ヘボットを抱きかかえながら森の奥へ進んでいく、しばらくすると少し開けた場所に出て、そこに小さな小屋が。
「あれだ、あの小屋がネジキール卿の家だ」
「卿っていうくらいだしもうちょっとおっきな家を想像してたんだけど……」
「まあ、俺もあいつも周回の外から来たからな、家無しからのスタートだったんだ」
「狭くても快適ベホ」
「住めば都というやつですな!」
「さて……」
少しの雑談の後、マンドライバーが気を引き締めた顔になる。
「じゃあ、ネジキール卿を呼ぶぞ」
「うん……」
すう、と一度大きく息を吸い込み、一瞬止まった後。
「キルちゃーん!遊びに来たよー!」
「えええええ!?」
「そんなんでいいの!?」
「え、だって大きい声で呼んだほうが聞こえるし」
「言い方!言い方!」
この人、便器に入ってた時もそうだけどなんか変なところで抜けてるというか、変わってるなぁ……。
しばらく待ってみるけど、返事はないし誰も出てこない。
「居ないのかな?」
「でもさっきまで居たからそんな遠くにはいけないはずベホ」
「うーん、キルちゃーん、出ておいでー!」
アストルフォがキルちゃん呼びに便乗し始めた。
「う、うぐっ、ぐぐぐ」
小屋の中から呻き声と共に鎧を纏った大男が出てくる、彼がネジキール卿だろうか?
「ネジル!」
「返せ……相棒を返せ!」
「キルちゃん!」
相棒ってこのヘボットの事……? 自分で追い出しておいて返せって……。
「やっぱり、記憶と視覚がおかしくなっているみたいだ」
そう言って腕からドライバーを出すマンドライバー、やっぱりって、前にもこんな事が?
「気絶させて修正する、立花はヘボットを頼む」
「任せて!」
「キルちゃん、恨むなよ!」
「ボクたちもいくよ!」
「男の相手は不服ですが、ちびっ子の為に行きますぞー!」
ネジキール卿のクロスレンチによる薙ぎ払いが三人を同時に吹き飛ばす。強い……!
「マスター!こいつすっごい強いですぞ!」
「ボク怪力スキル持ってるはずなんだけどなぁ!」
「くっ、暴走したらこんなに強いのか……」
真正面からじゃ勝てない……なら何か戦略を考えないと。
「足止めできれば黒髭の宝具でどうにか……」
「足止め?ならボクに任せてよ、普段は使ってない宝具だけど、相手を転ばせられるよ!」
「それだ!」
そして確実に足に当てる為にはやっぱりその足止めしなきゃいけないから……足止めの為の足止め、ややこしい。
「マンドライバー、一人で何秒抑えられる?」
「そうだな、ボキャネジ無しでも十秒なら」
「十分!その間にボクがやるね」
「追撃来ますぞ!」
こちらへ一気に距離を詰め、クロシレンチを上段から振り下ろしてくる。
「うおおお!」
それをマンドライバーがしっかり受け止める、これならいける!
「アストルフォ!」
「うん! いっくよー!
アストルフォの構えた槍の先端がネジキール卿の足に触れる、その瞬間右足の膝から下が消失する。チャンスだ!
「アストルフォ、マンドライバー下がって! 黒髭、宝具!」
「まかされて!」
合図と同時に周囲に魔力の奔流が起こる、そして黒髭の背後の空間が歪んだと思うとその瞬間、一隻の海賊船が姿を現す。
「行くでござる行くでござる!
そしてそこからネジキール卿に向かって何発もの砲撃が浴びせられ土煙が舞い上がる、これなら……!
「やったか!?
「マスター、それフラグですぞ」
土煙が晴れ、姿が露になる。
「そんな……!」
「いや、大丈夫だ。あの感じもう正気に戻ってるはずだ」
「俺は……俺は何てことを」
ネジキール卿は立ったまま泣いている。
「キルちゃん……」
「ネジルー!」
「あっ」
ヘボットが腕から抜け出してネジキール卿の方へ駆け寄る、危なくない……よね?
「相棒、俺は……すまねぇ相棒、俺はまたお前を」
「バカー!」
ヘボットがネジキール卿の頬を叩き、乾いた音が鳴り響く。なんか一瞬体生えてなかった!?
「えっ今体生えてなかった?」
「拙者はそんなもの見えませんでしたぞ?」
「マスター、あんまりそっちにツッコミ入れると戻ってこれなくなるよ?」
「なにそれ怖い」
アストルフォがすごい怖い事を言ってるけど本当なんだろうか……。
「あ、相棒……」
「なんで苦しいならオレ様に相談しないベホ! オレ様はネジルの相棒ベホ、一緒に助け合うものベホ!」
「うっ……」
「オレ様とネジルはいつも一緒邪気、もう離れ離れにはなりたくないベホ」
「相棒……ああ、ごめんな、もう離れたりしない……絶対にだ!」
そう言って抱き合う二人、なんだかちょっと泣けてくるな。
「一件落着、かな」
「だね、うーん、やっぱり友情って美しいね!」
「いいなぁ……相棒との友情、俺もいつか相棒と再会して」
「マンドラ氏、ちょっと目が怖いですぞ」
「えー? そーかなー」
とりあえず、ネジキール卿を救うことができたみたいだし、目標は一つ達成かな。