東方染色記 作:折れない黒鉛筆
本編に移行する前に、この前書きを書く前に確認してみたところ、UAが1000を突破してました!すげえ。
まさかこんなにも早く行くとは思ってなくて若干驚いてます。そして誰かUAの助数詞を教えて下さい。件なのか個なのか若干戸惑ったりしてる自分がいる。
因みに今回はあれやこれやと詰め込んだら本題がだいぶ後ろの方になっちゃったのでタイトル変えました。
さて、前置きはこれくらいにしておいて第十六話をどうぞ。
前回のあらすじ
射命丸文という新聞記者から取材を受けた
とある白狼天狗に斬られかけた
ジャンプビーコンを上手く使い博麗神社に帰宅した
修正履歴
2017/12/26 台本形式を修正+ストーリーが動かない程度に地の文や主人公の口調等を修正&追加
「そういえばさ、霊夢」
夕飯を食べ終わり、私がお茶を啜っていると康介が話しかけてきた。
「何の用かしら?」
「いや、大したことじゃないんだがふと気になったことがあってだな…」
そう右手の人差し指で頰を掻きながら言い、康介は言葉を続ける。
「明日紅魔館に行けって霊夢が咲夜から伝言受けたみたいなこと言ってただろ?その伝言受けたときの事なんか少し気になったから聞きたくなって…」
なんだ、そんなことなのね。別にあのメイド長からこの事について隠しておいてとも伝えられていないし別に話してもいいわよね?
「良いわ。軽く話しましょう。」
そう言い私は両手で持っていた湯呑みを置き、まずその時のことを思い出した……
─────
康介が妖怪の山へ出発した約一時間後…
「はあ…暇だしあいつも居ないから尚更退屈ね。」
そう言って私は茶を啜る。アイツと言うのはもちろんそう、天ヶ原康介のこと。あいつは今おそらくだけど、ブン屋の取材に応じて妖怪の山辺りにでもいるんでしょうね。
やっぱり引き止めておくべきだったかしら。一応あの時は私の勘が大丈夫だと言っていたから許可したけど…まあ多分ブン屋とあいつの事だし何とかなるでしょ。
それにしても…こんなに誰もいないと静かでいいけど逆に退屈すぎる。あいつが来る前は大体いつもこんな一日を送っていた訳だけど……やっぱり誰か居ないと物足りない。こういう時に魔理沙でも来ればいいんだけど…そういう時に限っていつも魔理沙は来ないから困る。
ふと小皿に手を伸ばすとそこにあった煎餅が無くなっていた。まあ自分で食べ切ったからなんだけど。それに出した煎餅3枚くらいだったし。まだ退屈しそうなので私は煎餅を取りに行こうと立ち上がる。それに…お客も来たしね。お茶も入れないと。
「誰か知らないけど何か用ー?用があるなら縁側で待ってなさーい。お茶淹れるからー。」
おそらくお客がいる方向(賽銭箱の方向)に向かって声をかける。そして台所に向かって歩き出そうとすると、
「いいえ、お茶を淹れる必要は無いわ。気配からして康介が居ないから彼に用件だけ伝えてくれるとありがたいけど…」
と後ろから声が聞こえた。この声質に数秒でここまで来れる能力を持ったやつ…もう確定で誰か分かるわね。私は振り返りながらそいつに話しかける。
「…紅魔館とこのメイド長かしら?」
「あら、察しがいいのね。取り敢えず手短に話すわ。パチュリー様が『宴会のとき康介に違和感を感じたから連れてきて』と言われて来たのだけれど……居ないのなら仕方ないわ。この時間帯からして…明日まで待ってもらうしかなさそうね。」
康介に違和感…?少なくとも私は感じなかったけど……やっぱり純粋な魔法使いにしか分からない事だってあるという事ね。
「分かったわ。明日紅魔館に行くように伝えておくわ。それだけ?」
「ええ、それだけよ。それじゃ私は仕事があるからこれで。」
そう言い残すと咲夜は瞬間移動でもしたかのように何処かへ消えた。康介曰く彼女の能力は【時間を操る程度の能力】らしいから、時間を止めて紅魔館に戻ったのでしょうね。
「さて…また暇しますか。」
そう言った私は、欠伸を噛み殺しながらも煎餅を取りに行った。
─────
「…とまあ、こんな感じかしら?」
思い出しながら端的にまとめ、話すと康介も納得したらしい。うんうんと頷いた。
「成る程。ありがと、霊夢」
そう言って康介は立ち上がり、お風呂がある方向に向かって歩き出した。そういえば今日は康介がお風呂沸かしてくれるんだっけ。確か夕飯製作中にそんなことを言ってた気がする。
康介もいなくなり、居間には私一人しかいなくなる。いや、正確には……もう一人いるわね。
「紫、さっさと出てきなさい。」
「……あら、よく分かったわね。」
何もなかった空間からスキマが開き、紫が出現。ほんとこのスキマ妖怪は盗み聞きが趣味なのかしら?
「…で、少し聞きたいことがあるんだけど良いかしら?」
「…質問によるわ。」
紫のその言葉を聞いた私は、とある質問を投げかける。その質問は、本来あいつも気にしなければいけない内容。それなのにあいつはまるで気にしていない。まあこの世界をまだよく知らないというのもあるかもしれないけど。しかし本来なら気付いていないといけない。寧ろ気づかない方がおかしいまである。
「どうしてあんたはあいつ…天ケ原康介をこの世界に連れてきたのかしら?」
私と紫の間に暫くの間沈黙が流れる。聞こえてくるのは風の音などの自然の音。そんな音も気にせずに、ただ私は紫を見つめる。紫は相変わらず扇子で口元を隠している。そして、紫が口を開いた。
「……どうしてそう思うのかしら?」
「康介はこっちの世界で能力に目覚めた可能性が高い。つまりここに来た段階ではまだ普通の人間だったかもしれない、ということよ。基本普通の人間が幻想郷に迷い込む可能性は主に二つ。博麗大結界が緩んだときにあいつが偶然博麗大結界付近にいたという可能性。こっちの可能性はもしそうだとしたら博麗大結界の管理人である博麗の巫女、つまり私が気付くはず。でも康介が幻想入りしてきた時私は賽銭が入るまで気づかなかった。だからこの可能性はないと思うわ。となると、もう一つの可能性が高くなるわけ。そのもう一つの可能性は、あんたが神隠しとして連れてくるという可能性よ。」
「……霊夢にしては珍しく頭が切れてるわね?その通りよ。」
紫が事実を認めたところで、肝心の理由を聞き直す。
「で、なんであいつを連れてきたわけ?」
「私が康介を連れてきた理由。それは───」
─────
「……よし。風呂沸かせた。相変わらずこの方式は慣れない…」
愚痴っぽい何かをこぼしながらも今日は風呂を沸かすことに成功した。一昨日辺りは失敗したからな……このまま俺から入っても良いけど流石にそれはやめておくか、という事で先に霊夢から入ってもらおうと思い、霊夢がいるであろう居間に戻る。
「霊夢ー、風呂沸かしたから先入ってくれー」
「……あっ、うん。わかったわ。」
霊夢の反応がおかしかったような気もするがまあ良いか。どうせ大したことじゃない筈だ。そういえばまだスプラに出てくる全スペシャルを使ったスペルカードを作りきってなかったことを唐突に思い出し、霊夢が出てくるまでの間その作業をすることにした。
翌日………
朝食を食べながら、俺はふと思いついた質問を霊夢に投げかける。
「……そういえば紅魔館にはいつ行けば良いんだ?」
「さあ?朝食食べ終わってすぐでも良いんじゃない?用事があるのはそこの魔法使いであって吸血鬼ではないんだから。」
それもそうか、と言って俺は残りの飯を一気にかきこんだ。因みに念のため今日は階段ダッシュや能力の実験はしてない。紅魔館で何かあったときインクとかが切れると面倒くさい事になると思ったからだ。
「ごっそーさん……霊夢、今から紅魔館行ってきてもいいか?家事やら丸投げになるが……」
「別にそれくらい構わないわよ。さっさと行ってきなさい。」
「ありがと霊夢。んじゃ行ってくる。」
そう言って茶を一気飲みした後立ち上がり、俺は外出準備を始めた。
(えーっと……カバンの中にスマホ、財布、スペカ、白紙のスペカ、後は……まあこれくらいで良いか。)
準備を終え別室でいつものパーカーに着替え、身も引き締まったところで俺は外へと向かう。そして紅魔館に向けて空を飛んだ。
紅魔館には一度行ったことがあるし迷ったりはしないだろう。多分。
─────
迷うと思った?残念、迷いませんでした!!!
そんな分からない誰かに向かって言った煽り文句っぽいのはどうでも良いが、至って道中イベントとかもなく無事紅魔館に着くことが出来た。のだが……
「確か美鈴……だっけ。紅魔館に入る許可貰いたいんだけど…」
「zzz……」
「ダメだ起きねえ」
紅魔館に入れません。どうしよう困った。一応強硬手段でここを通ろうと思えば通れるのだけど、そうした場合その後が面倒臭い。許可貰ってないから不法侵入者扱いされて、敵対視され…その後は言わずもがな。
つまり美鈴をどうにかして起こさないとこの先には進めない、ということだ。
……にしても立ちながら寝るって別方向で捉えたら凄い芸当のような気が……
「あら、誰かと思って来てみれば康介じゃない。」
途方に暮れていると、紅魔館の敷地内の方から聞き覚えしかない声がした。
「咲夜じゃん。何でこんなところに?」
「お嬢様から『誰かが門前で途方に暮れている』と聞いたから美鈴の監視ついでに来たのよ。で、何の用……と言ってもパチュリー様から用件は聞いてるけど。さあ、入って。お嬢様の許可は得ているわ。」
咲夜がそう言うと、紅魔館の門を開けてくれる。ようやくこれで正式に紅魔館に入れた……何か凄い時間がかかったような気がする…
「さあ康介、付いてきて。……と、その前に…」
咲夜が美鈴に向かって何かを飛ばす。何となく見ないほうが良いかなと思い目を逸らした数秒後、門の方から断末魔っぽい何かが聞こえてきた。多分ナイフでも投げたのだろう……ってん?
「咲夜、今お前ナイフ投げて多分あの断末魔から察するに美鈴に突き刺さったと思うんだが……あいつ大丈夫なのか?」
「仮にも美鈴は妖怪よ。大丈夫に決まってるじゃない。寧ろああした方が居眠りされずに済むのよ。」
最早美鈴が妖怪であることに対し驚かずにへえ〜、と納得してる俺が怖い。幻想郷何でもありだな……下手したら死なない奴とかもいたり……なんてな。流石にそれはない。
閑話休題。
今俺は咲夜にパチュリーがいる(らしい)場所である大図書館へと案内されている。にしてもだだっ広いな…この館。掃除とか大変そう(小並感)
「さて着いたわ。ここが大図書館への入り口よ。くれぐれもパチュリー様に失礼のないようにね。」
「失礼のないようにって……敬語使えばいいのか?」
「さあ?そこを考えてこそじゃないかしら?じゃ、私は仕事が忙しいからこれで失礼するわ。」
そう言い残し、咲夜は一瞬にして俺の目の前から消えた。もうこの現象にも慣れつつある俺が怖い。幻想郷マジパネェ。
取り敢えず中に入ろうと思い、俺はかなり大きい大図書館の扉を開いた……
─────
「ここが大図書館か……でけえな。それに何かカビ臭いのは気のせいか…?」
そこには、天井にまで届きそうなほど大きな本棚がズラリと並べられていてその本棚の中にはギッシリと本やらの書物が詰まっていた。一部詰まってない箇所もあったけど。そして何かカビ臭い。まあこの大図書館は地下にあるらしく、ぱっと見窓も無いっぽいから風通しが悪いからだと思うけど。
「さてと、こんないかにも広そうな場所から人…いや魔法使いを見つけなきゃならんのか……なんか雑用係みたいなの居ないのか?もし居ればそいつに聞けば万事解決なんだけど……」
そこまで一人で言ったところで、ふと本棚と本棚の間を行き来する本を持ったパチュリーとは違った服装の少女が目に入る。
その少女は赤い長髪で頭と背中に黒い羽、白いシャツに黒色のベストに黒色のロングスカートだった。ひと目で見ればパチュリーじゃない事がわかる。ついでに人間ではないことも。まさか『雑用係』…なのか?取り敢えず追いかけて声をかけてみることに。
「おーい。そこの赤長髪の……人ー。」
「はい?何でしょうか?」
取り敢えずその少女を呼び止めると、その少女はこちらに気付いたらしく、こちらを振り向いた。
「俺今日パチュリーって魔法使いに呼び出されて来たんだけど、パチュリーがいる場所知らない?」
「パチュリー様ですね。丁度私もパチュリー様のところへ戻る所だったので良かったら一緒に行きませんか?」
「ああ、頼む。」
取り敢えず雑用係っぽい人?を見つけられたから後は大丈夫…かな。多分。
移動している最中に色々と話をしたが、どうやら彼女の名前は『小悪魔』というこれまた大雑把なくくりがあるだけで大した名前は無いらしい。何か可哀想。まあ今のところ小悪魔の別種出てきてないし小悪魔で良いかな。因みに紅霧異変の時はパチュリーの指示に従ってどうやらこの大図書館に隠れていたらしい。道理で初対面だった訳だ。
「着きましたよ。パチュリー様ー、お客さんが来てますよー。」
「ん……ああ、康介ね。わざわざ来てくれてありがとう。」
「こちらこそすまんな。用事があるって時に外出してて一日遅れちまってさ。」
取り敢えず椅子に座っているパチュリーと軽く話す。
「小悪魔、次はこれらの本を所定の位置に戻してきてもらえるかしら?」
「はい!行ってきます!」
そう言って小悪魔はパチュリーに指示された本を数冊持ち、飛び去っていった。こんなだだっ広いのに所定の位置があることに驚きだが。
「さて……私が貴方を呼んだ理由はただ一つよ。」
「ただ一つ?俺何か悪いことしたか?」
「いいえ、呼んだ理由は貴方を宴会で見たときに力の違和感を感じたからよ。単刀直入に言うわ……」
「貴方に微かにだけど霊力以外の力……魔力を感じるのは何故かしら?」
「…は?言ってる意味が良くわからんのだが…」
「言ってるも何もそのままの意味よ。で、何か心当たりはあるの?」
心当たりといっても……確か霊力は人間に元々ある力で、魔力は種族が魔法使いの奴にある力だっけ。で、その力は血液とかに流れてるらしい。つまり……?俺は顎に手をやり、考える。ベタなポーズだが割と考えやすいから困る。
考えた結果、幾つか可能性が考えられたのでそれを話すことにした。
「取り敢えず考えられる可能性は二つだな。一つは俺の親のどちらかが魔法使いだった可能性。そこから遺伝でこうなった的な感じ。ただそんな話は聞いちゃいないしそもそも現実世界に魔法使いなんて居る筈がないからこの可能性は消して良いはず。もう一つは俺の傷とかから魔法使いの誰かの血液が少しだけ混入したっていう可能性……ってその可能性しかないな。紅霧異変のときパチュリーを応急手当した際俺の傷口とパチュリーの傷口が触れたんだった。多分その時……かな?」
「成る程……で、どうするの?」
「どうするって?」
「その魔力よ。自身の身体から捨て去るのか簡単な魔法に使うのか。どうしたいの?」
そんなの答えは決まってる。その答えを自身の行動に出すために、俺は椅子に座ったままのパチュリーに向かって頭を下げる。
「パチュリー。俺に簡単な魔法を教えてくれ。」
その言葉を待っていたかのようにパチュリーは答える。
「良いわよ。ただ、教える魔法によっては相当長い年月がかかるかもしれないわよ?それでも良いの?」
「構わん。そもそもこの魔力は偶然入ってきたんだ。なら偶然でもその力を活かすべきだと思う。」
「……そう。なら良いわ。貴方に簡単に魔法を教えてあげる。」
こうして、大図書館にて俺はパチュリーに魔法を教えてもらうことになったのであった……
次回予告
パチュリーの指導のもと魔法について勉強を始めた康介。やはり彼の魔力は僅からしく、パチュリー曰く使える魔法も限られてくるとのこと。それでも限られた魔法の中から彼が選んだ魔法とは…?
次回 「第十七話 主人公、魔法はじめました」(仮)
それではまた次回。
うp主の折れない黒鉛筆でした。