人外娘との生活   作:ハヤテ_s.t

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今回は少しシリアス風にしてみました。

題材が「生贄」なのでこうなってしまうのは仕方ないのですが。ここからもシリアスを織り交ぜていく計画なので・・・(^w^;)




もしもやり直せるのならどうする?

「ん~・・・」

 

「うぁ?どうしたんだよ、急に唸りだして。」

 

二人が過ごす洞窟の中、只今絶賛食事中だったらしく、リオの手にはこんがり焼かれたお肉が握られている。以前は焼いた熱で危ないということでサフィールに持ってもらっていたが、最近は盛から大きめの葉っぱを持ってきてそれを鍋つかみのようにして肉を食べている。

 

そうして肉にかじりついていたリオが顔をしかめながら何やら唸っていた。

 

「なんというか・・・さすがに飽きてきた・・・というか。」

 

「飽きる?」

 

そう、リオがここに来てからというもの、食事は毎回森で捕まえてきた獣のみ、つまりは肉しか食べていないのだ。

 

「他にも食べない?キノコとか、山菜とか・・・食べられるものは他にもあるでしょ?」

 

「そんなこと言われてもよ、アタシ肉しか食わねぇからなぁ・・・」

 

「全然食べられないの?」

 

「いや、そう言うわけじゃなくて、肉しか食べてないからキノコとか山・・・菜だっけ?どれが食べられるとかわからねぇんだよ。」

 

リオがここに来る前からずっと動物を狩って肉しか食べていなかったということだろう。食べられるものが分からない。キノコも全部同じに見えるし、山菜だってその辺の草と変わらない。そう見えてしまうのだ。

 

「あー・・・・」

 

そう言われればリオもそれほど目利きがきくと言うわけではない。村にいた時はサヤの家から貰いものをして生活するのが多かったし、自分で採りに行ったことがないので、どれが危険なものかなんて見わけが付かない。

 

しかし、それを言われたからといって、このままずっと焼いた肉のみで生活するのもつらい・・・

 

せめて味を変えたい・・・

 

「あ、それなら・・・ちょっと手伝ってもらっていいかな?」

 

「ぅん?別に良いけどよ。」

 

あまり気乗りはしない。むしろこんなことはしない方がいいのだろう。

 

{でも・・・このままじゃどうせお肉だけなわけだし・・・}

 

 

 

 

 

そんな会話をしてから数時間後、外はすっかり日が落ちて暗くなってしまっている。

 

そんな空を、青い影が飛行いていいた。

 

「なにもこんな時間に行かなくてもいいんじゃねぇか?」

 

「いや、皆に見られるわけにはいかないんだ。色々と事情がね・・・」

 

そう、サフィール達は今、リオのいた村に向かっていた。日が落ちてから行動を始めたのは村のみんなにリオの姿を見られないため。

 

生贄で山の神にささげられたリオが生きていると知られてしまっては村のみんなに申し訳が立たない。

 

いや、それだけならいいが、下手をすればリオ自身今度は命を狙われるかもしれない。

 

だから夜に行動を起こしたのだ。

 

「つっても、こんなに暗くちゃわからねぇだろ。」

 

「大丈夫、明るいうちに大体の方角は分かったし、村に近づけば入口に松明が付いてるはず・・・・ほら。」

 

そう言われてリオが指さす方を見ると、確かに2つの明り。その近くには見張りの兵だろうか、1人の人間が立っていた。

 

「僕の家はちょうど反対側なんだ。村の端っこなんだけどね。」

 

そう言いながらリオは悲しそうに笑った。久々に見る村。その全景を頭の中で思い浮かべながら、サフィールに位置を伝え。ようやく一軒の家の前に降り立った。

 

「ここがお前の家か?」

 

「うん。」

 

そう言いながらゆっくりと、扉をあける。少しだけ重いそれを開けると、当然のごとく家の中に明りはなく、月明かりでようやく家の中がうっすらと見える程度。

 

「綺麗にしてるじゃねぇか。」

 

後ろからついてくるサフィールがそんなことを言う。

 

「うん。きれいすぎるくらいだ。」

 

そう。リオがこの家を出てから一ヶ月近く。あまりにこの家はきれいすぎる。まるで今でも誰かが掃除をしているかのように、人が生活している形跡がある。

 

そんなことをしてくれる人物・・・リオには1人しか思い浮かばなかった。

 

「・・・・・サヤ・・・」

 

自分の幼馴染で・・・あの日、泣かせてしまった子。

 

最後に見たのは自分が山に登るその直前。そのかわいらしい顔を怒りと悲しみに染めがらな泣きじゃくる彼女に、リオは心が締め付けられる思いだった。

 

「おい・・・大丈夫か?」

 

「・・・サフィール。」

 

悲しそうな顔で俯くリオ。それを見たサフィールも悲しそうに、彼の名前を呼んだ。

 

「大丈夫だよ。さ、今のうちにもって行こうか、フライパンと・・・調味料位で良いかな。」

 

笑いながら。一ヶ月しか一緒にいないサフィールですらも見破ることができる嘘の笑顔を浮かべながら、リオは台所に入って戸棚を開く。

 

 

 

 

「・・・うん。こんなものかな。」

 

「これでいいのか?」

 

ある程度必要なものを詰め込んだバックを持ったサフィール。結局のところ肉を焼くフライパンと、盛り付けるお皿を少し。後は家にあるだけの調味料を詰め込んだので、バックは少し膨らんでしまっている。リオでは持てないかもしれない。

 

「それじゃ・・・ん?」

 

「サフィール?」

 

外に出ようと言うところでサフィールが顔をしかめて家の奥を見る。その顔は少し狩りの時に似ている。

 

リオがそれに首をかしげていると、サフィールはリオを護るように彼の前に立つ。

 

「物音がした・・・・リオ。この家他に誰かいるのか?」

 

「え?う、うぅん。一人暮らしだったよ。」

 

「・・そうか、」

 

そう言いながらゆっくり家の奥に向かうサフィールに慌てながら後をついていくリオ。やがてサフィールは1つの部屋の前で立ち止まった。

 

「ここだ。確かに何かいるな。」

 

「こ、ここ一応寝室なんだけど・・・」

 

「あけるぞ。」

 

すでに用事を済ませたのに何故ここまでするのかなんて疑問はない。二人はゆっくりと寝室の扉をあける。

 

開けた部屋は月明かりが差し込む窓、壁際に寄せられたベットがあるのみ、そこに音の主はいた。

 

「・・・サ・・ヤ?」

 

思わず口に出てしまったのは仕方がないと思う。予想すらしていなかった人物がいたことに驚いてしまう。しかし、名前を呼ばれたその少女はまるで動かない。

 

震える足取りでゆっくりと彼女の正面を覗き込む。

 

サヤは、寝ていた。リオが使うベットで、リオが寝ていた枕に顔を押しつけながら。

 

いや、彼にとって大事なのはそこではなかった。

 

「・・うっ・・リ、オォ・・・」

 

 

 

泣いていた。

 

 

まくらを濡らしながら、リオの名前を呼びながら・・・いまだ涙を流している。

 

「・・・サヤ・・・」

 

言葉が出なかった。自分がこの家を出てから一ヶ月。彼女はいまだその胸を苦しめていた。

 

確かに、リオはサヤとの別れの時、彼女に自分の気持ちを吐きだしてしまったのは覚えている。

 

悲しませないようにと思ったのに、最後の最後で吐き出してしまった一言、「忘れないで。」

その言葉がいまだ彼女を苦しめていると言うのか。

 

「おい、コイツお前の名前呼んでるぞ・・・知り合いか?」

 

「・・・・」

 

いつも通り、とまではいかないが、普段よりも少し低いトーンで訪ねてくるサフィールにリオは何も言えなかった。

 

サヤから目が離せない。サヤの目から流れる涙から目を離すことができなかった。

 

「リオ・・・大丈夫か――――っ!誰か来る!」

 

彼に手を伸ばそうとしたサフィールが異変に気が付いた。玄関から誰か人の気配がする。

 

まっすぐにこちらに向かってきている。しかし、リオは相変わらずサヤに目を向けたまま動かない。

 

「おいリオ。村の連中には見られたくねぇんだろ!」

 

「っ!?――――こっち!」

 

サフィールの言葉にリオがようやく我に帰る。すぐにサフィールの手を取ると、クローゼットの中に体を入れて扉を閉めた。二人で入るには少し狭いが、今やそんなことも言っていられない。

 

二人で密着して扉の隙間から寝室を除く。すると、廊下の扉から1人の男性が入ってきた。リオには見覚えのある顔。サヤの父親だった。

 

彼はベットで眠るサヤの姿にため息をついた。

 

「また来ていたのか・・・」

 

『また』その言葉にリオの表情がゆがむのが分かる。サフィールはそれに気づきながらも、意識は外に向ける。いつ何があってもリオを守れるように。ただそれだけを考えて外を睨んでいた。

 

「・・・ごめんなサヤ・・・ごめん、リオ君。」

 

「っ!」

 

急に自分の名前を呼ばれて言葉が漏れそうになるのをギリギリで飲み込む。

 

クローゼットの外では父親が寝ているサヤを抱きかかえて、悲しそうに顔を伏せた。

 

「子供1人・・・護れない・・・自分の娘すらも・・・こんな大人になっちまうなんてな・・」

 

それは誰に向けての言葉だったのか、父親はそれだけ呟くとサヤを抱えたまま部屋から出て行ってしまう。そのまま帰ったのだろう、玄関を閉める音が聞こえた。

 

それを確認してから、まずサフィールがクローゼットから出た。

 

「・・・・リオ。」

 

呼ばれたリオはというと、顔を下に俯かせたままクローゼットから出てこようとしない。

 

「なぁ・・・帰ろうぜ。」

 

サフィールの言葉にも反応せず。しかし、ゆっくりと口を開いた。

 

「・・・僕、この村から・・・生贄に選ばれたんだ・・・」

 

「・・・・・」

 

ゆっくりと呟くように言葉を紡ぐリオに、サフィールはそれに口をはさまず、静かに耳を立てる。

 

「雨を降らすために・・・山の神様へ捧げる生贄として・・この村から出た。」

 

その声は泣いているようで、か細く・・・震えている。

 

「死ぬために・・・村を出て、それで・・・サフィールに拾われた・・・」

 

「・・・・・」

 

「その時、あの子僕を止めようとしてくれたんだ。僕が自分で決めたことだけど・・・それでもあの子は・・僕を止め・・ようと・・グスッ・・・」

 

気づけばリオの目から涙がこぼれていた。その時の事を思い出してしまったのだろうか、その顔をゆがめながら、必死で言葉を絞り出すその姿に、サフィールはゆっくりと距離を詰めた。

 

「自分で決めた・・のに、いざ・・・って時に、弱くて・・・笑顔・・・出来なくて、泣かせちゃった・・・」

 

涙は止まらない。滝のように流れ出し、ついに床まで染める。それを、サフィールはただ立ったまま動かない。

 

「・・・僕が・・・弱かったから・・・泣いちゃって・・あの子を、サヤを泣かせて・・っ・・・」

 

不意に、何かに包まれる。それはゴツゴツとしたうろこの感触。わずかに残る人の肌だけが柔らかい。

 

それでも、とても温かく安心することのできるその体に、その腕に。また涙があふれた。

 

「・・知ってたよ。お前が生贄だってこと。」

 

「っ!?」

 

予想すらしていなかった言葉に一瞬息が詰まった。彼女の言葉が理解できなかった。

 

「アタシ達ドラゴンは寿命が長いんだ。アタシ自信、自分が何歳かなんてもう分かんないほど生きてる。」

 

「・・・・」

 

混乱した頭で必死にサフィールの言葉を聞く。頭の中がぐちゃぐちゃで、考えがまるでまとまらないけれど、彼女の言葉はまるで子供に言い聞かせるように優しく、しみ込むように入ってきた。

 

「ずっと独りで生きてて・・・初めて人に会ったのはどれくらい前だったかな・・・そいつもさ、お前と同じ生贄だったんだと・・・」

 

「・・・・」

 

サフィールって見た目凄い若そうなのに何歳なんだろう。なんてあほらしいことをリオはサフィールの胸の中で考えていた。

 

「そいつとの暮らしはホント楽しくてよ。毎日毎日色んな事を教えてくれた。そりゃ楽しかった。」

 

そう言うサフィールを見上げると、どこか嬉しそうで、でも少し寂しそうな、複雑な表情をしていた。

 

「でもさ、そいつ急にいなくなっちまった。あぁ、いやどっかいっちまったとかじゃなくてさ・・・死んじまったんだ・・・・ホント、なんでかなぁ・・・」

 

そう言って笑うサフィールに、リオは何も言えなかった。

 

「楽しかったぁ・・・すげー楽しかった。あいつと一緒にいるだけで、世界が輝いて見えんだ。」

 

「・・・・サ、フィール?」

 

「・・・お前を拾った場所。そこにそいつの墓があるんだ。」

 

初耳だ。あそこにそんな場所あっただろうか・・・いや、もしかしたら気づかない様にしていたのかもしれない。サフィールがリオをあの場所で拾ったのも偶然ではなかったということだろうか、

 

「そこでお前を拾った。偶然なんかじゃないと思ったよ。あいつの代わりにしようなんて思ってなかったけど・・・あいつと同じように、お前と一緒にいたらきっと楽しいって思った。」

 

そこからのサフィールは先ほどまでと違って、とても楽しそうだった。心から笑っているように見えた。

 

「予想通り・・・いや予想以上だった。お前との、リオとの生活は本当に楽しかった。今まで寂しかった気持ちなんか簡単に溶けていくようだった。」

 

「・・・・」

 

彼女の本心が、リオの心にしみ込んでくる。少しずつ、泣いて沈んだ気持ちが浮かび上がってくるような感覚。

 

「だけどよ、お前が戻りたいなら・・・この村に戻ってもいいんだぜ?」

 

「っ!?」

 

「さっきの親子ならお前をかくまってくれる。そうだろ?」

 

リオの頭を撫でながら、そう呟いた。

 

「・・・・」

 

「お前が戻りたいなら・・・帰ってもいいんだ。」

 

正直、心が揺らいだのを感じる。

 

泣かせてしまった彼女をもう一度笑顔に・・・自意識過剰かもしれないが、彼女はきっと自分が戻れば笑ってくれる。それには確証があった。

 

でも・・・

 

「ダメだよ。」

 

「ぁん?別に怖がらなくたって。あの親子はお前を捨てねぇ―――――」

 

「違う。違うんだよ。」

 

「・・・・ならなんだよ。」

 

少しムッっとしたかな。頭を撫でる手が止まった。リオはそのまま彼女を見上げ、その美しい瞳を見つめる。

 

泣きそうな自分が映った。

 

それを無理やり笑顔を作りなおす。

 

「僕が帰ったら、サフィール泣いちゃう・・・」

 

「・・・馬鹿にしてんのか。」

 

「うぅん。そんなことない。僕は自分が弱かったせいで、選択を間違えたせいでサヤを泣かせた。でも今度は間違えない。サフィールは泣かせないよ。」

 

そう伝えると、サフィールは・・・とても複雑そうに、まるで顔がゆるんでしまうのを抑え込むような顔で・・・

 

「~~~~~っ!!!」

 

「僕はずっとサフィールといる。あなたとの生活は。もう僕にとってかけがえないほど楽しいものだから。」

 

そう伝えて、サフィールを抱きしめ返す。顔を見ない様に。顔を見せない様に強く抱きしめる。

 

ゆっくりとサフィールが頭を撫でるのがくすぐったくて首をひねる。

 

「あぁ。なら・・・帰ろうぜ。アタシ達の家に。」

 

「うん。帰ろう。僕たちの家に・・・」

 

そう言いながらサフィールは部屋の中で一度だけ翼を広げた。




サフィールのような強い娘。男勝りな娘は自分の意思ややりたいことよりも他人を優先してしまう強さがあってしまうものだと思います。

それを溶かして初めて二人は距離を縮められるような気がしてこんなストーリーを書きました。

ちょっと女々しいところを書きたかったのに・・・あれ。イケメンがいた(゜Д゜;;)


次はもう少し女の子らしいところを書きたい・・・等と考えつつ今回はこの辺で。

では、ここまで読んでくださりありがとうございます。(^w^)ノシ
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