紅魔館に拾われた少年はゆっくり暮らしたい   作:ユキノス

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今回はフランサイドのお話です。
いざ、地底へ行かん!


鴉とメイドと吸血鬼

手掛かりが掴めたので帰りが遅くなる旨を伝える為の蝙蝠(使い魔)を放ち、張り切って妖怪の山へと向かう。紅魔館どころか、幻想郷のどこからでも見えるぐらい大きな山だ、と霊夜は言ってたけど、なるほど確かに大きい。

 

「妹様、空と地上のどちらからお探しになりますか? 空は楽な代わりに、天狗の目を掻い潜るのは難しいかと」

「そうだね、でも地上からだと……動きづらそう」

「ここまで大きな山となると、スカートで来るのは悪手でしたわね……。霊夜か美鈴(うちの体力自慢)でも居れば、ある程度楽だったのでしょうが」

「ううん、2人に頼る訳にはいかないよ。私個人の問題だし……わっ」

 

突然咲夜に抱きしめられて、思わず体が強ばる。咲夜が自分からアクションを起こす事はかなり珍しいので、それに驚いたのが一番だろう。

 

「咲夜はそうは思えません。妹様のご友人探しと聞けば、2人とも勇んで手を貸すと、信じております」

「────……うん、そうだね。でも今回は急だったから、私達だけで行こっか」

「はい、どこへでも」

 

咲夜の胸の中で、その柔らかな笑顔を堪能していると、不意に横で何かが光った。咲夜の顔が一瞬にして強張り、敵意を剥き出しにしている。

私も恐る恐る見てみると、いつかの天狗記者が居た。

 

「文さん、こんにちは!」

「はい、こんにちは。清く正しい射命丸文です。……えっと、咲夜さん? 勝手に写真撮った事については謝りますから、その剣呑なお顔をやめていただけないでしょうか……?」

「あのね、魂でも抜かれたらどうするつもり?」

「へ?」

 

ぽかんと口を開ける文に対し、咲夜は続ける。

 

「写真撮られるとカメラに魂を抜かれるって……」

「ああ! あんなのただの迷信ですから、大丈夫ですよ。それよりフランさん、今撮った写真お送りしましょうか?」

「えっ、くれるの?」

「妹様?」

「はい、現像しましたらすぐにでもお持ちしましょう!」

「うん、待ってるね!」

「妹様!?」

「で、お二人は何故ここに? 空のお散歩、という訳でもなさそうに見えますが」

「えっとね、友達が地底に居て……あいや、居るかもしれなくて……」

「ふむふむ」

「それで、行かせてもらえたらなぁ、って……

「うーーーーーむ……そうお願いされると「どうぞどうぞ!」と言いたくなってしまうのが私なのですが……流石に、それについては私の一存ではどうしようも無いんです。不可侵条約を結んだのは、私ではなく天魔様なので……申し訳ありません」

「う、ううん! 文は悪くないよ! 私達が急に来ただけだもん」

「あやや、慰められてしまいました。では、そのお礼として天魔様の御屋敷までご案内しましょう」

「え……い、いいの!?」

「はい、霊夜さんの……えっと、ご家族……って言えば良いんですか? その辺りイマイチ不明瞭なんですが……」

 

言われてみると、確かに霊夜との関係はどう言えば良いんだろう。居候先……は変だし、友人……ではあるけどちょっと違う。やっぱり家族?

うんうん唸っている私の横で、咲夜が口を開いた。

 

「彼は我々の友人であり、家族です。お嬢様がそう定義し、接しているので、私はそれに従うまでの事」

「おぉ! なんだかカッコイイですねぇ、そういうの。いやぁ、うちの上司もそんなだったらなぁ……」

「じゃあ紅魔館に来る? メイドはいつでも大歓迎よ」

「メイド服、ですか……あの、中々に恥ずかしそうなので遠慮しておきます」

「あら残念。さて、日が落ちる前には到着したいのだけれど」

「では行きましょうか。……あ、そうだ。咲夜さん、私を追い掛けて、ナイフを喉元に宛てがった状態で来てくれませんか?」

「どうしてよ。貴女そんなにマゾヒストだったの?」

「いえいえ、白狼天狗は耳が良いですが、目程ではないので。見た目だけでも『案内させられている』感を出さないとですし?」

「ふうん、一理あるわね」

 

そう呟くと、あっという間に文を拘束して、喉元にナイフを当てた。いつも優しくて暖かい目が、今は氷の様に冷たく、鋭い。十六夜咲夜という人間は、それ程までにオンとオフの差が大きいのだ。

 

「さぁ、案内してもらえるかしら?」

「えっ、あっ、はっ、はいぃぃ!」

 

美鈴や霊夜が、咲夜を怖がる理由が分かった気がする。

()()()だ。吸い込まれる様な、暗く強い光を、あの2人は見たのだ。

 

***

 

(あ、あやや……ここまで本気で来られるとは思っていなかったのですがっ! というか、ちょくちょくこの人ほんとに人間かどうか疑わしい事しますよね!?)

 

刃を当てられた時、私は彼女の顔を見た。無表情だった。瞳を見た。──何も映していなかった。

その光景に、思わず声が漏れる。唾を飲み込むと、喉が刃を掠める。

 

これは演技。そう、演技だ。その筈なのだ。なのに、冷や汗と手汗が止まらないのは、何故?

彼女の殺気が本物だから?

一切の抵抗無く、一瞬で拘束したから?

何気無い話をしていた者に対して、容赦無く刃を突き立てるから?

 

……間違いなくその全てだろう。しかしよく考えれば、彼女はあの紅魔館で、メイドとして働いているのだ。主に従順な、文字通り『悪魔の犬』として。恐らくだが、主が殺せと言えば友さえ殺し、死ねと言えば喜んでその身にナイフを突き立てるだろう。

 

「……何年貴女方を観察し()ていても、貴女だけは一向に分かる気がしないですね」

「ふふ、そうかしら? 少なくとも、お嬢様より分かりやすいとは思うけれど」

「えぇ……そんな訳無いでしょうに」

 

今こうして喋っていても、彼女の殺気は消えない。フランさんも少し距離を取っているのが分かる。

これ以上このままでいたら、乙女として踏み込んではいけない領域に足を踏み入れてしまいそうになるので、一刻も早く地底の穴へ行かねば……。

 

「こ、こちらです。フランさん、無いとは思いますがはぐれないように」

「う……うん。分かった。怖かったら言ってね、文」

 

そう言って頭を撫でてくれるフランさんが優し過ぎて辛い。今すぐぎゅーってしてあげた──

 

「今、何を考えていたの?」

「いぃぃぃえ、何も……」

 

……やっぱり怖い!




書く事ナッシング。という訳でまた次回!
……いつになるの?
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