いやー、秘神マターラ来ちゃいましたね! 来たら嬉しいなとずっと思ってたので家で飛び跳ねてました! というのは置いといて。
さてさて、霊夜の居ない紅魔館では何が起きているのでしょうか?
……あと、幻想郷縁起がご都合主義な形になってますがご了承ください。
「だーかーらー! 友達が居たって言ってるでしょ!? お姉様のばかバカ馬鹿、アホーッ!」
「ああもう、分かったから。今度永遠亭にでも遊びに行きましょうか」
「頭おかしくなんかないもん! 私覚えてるもん!」
「なら、その子がどんな顔してたかは分かるでしょ?」
「…うぐ……」
こいしが姿を消して数日経ったけど、情報は何一つ無い。そもそも、探せる範囲と元から持つ情報が少な過ぎるのもあるかもしれないが……にしたって限度があるだろう。
あーあ、どこかに幻想郷中の妖怪を記した本でも無いかなぁ……
「ああ、確かそれならあるわよ」
「だよねぇ……えっ?」
「あるわよ。幻想郷中の妖怪を記したもの」
「ほ、ほんとっ!? 見せて、今見せて、すぐ見せて!」
「ちょっ、落ち着きなさい! 嬉しいのは分かるけど!」
咲夜、と呼ばれただけで咲夜が現れて、毎回毎回どうやって聞きつけてるんだろう? と首を傾げる。
お姉様の話を聞くに、咲夜を連れて行かせるようだ。……
「咲夜を連れて行かせるわ。もしもの事が無いとは思うけど、念の為に」
「うん、分かった。……ところで、どこにあるの?」
「人里で1番大きなお屋敷よ。……行ってらっしゃい。友達、見つかると良いわね」
「………うんっ!」
「では、行きましょう妹様。あまり遅くなっては、美鈴が腹を空かせてしまいますので」
「ふふっ、そうだね。……じゃあ、エスコートお願いね?」
「はい、お任せを」
どこからか取り出された日傘に入ると、手を差し伸べられた。なんだか新鮮な気がして、ちょっと擽ったい。
「では、行って参ります、お嬢様。おやつは冷蔵庫に入っておりますので、1つのみお食べください」
「……あのね咲夜、主が折角カッコ良く締めたんだから水を差すような真似はしないでちょうだい?」
***
という訳で人里に着いて、稗田邸に向かう途中。少しだけ疑問に思ったのが、何故か皆私達を見てヒソヒソと話している事。吸血鬼って珍しいのかな?
「ねえねえ咲夜、あれは何?」
「あれは風鈴のようですね。風が吹くと音が鳴るものです」
「あっ、じゃああれは?」
「あれは……おや、寺子屋ですね。子供達がお勉強をする所です」
「ん? おお、紅魔館のメイドじゃないか。今日はどうしたんだ?」
「あのね、私の友達を探してるの! こめいじこいしっていうんだけど……」
「こめいじこいし、か……うーん……」
青髪のお姉さんは、それから数分うんうん唸っていたけれど、結局分からなかったらしい。
キチンとお礼を言って行こうとしたら、「今度寺子屋に遊びに来ると良い」と頭を撫でられた。霊夜の撫で方とちょっと似てて、なんだか落ち着いた気分になれた。
「咲夜、あの人と知り合いなの?」
「はい。買い物に来た時と、永夜異変で関わりがあります」
「そうなんだ……。私も異変解決してみたいなぁ……」
「妹様も、いずれ出来るようになるかと。お嬢様が出来て、妹様に出来ない道理はありませんわ」
「……咲夜って、ちょくちょくお姉様ディスるよね」
「飴と鞭というものですわ、妹様」
「それはちょっと違うんじゃないかな……」
稗田邸
「幻想郷縁起を見せていただきたいのですが」
「……了解した。暫し待て」
主に報告に言ったのであろう門番を見送り、咲夜と「美鈴もあんな感じになったらいいねー」なんて冗談を交えて話していると、今度はヒソヒソ声がしっかりと聞こえてきた。
「災禍の獣の仲間だ」「あいつら、代わりにこの里を襲いに来たんじゃねえか? 早い内にとっ捕まえた方が良さそうだぞ」「馬鹿野郎、相手は妖怪だぞ。元人間のアイツとは違う」「そ、そうか……あぁクソ、捕まえられたら犯してぇなぁ」「聞こえるぞ、朝お前の首が飛んでても俺は知らねえからな」「怖いこと言うなよ、寝らんなくなるじゃねえか」
「……ねえ、咲夜」
「はい」
「霊夜の右目が無かったのと、外に出なくなったのって……」
「……はい」
「《これ》が原因?」
「っ………」
「ねえ、答えて。……ねえ!」
声を荒らげてしまい、周囲が肩を震わせる。しまったと思っても、感情は一度溢れると止まらない。人前なのも忘れてぼろぼろと涙を零し、視界がぐちゃぐちゃになってくる。それでも、この思いだけは叫ばないと気が済まない。
「霊夜が何をしたって言うのよ! 虐げられて紅魔館まで来て、それでも人里の人に優しくしてた霊夜が……なんで、人里の人にここまでされなきゃいけないのっ! ……ねぇ、なんで……皆、霊夜にだけ、辛辣にするの……?」
「……妹様」
咲夜が何かを言う前に、幼いような大人びたような声が横から響いた。
「申し訳ありません、お待たせしてしまいました。稗田家九代目当主、稗田阿求と申します」
「個人でお会いするのは初めてですね。こちらは、フランドール・スカーレット様です」
「どうぞお入りください。《その事》についても、お話し致します」
「………」
「行きましょう、妹様」
そっと押された背中に、咲夜の暖かさが伝わって、少しだけ落ち着いた。深呼吸して、頬を叩く。
……落ち着け。落ち着くんだ私。
「……うん、行こう。行って、確かめよう」
***
「改めまして、ご挨拶をさせていただきます。稗田家九代目当主、稗田阿求です。本日は、どういったご要件で?」
「……友達を探してるの」
阿求と名乗った女の人の顔が、驚きの表情をつくった。思っていた事と違ったのだろうか。
「かしこまりました。咲夜さんもそれで構いませんか?」
途端、モヤっとした違和感が立ち込めてきた。なんだろう、断言は出来ないけど……何か、おかしいような……
そこまで考えた所で、咲夜が答え合わせのように口を開いた。
「はい。ですが、まるで
「……図星です。新月霊夜さんについての事を、一応知らせておきたいと」
「………うん、お願い」
「かしこまりました。ですが、まずお友達の方を先に探しましょう」
無言で頷くと、阿求さんは沢山の本を持ってきた。それぞれ表紙に、幻想郷の地名が書かれている。『紅魔館・霧の湖』の中身が少し気になったけど、今は我慢して───
「ね、ねえ……咲夜」
「はい、どうされましたか?」
「よくよく考えたら、私……こいしちゃんの住んでる場所、知らない……」
「こいし………? 申し訳ありません、その人物は恐らく幻想郷縁起に
申し訳なさそうに、しかし確信を持って発せられた言葉の意味が一瞬分からなくて、掴みかかりそうになってしまった。咲夜に制されなければ、本当に掴みかかっていたかもしれない。
「……なんで? なんでよ!? なんでそんなの分かるのよっ!」
「妹様。……この方は、先祖代々記憶を引き継いでいます。そして、《1度見聞きしたものを忘れない》のです。ですので……」
彼女が分からないなら、先代も分からない。そういう事だろう。……いや。違う。ここには、幻想郷のほとんどの場所が書かれている。
『魔法の森』、『妖怪の山』、『太陽の畑』、『紅魔館・霧の湖』、『迷いの竹林』、『妖怪の樹海』、『玄武の沢』………。
その中から、『紅魔館・霧の湖』を捲ってみる。美鈴から始まったそれは、咲夜、こあ、パチュリー、お姉様、霊夜……最後に、私。
霧の湖の方は、たまに霊夜と一緒にいる人魚さん、ミスティア、リグル、ルーミア、大ちゃん、チルノちゃん……何か、順番に理由があるのだろうか?
「……ねぇ、阿求さん。この他に、
「行った事の無い場所……ですか?」
「勿論、存在感が薄いこいしが見つからなかっただけかもしれないよ。でも、阿求さんがやってるのは……最初に会った人の知り合いに、ずっと聞いていってる。違う?」
「いえ、そのやり方です。ですが、何故……?」
「それだったらさ。こいしは、
「……なるほど。誰とも知り合いでないなら、必然的に行った事の無い場所が浮かびやすい……」
「うん。だから、無い?」
慣れない事を長く深く考えたせいか頭がズキズキするが、阿求さんの答えは私に比べてあまりにも簡潔なものだった。
「……1箇所だけなら。私は空を飛べないのと、不可侵条約が結ばれているので、どうしても行けなかった場所があります」
「……! 教えて、どこっ!?」
「《地底》です。旧地獄とも言います。妖怪の山の麓辺りに、大きな穴があって……そこから行けると、文さんが」
「じゃあ……!」
「はい、恐らくそこに。お嬢様に交渉(物理)し、許可を貰いましょう」
「うん! ありがとう、阿求さん! それじゃ──っ、つぅ〜〜〜〜……」
「ど、どうされましたか!? 何かお身体に障るような……」
「あ、足が、痺れ、た」
「足は崩していて構いませんよ。それと、もう1つ聞きたい事があったのでは?」
「あっ、そうだった!」
そうだ。霊夜が何故右目を潰されたのか、その詳細を聞いていなかった。
いけないいけない、と座り直し、深呼吸。
「これから話す事は、貴女にとっては辛い事かもしれません。ですが、どうか。どうか、最後まで落ち着いて聞いてください」
「……うん」
私は、貴女が霊夜さんの過去についてどこまで知っているかまでは分かりません。ですので、聞いた事のあるお話でも、どうか聞き流さないでいただけると助かります。
……人里で嫌がらせを受け、出てきた辺りから聞いた? 分かりました、ではそれより少し前の話から始めましょう。
霊夜さんは元々、霧の湖の近くにぽつんと居たと聞いています。赤ん坊の頃から居ましたが、捨て子という訳でもなかったそうです。
そこを見つけ、保護したのが大妖精さんでした。彼女の話によると、とても可愛らしかったと……失礼、それについてはまた今度お話しましょう。
そうして保護された霊夜さんは、2年程すくすくと育っていきました。そしてある日、たまたま訪れた妹紅さんがそれを見て、慧音さんに報告した事から、霊夜さんの人里での暮らしが始まります。
慧音さんの家で養われる事になった霊夜さんは、まず言葉の読み書きを習ったそうです。今でこそお昼寝好きの霊夜さんですが、昔はとても勤勉だった、と慧音さんが話していました。
……と、肉親が分からない事以外はここまで順調に進んでいました。ですが、寺子屋に通い始めた辺りで、それは狂い始めます───
「……と、お茶をお淹れしますね」
「あ、ありがとうございます」
阿求さんが小さく微笑んで、席を外した。その間に、私は情報を整理しておく事にする。
霊夜は霧の湖近くに居た。大妖精がそれを拾い、2年間養った。その後人里で育てられる事になり、あの教師の家に住む。
確かに、ここまで順調だ。だが、嫌がらせを受け、里を飛び出した霊夜は──人里の人間には、どう映ったのだろうか?
それが知りたい。知る事が出来れば、多分、真実に近付けるから。
いやかなり更新が空いてしまいましたね。大変申し訳ない!
授業に課題、アルバイトに執筆と多忙に過ごしていると、どうしてもどれか疎かになってしまうのは人間の性でしょうか。どちらにせよ、自然消滅まで行かないように頑張りたいと思っております。
ではまた。