「うぅ・・・っ!!・・」
体が熱い。まるで燃えているかのような感覚に頭がおかしくなりそうだ。呼吸も荒く、白い肌からは玉のような汗が流れている。
ベットの上で、サヤは胸を押さえながらもがき苦しんでいた。
「サヤ!!しっかりして!!」
彼女の母親が涙を流しながらサヤの手を握り祈るように叫んでいる。それでもサヤの様子に変わりは見られず、相変わらず苦しそうにもがくだけだった。
「先生!!サヤは・・・サヤは助かるんだよな!?」
「それは・・・」
ベットのすぐ横で、サヤの父親が白衣を着こんだ医者に掴みかかるように詰め寄る。それに対して医者はといえばその表情を曇らせてうつむくだけだった。
時刻はちょうど太陽が真上から若干西に傾き始めたころ。お昼を過ぎたあたり。
サヤがこんな状態になってから早くも6時間近くが過ぎようとしていた。
ことの発端は朝。サヤが家に帰ってきてから起こった。
散々心配をかけたことに対する有難いお叱りを受けたサヤがげっそりしながら部屋へと戻ろうとしたとき、不意に彼女が胸を押さえながら苦しそうにうずくまり、最後にはその場に倒れ込んでしまったのだ。
当然それを目の当たりにした両親は大慌てでサヤを村の医者の家へと運んだ。そこからというもの、診療所とするその家は大騒ぎだ。
見たこともない病状に彼らは手の打ちようがなかった。ただただ苦しむ彼女を見守りながらできる限りの治療を行っている。しかし、そんなことをしてサヤの病状が治るはずもなく。今もこうして苦しみ続けているわけだ。
「アンタ医者だろ!!」
「そ、そんなことを言われても・・・この病気は見たことがないんだ。下手に手が出せないんだよ。」
「それなら調べろよ!」
「騒々しいぞ。ここは病室じゃろう。」
「「!!」」
娘が倒れて冷静ではない男の怒号をたしなめるように、落ち着いた声が届いた。驚いてそちらに目を向けると、扉を開けてそこに建っていたのは
「村長・・・」
「サヤちゃんが倒れたと聞いてのぅ。ようすを見に来たんじゃが・・・何事かの?」
「そ、それが・・・」
医者がサヤの病状を説明し、同時に自分には治しようがないことを説明すると、村長は大きく目を見開いた。
「すまんが・・・少しワシに見せてくれんの。」
「え?・・・はぁ。」
道を開けるとゆっくりと村長がベットへと近づき、苦しそうに呻くサヤへと手を伸ばす。
額に手を当てたり、瞼を開けて目を見たり。やっていることは医者の診療と大体変わらない。しかし、それをするにつれ、村長の顔に焦りが見え始めていた。
やがて、終わったのか村長がゆっくりとベットから離れる。
「・・・・・」
「・・・何かわかったんですか?」
「・・・すまぬが、ちょっと家に戻る。またすぐに戻ってくるでの。」
それだけ言うと村長は返事も待たずに早足で病室を出た。
しかし、言葉通りに村長はすぐに戻ってきていた。その手にはこぶしで握り込めるほどの小瓶。中には青い丸薬が一粒入っている。
「・・・これを飲ませなさい。」
「そ、村長・・・これは?」
「薬じゃよ。だいぶ古いものだが、おそらくは効き目があるはずじゃ。」
その言葉を信じようか迷いが生まれた。しかし、目の前で苦しむ娘を前にして、いつまでも迷っていられはしない。
やがてそれを受け取ると、苦しむサヤを起こし丸薬を水で流し込んだ。
「あぅ・・・・・う・・ん?」
「!!??」
「「サヤッ!!」」
飲ませてからまだ一分もたっていないというのに、サヤのようすはみるみる良くなり、やがて目を開いた。
両親は泣きながら喜んでいる。しかし医者はというと驚きを隠せなかった。薬の効き目が早すぎる。異常なほどに早い。こんなの激薬とかそんなものではなかった。
急いでサヤの病状を確認するが、さっきまで苦しんでいたのが嘘かのように何ともない。まるで魔法か何かにかかってしまったような・・・そんな錯覚に陥った。
「さて、病み上がりのところスマンが、すこしサヤちゃんと話をさせてくれんかの。」
いつも通りの笑顔のまま村長が口を開いた。少し威圧の混じったその言葉に泣いて喜ぶ両親も少し戸惑いながら、ゆっくりと病室を後にする。
部屋に残るのは村長と、まだ少し頭が混乱している様子のサヤだ。
「あ、あの・・・」
ビクビクした様子で口を開くサヤ。しかし村長はそれを無視して口を開いた。
「サヤちゃん。お主最近よく山に入っておるようじゃの?」
「・・・っ」
突然の言葉に体が少し震える。しかしそれを言い放った村長にとがめるような雰囲気はなかった。
「別に怒っとるわけじゃない。人が山に入るのは勝手じゃよ・・・何を探そうとも自由じゃ。」
バレていた。サヤが山に入りリオを探していることをこの老人はお見通しだったのだ。
{ これでリオを見つけたなんて知れたら・・・}
内心でサヤは焦る。それを悟られないように表情を作るので精いっぱいだった。
「まぁ、今回はその話ではない・・・・サヤちゃん、お主蒼い鱗を持つ龍に会いはしなんだか?」
「っ!!?」
突然の言葉に息が詰まる。嫌な汗が噴き出すのを感じた。村長の口から飛び出した「蒼い鱗を持つ龍」
心当たり、どころか村長の言うことが的中している。なぜそのことを知っているのか・・・・
もしかして、サヤが隠そうとしているリオのことも知っているのではないか・・・
そんな不安が一気に襲いかかってきて。否定の言葉が出てこなかった。
「・・・やはりそうか・・・」
結果。その沈黙で村長の質問に答えてしまった。
「・・・・な、なんで・・・」
「む?」
震える声を絞り出すようにサヤが口を開いた。
「どうして・・・村長が、そのことを・・?」
「・・・お主。自分が倒れておったのは知っとるな?」
「・・・」
その問いにうなづいて答える。自分が倒れるとき、少しだけ残っていた記憶がある。まぁ、何時間ももがき苦しんでいたのは記憶にはないのだが・・・
「その病状に見覚えがあった。」
「見覚え・・・?」
言われて首をかしげる。今の自分の質問の答えになっていないのだ。龍の存在を知るのにどうして病気のことを話しているのか、それが理解できなかった。
しかし、それを補足するように、村長はゆっくりと口を開く。
「むかし・・・まだまだワシがお主ほどに小さい頃の話じゃ。そのころにも一度この村は干ばつで悩まされた時期があっての。」
まるで懐かしむように話す老人の顔には、少し影があった。
「その時も、此度のような方法で窮地を脱した。」
「まさか・・・・」
「うむ、村に住む一人の娘を生贄として山の神にささげたのじゃ。当時はリオのように親を亡くし、一人身の子供がおらんくての・・・くじ引きのような方法じゃったの。今思い返せばおかしな話じゃがの、ホッホッホ。」
そうして笑う村長は・・・なんだか無理して明るく話そうとしているような気がする。とサヤは感じていた。
「そうして選ばれたのは・・ワシの隣に住むランという子じゃ。これが美人での~。当時村一番のベッピンさんじゃ。惜しいことをしたわ。」
そう言われた時、サヤは確信にも似た予想が浮かんでいた。
村長がそのランという娘に何かしらの思いを抱いていたのだと・・・
「当時ワシも若くての・・・彼女を追って、毎日山に入っては彼女を探した。」
やっぱり、と思った。まるで自分と同じではないか、リオを追って毎日山に入っている自分と。
「周りからなんと言われようとも、毎日毎日彼女を探した。何年たったか、もはやそこまで来ると維持じゃな。そんな思いで山に入り・・・とある洞窟でやつを見つけた。」
「蒼い鱗に、大きな羽。銀色の髪をたなびかせながら、奴はゆっくりとワシの前へと降りてきたのじゃ。」
サヤの知るサフィールの容姿とぴったり一致していた。
「以外にも人の言葉を話せるやつでの。最初は驚いたもんじゃが。この山にすむというそ奴にランのことを聞いた。」
「結果、奴はランのことを知っておったよ。それどころかランとともに過ごしていたというんじゃ。」
まるっきりリオと同じだった。そこまで来るともはや呪われているか、もしくはサフィールは狙ってやっているのではないかと思うほどにそっくりな話だった。
「そ奴の話しでランはとうに死んでしまっておると言われた時は・・・思わず腰が抜けてしもうたわ。」
「そんな・・・」
明るく話そうとしている村長だったが、こればかりはサヤも衝撃を受けた。自分とリオを重ね合わせてしまったわけではないが、他人事ではないと思って聞いていた分。ショックも大きい。
「その時奴に聞いた。ランの最期はな。お主と同じように、高熱にうなされ。苦しみながら息を引き取ったとな・・・」
そう話された時、サヤの中で小さな違和感が生まれた。いや、むしろ、パズルのピースがはまっていくような感覚。
なぜ村長はこの話を始めたのか。
自分の病状とランという人物の病状の一致。
「悲しむワシに同情したのか、奴は自分の鱗を一枚剥がしワシに渡して、その場から去って行った。」
「主に飲ませた薬は・・・その鱗をすり潰して作ったものじゃよ。」
「な、何を言いたいのか・・・わかりません・・・」
頭の中で出てきたことを打ち払うべく。震える体を抑えつけながらサヤが口を開く。
「なら・・・主は龍の伝説を知っておるかの?」
「伝説・・・?」
「曰く、口から吐く炎は鉄をも溶かす。曰くその血を飲めば永遠の命が手に入る。その力はすさまじく、一振りで大岩を砕く。その強靭な羽ばたきは嵐を引き起こす。さまざまなものがあるが、その中にこんな一文がある。」
「曰く、奴らは毒を持ち。その毒をもって獲物を死に至らしめるそうじゃ。」
「っ!!?」
「・・・スマンの、少し意地悪が過ぎたようじゃ。」
そう言いながら、老人はゆっくりと振り返り扉を開ける。
「しかし、おぬしには感謝しておるよ。これで80年の謎が解けたわぃ。」
そういう村長の声は難しい問題を解き明かして自慢する子供の用で。
「・・・これで、彼女の仇もわかった。」
死をささやく悪魔のようであった。
翌日。まだ日も昇りきらないような早朝。村から飛び出す1人の少女の姿があった。
ご都合主義な感じになったかな・・・(@@;)
以前サフィールが一緒に暮らしていたのは実は村長が好きだったランという娘だった!
なんともグダグダな感じになってしまい本当にお見苦しいかと思いますが・・・・
ここからサフィールとリオ君に待ち構えるものとは!?
というか、久々の更新で主役の二人が出ていないのはどういうことなの・・・
ここまで読んで下さり本当にありがとうございます。
次回もよろしくお願いいたします!!(^w^の)