東方染色記   作:折れない黒鉛筆

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 どうも、色々ありすぎて書く時間すら確保できていないうp主の折れない黒鉛筆です。
 先週は唐突に休んでしまい、申し訳ありません。本当に色々あったんでその辺は深く突っ込まずに察してくださると助かります。
 割とこれから先も忙しくなりそうで書く時間が取れなくなりそうな予感がするので毎週投稿ではなく亀更新の不定期投稿にしてしまっても良いかなと考えている今日この頃。
 それでは、第二十一話をどうぞ。

前回のあらすじ
買い物中に迷子を発見した
寺子屋に連れて行ったらその子の母親がいた
あと3人の子供たち探しに協力する事にした

修正履歴
2018/04/30 誤字を修正(走馬橙→走馬灯)


第二十一話 人間の里で迷子探し(後編)

 少年少女移動中…

 

 

 

「はあ…地味に遠かったなあ…」

 寺子屋にようやく着き、探す前に買っておいた水を飲む。剣道部に入っていたとはいえキツイものはキツい。

「お前はあれだけでバテるのかよ。情けないな。さてと、慧音ー、子供見つかったぞー。」

 そう言って妹紅が扉をノックし、開ける。酷い事を言われた気がするが気のせいだろう。…気のせいだと信じよう。

 扉を開けるや否や、自身の母親を見つけたからか京子が走りだした。そして母親に抱きつく。

「ママー!」

「よしよし…ごめんね、見つけてあげられなくて…」

「大丈夫だよ、ママ!妹紅先生がすごく優しかったもん!」

 そう言って京子が妹紅の方を指差した。当の本人である妹紅はやや照れくさそうだ。

「あ、先生が見つけてくれたんですか?」

「あ、いや…まあ、一応見つけはしたよ。ただ大したことは…」

「ありがとうございます。お陰で京子と無事再会することができました。」

 妹紅が先生と呼ばれている事には後で突っ込むとして、取り敢えず今はこれからを考えるか。

「さて慧音、あれから後二人の子供は見つかったのか?」

「いや、まだ見つかったという報告はないな…一応ほぼ全域は探したんだが…」

 うーん、これだけ探してまだ見つからないか。となると…いや、まさか。あの人達がそんな事する訳がない。よりによって3歳程の子供二人を外に出すなんて、流石にしないだろう…と思いたい。

 敢えてこの”可能性”は口には出さないでおく。もしこんな事を言ってしまったら、母親さんのプレッシャーやその他諸々が大きくなるだろうから。

「慧音、私もその子供達、探しても良いか?」

「ああ。人手は多いほうが良いしな。じゃあその子達の特徴なんだが…」

 もしこの可能性が無いとするならば何処に行った…?店舗…いや、店にいるならおそらく店長か誰かが此処に来ている筈。ならば何処に…?やはり、あの可能性とあの可能性しかないが…まさか。そんな事あってたまるか。

「とまあ、こんな感じだが…」

「了解。じゃあ私は空から探してみるよ。」

「ああ、頼む。さて、康介はどうするんだ?」

 もう一度、可能性を潰すために里を囲んでいる柵っぽい物を伝うようにして探す…?とても非効率な気がする。だが、可能性を潰す意味でもやっておいたほうが良い。

「康介、聞こえてるか?」

 となると、まずは……

「康介!」

「わっ!…ああ、すまん。少し考え事してた。」

「全く…しっかりしてくれよ。で、お前はどこを探すんだ?」

 恐らくそれらしい事を言えば慧音なら勘付く筈。ならば悪いけど少しだけ誤魔化すしか…

「えっと…取り敢えずもう一度俺が知っている場所を中心に探そうかな、と」

 取り敢えず適当に誤魔化そうとする。俺の態度に少し違和感を感じたらしく、首を傾げる慧音だったが少ししてから「分かった」と言ってくれた。

「…ああ、分かった。じゃあ、頼んだぞ。」

「お願いします…どうか勝と圭太郎を見つけてやって下さい…」

 嘘をついた事に対する罪悪感を胸に覚えながら、俺は軽くお辞儀をして寺子屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「…さて、この辺りか…?」

 俺の目の前には3mはあるであろう柵が。見た感じ柵には手足を掛けて登れる…ようには見えない。やはり杞憂だったか…?いや、杞憂かどうかはここを一周調べたら判明する事だ。

「取り敢えず柵沿いに歩いて見てみるか。多分こんな感じだとあの可能性は切り捨てられると思うんだがな…」

 辺りを見渡して目印になりそうな物を探す。一周したと分かるようにするためだ。……あった。良い感じに目印になりそうな井戸が。井戸の形状をしっかりと記憶し、俺は柵に沿って歩き出した。

 

 

 

少年可能性消去中…

 

 

 

「…そろそろ一周か?やっぱり何も無かったなあ。まあそれでいいんだけど。」

 途中に門番さんとも出会い、子供達について聞いてはみたのだがどの門番さんも口を揃えて「そんな子供は通っていない」と言っていた。やはりこの考えは杞憂だったな。なんて暢気に思っていると、ふと柵に違和感を感じた。

「ん?あっ。これは…」

 柵の途中に穴が空いている。穴は小さく、俺ぐらいの体格の人間は通れそうにない。しかし、子供なら通れないこともないだろう。例えばそう…3歳くらいの子供。

 まさか。そう思った。よく調べてみると、穴には誰かが通ったような痕跡が。辺りを見回す。この場所は良い感じに通りからは見えない。そして柵から外を見ると、今にも消えかかっている足跡が二人分。

「嘘だろオイ…」

 圧倒的に嫌な予感がする。俺はすぐさま飛行で柵を越え、今にも消えそうな足跡を辿っていった…

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「お、おい…兄ちゃん…どうするんだよこれ…」

「う…どうする…?」

 森の中、見た目はおよそ3歳程に見える兄弟二人は、じりじりと後ずさりしていた。理由は簡単。目の前に二本足で歩く狼の妖怪、所謂バケモノがいたからである。その妖怪は牙を見せながらもゆっくりとこちらに向かってくる。今すぐにでも回れ右してこの場から逃げ、人間の里に逃げ帰りたいがそうもいかないのが現実。まだ彼らは3歳。3歳の足と妖怪の足とではどちらが速いかは明白だ。それに、背中を見せようものなら今すぐにでもこの妖怪は襲ってくるだろう。

 そんな中、生まれた順番的に兄である勝は自分がした行いを後悔していた。自分が柵に穴が空いているのを見つけなければ。そこから抜け出して今まで見たことがない里の外の世界を見てみたい、なんて思わなければ。そして、弟である圭太郎を誘わなければ。こんな状況にはならなかった筈なのに。

 そして、それは弟である圭太郎も同じだった。あの時兄の提案に易々と乗らずに兄を止めていれば、と後悔していた。

 しかし、今更後悔したところで、だ。妖怪は少しずつこちらに近寄ってくる。妖怪から遠ざかるために二人もゆっくりと視線を妖怪から外さずに後ずさりする。しかし、

「いてっ!」

「圭太郎!」

 弟の圭太郎が後ろにあった木の根に足を引っ掛け、こけてしまった。すぐにでも立ち上がりたかった圭太郎だが、恐怖と痛みで足が動かない。急いで手を伸ばそうとする勝だったが、届かない。

「だ…だれか…助けて…」

 圭太郎が蚊の鳴くような声でそう言う。その声が勝の耳に届いた刹那、狼妖怪が圭太郎目掛けて飛びかかった。

「う、うわあああああああああ!」

「圭太郎ーっ!」

 圭太郎は怖さから目を閉じる。しかし、いつまで経っても痛みは襲ってこなかった。

「はあ…はあ…間に合った…!」

 そして圭太郎と勝の目の前には、雲のようなものを展開させて狼妖怪からの攻撃を防いでいる少年がいた。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

 どうしても嫌な予感というものは大体当たってしまう。今回に関しても例外ではなかった。全速力で飛ばないと間に合わないと思い、本日二度目の全速力飛行をした。と言ってもいつもより少し速いだけだが。

 その結果、ギリギリでこの妖怪の攻撃を遮り子供達を助けることができた。しかし安心するにはまだ早い。まずはこの子供達を逃がす。話はそれからだ。

「良いか、お前ら。一度しか言わないからよーく聞け。今すぐ人間の里へ戻れ。全速力で走って、だ。そして里に着いたら、寺子屋に行くんだ。お前らのママはそこにいる。」

 この積乱雲障壁もそう長くは持たない。さっさとやって欲しいことだけを伝える。

「でもそれだとお前が…!」

 そう言ったのは茶色の髪をした方の子供。確か勝だっけか。

「俺の事は気にすんな。お前らは今は逃げることだけを考えろ。このクソ妖怪は俺が何とかする。分かったらさっさと行け!」

 早く行かせるために口調を強めながらそう言い、障壁の反撃機能で妖怪のバランスを崩す。妖怪はしっかりよろめき、少しながら隙が出来た。

「……うん。行くぞ!圭太郎!」

「…分かったよ。兄ちゃん。」

 勝と圭太郎が交互にそう言い、俺が来た方向へと駆けて行った。それを逃がすまいと追おうとする狼妖怪だが、もちろんそんな事させない。

「おらッ!」

 軽く作った電気玉を狼妖怪にぶつけると、狼妖怪は子供達を追うのを止め、こちらをギロリと睨んだ。どうやらターゲットを変更したらしい。

「ふぅ…お前の相手はこの俺だぜ?さっさとかかってきな。」

「グルルルル…ワオーーーン!!!」

 取り敢えずこれだけ挑発しておけばあいつらが里に着くまでの時間稼ぎは出来るだろう。正直1vs1で妖怪と闘うなんてやりたくないし勝てる気がしない。現に今も内心ビビりまくりだ。誰か腕に頼りのある人にでもすぐに丸投げしたいくらい。だがしかし、「子供達が妖怪に襲われかけた」という事実を知っているのは今のところ俺とその子供達だけ。結局のところ俺がやるしかない、という訳だ。それに、子供達の前であんな事を言ったからには尚更だ。

 そう考えていると、いきなり狼妖怪が俺に飛びかかってきた。恐らく両手にある切れ味が凄そうな爪で八つ裂きにでもしようと考えているのだろう。勿論八つ裂きになんてなりたくないので俺はそれをサイドステップを使い左に避ける。

 さらに挑発しようとしたが、止めた。もしこれで狼妖怪の攻撃の手が激しくなり、避けきれなくなれば元も子もない。取り敢えず狼妖怪に隙が出来ているのでそこに弾幕をぶつける。

「はあッ!」

 しかし狼妖怪はまだ元気そうだ。流石に威力が弱すぎるか。ならば…スペルカードアタックだ!

「行くぜ!電撃「サンダービート」!」

 スペルカードを掲げながらそう宣言する。こんなの弾幕ごっこでも何でも無い気がするため、宣言も要らない気がするが正直どうでもいい。両手に雷雲を纏い、目の前に大きなシャボン玉を作るようにして両腕を振る。すると振った軌跡に雷雲が完成。そこからリズムを刻むようにして電撃が狼妖怪目掛けて降り注ぐ。しかし、狼妖怪は雄叫びをあげながらこれを難なく回避していく。

「チッ…!これじゃダメか…ならこれだ!風符「吹き荒れる暴風弾幕」!」

 これだと相手にダメージを与えられないと判断し、スペルを解除して次のスペルを宣言する。このスペルは単純。俺が弾幕を適当にばら撒き、突風を吹かせて弾幕を突風に乗せて縦横無尽に吹き荒れさせる、というものだ。しかしこれもあの狼妖怪にとっては簡単なのか、ヒョイヒョイと避けられてしまう。そうこうしているうちに弾幕が止み、時間切れ。

「グルルルル…」

 一転攻勢、だろうか。狼妖怪が攻撃体制に入った。正直今のスペルカードアタックで決めてしまいたかった。何故ならこいつの攻撃を躱し切れる気がしないから。

「クソがっ……!」

 悪態をついたところでこの状況が変わる訳でもない。どうするかと思考を張り巡らせながらも目の前にいる狼妖怪から目を離さない。すると狼妖怪が両手に何かを纏った。この感じ…もしや。

 次の瞬間、狼妖怪の両手から数多くのエネルギー弾が発射された。所謂弾幕だ。まさかこいつも使えるとは思っていなかったので一瞬驚くが、すぐに冷静になり弾幕の隙間に前転で入り込むようにして弾幕を避ける。

「あっぶねぇ…反応遅かったらモロに食らってたな…」

 前転動作を終えて無事に避け切れたため一安心していると、背後で弾幕が何かに当たる音がした。その直後に聞こえて来た「メキメキメキ…ドガーン!」という音からして多分木に当たった…っては?

 思わず背後を振り向く。あの狼妖怪が放った弾幕が当たったであろう木が、折れていた。地面からから1m程の所で、真っ二つに。

「……ウッソだろこれ」

 多分、俺は今顔面蒼白になっているだろう。この弾幕の威力から察するに、コイツは完全に俺を殺しに来ている。こんな弾幕に俺なんかの弱っちい人間がモロに当たれば即終わりだ。そもそもあんな弾幕を放ってくる奴なんかに俺が勝てる訳───

「しまっ……がッ!」

 油断した。思考を巡らせる事に夢中になりすぎるあまり、位置を変えた狼妖怪が弾幕を放って来ている事に気付かなかった。被弾する寸前でギリギリ即席の障壁を張ることには成功したのだが、衝撃が強すぎるあまり俺は吹き飛ばされて折れた木とは別の木の幹にまともに衝突してしまった。衝撃により肺の中の酸素と共に何か液体を吐き出す。

「ゲホッゲホッ…ってやっべえなこれぇ…」

 俺から出てきた液体を見て、思わず引いた。血だ。要するに先程吐いたものは血反吐、という事になる。全身に痛みが広がり、耐えるので精一杯だ。恐らく骨は折れていないっぽいがとんでもなく目眩がする。暫くしないと立てないだろう。しかしあの狼妖怪がそんな悠長な事をしてくれる筈が無い。

「グルルルルル…」

 少しずつ、狼妖怪が牙を見せながらこちらに近寄ってくる。恐らく今度こそ俺を殺すつもりだろう。後ろに下がろうにも、背後は木の幹で下がることが出来ない。どうにか、この圧倒的ピンチの状況を切り抜けられる何かは無いのか。そう思って頭を回そうとするも、何故か頭は回らず何も考えつくことが出来ない。

 ……あんな如何にもそれっぽい事を言っておきながら、俺は殺されるのか。そもそもこんな妖怪を相手にする前に妹紅とか霊夢を呼んでくればこんな事にはならなかった。はぁ。馬鹿だな俺。勝手に実力もないのに大口叩いてそのまま勝手に死ぬなんてな。

「ワオオオオオオン!!」

 狼妖怪がそう言って右手を振り上げた。頭の中が真っ白になり、走馬灯が頭の中を少しだけよぎる。もう助からない。そう思って両目を閉じた。

 

 

 

「…ったく、無理しやがって。あの子供らが教えてくれなかったら確実に死んでたぞ、お前。」

 聞き覚えのある声がして、恐る恐る目を開く。そこには白髪のロングヘアーが特徴的な白のカッターシャツを着た知り合いが、背中をこちらに見せ狼妖怪の右腕を片手で掴んで立っていた。

「も…妹紅…なんで…」

「何でもへったくれもないだろ。私の友達が子供を助けて強そうな妖怪と戦ってる、なんて聞いたら飛んでくるに決まってるだろ。よっと。」

 そう言って妹紅が左腕を狼妖怪の右腕に添え、炎を起こす。堪らず狼妖怪はその場から飛び退くようにして離れ、距離を取った。

「慧音からは出来るだけ妖怪は殺さないようにって言われてるんだけどなあ……里の外だが私の友人を傷付け、何もしていない子供を殺そうとした。」

 妹紅がそう言っていくにつれて右手の火が大きくなっていく。その姿や言動から見て取れる彼女の感情は、頭がまだよく回っていない俺なんかでもよく分かった。

「その罪…償ってもらおうか!」

 今の妹紅は…怒っている、と。

「グルルルルル…ワオオオオ──」

「遅いっ!蓬莱「凱風快晴-フジヤマヴォルケイノ-」!」

 狼妖怪が距離を詰めようとする前に妹紅がスペルカードを宣言。すると妹紅の背中にフェニックスのようなオーラが出現。そして妹紅が大玉を一発狼妖怪に打ち込んだ。その大玉が…爆発。

「ガゥッ!」

 狼妖怪が声を上げたが妹紅は構わず同じ様な弾幕をばら撒き続ける。狼妖怪は大玉の直撃こそ免れ始めているものの、大玉の爆発範囲が相当広いが故にダメージを受け続けているように見える。

 そして、妹紅が弾幕をばら撒くのを止める。どうやら時間切れのようだ。しかし対する狼妖怪は被弾しすぎたからか至る所に怪我を負っている。しかし、そんな狼妖怪に向かって妹紅は弾幕を放っていた右手を下ろし、こう言い放った。

「…ここで大人しく身を引けばこれ以上やるのは勘弁してやるが?」

 何だろうか。…何というか純粋な、殺意。そんな風に感じた。妹紅の顔はこちらから見えない為どんな表情をしているのかは分からないがやはり里に関わりのある人間だからこそ、この妖怪に対して殺意を剥き出しにしているのだろう。しかし、それを聞いた狼妖怪は妹紅の姿を見て隙だらけでチャンスと思ったのか、飛びかかってきた。どうやらまだ戦う気はあるらしい。

「そうか…」

 悲しそうに、そう呟く妹紅。しかし、そんな妹紅を御構い無しに狼妖怪は妹紅の右肩に噛み付いた。

「……!!妹紅!」

「ぐっ…仕方、無いか。惜命「不死身の捨て身」。…永遠に消えろ。」

 噛みつきによる痛みに耐えながらもスペルカードを一枚宣言した妹紅。次の瞬間、妹紅の全身が噛み付いていた狼妖怪諸共炎に包まれた。そして、何処かへ向かって全速力で飛んで行った。その先には大きい岩が。その岩に妹紅と狼妖怪を包んだ炎球が衝突。凄まじい衝突音が辺りに響き渡った。

ズドーーーーーン!

 

「うっ………止んだか?」

 ある程度は立てるようになったのでふらふらと木にもたれかかりながら立ち上がる。そしてあの炎球がどうなったのか岩の元へと目線をやる。

「……は?」

 そこには、砕け散った岩の残骸だけが残っていた。あの狼妖怪の姿と妹紅はどこにも見当たらない。…まさかとは思うが、念の為一応近くまで行ってみる。

 フラフラ歩きながらも近くまでやって来た。辺りを見渡してみるが狼妖怪らしき影は何処にも見当たらない。多分物理的に燃え尽きた…と考えるべきだろう。そして、妹紅もいない。恐らくだが…いやまさか、そんな事ある筈が無い。アイツに限って、そんな事しない筈だ。…何か忘れている要素がある気がするけど。

「おーい、妹紅ー?」

 一応辺りを見渡しながら妹紅の名前を呼んでみる。しかし返事はない。妹紅らしき姿もない。…嘘だろおい。まさか。そんな筈無いだろ。再び頭の中が真っ白になる。まさかとは思うが…こんな妖怪の為だけに…

 そんな事を考え始めてすぐだっただろうか。不意に肩を叩かれ、クルリと振り返る。

「どうも、妹紅さんだよ。」

 そこには、傷一つ負っていない妹紅の姿が。……今思い出した。詳しいメカニズムは聞いてないけど、この人不老不死だった。

「ははっ…変な心配掛けさせんなよ…」

 安堵したからか、思わずへなへなと座り込む。そんな俺を見て、妹紅はやや呆れ気味にしている。

「それはこっちのセリフだ。勝手に無茶な戦闘始めやがって。別に注目を集めたら逃げても良かったんじゃ無いのか?」

「結果論になるけど、まあ何とか最終的に生き延びれたからこれで良かったんだよ。多分。俺が注目を集めて時間稼ぎしたところでそこから注目貰ってる状況で俺が逃げ切れるかって話だし。まあ、助けてくれてありがとな、妹紅」

「あ、ああ。どういたしまして。それじゃ、戻るか。歩けるか?」

「全然行けるから大丈夫」

 そんな会話を交わし、俺と妹紅は人間の里への帰路を急いだ。

 

 

 

 

 

 

────

 

 

 

 

 

 

 そこからは、本当に色々あった。

 まず寺子屋に顔を出すや否や慧音にくっそ怒られたり、母親さんからお礼めっちゃ言われたり、お礼にどうぞとおにぎり貰ったし、怪我の状況を医者さんに診てもらったりとまあ色々だ。因みに怪我に関しては大事には至っていないらしいが「暫く運動等はしない事」だそうだ。と言っても大体丸1日ぐらいで良いらしいが。ただ能力を使うのも身体に負担がかかって怪我が悪化する恐れがあるとの事だ。期間がまだ短いから良いけど能力使えないのは辛いなあ。

 それで、色々としているうちに夜になってしまったので妹紅に付き添ってもらい、博麗神社まで送ってもらった。一人で行けそうだったので一人で行こうとしたのだが、

「能力を使うと怪我が悪化するかもしれないなら実質使えないようなものじゃないか。その状態でアイツみたいな妖怪に出会ったらどうするつもりなんだ?」

と妹紅に言われ、ついて来てもらった、という訳だ。

 そして今、俺は妹紅と別れ博麗神社に帰って来た。

「ふーっ…疲れたなぁ…」

 本来なら只の買い物だけだったのだが、そこから母親さんの子供探しに発展し、そこからさらに妖怪に退治されかけたところを妹紅に救われるって事になったから相当予定外だったとも言える。しかしまあ、良い思い出になったんじゃないか、とも思う。

 さて、実は霊夢には買い物の品を置きに来た時に書き置きにて「遅くなるかもしれない」とだけ書いて戻っただけなので相当怒ってるかもしれない。まあ過ぎたことは仕方ないか、と思い中に入る襖に手を掛けて開ける。

「霊夢ー、ただいm」

「遅い!!!」

「わっ!五月蝿いなぁ…ごめんって」

「はあ…大体のことは紫から聞いてるわよ。さっさと今日は寝なさい。明日の境内の掃除も私がやっとくわ」

「まじ?じゃあお言葉に甘えて寝るとするか。」

 霊夢にしては珍しい事言うなー、なんて思いつつも霊夢に言われた通りさっさと風呂を沸かして寝る事にした。




 次回予告
 夏もいよいよ終わりそうになって来た。保存魔法陣の練習や新しいスペルカードを考えながら生活していた康介だったが、そこに慧音がやって来る。
 どうやら「里で行う夏祭りの手伝いをして欲しい」との事。断る理由も無かった為、手伝いを快く引き受けた康介。一体どうなるのやら。
次回「第二十二話 祭りと弾幕と一輪の花」(仮)

 いかがでしたでしょうか。
 割と冗談抜きで不定期投稿にするのは考えてます。別に不定期でも見てくれる方がいればそれで良いんですけどね。
 まあ話す事も無くなったのでまた次回お会いしましょう。うp主の折れない黒鉛筆でした。

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