人外娘との生活   作:ハヤテ_s.t

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今回から新しいモンスター娘さんの登場です(^w^


リリア:アルラウネ
きれいな花には棘がある?いや、そんなことはない。


緑が生い茂るジャングルとも思えるような深い森の中、一人の少女ともとれるような容姿の少年が大きなリュックを背負って歩いていた。

 

その服装はジャングルに入るには余りにも軽装で、普段着そのまま。第一印象としては完全に森の中に迷い込んでしまった迷子であるが、その顔に不安はなく、むしろ楽しんでいるかのように見える。

 

進行を邪魔する草木を除けながらどんどん森の奥深くへとその歩を進めていった。

 

 

「・・・・あっ」

 

不意に少年が声を漏らす。その視線の先には大きなクモの巣があった。それが大きく揺れているのは今まさに掴まってしまった蝶がもがいているからだろう。

 

とてもきれいな紫の羽をした蝶が蜘蛛の糸に絡まり身動きとれないでいる。ふと視線を横にずらせば、掴まった蝶よりも数段小さい蜘蛛が獲物を逃すまいと迫っていた。

 

「・・・・・・」

 

そんな様子を、彼は特に表情も変えないまま見続けていた。普通これほどの歳の子供というのはこういった現場に出くわしてしまうと、その小さな手で捕まった蝶を助けだしたりしてしまうものだが、彼はそうはしない。

 

彼の意識は既にこの世界でのルールを作り上げてしまっている。弱肉強食。といえば聞こえが少しばかり悪いかもしれないが、結局はそういうこと。

 

ここで彼が蝶を助けるのは簡単だ。それによってあの美しい羽は無残に引きちぎられることはなくなり、その命をつなぐことができる。

 

では反対に、蝶を捕らえた蜘蛛はどうだろう。もしかしたらあの蜘蛛にとって今回巣にかかったあの獲物は何週間ぶりの成果なのかもしれない。

 

ここで獲物を逃してしまうことであの蜘蛛こそ命を落としてしまうかもしれない。

 

つまりはそういうこと、命は何に対しても一つであり平等である。

 

こんなことを言って別に聖人を気取る気もないし、神を信仰するでもない。つまりは掴まった奴が悪いのだ。

 

だから弱肉強食。どんなものでも自分より強いものに出会ってしまえばかくも無力なのだから。

 

「・・・・はぁ・・」

 

相変わらず冷めた考え方をするなぁ・・・

 

と自分で思う。こんなことを考えるようになったのはいつからだったか、昔はどんな強靭な悪にも立ち向かうヒーローが大好きだったのに、今や完全に襲われる一般市民にも似た考えだ。

 

きっと、自分があんな強者目の当りにしたら逃げることもせずにただ終わりを受け入れてしまいそうだな。

 

なんて考えをまとめてまた歩き出す。

 

 

 

 

少しして、ようやく目的の場所にたどりついた。

 

そこには花があった。ラフレシアといわれる大きな花よりもさらに大きな花を真ん中に咲かせ、その周りに伸びた蔓はあたりの木々を押しのけるように地面に敷き詰められている。

 

その蔓を申し訳なさそうに踏みながら、真ん中にある花へと近づいていく。やがて、人一人程度なら簡単に飲み込んでしまいそうな花のそばまで寄ると

 

「おはよう。来たよ」

 

心底うれしそうな笑顔でそう切り出す少年。植物に話しかけるというのは今となっては特に珍しくもないが、若干精神に不安を感じる。

 

しかしそんな心配をよそに、少年はゆっくりと大きく開かれた花の中心から目を離さない。

 

やがて、少し花全体が揺れたかと思うと。

 

「おはようございます。リオ様。」

 

その花の中から一人の女性が、その顔に笑顔を咲かせながら飛び出してきた。

 

 

 

 

開かれた花弁の上に腰をおろしながら少年、リオはその隣に腰掛ける女性へと目を向けた。

 

軽くウェーブのかかったブロンド髪は腰近くまで伸びている。服は着ておらず、体の要所を花弁にも似たものが覆っているだけだ。少し視線を向けるのは恥ずかしいので細かいところまでは見ていないが、

 

身長はリオよりも高い。人間にしてみれば完全に成人女性のそれだ。大人びた雰囲気もあいまって完全に年上にしか見えない。

 

しかし一番に目を向けるべきはその肌の色、人間のそれではなく完全に緑色なのだ。そこらじゅうに伸びた蔓と同じ色、植物と同じ肌の色。

 

そう、彼女は人ではない。「アルラウネ」と呼ばれる人外の存在である。見た目こそ人の形をしているが、体のつくりとしては植物が一番近い。口は付いているもののそこから食事を取ることはなく。

 

地に張った根から水分を吸い上げ、空気中の二酸化炭素と太陽の光で光合成をおこない養分を作り出す。

 

それによって得られる養分もごくわずかなものなのだが、彼女には彼女なりの『食事』がある。

 

 

「今日はどうされました?」

 

「どうもないよ。リリアに会いに来ただけ・・・」

 

「まぁ、うれしいです。しかしおもてなしも何もできませんのに・・・・」

 

「話をしてるだけでも十分楽しいよ。」

 

「ふふ、それでしたらいつでもお相手します♪」

 

リリアと呼ばれた女性が口元を押さえながら上品に笑みをこぼした。

 

リオがリリアに出会ったのはもう何か月も前のこと、山菜摘みに来たリオが道に迷った時、甘い蜜のような香りに誘われて、ここまで歩いてきてしまったのがきっかけだった。

 

当初は初めてであった人外の存在に死を覚悟したリオだったが、彼女も人を見たのはその時が初めてだったらしく、オドオドしながら自己紹介してくる彼女に一気に緊張が解け、お互いに話ができるようになった。

 

そこから、リオはたびたびリリアのところに足を運ぶようになり、今では毎日のように話し相手になってもらっている。

 

 

「そう言えばリリア、少し元気ない?最近雨も少ないし。ひょっとしてお腹空いてたりする?」

 

「そんなことはありませんよ。確かに雨は多くありませんが、地面の下には案外水分がたまっているものです。それに、私の食事は水だけではありませんので。」

 

「そう?それならいいんだけど。」

 

「・・・・ひょっとして心配をお掛けしてしまいましたか?」

 

少し申し訳なさそうにこちらを覗き込むリリア。それに少し照れながら、リオは背負ってきたリュックからあるものを取りだした。

 

「ん、少しだけ。リリアってアルラウネだし、水が少ないと大変なんじゃないかなって思って。村から水を持ってきたりしたんだけど。」

 

そう言って取りだしたのは木でできた水筒だった。大きさは大したことないが、リュックの中をのぞけば同じものが数本顔をのぞかせている。

 

「私のために・・・申し訳ありません。余計な心配をおかけしてしまって・・・」

 

「いや、これは僕が勝手にやったことだし気にしないで。」

 

「それでも、これほどの水を持ち歩くのは大変なことでしょう。」

 

そう言いながら水筒を持つリオの手にやさしく触れた。突然の出来事にリオの顔が赤くなるが、当のリリアが心配そうな表情をしているため、声を出すこともできない。

 

「貴方が運んで下さった大事なお水。ありがたく頂戴いたします。」

 

そう告げると、リオの手から水筒を受け取りリリアが目をつむると、その中身を足元の蔦へとゆっくりと零し始めた。

 

周りから見ればリオの運んだ水をいたずらに捨てているようにもい見えるが、彼女はアルラウネ、水分を摂取するのは口ではなく、根なのだ。

 

「・・・はぁぁ・・」

 

水を垂らしてから数秒。

 

蔦を伝う水が地面に浸透し、根がそれを吸い上げたのだろうか、隣に腰掛けるリリアから幸せそうな溜息がこぼれた。

 

「・・・リリア?」

 

「貴方が運んで下さったお水が滲みわたっていきます。ここまで美味しいと感じたのは初めてかもしれません。」

 

「た、ただの水なんだけどな・・」

 

リリアの表現に今度はリオは申し訳なさそうに頬を掻いた。リリアのために持ってきたとはいえこれはただの井戸水なのだ。そこまで感動してもらえるのはうれしいが、大した水は持ってきていない。それがとんでもなく恥ずかしく感じてしまったのだ。

 

しかし当のリリアはというと。

 

「そんなことはありません。貴方が苦労して運んで下さった大切なお水です。他のものとは比べ物になりません。」

 

「あ、ありがと・・・」

 

真顔でそんなことを言われてしまっては返す言葉も小さくなってしまう。リリアのストレートな言葉にりはただただ赤くなる顔を隠すようにうつむくしかできなかった。

 

やがて、リュックの中に詰まった水筒が全て空になったところでリリアはリオに頭を下げた

 

「ありがとうございます。とても美味しかったです。」

 

「うん。そう言ってもらえるとうれしいよ。」

 

そう伝えると、リオは水筒をリュックに詰め直し、それを背負って立ちあがった。

 

「もう、お帰りになるのですか?」

 

「暗くなる前に村につかなくちゃいけないしね。」

 

そう言って見上げる空は既に茜色に染まっていた。予想以上にリリアが水筒の中身を味わっていたため少し時間が立ち過ぎてしまっていたのだ。

 

「せっかくお話に来て下さったのに・・・本当に申し訳ありません。」

 

「そんなことないよ。リリアが美味しそうにこの水を飲んでくれたんだもん。苦労して運んできたかいがあった。」

 

「は、はい・・・そ、それで・・・もしよろしかったら・・・・」

 

もじもじとしながらうつむくリリアに、リオは微笑みながら。

 

「明日もお水持ってくるね。」

 

「あ・・・その、量は少なくてもかまいませんので・・・」

 

「うん、了解。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

恥ずかしそうにうつむくリリアに頬を緩めながら、リオはゆっくりと立ちあがり、来た道を戻ろうとして。

 

「リオ様。」

 

「ん?」

 

「帰り道、お気をつけて。」

 

「ありがと。お休みリリア。」

 

「はい。おやすみなさいリオ様。」

 

 




はい、というわけで今回からはアルラウネのリリアちゃんを開始いたします。

ここまでのヒロインたちとはまた違った「上品なタイプ」で行きたいと思っております。丁寧語やそういった言葉づかいは少し難しいですが・・・
変な言葉使いなどありましたらお手数ですが、ご報告いただければ嬉しいです(^w^;

以前感想に「お姫様タイプの娘」を希望して下さった方がいらして、いままで書いたことのない女の子だったので、今回書かせていただこうと思いました。
案を出して下さった「蝶々」様。本当にありがとうございます!(^ω^)

お姫様タイプの人外娘をイメージしてぱっと出てきたのがアルラウネでした。
偏見ですが、お姫様ってお城からあまり出てこれないイメージがありましたので、お城から出れない=その場所から動けない。
地に根を張るアルラウネで行こう!!(゜Д゜)
という安直な考え(・w・;

前半の文章は今回のリオ君の心情ないし気持ちの持ち方を書き出してみました。少し冷めた考え方を持つ彼は今後どのような生活を送っていくのか。

それではここまで読んで下さりありがとうございました!
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