東方染色記   作:折れない黒鉛筆

16 / 24
どうも、2話投稿すると言ったもののまだ一話しか書けてないうp主の折れない黒鉛筆です。
いきなりですが書くこともあんまり無いので第十五話をどうぞ。

前回のあらすじ
宴会の準備をした
宴会に参加した
宴会の片付けを一人でやった結果朝までかかった

修正履歴
2017/12/25 台本形式を修正+ストーリーがズレない程度に地の文やとある新聞記者のタレコミ情報等を修正&追加


第十五話 取材と妖怪の山と鴉天狗

「うーん…」

そう言って軽く溜息をつく。あの宴会から数日が経った。その数日の間俺はひたすら自身の【インクを操る程度の能力】について実験していた。と言っても分かったことは一日に使えるインクの量に限りがあって、インクは睡眠を取ることで回復するって事だけなんだけどな。

そして今俺がしていること。それは……

「……暇だ。」

ただ縁側に座り、暇している。今日の能力実験もある程度終えたし境内の掃除も終えた。それは霊夢も同じで、俺の横でお茶を啜っている。

「なあ霊夢、何かする事無いのか?暇で仕方ないんだが。」

「あら、別に暇でもいいじゃない。たまにはこういう一日を送ってもいいんじゃないかしら?」

まあ確かにそうだ。あっちの世界ではこんなに日向ぼっこしてボーッとする事なんてほぼ無かったしそれする暇があればガチマッチ潜ってたしな。

「…まあそうか。んじゃ、今日はダラけますかね……」

「そうね……って誰か来たわね。」

確かに、賽銭箱がある方から足音が聞こえた。何かが着地する音ぽかったが……大体こういう時は魔理沙でも来たのか?と思ってしまう。だってあいついつでも来るし。

「あやややや、ここに居ましたか。」

「……勝手に人の家上がりこまないでくれる?」

恐らく話し方からして魔理沙ではない。取り敢えず声がした後ろの方を振り向くと、そこには見たことのない少女が一人。

その少女は黒いフリルの付いたミニスカートと白いフォーマルな半袖シャツを着ていた。まるで学校の制服みたいだ。

「初めまして!私、こういう者でございます。」

その少女からいきなり名刺を渡され、取り敢えず見る。

「あ、どうも。何々…『文々。新聞(ぶんぶんまるしんぶん) 記者 射命丸 文(しゃめいまる あや)』…?」

「はい!清く正しい射命丸です!よろしくお願いしますね、康介さん!」

「おう、よろしく。ところで何故俺の名前を…?」

「あら、私新聞記者ですよ?それくらいの情報くらいすぐ掴めますって。」

文の説明にああそうか、と妙に納得したところで霊夢が口を開く。

「で、何の用?用件によっては今すぐここから出ていって貰うけど…?」

「ちょっと、落ち着いてくださいよ〜。今回用があるのは、そちらにいらっしゃる康介さんですよ。」

「え、俺?」

唐突に文の話の内容に俺の名前が出てきて一瞬困惑する。

「そう、貴方です!今回は貴方を取材したくてですね…」

「取材…ねえ…」

実は、俺は新聞記者をあまり信用してはいない。そもそもメディアですらあまり信用してない。理由としてはあっちの世界にいた頃様々な情報は基本ネットから仕入れるか自身の目で確かめたりしていたし、そもそも本当の情報をメディアが報道しているのか、という所で疑っているからだ。

だからといって今回の取材に断る理由もない。どうしようか悩んでいると霊夢が口を挟んだ。

「康介、断った方が良いわよ。こいつ、デマしか書かないから。」

「酷い言い様ですね…真実だってちゃんと書きますって〜。」

霊夢の提案を聞き、文が反論を述べる。何だかんだ言ってこの二人も仲良いのだろうか。まあそんな事は今はどうでも良い訳だが。

「うーん……いや、断る理由もないし取材に応じるわ。但し、二つ条件がある。」

「ありがとうございます!それで、二つの条件とは…?」

「なに、簡単な事さ。一つ目は『デマを書かない。』まあ俺というネタが入るからデマを書く理由なんてないだろうと信じてるけどな。二つ目は『ここではない人気の少ない室内で取材する。』これに関してはただ単にやって欲しいってだけなんだがな。ちなみに約束を破ったらこれからの取材には応じない。どうだ?」

そう言いながら右手の人差し指と中指を立て、文に条件を提示する。すると文は少し思案する様子を見せた。そして、

「分かりました。それでは私の家で取材でもしましょうか。と言っても妖怪の山に人間を入れるのは気が引けますが…まあ私がいますし大丈夫でしょう。」

条件を飲む事を承諾してくれた。まあ最近何も無かったからこういうミニイベントみたいな事があっても良いなと思っていた自分がいる。

「ちょっとあんた、大丈夫?」

「ん、平気平気。大丈夫だって。日没までには帰るから。」

「……はあ。しょうがないわね。行ってきなさい。但しそこの鴉天狗に何かされたらすぐ言いなさいよ!」

「おう、分かってる。んじゃ文、少しだけ支度するから待っといてくれ。」

「了解です!」

霊夢にも承諾を得たところで、俺は外出準備を始めるべく、自身の荷物が置かれている場所に向かう。そしてバッグの中身を確認。

(えっと…いつものバッグにスペルカードと白紙のスペルカードとスマホと財布…そうだ、少し試したいことがあるから仕込んどこ。博麗神社の裏手辺りで良いかな。)

 

 

 

少年仕込み中…

 

 

 

「おっけー、準備できたぞ。」

「それじゃ行きますか!私の家は妖怪の山にありますからしっかり付いてきてくださいね〜。」

そう言って飛び立つ文の背中を追って、俺は幻想郷の空へと飛び立った。

「ところで妖怪の山ってどこだ…?」

そんな疑問を抱きつつも取り敢えず文について行けば良いかと思い、先を飛んでいる文を見失わないように飛び続けた。

 

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「よっと……康介さん、ここが私の家です!」

「うへえ…遠いし疲れたなあ…」

ようやく着いた。俺がこう言っている訳としては、遠かったのもあるが、何より妖怪の山に入ろうとしたとき何か文の知り合いらしい見張りの白狼天狗(犬走 椛(いぬばしり もみじ)と言うらしい)に太刀で思いっきり斬られかけたからだ。何とか文が説明してくれて今回だけ入山を認められた。多分文が説明に入ってくれなかったら弾幕ごっこに発展してただろうし多分今の俺じゃ勝ち目はないと思う。ていうかそもそも斬りかかられた段階で死んでたな。まじで文に感謝。どうやらここ妖怪の山は基本的に人間は立ち入っちゃいけないらしい。椛からも『用事が済んだらすぐ帰ってくださいね?』と言われている。まあすぐ帰るつもりだし今回は上手くやれば即帰宅できるしな。

そんなことを考えていると、文が扉を開けてくれた。

「ささ、どうぞどうぞ〜。」

「さてと…お邪魔しまーす。」

「私以外この家には住んでいませんよ。」

「…それを早く言えよ。」

何処かでやったような会話を交わし、俺は中へと入った。これが所謂デジャヴというやつなのか…?

「そこのちゃぶ台の近くにでも座っててください。今お茶を入れますので…」

「別にお茶なんて出さなくていいぞ。そんなに長居する気はないしな。取材が終わったらすぐ帰る。」

「あやや、そうですか。じゃあお言葉に甘えて…早速取材を始めますか!」

「おう、分かった。」

文が向かい側に座り、手帳とペンを取り出す。さて、取材開始だ。一体どんな質問が投げかけられるのやら…

「さてまずは……どうしてこの幻想郷に?」

(割と真面目な質問だな…もっとこう、『好きな女性のタイプは!?』とか言って来ると思ったわ。まあ良いか。言ってこないのならそれで良いか。)「友達の家から帰る途中、神社に立ち寄ろうとして神社に足を踏み入れたら何故かここにいた。それだけだ。だから理由なんてない。」

ありのままに答えると、文が「ふむふむ…」と言いながら手帳にメモを取る。対面する形で座っているのでどんな事を書かれているか見えないが、変な事を書かれていない事を祈る。

「じゃあ何故帰らなかったんですか?霊夢さんや紫さんなら貴方を元の世界に返せるはずですが?」

「『帰らなかった』と言うより『帰れなかった』だな。いつ発現したかは知らんが帰るときには何故か俺に能力があって帰れなかったんだ。」

「なるほど…で、その能力というのは?」

「俺の場合は二つだな。まず【天気を操る程度の能力】。幻想郷中の天気を変えるなんて神みたいなことは出来んが雲に風、あと…雨なんかの天気に関わるあれこれが操れる。もう一つは【インクを操る程度の能力】で、これに関しては……長くなるから割愛するが外の世界にあるそこそこ有名なゲームに登場するブキやらを扱うことが出来る。」

「なるほど……ところで、いんく というのは?」

そうか、一応インクも外来語だからこっちで伝わる人と伝わらん人がいるのか。まあ今回に関しては霊夢の話から推測すると『人』ではなく『鴉天狗』だが。

「そうだな、簡単に言うと……カラフルな墨汁?青や緑、オレn…橙色もあるぜ。」

「よく分かりませんが理解は出来ました。それで、次なんですが…」

まあこの流れからして次もまともな質問だな。文のこと怪しい目で見てたけど清く正しい射命丸って言う二つ名?は本物だっ──

「ズバリ!この幻想郷で今まで会ってきた人妖の中で一番タイプな方は!?」

……前言撤回。その二つ名、偽物だわ。全然清く正しくねえじゃねえか。霊夢があんな態度取るのも頷ける気がする。思わず溜息が出た。

「……帰るわ。」

「ちょっと!待ってくださいって!せめて質問の答えだけでも…!」

「冗談だって。一度取材を受けるって言ったんだ。命に危険でもない限り俺は逃げたりしねえよ。こんな所で死なないと思うしな。」

「なんだ、冗談でしたか……それで、質問の答えは!?」

「その質問に拘りすぎだろ…まあいいけど。んで、その答えだが……今の所はいない。」

「あやや…そうでしたか…」

俺の回答聞いてあからさまにテンションを落とす文。流石に落としすぎな気もするが、まあこれで変な質問は終わりだよな…?

「じゃあ、博麗霊夢さんのことをどう思ってますか!?」

はいフラグ回収。これ系統の質問もう少しだけ続きそうだな。

「霊夢か?若干怠け癖強いし興味ないことにはとことん興味示さんし……でも、何だかんだ弾幕ごっこも強いし他の奴らからも好かれてて普通に良いやつだと思うぞ?」

「そうですか……うーん、中々ネタに出来そうな話がありませんねえ…」

「面白味のない人間で悪かったな。」

自虐気味に返すと、文は少し思案した表情を見せ、「あっ!」と言った。何か思い出したのだろうか。

「私としたことがまだ紅霧異変について聞いてませんでした!」

「そういえばそうだったな。」

「まず事実確認ですが、貴方は異変解決に協力したという事で間違い無いですね?」

「多分合ってるんじゃないか?と言っても途中から霊夢について行ってただけだけどな。」

「あや、そうなんですか?噂によると、咲夜さんを一人で倒してレミリアさんも倒し、暴走していたフランさんを元に戻したとかと聞いているのですが…?」

「一部合ってるが少し違うな。咲夜は霊夢と協力して倒した。んで、霊夢と一緒にレミリアと戦ってる途中にフランが乱入。その暴走してたフランを説得+αで元に戻したってだけだ。でも実際咲夜戦といいレミリア戦といい霊夢の足手まといしてたと思うぞ?」

「なら、どうして霊夢さんについて行ったんですか?足手まといになるくらいなら博麗神社とかで留守番していれば良かったのでは?」

「それに関しては詳しくは言えないからパスで。そうだな…嫌な予感がしたから、という事にしておいてくれ。」

「むむ、何か重大な感じですね…分かりました。そういう事にしておきます。」

仮に予知夢のことを話したとして、もしそれが新聞に載ったらその新聞を見た奴の対応で面倒くさくなりそうだったので話すのはやめておいた。そもそも信じてくれるかどうかすら怪しいけどな。まあ予知夢に関しては話さざるを得ない状況になれば話すつもりではある。

「ふむふむ…まあこれくらいあれば何とか記事は書けるでしょう。」

文がメモ帳を眺め、うんうんと頷く。って事はつまり…

「今日はわざわざ取材を受けていただいてありがとうございました!一応記事は書けるくらいに内容が出来たので…あ、そうだ。」

「ん?なんだ?」

「最後に新聞に載せる用の写真を撮っても良いですか!?」

「おう。別に良いぞ。出来るだけ早めに帰りたいからさっさと頼む。」

「ありがとうございます!じゃ、こっち見てください……」

そう言って文がカメラを取り出す。見た感じフィルム式だから相当古いと思うけど…

「取り敢えず一枚撮りますねー…はい笑って笑ってー……」(パシャリ

「撮れたかー?」

「多分大丈夫なはずですが…念のため、もう一枚宜しいですか?」

「別に構わないぞ。」

「ありがとうございます!それじゃもう一枚……」(パシャリ

「これで正真正銘今度こそ取材終了か?」

「そうですね。今日はありがとうございました!良ければ麓まで見送りますよ?多分事情を知らない天狗達から見たら貴方は侵入者にしか見えないでしょうし。」

「確かにそうだ。だが…少し試したいことがあってな。多分成功すればすぐにここから出ていけると思う。」

「じゃあもし試したい事が失敗したらまた戻って来てください。その時はしっかりと麓まで送りますので。」

「ああ、頼む。それじゃ、またいつか。頼むからガセネタ書いたりするなよ?」

「任せておいてください!この清く正しい射命丸、デマなんか書き上げませんって!」

「なら良いんだ。それじゃ。」

そう言って俺は文の家を出た。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「さて…と。やるだけやってみるか。」

文の家を出た俺は近くにあった少し開けた場所に行き、先ずは博麗神社に置いたアレをイメージする。やり方が分からないし確かアレは本来ならばイカにしか察知できない信号か電波だかをを察知して飛ぶって感じらしいし……まあ一応スマホで写真撮ったしそれでも眺めれば何とかなるか?そう考え、俺はスマホを操作し始める。

「えっと…あったあった。」

よくよく考えれば不思議な光景だよな。だって現実の風景の中に本来スプラでしか出てこない筈のジャンプビーコンが同じ写真内に写ってるっていう写真を眺めてるもんな。

……で?ここからどうしろと?

全くもって手掛かりが掴めん。俺は純粋な人間(多分)だからイカにはなれんし…だから電波的なやつは察知出来る筈がない。

もう日も沈みかけてるし早めに諦めるか、とスマホをしまい文の家に引き返そうとしたその時、頭の中に突然ジャンプビーコンを置いた辺りの風景が蘇ってくる。

(今ならワンチャンいける…!?)「スパジャン!博麗神社境内のジャンプビーコン!」

今しかないと思い、スペル宣言をする時のように行き先を口に出す。そして助走をつけて空に向かい軽くジャンプするつもりで足を踏み切る。すると一気に俺は博麗神社方面へと飛んでいった。

「〜〜〜っ!」

あっという間に博麗神社が見えてくる。あれ?そう言えばこれって着地どうするんだ…?やばいと直感的に悟り、着地点であろう場所に雲を出そうと試みる。しかし、全くもって雲は出てこない。もしかして…

(片方の能力発動中はもう片方は発動出来ない!?)

あ、詰んだわ。俺の体は急降下を始め、どんどん地面は近づいてくる。取り敢えず被害を抑えるためにどうにか足から着地できるように体制を調整。そのまま…着地。

「痛…くない!?」

後ろを見るとそこにあったビーコンは無くなっている。そしてここは博麗神社。そして足は痛くない。これらから導き出される結論は、ただ一つ。

「成功した…のか?」

あんな高さから落ちたら普通ひとたまりもない筈なのに。もしかしてスパジャン…もといスーパージャンプ中は何かが起こって足の方は心配しなくても良いとか…?それとも一瞬だけ減速してるとか…?これもう分かんねえな。

取り敢えず帰ってこれたし神社の中に入りますか…

「ただいまー。」

「あら、早かったわね。それはそうと、あんたがどっか行ってる途中、レミリアのとこのメイド長が来て、『明日紅魔館に来て欲しい』とのことよ。」

「? 何で来て欲しいんだ…?」

「なんでも紅魔館の魔法使いが用事あるそうだけど。」

紅魔館の魔法使いと言うと…パチュリーさんか?なんであの人が俺なんかに用事があるんだ?

「……???尚更訳がわからん。取り敢えず夕飯作るわ」

そう言い残して俺は頭にハテナを浮かべつつ夕飯の支度を始めるのだった……




次回予告
翌日、霊夢に言われるがまま紅魔館に出向く康介。そこでパチュリーから超意外な事実を告げられ、一時は困惑する康介。しかし、その事実をしっかり受け止め、その事実を使い新しい事を練習し始める…!
次回 「第十六話 魔法使いが言う魔法関係の事は大体信用できる」(仮)

如何でしたでしょうか。
あまり後書きで話してる時間もあまり無いのでここらで失礼。
以上、うp主の折れない黒鉛筆でした。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。