人外娘との生活   作:ハヤテ_s.t

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今回からカトレア編ラストスパートでございます!!

さびしいようなちょっとした達成感があるような・・・^^;
少し詰め込み過ぎな気もしますが(^w^;)




「・・・・んっ?・・くぅ。」

 

朝、リオが目を覚ますと体の違和感を感じて首をかしげる。

 

{体がだるい・・・ボーっとする・・・風邪かな・・?}

 

力が入りづらく、熱っぽくて頭が働かない。風邪の症状そのものだ。

 

引き始めということもありまだ余裕があるが、このまま一日家事をこなすのは少しつらいかもしれない。

 

{カトレアに・・・説明して休ませてもらおう。}

 

そう考え行動に移そうと思ったが。

 

{あ、カトレアは今頃散歩かな・・・いいや、メモだけ残して部屋にいよう。}

 

自分の状態では無理はできないと思ったリオは一日ゆっくりと療養するために寝巻のまま、カトレアに報告しるためのメモをリビングに残した後また寝るためにそのままで部屋を出た。

 

 

 

リオがそのままリビングへと足を踏み入れると

 

「ん?あぁ、おはようリオ。」

 

「え・・あれ?カトレア・・・・?」

 

日課の散歩に出ているはずのカトレアが水の入ったコップを手にそこに立っていた。

 

「散歩は・・・?」

 

「それがな、少し調子が悪くて今日は断念したんだ。」

 

まさかカトレアも調子が悪いとは、もしかしたら2人して同じ病気にかかったかもしれない。なんて考えたリオ。

 

「そうなんだ・・・・」

 

「だからリオ。すまないが今日は部屋で休ませてもらいたい。」

 

「あぁうん。大丈夫だよ。」

 

そのままゆっくりとリオの横を通り抜けるカトレア。

 

少しボーっとしていたリオだったが、自分も具合が悪いことをカトレアに言おうと振り返る。

 

「カトレ―――――――「そうだリオ、今夜はどうやら嵐が来るみたいなんだ。すまないが家の窓の補強を任せてもいいだろうか。」・・・・・あ、うん。」

 

言えなかった・・・・つらそうな顔で、申し訳なさそうな顔でそう言われたらNOと言えないリオ。

 

もっと強い意志を持とう。そう思った。

 

「それじゃ、すまないなリオ。私は部屋でおとなしくしているよ。」

 

それだけ言って自室へと姿を消したカトレア。きっとすぐに寝床に入り体を休めているのだろう。

 

そんなことを考えながら・・・体へ活を入れ自室に着替えを取りに行くリオだった。

 

 

もうそこからは自分が無理をしない程度にいつも通り過ごそうと考えたリオ。

 

まずカトレアに言われたように夜に備えて窓を木の板で補強し嵐に備える。掃除と洗濯は必要最低限だけして、後は少しでも体を休ませようと仮眠。

 

しかしそれでだるさが収まることはなくむしろ少し悪化してるような感覚。

 

それでも、自室で眠るご主人様のためお昼ご飯と薬を届ける。

 

カトレアに悟られないようにマスクをして顔を隠すことも忘れない。

 

部屋に入ったときにカトレアにマスクのことを疑問に思われたが

 

「カトレアのがうつって2人して寝込むわけにもいかないでしょ。」

 

と言い訳しておいたので彼女にばれてはいないだろう。

 

カトレアのほうも一日安静にしていたにもかかわらず病状は治らず、むしろこちらも悪化しているようにも見える。熱もあるようなので家に常備してあるケンタウロス用の解熱剤を飲ませておいた。

 

 

 

そして夜・・・

 

カトレアの言葉通り激しい風と雨が補強された窓をたたいている。それを聞きながらリオはリビングでお手製のお粥を口に運んでいた。

 

「う~・・・カトレアもまだ調子悪いみたいだし・・・僕も早く寝て今日中に治さないと。」

 

最後の一口をゆっくりと咀嚼しコップに水を注いで戸棚の中から人間用の風邪薬を取り出し、胃に流し込む。

 

ケンタウロス用と人間用では含まれる材料が異なる。体のつくりが違うので間違って飲んでしまうと逆に病状を悪化させることだってある。

 

故に薬だけでなく医者や病院までケンタウロス用と人間用で異なっている。

 

今のこの国では人間用の病院なんてめったに存在しないが・・・・

 

話がそれた。

 

「カトレアは大丈夫かな?」

 

自分が休む前にもう一度カトレアの様子だけ見てこようと考え。彼女の部屋へ向かう。

 

起こすとまずいので、失礼を承知でノックせずに部屋に入った。案の定明りは消えて既に寝ている様子。

 

それを確認したので、リオはそのまま部屋を後にしようとして・・・

 

「・・・・カトレア?」

 

異変に気付いた。寝床に横たわるカトレアの腹部の上下が激しい。

 

リオはすぐに部屋に明かりをつけるとカトレアのそばに駆け寄る。カトレアは苦しそうな表情で呼吸を荒げていた。

 

夕食はちゃんと食べていたし、食後にちゃんと薬も飲んだ。しっかり確認したので人間用と間違えたなんてことはないはず。

 

なのに昼よりもつらそうにしている。これは異常だとリオは思った。

 

「熱は・・・・下がってない。どうして・・・」

 

額に手を当てると異常な熱を感じる。明らかに病状は悪化していた。

 

{薬も飲んだしご飯も食べてた・・・水分補給もしっかりさせたし・・・ここまで悪くなるなんて。}

 

今日のカトレアの様子を思い出してみるが特に病状を悪化させるような出来事はなかったはず。

 

「っあぁ!クソ!!」

 

思い出しているだけなのに自分も頭が働かない。リオ本人も体長が悪いのだ。こんな状況で冷静に分析なんて出来るはずがない。

 

そう考えたリオはとりあえず行動を起こすことにする。

 

「お医者さんに見せなきゃ・・・えと、電話電話・・・」

 

カトレアの部屋を出て通路に置かれた固定電話へと向かう。街の医者の電話番号は確か電話横のメモに書いてあったはず。

 

その医者もこの間買い物に出た街にいるケンタウロス。リオが電話をすれば向こうは機嫌を損なうこと間違いないが、そんなことも言っていられない。状況を説明すればきっと理解してくれる。

 

そう思って電話をかけようと受話器を持ちあげた瞬間だった。

 

「――――――っえ?」

 

リオの目の前が真っ暗になった。家の電気という電気が消えたのだ。今まで見ていた受話器ですら見えない状況に頭が一瞬まっしろになった。

 

ブレーカーが落ちたとは考えにくい。つまりは『停電』ということだろう。

 

「っ!!電話!!」

 

しかしすぐに我に返ると手に握った受話器を耳に当てる。そこからは何も聞こえない。家中が真っ暗になったこの状況で電話が通じるはずもないが、それすらも考えられないほどリオの思考力は低下していた

 

「・・・とりあえず、懐中電灯・・・」

 

冷静さを取り戻そうと大きく深呼吸をしてリビングに置いてある懐中電灯を探す。

 

そのままカトレアの部屋へと戻った。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・」

 

そこには相変わらず苦しそうに呼吸を繰り返すカトレアがいる。このまま朝まで待つのは簡単だが、ここまで苦しそうにしているカトレアを残り何時間も、ましてやいつ治るかわからない停電復旧まで待つ気にはなれなかった。

 

「・・・カトレア、少し待っててね。」

 

リオは急いで自室に戻ると、いつもの私服から奴隷用の布へと着替える。そしていつもの首輪をはめると、そのままキッチンへ、ポットに蜂蜜たっぷりの紅茶を淹れて、戸棚からケンタウロス用の解熱剤を取り出すとカトレアの部屋へ戻りそれらを寝床、すぐに手の届くテーブルの上へと置いた。

 

「大丈夫。すぐにお医者さんを連れて戻ってくるから。」

 

そうやさしく呟くとカトレアの部屋から、そして玄関を抜けてこの家から外へ飛び出した。

 

 

 

 

 

 

街の門。そこには嵐の中にもかかわらずいつぞやのケンタウロス族の青年が全身を覆う合羽のようなものを着こんで、立っていた。

 

夜、ましてや嵐が来ているとはいえ彼は自身の仕事をこなしていた。自身が住むこの街を守ろうという強い意志を持ち、嵐の中寒さに耐えながら門を守る。

 

「・・・・・ん?」

 

そんな彼の目が嵐の中何か動くものをとらえた。ここに来るための道をこちらに向かってきている。大きさ的にケンタウロスではない。

 

それを理解すると青年は護身用の棍棒を構えた。

 

そして、小さな影は徐々にこちらへ近づき、その全容があらわになった。

 

「あいつ・・・カトレアさんのとこの・・・」

 

たまにこの街を訪れるケンタウロス族の女性。そんな彼女の後ろをついてきては気安く挨拶なんぞしてくる。

 

この街に住む者ならだれもが知っているある意味有名な存在。もちろん悪い意味で、である。

 

その人間がこんな嵐の中、しかも一人でこちらに向かってくる。青年は呆気にとられたが、すぐに我に返ると目の前に迫った人間に向かって武器を向けた。

 

 

 

 

 

「とまれ!!」

 

カトレアを家に残して飛び出してから30分といったところで、やっと目的地に着いた。

 

すさまじい嵐の中だというのに聞こえた静止の声に言葉にリオはやっと街に着いたと理解した。

 

顔をあげれば相変わらず冷たい眼差し、嫌今回はカトレアがいないからか、怒りの表情も見える。ケンタウロスの青年がこちらに棍棒を突き付けながら睨みつけている。

 

「はぁ・・・はぁ、あの!お願いします!!お医者さんが必要なんです!街へ入れてください!」

 

走ってきた息を整えながら、いや、息が荒いのはきっとそれだけではない。ただでさえ体長が悪い中でこんな嵐の中を走ってきたのだ。きっと熱もぶり返してきているに違いない。

 

それでも声を張り、目の前の門番に届くように口を開いて叫んだ。

 

「何?医者だと?」

 

「カトレア様が・・・御病気で・・・薬も、意味がなくて・・・だから!お医者さんに診ていただこうと・・・」

 

「カトレアさんが・・・?」

 

リオの言葉に青年は考えるように顔を少し伏せた。早く入れてくれと願うリオだが、ここでそんなことを言えば怒りを買うだけ、と静かに待った。

 

しかし、ふたたび顔をあげた青年。じっくりとこちらを見定めるように上から下へと視線を動かす。

 

おそらく何か疑っているのだろう。しかしリオは手ぶらで家を飛び出してきたのだ。怪しいものなど持っているはずがない。

 

しかし・・・青年はある一点を見た瞬間。目を大きく見開いた。

 

「貴様!!その首輪・・・!!」

 

「首・・・輪・・?」

 

激怒した青年の言葉に自分の首を触る。そこには奴隷の証である首輪があるのみ。別に怪しいものなんてない。そう・・・リオは思った。

 

「貴様その首輪は、拘束用首輪ではないな!!?」

 

『何を言っているんだろう。』リオは一瞬思った。しかし、そのあとになってようやく気付いたのだ。自分の失態に

 

 

 

『奴隷の外出時にはケンタウロス族の見張り役が鎖で行動を制限するか―――――――

―――――――拘束用に電気ショック付きの首輪を装着させる』

 

 

リオが身につけているのは普段カトレアと外出するときに使う首輪。つまり鎖でつないで行動を宣言するための首輪。

 

今ここにカトレアはいない。ならば、ここでリオが身に着けていなければならないのは拘束用の特別な首輪のほうなのだ。

 

 

普段の首輪は鎖をつけるだけだが、拘束用はいざというときのために電気ショックが流れるようになっているため、普通の首輪よりも物々しいデザインになっている。

 

それを見つけられた。

 

 

「ちがっ!!これは・・・急いで家を飛び出してきたからで―――!!」

 

「黙れ!!大方この嵐に乗じてカトレアさんの所から逃げ出してきたんだろう!!」

 

「違うんです!!本当にカトレア様が病気で!!」

 

「下種な人間のことなど信じられるか!!この――――卑怯者め!!!」

 

リオには・・・青年が怒り狂って叫ぶ言葉が、振り上げれられた棍棒がこちらに振り下ろされるのが・・・飛んでもなく遅く感じた。

 

気付いた時には、すさまじい激痛が頭を襲い。目の前が真っ暗になっていた・・・

 

 

 

 

 

「う・・・リオ・・?」

 

くらい部屋の中・・・ふと眼を開けたカトレアは自然と愛しい彼の名前を呟いていた。

 

相変わらず体が重く、節々が痛い。のどが渇いた。とキッチンに水を汲みに行こうとして、

 

すぐ横にポットがあるのに気づいた。ふたを開けると中から甘い香りが鼻腔をくすぐる。

 

マグカップに開けてから口に含むと匂い通りの甘い風味が口いっぱいに広がる。

 

ゆっくりと飲み込めば体が内からポカポカと暖かくなっている。

 

のどの渇きを潤したカトレアは再び体を横倒すと、顔をほころばせる

 

「ふぅ・・・相川らずやさしいな。惚れ直してしまいそうだよ・・・リオ」

 

彼の名前を呟く、今度は心が温かくなるのを感じた。そのままゆっくりと、幸せな気持ちを胸に感じながら、眠りへと落ちて行く。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・んっ・・・・痛ぅ!!」

 

目を覚ましたリオは、頭部を襲う痛みに一気に意識が覚醒する。頭を押さえながらあたりを見回すと、見覚えのない部屋にいた。

 

机や寝床をが見えるが、大きさが人間用でないところを見るに、どこかのケンタウロス族の部屋だろうか

 

「・・・そうだ・・お医者さん・・・」

 

先ほどよりもずっと体調が悪化しているのを感じながら・・・街に来た理由を思い出し。ゆっくりと扉へと向かいドアノブをひねる。しかし・・・

 

「開か・・ない?」

 

正確には少し開く、しかしそれ以上開かなかった。ぎりぎり扉の向こう側が覗ける程度。

 

そこから目を凝らせば何重にも巻かれた鎖が音を立てる。どうやら外側から固定されているらしい。

 

それに、耳を澄ますとどこからか討論が聞こえてきた。

 

 

「お前!どうするつもりだ!人間なんか連れてきて・・・。」

 

「しょうがないだろ、カトレアさんの奴隷なんだし、この嵐の中外に放り出しておいて死なれでもしたらたまんないし・・・」

 

「だからってお前!家に連れてくるなんて・・・」

 

「じゃあ父さんはどうしろっていうんだよ。」

 

「それは・・・・しかしいくら門番だからといっても、そこまでしなくてもいいんじゃないのか?」

 

どうやらここはあの門番の青年の家らしかった。彼らの言葉を聞く限り、気を失ったリオを放っておくわけにもいかず、家に連れてきて・・・・身動きできないように個室に閉じ込めたと・・・

 

「大丈夫だよ。鍵だってしてあるし、」

 

「しかしな、もし『あの子』に何かされでもしたら・・・」

 

「『あいつ』もう寝てるだろ?あの人間だって明日の朝になれば嵐も過ぎるだろうし、それから外に放り出せばいいんだよ。」

 

「・・うぅむ。」

 

「とりあえず、俺はまだ勤務時間だし、戻るよ。嵐がやんだらすぐ戻ってくるから。」

 

「・・・・あぁ。」

 

 

会話が終わったかと思うと今度はドアの開く音がして蹄の音が外へと消えていった。おそらくあの青年が再び門番の仕事に戻ったのだろう。

 

しかし、そこでリオは頭を抱えた。鎖があるから外には出れない。出れたとしても明日の朝。そんなに遅くなってしまったらカトレアの病状がひどくなる可能性だってある。

 

リオとしては早く医者を呼ばなければいけないのに。これではまだ家でカトレアのそばにいてあげたほうがまだましだったはずだ。

 

 

「クソォ・・・このままじゃ・・・うッ!?」

 

悪態付くと目の前がグニャリと曲がった。どうやら自分のことも心配しなければいけないらしい。

 

「ほんとに・・・僕はどうしてこう・・・運が悪いのかな・・・」

 

そう言いながら扉のすぐ前に座り込んでしまう。体調が悪いのも重なって今は気持もどんどんと塞がってしまっていた。

 

「こんな・・・守ってもらうだけ守ってもらって・・・いざって時に役に立たなくて・・・・」

 

自分で言ってて悲しくなってくる。涙が出そうになるのをなんとかこらえていた。こんなに心細くなったのは初めてかもしれない・・

 

だからだろうか、部屋の前まで蹄の音が近づいてきたのに気付けなかったのは・・・

 

だからだろう。部屋の扉の隙間からこちらを覗く瞳に気付けなかったのは・・・・

 

 

「だれかいるの?」

 

「っ!!」

 

 

その声に驚きつつも反射的に顔をあげると・・・そこにはどこか見覚えがある、小さな瞳がうつった。

 

「・・・マ・・・リー?」

 

 

 

 

いつか、カトレアと買い物に訪れた時、ケンタウロスの男性に蹴りを入れられて、リリーナさんの家で治療してもらった日。

 

リオに声をかけてくれた。ケンタウロス族の小さな女の子。『マリー』

 

彼女が、扉の向こうで、あの人同じような瞳をこちらに向けてくれていた。

 

「ん~・・?だぁれ?」

 

「あ・・と・・・」

 

あまりの出来事に言葉が出てこないリオ。口がパクパクと動くだけで肝心の声が出てこない。

 

「う~ん、よくみえないよ~。」

 

「あ、あの・・・マリー様!私です!以前カトレア様とお会いした・・・!!」

 

あの人全く変わらない彼女の様子に我に返ると、リオはすぐに扉へ駆け寄った。

 

「あ!あの時のおねーさん!」

 

聞き捨てならない言葉が聞こえたが・・・今はそれを否定している時間も惜しい。

 

「はい!そうです!!マリー様・・どうしてここに!?」

 

「え?だってここマリーのおうちだもん。」

 

何という行幸だろうか。偶然運び込まれた門番のうちがあろうことかマリーの家。

 

リオは頭の中で考えた。マリーを説得してどうにかこの部屋から出れないだろうかと。

 

「おねーちゃんはなんでマリーのおうちにいるの?」

 

「そ、それは・・・いえ、実はカトレア様が御病気になってしまって・・・・」

 

リオは必死に説明した。時間はかけないように・・しかしマリーに理解できるように丁寧に。

 

「カトレアおねーちゃんが!?」

 

「そうです。なので、マリー様。どうかお医者様に連絡を入れていただけませんか?」

 

「で、でもマリーお医者さんの電話番号知らない・・・・」

 

それを聞いてリオは再び悔しさに唇をかんだ。ここまで、ここまで来たのに結局は翌朝を待つしかないというのか・・・

 

「でも。おねーちゃんをここからだしてあげる!」

 

「・・・・は?」

 

しかし彼女から聞こえた言葉。一瞬リオも理解が追い付かなかった。しかし、当のマリーはリオの疑問にも答えずに「待ってて!」の一言でどこかに走って行ってしまった。

 

 

唖然としたリオだが、ふと体を襲う急激な寒気に体を震わせた。

 

{・・・こ、これ・・・ほんとにまずいかも・・!!}

 

気を抜いてしまえばそのまま倒れ込んでしまいそうになるのをなんとか気合だけで踏みとどまり。ただただマリーの帰りを祈っていた。

 

 

しばらくして、少し控えめな蹄の音が聞こえてくる。

 

「おねーちゃんおまたせ!!」

 

「マリー様!!」

 

扉の隙間から目を凝らすと、マリーがガチャガチャと鎖と格闘しているのが見える。そしてしばらくすると、ゴトリと思い音がして、扉が開かれた。

 

「おねーちゃんだいじょうぶだった?」

 

「はい。ありがとうございますマリー様。このご恩は忘れません。」

 

「う、うん。それよりおねーちゃんつらそう・・・」

 

扉を開けて笑顔を見せてくれたマリーだが、リオの顔を見た瞬間、今度は心配そうにこちらに歩み寄ってきた。

 

「だいじょう――――――あつっ!!おねーちゃんすごいねつだよ!!?」

 

あまりの顔色のひどさに、しゃがみこんだリオの額に手を当てたマリー。その異常さにすぐに気付き心配の色をさらに濃くした。

 

しかしリオはそれに対しても再び笑顔を作るとゆっくりと立ちあがった。

 

「へ、平気です。僕よりも・・・カトレア様が・・・」

 

「で、でも・・・「マリー!!どうした!何かあったのか!!?」・・・っ!おとーさん!」

 

家の奥からよく聞けばどこかで聞き覚えのあった男性の声と蹄の音が聞こえる。

こんなところを見られればリオは再び捕まるどころかマリーにも迷惑がかかる。それを考えたリオはすぐに手ごろな窓へ手をかけて外を見る、幸いにもここは一階のようだった。

 

「マリー様、すぐにお部屋にお入りください。私のことは放っておいてくださって構いません。」

 

「そ、そんなことできないよ!!」

 

「構いません。マリー様にはとても感謝しています。これ以上ご迷惑をおかけするわけにはいきません。」

 

「マリー!!」

 

ついにマリーの父親がマリーとリオを発見した。その顔には明確な憤怒が浮かび。冷静に話を聞いてくれるとは思えなかったため、リオはすぐに窓を開けて強硬手段に出た。

 

「マリー様。ありがとうございました。お父様には後日謝罪にお伺いします。」

 

「あっ!おねーちゃん!!」

 

それだけ言い残し、リオは窓から身を乗り出すと。相変わらず勢いの衰えない嵐の中に姿を消した。

 

 

 

 

 

 

リオが窓から飛び出した後。窓を見つめるマリーの横に父親が駆けつけた。

 

「マリー!無事だったか!?あの人間に何かされなかったか!?」

 

「・・・お、おとーさん。あのね、おねーちゃん。ぐあいわるそうで・・・あの。」

 

怒りをあらわにする父親に驚きながら、先ほどのリオの状況を説明しようとするマリー。しかし、父親はそれを聞かずに窓を力任せに閉めた。

 

「クソ!あの人間め!まんまと逃げだしやがって!」

 

「ちがうのおとーさん!!おねーちゃんは おいしゃさんを さがしてたの!」

 

娘の言葉に驚くが、すぐに真剣な顔になって娘と視線を合わせる。

 

「マリーよく聞きなさい。あの人間に何を言われたのか知らないが、あいつは大うそつきなんだ。」

 

「う・・そ?」

 

「あぁ、私たちに嘘をついたんだ。自分が逃げ出すための嘘をね。人間っていうのはそういう・・・嘘つきな奴らなんだ。」

 

父の言葉に、マリーは先ほどのリオのことを考えていた。

 

扉の外にいるマリーにも必死に説明してくれて・・・・

 

自分も辛いはずなのに、カトレアのことを助けようと必死になって・・・

 

そんな人が、自分のためだけに嘘をつくなんて思えなかった。

 

「でも!おねーちゃんも つらそうだった!!」

 

「それは演技だよ。私やマリーをだますためのな。」

 

自分の必死の言葉も聞き入れてくれない父。

 

マリーはただ、リオのことを考えた。初めて会った時のこと、先ほどの表情。こちらに向けてくれる優しそうな笑顔。

 

それを考えていた時。気付いたらマリーは父に向かって叫びをあげていた。

 

「おとーさんのわからずや!!!」

 

そこからのマリーの言葉足らずながらも必死な言葉を、父親はただ唖然と聞くことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

「ここだ!!」

 

マリーの家を飛び出してから全速力でたどりついた場所はほかの家よりも大きな建物。以前カトレアに案内されたことのある。診療所。

 

この街にあるのは病院ではなく診療所。一人の医者が切り盛りしている小さなものだった。

 

そのドアを力強くたたいていると、中から鍵を開く音がして扉が開き、中から白衣を着た初老のケンタウロスがこちらを見下ろし、目が合った瞬間面倒くさそうに顔をしかめた。

 

「人間がこんなところに何の用だ?」

 

「カトレア様が・・・御病気でっ・・・!お願いします!カトレア様を助けてください!!」

 

精一杯頭を下げる。門番の青年にはこう言って信じてもらえなかった。そうなってしまったらどうしようかと、リオの頭に不安がよぎる。

 

しかし、先生と思わしきそのケンタウロスはその言葉を聞くと、

 

「症状を教えなさい。」

 

呆気なく、リオの言葉を信じた。逆にその言葉をリオ自信が信じられず、顔をあげて唖然としていると。

 

「なんだ・・?嘘なのか?」

 

「っいえ!!今朝から熱が下がらなくて・・・風邪の薬も解熱剤も聞かなくて、咳はないのですが喉が痛いらしく・・・」

 

 

リオは今日見た限りのカトレアの様子を鮮明に説明した。その話が進むにつれて医者が表情を濁らせる。

 

「ふむ・・・聞いた限りでは風邪の症状そのものだが・・・そんなに苦しそうだったのか?」

 

「はい・・・呼吸も荒く、苦しそうにしておられました。」

 

「診てみないとわからんが・・・危険かもしれん。」

 

「・・・ならっ!!急いで家に!!」

 

「それがそうもいかんのだ。」

 

「なぜです!!」

 

医者の言葉に珍しく怒りを見せるリオ、しかしそれに対しても医者のケンタウロスは冷静に口を開いた。

 

「いま、治療中の者がいてな・・あまりここを空けるわけにはいかない。ただでさえカトレアの嬢ちゃんの家まで距離があるんだ。どうしてもというならここまで来てもらわければ・・・」

 

「そんなっ!!」

 

ただでさえ通常片道40分のカトレアの家、往復で軽く一時間。そこに診察や治療を考えると一時間半もこの診療所を空けることになる。その間に何かが起こるとも限らない以上。彼はここを離れることはできないのだ。

 

理解しても納得のできないリオ。力強くこぶしを握ると。来た道を戻ろうと振り返る。

 

「どうするつもりだ!」

 

「カトレア様を運びます!!」

 

「馬鹿を言うな。君のようなひ弱な人間がケンタウロスの女性を担いでこの嵐の中あんな遠いところまで行って帰ってくると・・・不可能だ。」

 

「それでも!!」

 

「それに・・・顔を見ればわかる。君自身ももう限界だろう・・・いや、すでに超えているかな・・?それは君自身が一番わかっているはずだが?」

 

「なら!どうしろというんです!?」

 

ぶつけどころのない怒りを、リオは口から吐き出した。

 

「嵐がやむのを待ちたまえ、嵐がやみ次第、街の人間に声をかけて――――「それでは間に合わないかもしれない!!・・・・」

 

悠長な言葉にリオもついつい言葉が荒っぽくなる。

体の不調からもあるかもしれないが・・・奴隷の言葉から、普段のカトレアとの会話のような、敬語の抜けた言葉。

 

「カトレアは・・今も苦しんでるんだ!!なら!放っておけるわけないだろ!!」

 

「・・・・・」

 

これには医者自身、何も言えなくなってしまった。彼自身リオの言葉を、想いを理解できないわけではない。しかし、彼は医者として最善を尽くさなければならない。

 

耐えきれなくなったリオが、カトレアを連れてくるべく医者に背を向けた時・・・

 

 

 

 

「待て餓鬼!!」

 

突然の第三者の声にリオも医者もその声のほうへと顔を向ける。そこにいたのは・・・

 

 

「俺がカトレアちゃんを迎えに行ってくる。お前は先生とここで待ってろ。」

 

「おねーちゃんも ぐあいわるいんだから。ここでマリーといよう?」

 

荷馬車を引いた先ほどのケンタウロスと、それの二台から手を振るマリーだった。

 

 

「・・貴方は・・・どうして・・・?」

 

「ふん。お前のためじゃない。マリーに頼まれたから仕方なくだ。それに・・・カトレアちゃんは俺達の仲間だ。」

 

「おねーちゃん!おとーさんもしんじてくれたよ!」

 

ゆっくりとこちらに荷台を引いてくる男と、その後ろから笑顔でこちらに駆け寄ってくるマリー。

リオはいまだに現状の理解ができなくて、唖然とマリーの父とマリー本人を見続けていた。

 

「というわけだ先生!診察の準備だけしてまっててくれや!!」

 

「・・あぁ。カトレア嬢は体力の消耗が激しいはずだ。できる限り丁重にお運びしてくれ。」

 

「まかせな!!」

 

それだけ言うと男は荷台を引いて嵐の中を走っていった。リオが走るよりも数倍速く・・・あっという間に後ろ姿が見えなくなってしまう。

 

「おねーちゃん!あとは おとーさんに まかせて。おとーさん。すごくはやいんだよ!!」

 

自慢げに話してくるマリーにリオもやっと理解した。

 

もう安心していいんだと、自分にできることはもう何もないんだと。

 

「・・・そっか・・・よかっ・・・たぁ・・」

 

「おねーちゃん!!!」

 

力が抜けて倒れ込むリオをかろうじてマリーが支える。リオよりも年下であるというのに、ケンタウロスと人間だからできたことだ。

 

「せんせー!!」

 

「あぁ。わかっているよ。といっても私は人間の症状はわからないんだが・・・」

 

最後にリオが聞いたのはこのまま意識を落とすには不安の残る言葉だった。




はい、というわけで・・・・

偉く長くなってしまいました。最後に向けてのお話でしたがやはり無理やり詰め込みすぎましたかね。

というよりこんな展開にするならマリー以外にもちゃんと名前を考えておくべきでした・・・
読みづらい文章になってしまい申し訳ありません。

さて、次回でようやくカトレア編終了の予定になります。最後までイチャイチゃできなかったような気がしますが、最後はちゃんとケンタウロス娘の魅力を皆様にお届けできるように頑張りたいと思います。

それではここまで読んで下さりありがとうございました。
感想、一言ありましたらお気軽に書いていただけると嬉しいです(^ω^)
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