皆さまも体調管理にはお気を付けください。
あぁ、ラミアのヒンヤリしたうろこを抱き枕にしたい・・・
「あ~う~・・・暑い~・・・」
リビングで全身を伸ばすようにぐったりしていたラーニャ。そんな彼女に向けて風を送り続ける扇風機さんの並々ならぬ努力もむなしく彼女は愚痴をこぼした。
「まぁ・・・夏だしね。」
リビングに隣接したキッチンからリオが苦笑いを浮かべながら昼食の片づけをしていた。
時刻はお昼を少し回ったところ。リオ特性の冷やし中華で少し涼んでいたのだが、食事が終わり消化のために身動きがとれず床で寝転がっているとどうしても夏の日差しが彼女の体力を奪ってしまう。
「リオく~ん。またプール入りましょうよ~。」
「・・・・・この間の事忘れたの?」
「忘れてませんけど~・・・」
この間の、というのは以前に二人で浴槽プールに入った時のこと、ラーニャがリオの一言に撃沈し浴槽を真っ赤に染めると言う珍事が発生し、その後の浴槽掃除や、貧血のラーニャの介抱とリオが1人でこなした。
「1人で入る分には別にいいよ。」
「リオ君がひどいです~。」
そっけない態度と心に刺さる一言がぐさりと来たラーニャ。暑さにだらけながら涙を流している。扇風機からの優しい風だけが彼女の心の傷をいやす。
はずもなく。
「うぅ~~・・・」
ふてくされるように寝返りを打つラーニャ。
そこに洗い物を終えたリオがリビングにやってきた。
「うわ、なんか凄いことになってる。」
「半分以上リオ君のせいです~。」
「はぁ・・・・あ、そうだ。」
リオに背を向けながら頬を膨らませるラーニャにリオもため息をついた。しかし、何かをひらめいたように手を打つと、キッチンへと戻っていってしまう。
「・・・・・・?」
ラーニャが不思議そうにそちらに目を向けると、リオは冷蔵庫の冷凍室からあるものを取り出してそれをタオルにくるんだ。そのままそれをこちらへと持ってくる。
「はい。これを使ったら気持ちいいと思うよ?」
「ん~~?・・・・わぁ!冷たくて気持ちいいです~!!」
ラーニャがそれをリオから受け取ると同時に今までの不機嫌な表情が一変。一気に顔をほころばせた。
今リオが持ってきたのは氷枕。風邪のときとかにまくら代わりに使うヒンヤリしたまくらだ。そのまま地肌に当てるとまずいのでタオルにくるんで使用していた。
「それがあるだけでもだいぶ違うよね。」
「はい~。これは便利ですね~。」
嬉しそうに氷枕を抱きしめるラーニャ。機嫌が直ったのを見てリオも顔をほころばせた。
そのままラーニャの隣に腰を下ろすと、ポケットから小さめの本を取り出して読書を始めた。
二人の間にゆったりとした時間が流れていく。聞こえるのは扇風機が風を運ぶ音と、リオがページをめくる音だけ。
ラーニャはそれが心地よく、ひんやりとした氷枕を抱き締めなおしこのまま寝てしまおうと考え目をつむって・・・・・
「・・・・・・・」
眠りに入ることができなかった。氷枕があるので暑くて寝れないわけではない。扇風機の音がうるさいわけでもないし、ましてリオの気配が邪魔しているわけでもない。
「・・・・・・・」
何度か寝返りを打ってみても変わりはなかった。
{なんでしょう・・・・寝れません・・・}
寝たいのに寝れないことにイラつきもう自分の部屋でベットにでも潜ってやろうかという時。
「・・・・さっきから何やってるのさ。」
「・・・・・ん?」
リオが苦笑い・・・というか悲しいものを見るようなまなざしでこちらを見ていた。
「ちょ!なんでそんな目で見るんですか!」
「え?いやどんな目の事言ってるのさ。」
なんとこの男さっきのまなざしは無意識だという。なんだかリオの隠れた本心が見えてしまった気がしてラーニャは一層心に傷を負った気がした。
「・・・・寝ようと思ったんですけど・・・寝れなくて・・・」
「寝ずらいのかな?扇風機の音うるさい?」
そう言いながら扇風機の送風を弱めてくれるリオ。そんな優しさに少し癒されながらラーニャは再び目を閉じた。
「・・・・・やっぱり寝れないです。」
「う~ん、朝もいつも通りの時間だったし、寝すぎて寝れないってことではないと思うんだけど・・・」
「まぁ、大丈夫ですよ~。食休めしてるだけですから~」
「そう・・・まぁ、ラーニャがそう言うなら。」
そう言って少し心配そうな表情をするリオ。それでも、ラーニャが微笑むと、すぐに納得したようで読書へ戻る。
問題はやはりラーニャの方だ。
{と言ってはみたものの・・やっぱり眠りたい気がするんですよね~。}
色々と考えてみるラーニャ。
{扇風機の音も弱くなったのに・・・氷枕も抱いて、暑さもしのげてるのに・・・ん?}
と、そこでラーニャは自分が抱きしめた氷枕に視線を下とす。
タオルにくるまれたそれは相変わらず冷気を伝えてきており、とても心地いい。
しかし、
{・・・もしかしたら・・・}
ラーニャはそっと氷枕を頭上に置きのそりと起き上がりつつ・・・
「ん?ラーニャ、もうお休みは終わ・・・ってぇぇぇぇ!!?」
読書をしていたリオの体を抱きしめて再び横になった。驚いて抵抗するリオを尻尾を巻きつけて動けないようにする。
リオの意思を尊重していないところ以外は朝のシーンと全く同じ姿勢。
「ん~~♪成程です~。」
「ちょ、ちょっとラーニャどうしたのさ。」
突然の事に顔を紅くしながらリオは顔を上げてラーニャを見る。
ラーニャはというと素晴らしい笑顔でこちらを見下ろしていた。
「リオ君一緒に寝ましょう。」
「さっき、寝れないって言ってたばっかじゃない。」
「そうですね~。でもこれなら気持ちよく寝れそうです~。」
そう言いながらリオの頭を自分の胸へ抱き寄せるラーニャ。体全体。尻尾の先からこの胸に至るまで彼の体温を感じることができた。
「こんなにひっついたら暑いでしょ!」
「いいえ~、暑くないです。これは、温かいって言うんですよ~。」
夏の日差しも気にならない。ラーニャの腕の中に彼がいる。それが何よりも安心できる要因。
そんなラーニャの素直な感想にリオは顔を紅くして何も言えなくなってしまった。
そんな彼の反応が嬉しいのか、ラーニャはリオの頭を撫でながら頬を緩める。
「ふふふ、さぁ、一緒にお昼寝しましょう~。」
「・・・わかったよ。」
観念したリオが朝と同じようにラーニャの腰に手を回し抱き寄せる。それもラーニャの気持ちを落ち着かせてくれた。
先ほどまでの寝づらさが嘘のように、今度は自然と瞼が落ちてくる。
「リオ君?」
「なに?」
「落ち着きますね~。」
「・・・・・そうだね。」
「これなら、リオ君も・・・気持ちよ・・く、寝れそう、です・・・か?」
睡魔がすぐそこまで来ているのだろう。落ちてくる瞼と戦いながら話すラーニャに可愛さを覚えたリオは、素直に自分の気持ちを表に出すことができた。
「・・・うん・・・・・さ、ラーニャ無理しないで、そのまま寝ていいよ。」
「はい~・・・・・・・・・・・リオくん~?」
「今度は何?」
ラーニャの眠気を覚まさせない様に優しく答えるリオ。
「今日から~・・夜も、一緒に~・・・」
「え?」
言葉の意味が理解できず、慌ててラーニャを見上げると。
彼女は睡魔に負けて心地よさそうに寝息を立てていた。「ラーニャらしい」なんて考えながら、最後に彼女が言っていた言葉を思い出して・・・
「・・・ふふ、それもいいかもね。」
リオはラーニャの体に寄り添うように抱きしめ直し、自らも目を閉じた。
甘々な生活を送っているお二人でした。
完全にカトレアさんのお話とは正反対な感じになっている。カトレアさんすいません・・・
やっぱりラミアさんの愛情表現では「巻きつき」が一番しっくりくるような気がします。体を密着させるわけですし。
自然界の蛇達は獲物を絞め殺すためですが、上半身人間のラミアさんはやっぱり好きな人にはこうして気持ちを表に出してくれるような勝手な想像です^^
さて、ここまで読んでくださりありがとうございました。