「というわけで、今回神に奉げる供物に選ばれました。リオです。この村のために神様に会って来ようと思います。」
自分が置かれている立場を話理解しているのか、リオは軽々とした言葉でそう言い放ち村長の隣で村人たちに頭を下げた。
「わしらは今日この後神が住まうあの山に登り、リオを奉げてくるつもりじゃ。皆はどうかここに残り神に祈りをささげてほしい・・・。ではリオ。参ろうかの。」
「はい。」
それだけの会話を済ませるとリオは再び神輿の上に腰をおろし静かに顔を伏せた。男4人がかりで掲げられたそれはゆったりとした足取りで広場から出ていく。
「―――――っ!!」
周りの村人たちがリオに手を合わせている姿が目に入り、サヤは我に返った。リオが生贄になろうと言う時に誰も否定の声を上げない。拒否しようとしない。それどころかそれに縋り生贄としてリオを奉げることに賛同してしまっている。
「リオっ!!」
気づけばサヤは走り出していた。人混みをかき分けるように身をねじ込みながら離れ始める神輿を必死に追いかける。
やっとの思いで広場の人ごみからその身を抜け出せば村長たちは参道の入り口をくぐったところ。まだ間に合う距離だ。
そこからサヤは自らの足に活をいれ再び走り出す。
「リオっ!!」
「っ!!」
自分の名前を呼ばれて体を震わせるリオ。気遣いのつもりだろうか神輿を担いだ男達の足も止まってしまった。余計になことをしてくれる。とリオは思った。
しかしこのままではどうしようもないと、呼ばれるがまま、聞きなれた声の方へと振り返ると、予想通りそこには息を切らしながらこちらを睨んでくる幼馴染がいた。
「アンタ・・・何やってんのよ・・・」
あぁ、これは怒っている。今までにないくらい怒っている。とリオは冷静に考えていた。今までサヤを怒らせてしまったことはたくさんある。でもこんな状態のサヤは見たことがない。
普段なら震えて冷や汗ダラダラになっているであろう状況だが、今は不思議とサヤに恐怖を感じなかった。
「おはよう。サヤ。」
いつも通り、彼女が家を訪れたときのように笑顔で挨拶をする。それを見てサヤは再び声を荒げた。
「アンタは!!自分が何やってるのかわかってんの!!?」
「・・・うん。僕は神様に会いに行くんだ。凄いよね、こんな機会めったにないよ。いや~長生きはしてみるもんだ。」
いつものリオらしくない軽口。それはサヤの怒りを上げることにしかならないと知っておきながら、リオはその口を閉じることをしなかった。
リオが口を開くたびにサヤは少しずつ顔を伏せていく。
「村長からこのことを聞いた時は驚いたけど、これって凄い名誉なことだよね?僕がこの村を救うんだ。ひょっとしたら銅像とか記念碑とか建っちゃうかも?うわ、なんか緊張してきた。」
「・・・・まり・・・な・・さい。」
「神様ってどんな格好してるんだろうね?やっぱり人間と同じ感じかな・・・個人的にはやっぱり背中に羽がはえてて。頭の上に輪っかがあると思うんだよね。で、なんかこう・・・白い布を体に巻きつけてる感じ?」
「黙りなさい・・・・」
「うん。こうなると早いところあって答え合わせがしたいね。サヤは神様どんな姿してると思う?」
「黙りなさいって言ってんのよ!!!」
広場にいる皆にも聞こえるだろう声でサヤが吠えた。それにビビって神輿が少し揺れたのをリオは感じたが、それでも目の前の幼馴染から目を話さず静かに見下ろす。
「アンタが・・・どうしてそこまでしなくちゃいけないのよ。所詮は神頼みでしょ?確証はないんでしょ?そんなことにアンタが犠牲になる必要ないじゃない・・・」
握りしめた拳が震えている。伏せた顔から何かが光って落ちるのが見える。そんなサヤに自分の決心が揺らぎそうになりながら、リオは踏みとどまっていた。
「成功率なんてどうでもいいんだよ。神に願い、神に生贄をささげる。この行為によって皆に生まれる心の余裕が今回の目的。そうですよね村長?」
「・・・・・」
その質問に村長は答えない。それは肯定するも同じであった。
「実際神様がいるなんてわからない。だけど、神を作るのはきっと人々の信仰だと思う。だからこうして生贄を奉げて村のみんな全員に神の存在を認識させる。それで統率を行いやすくする。」
「それならなおさら・・・生贄なんていらないじゃない・・・!!」
サヤの言葉にリオは首を横に振った。
「うぅん。これは必要なこと、村のみんなが後戻りできないようにするための保険なんだよ。」
リオの言いたいことはサヤには理解できなかった。
つまり、ただ単純に神に祈り、神を進行させるだけでは、もしも雨が降らなかった場合神の存在を信じない者が現れてしまう。当然それを発案した村長にも反論するものが出てくるだろう。
しかし、先に生贄という形で犠牲者を出してしまえば、村人たちは神に縋り続けるしかなくなる。信仰を続けなければリオの命が無駄であったと認めてしまうものだから。
人1人を無駄に殺してしまったという罪悪感を感じたくないがために彼らは必死に神に縋り続ける。
全員が同じ方向を向いていれば御しやすい。それが今回の狙い。
「だったら!なんでアンタなのよ!!それなら別にリオが死ぬことないじゃない!別の人でも―――!!」
「一番都合がよかったんだ。両親も昔死んでしまって家族もいない。体が弱いからこの先短い命を、人柱という意味のある死で迎えられる。僕が選ばれ、そして納得するのには十分な理由だよ。」
「だからって―――――!!」
「ごめんね。もう決めちゃったことだから。」
「リオっ!!」
「サヤに1つだけお願い。」
「嫌よ!そんなの聞きたくな―――――!!?」
耳をふさごうとした瞬間、サヤは首筋に衝撃を感じ、目の前が少しずつ暗くなっていく。地面に倒れないのは誰かが支えているからだろうか。
消えかかったリオの顔に涙をこらえきれずにいると、彼は少し震えた声でこう言った。
「僕の、こと・・・忘れないでっ・・・」
「リ・・オォ・・・・!!」
{あぁ、やっぱりアンタはバカだわ・・・最後の最後でそんな声聞いたら、なおさら納得なんてできるわけないじゃないの・・・}
消え入るようにリオの名前を呼びながら、サヤの意識は暗闇へと落ちて行った。
「すまんのぉ・・・お主にまで手間をかけた。」
「いいえ、これ以上はこいつも・・・我慢できなかったでしょうし・・・」
そう言って気を失ったサヤの体を支えるのは、あろうことか彼女の父親だった。
「・・・・・サヤ。」
父親の腕の中で目を閉じた少女を見て自分も涙をこらえ切れなくなってくる。そんなリオを見てサヤの父親は拳を震わせた。
「悪いな・・・こんなだらしない大人で・・・子供1人守れない大人で・・・」
「いえ、貴方はサヤのお父さん何ですから・・・サヤを護ってあげてください・・・」
「さて、だいぶ遅れてしまったの。急ぐぞい」
それに合わせて神輿が再び動き出す。背中にサヤの父の視線を感じなら。
「ごめんね・・・本当にごめん・・・」
下にいる男たちにも聞こえないくらい小さな声で・・・リオは肩を震わせながらつぶやいた。
山を登り始めて一時間以上。やっと目的の場所に着いたらしい。そこに見えるのはまるで怪物が大口開けているかのような洞窟。昼間だとお言うのに中に光はなく入りこめばすぐに自分の腕ですら見えなくなるだろう暗闇が広がっていた。
「さて、わしらが来れるのはここまでじゃ。後は主に任せるぞ。」
「はい。」
小さく返事をして神輿を下りると、村長からランタンが手渡される。これで洞窟の中に入れということなのか・・・心細いことこの上ないが、そうしなければいけないらしい。
ランタンに日を灯し、洞窟の中へと入っていくリオ。後ろを振り返ればまだ明りは見える。それでも
戻ることが許されない。
一歩進むごとに恐怖を感じながらゆっくりと前へと進んでいく。
やがて入り口の光が届かなくなると、そこは本当に闇色一色になっていた。手元にあるランタンの明りが弱弱しく足元を照らしている。
どれくらい歩いただろうか、光も届かなくて時間も測れない闇の中を進み続けた。いまだに行き止まりなんて見えない、もしかしたら出口がほかにあるかもなんて淡い期待を持っていたのだがそれも結局見つからないまま。
「―――えっ!?」
と、急にランタンの光が消えてしまった。どうやら油が切れてしまったらしい。そこまで時間がたっていたとは知らず、急に目の前が真っ暗になってしまい慌てるリオ。不安定な足元に注意しながらとりあえず壁に手を突こうと右に手を伸ばしながら横に移動すると。
「――――っ!!?」
足元にあったはずの感触が消えた。今までたっていたごつごつとした感触はどこかに消え失せ、何もない空間を足が泳ぐ。
{あっ、これは死んだな・・・}
悠長にそんなことを考えながら・・・リオの体は重力に逆らわず落下を始めた。悲鳴を上げようと思った頃には先に意識が消えてしまっていた・・・
「ん・・・つぅ!!」
頬に当たるひんやりとした感触に目を開けると、目の前に光が見えた。急いで体を起こそうとして体に激痛が走る。
どうやら洞窟内を転がるように落ちたようで白い服は所々が破け、汚れてしまっている。破けた個所から覗く肌には少し赤が見えた。
しかし、それよりもまずは目先の光、出口が優先。とばかりに顔を上げると。
「・・・・そんな・・・」
そこにあったのは大きな穴が開いた天井。その高さは軽く30Mほどはありそうな天井の多穴から光が差し込んでいる。周りを見渡せばドームのような形になっており。出口らしいところはない。
後ろを振り返って見上げれば自分が落ちてきたであろう穴が割と高いところで口をあけている。
「行き止まり・・・か・・・」
衝撃的な事実にため息をつくリオ。ここまで来て出ることもままならない洞窟の中。光は見えても登りきれない外の世界。
生をあきらめたリオはゆっくりとその場に横になった。
{これで・・・良いんだよね。僕は・・・死ななきゃいけなかったんだし・・・・}
ゆっくりと目を閉じるリオ。しかしその耳に何かが聞こえる。
「・・・?」
洞窟の中では聞こえることのないはずの・・・・何かが羽ばたく音?
昆虫のような羽音ではなく、大きく羽ばたくこの音は確かに上から聞こえる。リオはゆっくりと目を開けると、天井にあいた大穴に目を向ける。そこで信じられないものを見た。
大きく羽ばたくのは青い1対の翼、銀色にも見える髪をたなびかせながら太陽の光を背にゆっくりとこちらに降りてくるその姿はまるで神話の世界にも出てきそうなほど美しい。
体の要所を覆うようにまとわれたサファイアのように輝く鱗。額から伸びる角は緩やかに天に向かっている。
見惚れて声も出せずにいるリオだが、呟くように口から言葉が漏れた。
「・・・ドラゴン・・・?」
存在さえも知られていない伝説の生物がゆっくりとリオの前へと舞い降りた。
今回ようやくメインヒロインさん登場・・・
え?これだけ・・・?(゜Д゜;;)
これから、これからなのです!
というわけで、今回からドラゴン娘ちゃんのお話になります。前置きが長すぎてこれは何とも重い話になりそうな予感が今からヒシヒシとしております。
とりあえずリオ君の現状立ち位置はこんな感じでしょうかね。ここから物語がどう動いていくのか。はたして普通にイチャイチャ出来るのか・・・
なんだか小説タイトル詐欺なきがしてきました・・・(・ω・`)
それではここまで読んでくださいありがとうございます。一言やアドバイス。お待ちしております(^^の)