東方染色記 作:折れない黒鉛筆
さて、第二十話です。実を言うと多分閑話じゃないです。悩んだ結果この小説を書き始める前に出していた案を使うことにしました。ついでに言うと長くなりそうだった+眠気が限界だったので前後編に分けました。
そういえば、週一ペースで投稿するなんて言っちゃったためにもう二十話です。正直後悔してますが、可能な限り週一投稿は守ります。多分。
それでは、第二十話をどうぞ。
あ、そうだ(唐突)
(今更ですが)新年明けましておめでとうございます。今年も細々と二次創作活動を続けていきますので、どうか私、折れない黒鉛筆と東方染色記をよろしくお願いします。
前回のあらすじ
慧音の授業を見た
慧音が(予想通り)半人半妖だった
妹紅が蓬莱人という不老不死の種族であることが判明した
「ここにも居ないし…あの親の子供達、一体どこにいるんだか…」
夏ももう終わるであろうこの季節、どうして俺が人間の里を走り回りながら人探しをしているのか。それは今から約一時間前に遡る…
─────
「えっと…最後は八百屋でネギと大根…だよな、多分」
とあるメモ用紙を見つつ、自分に言い聞かせるようにそう言う。何故俺がこんな事をしているかと言うと、端的に言えば『買い出しに行かされた』からだ。霊夢が突然「これ買ってきて」と今俺が見たメモ用紙を俺に押し付け、その直後にどこかへ行ってしまったので拒否する事も出来ずに仕方なく買い出し(俗に言うお使い)に来ている、と言う訳だ。
因みについさっき訪れた魚屋(川魚しか置かれていなかった)や肉屋は人間の里で初めて行く場所であった為に、毎度ながら迷ってしまっていた。更に言うと今から行くであろう八百屋も初めて行く場所だ。これらから導き出される答えはただ一つ。
「絶対人に道聞かないと迷うよな、これ。」
メモを見るために下に落としていた視線を上げつつ、そう呟く。つい先程行った魚屋や肉屋で道を聞いておけば良かったな、なんて思い直してももう遅い。何故ならそう…
「と言っても…もう既に迷ったんだけどな。はぁ…」
もう迷ったからである。周りを見渡してみるも知らない建物ばかり。どこだここ。何故迷うと分かっているのに道を聞かずに一人で行こうとしていたのだろうか。ほんと馬鹿だな俺。
また人を探して道を聞くか、と思い、何処か全く分からない人通りの少ない場所を歩いて行こうとする。すると道の端に置かれている長椅子が視界に入った。恐らくただ視界に入っただけなら俺はそのまま素通りしていただろう。しかし、そこに座っている幼い少女を見て、素通りはできなかった。
「…お前、大丈夫か?そんなに泣いて一体どうした?」
10歳くらいの少女が一人で長椅子に座って泣いている。そんな状態を見て、どうも嫌な予感がした為、少女に目線を合わせようとしゃがみ込み、声をかけた。元の世界なら声掛け事案とかに発展しそうで怖いが多分大丈夫だろう。確証はないが。
「あっ…この前寺子屋に妹紅先生といたお兄さん…実はママとはぐれちゃって…」
先程まで泣いていた所為か鼻をすすりながら少女が答える。そう言われて寺子屋での記憶を思い出す。ああ、確かにこの子いたわ。確か慧音に算数の問題を解くように指名されていた子だっけ。まあそんな記憶はどうでも良いが。
色々気になるところはあるが話を戻そう。聞いた感じ、恐らくこれは所謂迷子だろう。もしここが元の世界なら遊園地等の施設にあるサービスカウンターや迷子センターに駈け込めば大体こういう案件は解決する…のだが、此処は幻想郷。ましてや人間の里。そんな場所が有る訳が無い。というか俺が知らない。つまりこの少女が言う「ママ」の元に直接連れて行かないといけない訳だが…
見た感じこの通りは人気が少なそうだ。もしここで俺がこの子を放っておいてしまたらこの子は暫くこのままここにいることになるだろう。少なくともこの子のお母さんが此処に来るまでは。それならば俺がこの子の母親を探した方が断然早い筈だ。この子の母親を俺は知らないがまあ何とかなる筈だ。多分。
「そうか…よし、なら俺も協力するから一緒にママを探そう。此処でずっと泣いてたってママがこの場所に来ない限り何も始まらないぞ?」
「えっ…でもお兄さん、買い物中じゃ…?」
少女が視線を俺が右手に持っている買い物袋に向けながらそう言う。確かに現在俺は買い物中だが、帰るのが遅れるくらいならアイツに遅れた訳を説明すればどうにかなるだろう。多分怒られる事に変わりはないだろうけど。
「ああ、別に俺は大丈夫。そんな事よりどうするんだ?ここに居続けてママを待つか、それともここから動いて俺と一緒にママを探すか。」
「うーん…ママは知らない人についていったらダメだって言ってたけど妹紅先生と一緒にいた人なら大丈夫だよね。お兄さん、行こ。」
少女が涙を手で拭い、長椅子から立ち上がった。俺はそれを見てから立ち上がる。
「よし、じゃあ行くか。取り敢えずママが誰かは俺には分からないから…ママの特徴を教えてくれないか?」
「えっとね……特徴はないよ。ただ、今日は緑色の着物を着ていて髪の毛は短かった気がする。」
「おいおい…要するにほぼノーヒントじゃねえか。ていうかそれを特徴って言うんじゃ…まあ良いか。こういう場合は闇雲に探してもダメな気がするから…慧音の所行けば何とかなるか?…あっ。」
「どうしたの?お兄さん?」
この少女と話しているうちに、大事な事を思い出した。何で忘れていたんだ。そもそも何故この子の母親をこんな状態で探そうとしたのか。
「……俺も迷子なの忘れてた。悪いがここから寺子屋までの道、わかるか?」
ほんとダサすぎる。迷子の子供に道を聞くとか。一応頷いてはくれたので分かるっぽいが…こんな調子でこの子の母親探し、大丈夫なのか?
─────
「うーん…居ないなあ…」
「やっぱりこういうものって大体すぐには見つからないよな…寺子屋に行くまでに見つかれば楽だったんだが…あ、寺子屋見えてきた。ありがとな。ここまで連れてきてくれて。」
寺子屋に行くまでの道中、もしこの子の親が見つかれば良かったのだがそう上手くいかないのが現実。寺子屋がもう見えてきた。
…にしても、この子が言った特徴に当てはまる人物が多すぎる。一応条件に当てはまる人を見つける度にこの子に聞いてはいるのだが、彼女は首を横に振るばかりだった。
「にしても…なんで寺子屋に来たの?」
「ああ、もしかしたらお前のママが慧音の所来てるかもしれないと思ってな。で、慧音が高確率でいる(と思い込んでいるだけだが)であろう寺子屋に来た訳だが…」
そんな事を話しているうちに、寺子屋前に着いた。取り敢えず扉をノックする。
「おーい、慧音、いるか?少し相談事があってだな…」
そう言ってから10秒も経たずに、扉が開かれた。そこに居たのは、慧音ただ一人。
「どうした康介、今少し立て込んでいて…ってその子はどこにいたんだ?」
「ああこの子か?どこかに置かれてた長椅子に座って泣いてたぞ。この子の話を聞くに多分迷子だったから一応ここに連れて来た。ただ闇雲に探すよりかは慧音の力を借りた方が早いと思ってな。」
「ナイスだ康介。つい先程この子のお母さんがここに来てな…今丁度話を聞いていたんだ。」
どうやら俺の判断は合っていたらしい。慧音のその言葉を聞いて、すぐさま反応を示したのは迷子だった少女だ。
「って事は慧音先生、ママはここにいるの!?」
「ああ、居るぞ。今呼んでくるから少し待っていてくれ。」
そう言うと慧音は数ある教室のうちの一室に入っていった。取り敢えずこれで迷子案件は解決で良さそうだな。そう思って少なめの達成感を感じていると、隣に立っていた少女が俺に話しかけて来た。
「お兄さん、ありがと。」
「ああ、別に構わないぞ。俺は特に何もしてないしな。強いて言うなら…道案内を頼んだぐらいか?」
「いや、お兄さんがあの時声をかけてくれなかったら私はずっとあそこにいたままだったし…お兄さんがいなかったらどうなってたんだろう。」
そう少女が言ったと同時に、慧音が入っていった扉が開いた。そこにいたのは、この少女が言っていた条件と一致する女性。多分母親だろう。後ろには慧音もいた。その姿を見て、少女が母親らしき人物に駆け寄って行く。
「ママ!会いたかったよ…」
「よしよし、もう私から離れないでね…」
「…うん!ママ、ごめんなさい…」
「別にいいのよ。里子が無事だった。それだけで十分だよ…」
親子の再会をを見ていたが、流石にこの空気を邪魔するのも悪いのでゆっくりと扉を開き、外に出ようとする。すると母親がこちらに気付いたのか、「あの」と声をかけてきた。
「もしかして、貴方がここに里子を連れてきてくれたんですか…?」
「……まぁ、一応そうだが…特に俺自身は何もしてないから礼なんていらないけど。」
「いえいえ…どうもありがとうございました…」
「私からもお礼を言うぞ。ありがとう。」
母親がこちらに向かってお辞儀をしてくれたので、一応お辞儀を返す。
さて、これで完全解決かと思い、寺子屋から今度こそ去ろうとすると慧音に呼び止められた。
「康介…えっとな…まだこのお母さんの子供が迷子なんだが…」
マジかよ。慧音の言葉に耳を疑った。思わず外に向かっていた足を止める。
「慧音先生、彼も用事があるはずでは?荷物とか見ると、彼、買い物中みたいですし」
「あー、因みに聞くが慧音、その親御さんの子供で迷子になっているのは後何人居るんだ?」
これまたなんとなく嫌な予感がしたので慧音たちの方を向きつつ、半ば強引に会話に割り込み慧音に聞いてみる。
「それがだな…後3人居るんだ。」
「3人ねぇ…まぁ乗りかかった船だし俺が出来る限りの事をやってみるか…よし、その3人の特徴を教えてくれ。」
俺が少し考えた後にそう言うと、母親さん(仮称)は驚いた顔をした。
「良いんですか?大分面倒くさくなると思うんですけど…」
「え、ああ。さっきも言った通りこれは乗りかかった船だ。こうなったらとことん最後まで付き合わせてもらいたいし、それに…いや、何でもない。取り敢えず、残りの3人の特徴を教えてくれないか?」
一瞬過去を語りそうになったが過去の事は色々あってあまり語りたくないので強引についさっきの話題に戻した。
「ありがとうございます!それではまず…買い物を終わらせてきてください。生もの、腐っちゃいますよ?」
「あっ……かんっぜんに忘れてた…」
いけない。母親さんの指摘があるまですっかり忘れてた。どうも買い物袋の中身が若干見えていたらしい。俺が買った物の中には母親さんが言った通り肉や魚といった生ものがある。時間はそれほど経っていない筈だし、多分今はまだ大丈夫とはいえ、このまま迷子探しを続行したら十中八九腐るに決まってる。ならすぐにでも行きたいのだが…まあ流石に同じ過ちを犯す訳にはいかない。
「慧音、八百屋さんある場所って分かるか?」
「八百屋か?それならここを出て真っ直ぐ行って二つ目の十字路を右折してすぐだった筈d…」
「了解!トップスピードで行ってくる!ついでに博麗神社に買い物した品も置いてくる!」
必要な情報は最低限聞き取ったので強引に会話を切り上げ、トップスピードで寺子屋を出る。生ものが腐る心配もあったが、迷子の子供たちを早く見つけてあの母親さんを安心させたい、というのもあったからだ。
(あの母親さん、顔や言動には出さないけど相当焦っている筈なんだよな。子供がいない。危険な目に遭っていたらどうしよう。そんな事を考えてると思うと恐らく焦るのも無理はないし…だから早めに行動する。『善は急げ』みたいなものか?)
そんな事を思いながら、事故を起こさない程度の速度で八百屋へと向かった。
約5分後───
「只今戻りましたよ、っと」
寺子屋の扉を開けながら、至って普通の声でそう言う。そこで待っていたのは母親さんと慧音、それとあの少女だ。
「博麗神社まで行ってた割には随分早い到着だな。」
「まあな。割と飛ばしたし…でもそのお陰で疲れたから正直飛ばしたのは意味ない感が凄いけどな。」
「博麗神社って…あの博麗の巫女がいて別名妖怪神社とか言われてるあの博麗神社ですか!?」
母親さんが驚きの表情を見せる。ぶっちゃけついさっき俺が去り際に言った言葉に博麗神社ってあったんだけどな…まあ良いか。ていうか博麗神社の別名が妖怪神社って。まあ大体合ってるけど。
「そうだが…まあ取り敢えず話を戻そう。母親さん、今現在迷子になってる3人の特徴を教えてくれ。知っておいた方が…ってか知らないと探せないしな。」
「ええ、分かりました。まず一人目ですが、次女の京子です。6歳で、おかっぱの黒髪なんですけど、右頬にホクロがあるのでまあ分かりやすいと思います。次に二人目ですが、長男の勝です。3歳でとても好奇心旺盛なので次男と一緒にどこかにいると思うんですが…一応若干茶色がかかった髪の毛をしています。そして最後は、次男の圭太郎です。3歳で勝と同じく好奇心旺盛なので多分長男と一緒にいると思いますけど…一応真っ黒の髪色に一本癖毛が立ってます。」
「えっと…京子ちゃんに勝くんに圭太郎くん…で、子供達の特徴…了解。覚えた。じゃあ行ってくる。」
頭の中でもう一度情報を整理し、必要な情報だけにする。そして完全に覚え、俺は寺子屋を飛び出そうとする。
「お、おい!ちょっと!」
しかし慧音に呼び止められたので急ブレーキをかけ、グルリと後ろを振り返る。
「ん?何だ?」
「一応聞いておくが…お前はどうやって探すつもりなんだ?」
「ああ、全く決めてないぞ。強いて言うなら『色々』だな。上空から探したり、聞き込みしたり、普通に歩き回ったり…」
…ここまでとなると自分でも言ってて結構クソみたいな開き直り具合だなー、と思う。勿論慧音は頭を抱えている。
「はあ…結局それって闇雲に探すって事じゃないか…」
「まあそれもそうだし、いつもの俺なら一回落ち着いて作戦立ててから探しに行くだろうね。でも何故かは分からんけど今回は早めに探した方が良い気がするんだよな。何でだろうな。まあ多分『善は急げ』ってやつなんだろうけど。てな訳で、行ってくるわ。」
多分言ってることが訳わからないな、なんて考えながらも今度こそ俺は寺子屋を飛び出した。
─────
寺子屋を飛び出してからおよそ10分。現在はただひたすらに走って捜索中。しかし、一向に見つからない。やはり作戦を立ててから来るべきだったかな、と思いつつも行き交う人々にぶつからないようにしながら走る。
「ここにも居ないし…あの親の子供達、一体どこにいるんだか…」
これで俺が知っている場所のうち子供がいそうな場所は大方探し尽くした。後は…どこかあったか?……ダメだ。全くもって良い場所が思いつかない。完全に作戦立てた方が良かったな、と後悔する。
「うーん…仕方ない、一度寺子屋に戻るk…ってあれは…?」
一度寺子屋に戻ろうとした俺の視界に入ったのは、白髪のロングヘアーが特徴的な俺の知り合い。しかもその隣には母親さんが言っていた次女の特徴と合致する少女が一人俯いて妹紅の手を握っている。
「お、康介じゃないか。どうしたんだ?えらく珍しい目でこっちを見ているが…もしかして、私が慧音以外と二人でいるのが珍しいとかかー?」
「いや、断じてそんなんじゃないからね?そんな事より妹紅、その隣にいる女の子は?」
「ああ、コイツか?コイツ、なんか迷子みたいなんだよな。確か名前は『京子』ちゃんだっけ。」
はいビンゴ。思わず小さくガッツポーズ。まさか妹紅が偶然とはいえ協力してくれるとは思わなかった。取り敢えず事情を説明すればなんとかなる筈だ。
「妹紅、実はだな…」
少年説明中…
「という訳なんだよな。」
「成る程。つまりは今からコイツと一緒に寺子屋に行けば良いんだな?」
「ああ、母親さんが移動していなければ寺子屋にいる筈だし」
「そうか…良かったな、京子。お母さんにようやく会えるぞー。」
「……うん!」
京子ちゃんは嬉しかったのか涙を拭き、嬉しそうな声でそう言ってくれた。これで一人発見できたから…後は男の子×2か。
「まあ取り敢えず寺子屋派まで行こうぜ。この子と母親さんを対面させて少しは安心してもらいたいしな」
「それもそうだな。じゃあ慧音のところ行くか」
意見が合致したところで、俺と妹紅と京子は寺子屋へと向かって歩いて行った…
─────
「なあなあ…ここに里の外に出るための穴があるんだぜー!」
「おおお!兄ちゃんスゲー!もちろん出るよな?」
「当たり前だろ?さて、出ようぜ!」
───この日、二人の子供が里の外に出た。里の外で待つ脅威なんて知らずに…
次回予告
寺子屋に京子を連れて戻ってきた康介と妹紅。妹紅も慧音から事情を聞き、迷子探しに参加してくれることに。そして手分けして人間の里内を探すが、どこにもあの二人は見つからない。
そんな中、康介は人間の里にある柵にとある異変を見つける。まさか、と思う康介。果たしてあの二人は無事見つかるのだろうか!?
次回 「第二十一話 人間の里で迷子探し(後編)」(仮)
如何でしたでしょうか。
一応今回も段落っぽい箇所に全角スペースを入れて書きました。もう仕方がないのでここからは全部全角スペース入れて書きます。
従って1~19話くらいまでの段落初めに全角スペースを入れるのですが、生憎リアルが多忙になってきたため少し修正は遅れるかもしれません。許せサスケ。
それではまた次回。うp主の折れない黒鉛筆でした。