取ったそうだ。冒険者組合も護衛の依頼料が高価格になると気が付き、見て見ぬ振りを決め込んでいるらしい。
運搬費用は嵩むが賄賂の費用と相殺になるのだろうか。できればアスラ王国と魔法三大国が双方のために拠点の復旧に知恵を出し合って欲しいところではある。しかし対応は後手に回り、7年の間対処されなかった。
加えて今や災害のせいで政情が不安定になっているアスラ中央は国外まで目が届かないだろうし、ゼピュロス家も災害前の
情報を集め終えた俺はカラヴァッジョの健康状態も考慮に入れた旅程を組み立ててから息子とロキシーを交えて内容を議論した。
2人の話によれば北国で雪が降り始めるぎりぎりのタイミングであり、雪が降らなくとも防寒対策はした方が良いらしい。また潰れた拠点は盗賊たちが居抜きで
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アムドへ到着し、宿を取り終えると娘達にせがまれて大きな厩舎へと向かった。
放牧されている馬が何頭も囲いの中で走り、また何頭かは牧草を食べている。
それを囲いの外から見て娘達がはしゃいでいた。カラヴァッジョに乗ったりしているうちに馬が好きになったのかもしれない。
娘達は元気だ。体力がついてきて一日中馬車に乗っても平気になったし、要領がよくなって知らない町に行っても騒いで良い場所かどうかの分別が付くようになった。
これからの厳しい行程を考えると喜ばしいことだ。
だが同時に順応せざるを得ない環境にさらされているからと考えると少しだけ悲しい気持ちになる。まぁそれでも彼女達の夕飯をおいしそうに食べる姿を見れば心は安らいでいく。ドナーティ領が産地のドナ砂糖の素晴らしさについてロキシーから聞き、保存食に砂糖まみれのパンを要求するようになったのもまぁ可愛いものだ。
アムドで一泊した俺はカラヴァッジョの朝の世話を終えてから鍛錬をしようと息子を探した。
違う所でやっても良いが、仲が悪いわけでもなく
見つからないその時は別々のところですれば良いだろう。細かいことを気にする関係ではないと信じよう。
そんな風に考えながら歩き、宿の裏にあった空き地で鍛錬をしている息子とエリスを見つけて合流する。
挨拶をすべきか迷ったが、2人共真剣に取り込んでいるのを見て暫くは声を掛けなかった。
息子が呪いをかけようとする怪しい占い師のような動きを始めると、エリスがそれを怪訝な表情で見ていた。俺も気持ちは同じだが、息子は俺達に必要な技術であれば説明するだろうし、説明しないならそれにも理由があるのだろう。だからエリスのように気にしてしまってはエリス本人の訓練が疎かになってしまう。それは息子の意図していることではない。そう考えて俺はエリスに声をかけてみた。声をかけたのは夜番のことを言いつけて以来だ。
「なぁエリス。良かったら手合せしないか?」
高圧的にならないように陽気な声音を意識して問いかけると、彼女が少し驚いた様子を見せる。
息子の第二婦人だというなら義理の娘なわけだし問題なかろう。
そういえば息子はエリスとも結婚したのだろうか? そういう報告は受けてないが……ルディのヤツ忘れてるんじゃないだろうな?
心の中で確かめた方がいいんじゃねぇかという気持ちが沸き上がり、それをぐっと抑える。
息子の恋愛関係に口をだして碌な目にあったことがない。
「ええ、是非に」
俺がつまらないことで葛藤している間に、そう
娘達と話しているときは奔放な面を見せていたし、夜番の話をしたときも気の強そうな返答だったが、今回は落ち着いている。
強者の貫禄。俺もギレーヌから剣を習った男だ。ギレーヌの弟子と打ち合うのは面白いことになるだろう。
俺は自然と顔がにやけていくのを感じた。
エリスはすぐに上段に構えた。俺も対峙したまま遅れて斜に構える。
そこからひとまず、剣神流の動きで攻めようとして、間合いを詰めるとほぼ同時に相手もこちらに向かって来た。
一気に狭まる間合い。
俺が思っているよりほんの少し手前の瞬間。
予想を遥かに超える鋭い打ち下ろしが目の前を過ぎる。
間合いを測り損ねた。ほんの少しだが相手の動きが俺の予想を上回っている。
動きと一刀の鋭さ。どちらも俺が事前に考えていた以上のモノだ。
これは彼女の評価を引き上げなければやられてしまうだろう。
今の攻撃が当たらなかったのも、もしかしたら俺自身の身体の不調によるものが原因で、たまたま当たらなかったという可能性すらある。もし両腕が万全の身体能力であったなら、むしろ初撃に対応せねばならなかったかもしれない。
そして一気に攻め切られれば、手順を間違えて負けていたかもしれない。
運が良いのか悪いのか、右肘より先がないだけでどうにもバランスが取り難く、機敏さを犠牲にしている面がある。
分っていたことだが、その犠牲はこういうギリギリの局面で厳しさをみせる。
彼女は剣神流の剣士として万全だった時の俺よりも高い位置にいる。
ギレーヌ程ではないが、ギレーヌを相手に打ち合うときのような覚悟が必要だ。
俺とギレーヌの間ならエリスは剣聖レベルということになるだろう。
彼女の打ち込みに驚いた風を装いながら右に身体を捌き、剣先をやや下げ相手の追撃に備える。
だが追撃は来なかった。
むしろ撃ち込まずに間合いを取り直したのを見て、彼女は少し首をかしげていた。
「小父様ってルディの師匠よね?」
こんな言葉が出てくるくらいだ。
「あぁ、一応そうなってる」
「本気でやって欲しいのだけど?」
何よりもキツイ一言が飛んで来る。
「あいつは俺よりもずっと強い。
それに剣神流だけならエリスも俺より上だな。
でもそれだけじゃ勝てねぇってことを教えてやるよ」
事実を告げてやるだけのつもりだったが、つい本音が出た。
「そう」
エリスが獰猛な笑みを浮かべたのが見える。
中段に構えたエリスに、相対するように俺も中段やや左に構える。
本来は上段で構えたいところだが、片腕ではまだバランスが取り難いはずだ。
今度も先手はエリス。
その中段からの剣線に水神流を使って対処するべく、木剣を交差させる。
剣を重く強い衝撃が襲う。
片手だけでは指が痺れる気がした。
明らかに闘気を纏った剣だろう。こちらも闘気を纏わせていなければ剣がへし折れていた。
それを身体の捌きと手首の返し、膝のクッションを使って受け止め、腰の回転で受け流す。
さらに剣を伝って彼女の手首を押し返すように動かしてやる。
手応えはあった。
水神流奥義・流によって彼女自身の剣が彼女の意に反し、身体に抵抗したように感じたはずだ。
だからエリスが剣を手放すか、そのまま自分の剣によって投げ飛ばされていくはずだった。
だが、彼女は苦も無く剣を持つ手首の柔軟さでそれを受け止めた。
剣神流しか教わっていないはずの彼女が流に対して、予想を上回る対処をしてみせる。
否、フィリップだったかギレーヌだったかどちらかが言っていたはずだ。アスラの水神流宗家の道場に行ったと。
息子の同伴者として行ったならば、息子が何かしている間、この娘がぼんやりと過ごしたとは考えにくい。
つまり水神流の宗家に通う程の剣士、おそらくは水聖以上の剣士との対戦経験があるということだ。
どこまで対処できるか。
彼女の剣が俺の剣を打ち払う。
逆らわず、その力を利用して身体を動かしてやることで、払いから繋がる剣に遅れずに対処する。
流が有効でない。ならばとここ数年で体得した水聖剣技・断を使って相手の剣の勢いを寸断し、弱った剣を突き返す。
流石に断返しを使われるまでには及んでいない。ただ使われたことはあるようで戸惑いを表すようなことはなかった。
さらに追撃の横薙ぎを無音の太刀で繰り出す。
やや力任せの無音の太刀をエリスが躱しきれずに剣で受け、彼女の剣が流れるのに任せて間合いが離れる。
漸く一息。
「思ったよりやるなぁ。
打ち合っていてここまで楽しめる相手はそう居ない」
「私はちょっとがっかりね。
ルディの師匠がこの程度なのかしら?」
煽り方まで水神流で学んできたか。それとも天賦の才能か。なかなかに言う。
「まだまだ本気を見せちゃいねぇだけだ」
「あらそうなの」
また少しだけ言葉が心にぐさりと刺さる。
向うで息子がほくそ笑んでいるのが見えなければ平静に戻れなかったかもしれない。
判ったことは剣神流としては相手が強く、水神流の対戦経験を持っていて俺程度の水神流の技量では決定打にならない。
向うは万全でこちらは片腕しか使えず、身体性能は五分。
戦闘センスには自信があるつもりだが、この娘も筋は良く、大きなアドバンテージにはならないだろう。
確実に優っているのはスタイルの多彩さだろう。
それならやるべきことは1つだ。
今度は完全に先手をとらせずに先読みでタイミングを読み切ってこちらからも打ち込む。
最も良い体勢からの渾身の一撃。
しかし、これは予測の範囲内だったらしく華麗に躱されてしまった。
俺は右側から打ち込めない分、剣の軌道に制限がある。仕方のないことだ。
彼女が躱してから行った右下からの切り上げは予測の範囲内。一瞬ギレーヌのように見える。あいつが得意とするパターンのコピーか。
左足を軸に捌きつつ、左手の木剣の突き上げで合わせ、開いた体を引き戻す。
見たことのあるパターンのおかげで身体が自然と動いていく。
そこから突き上げた木剣を自分の左首元と肩を使って固定したまましゃがみ込み、外側から内側への足払いをしかける。
北神流剣技・砂払い。
不本意ではあるものの全力というなら北神流を使うのも致し方なし。
足払いを躱されるも同時に削った地面から砂が巻き上がった。
不鮮明な視界の中から剣が繰り出される。
おっと、あぶない。勘だけで繰り出された剣が目前を通り過ぎた。
逆算して大まかなエリスとの間合いを測り直すと、砂埃の中で肩の木剣を口に咥え直して、腕を前足に3本の足で地面を這う。
身体の一部が欠損していても戦える技まであるのが北神流であり、これは
昔訓練していたときは剣を手に持ったままだったが、無ければ口に咥えるというのを聞いたことがある。四足の型のときと同じようにすれば良い。
それでも音か気配を頼りにされて繰り出される剣が頭上を掠める。
頭上を木剣が過ぎたのを追いかけるように立ち上がり、立ち上がりながら持ち直した木剣で相手の木剣めがけて袈裟切りをしかけ、至近距離でぶつけ合う。
体重を乗せ切った俺の剣を払いのけられず剣に集中したために脇ががら空きになっている。
そこを右腕の肘の外側部分で殴りつけて吹き飛ばした。
大勢を崩したエリスの目前へと俺は剣を突きだした。
それを見てエリスは戦意を喪失。構えを解くのが見えた。
俺も構えを解く。
「こんなものだな」
少し顔を緩めて俺は告げた。
「次はもっと良い勝負をするわ」
「そうかもな」
そう言ってエリスに俺も言葉を返すと、彼女は礼をしてから息子とも話さず少し離れた場所で剣を振り始めている。
俺も折角だからエリスに負けぬよう鍛錬メニューをいじってみよう。エリスを見てそんな風に思えた。
俺があの娘と同じくらいの頃は王竜王国で北神流の門を叩いた頃だった。四足の型や三足獣の舞の鍛錬を格好の悪い物と感じ、いつも不満を募らせていたし、木剣の打ち合いで砂埃や空手による直接打撃を使うのは卑怯だと思っていた。そもそも速く走れもしないのに四つん這いになって動くことに何の意味があるのかという疑問が拭えなかった。
だから文句を言わないエリスは何か冷めている、もしくは大人びているように感じられる。まだ13か4そこらのはずなのに20歳前後の落ち着きがある。水神流の剣士と言われれば納得が行くところもあるが、剣聖だといわれたら何かの間違いだろうと言いたくなる。
俺も一時期、水神流の道場に通っていた。だから水神流の道場に通ったからといって大人びるとは思えない。
俺の元弟子2人も大人びている。それは魔法剣士の魔術師の部分、論理的な思考パターンから来るのだろうと思っていた。そこから息子が幼くして苦労したからと思い直した。シルフィだって田舎に住んでいる割には忙しくしていた。家の手伝いだけでなく、息子と遊びに行った先で2年間、魔術を訓練して全魔術上級になったりしている。
なら、このエリスもそれなりの苦労をしてきたということだろうか?
苦労の原因が家の息子と出会ったからだとすれば何とも申し訳ない気持ちになる。
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旅は続く、俺はその中の短い余暇を潰して訓練に励んだ。
片腕が無い身での戦闘をこなすための慣熟訓練。
剣聖との打ち合いで水神流を鍛える訓練。
より早く、より強く、より正確に、打ち込む訓練。
相手の早さに対応する訓練。
エリスに北神流を使わずに対処できるだけの力を得るのが目先の目標だ。
★副題は小説「ラグナロク(RAGNAROK)」から引用。