紅魔館に拾われた少年はゆっくり暮らしたい   作:ユキノス

110 / 125
今回は、霊夜がずっと人里で暮らしていた…というifルートでの話です。それではどうぞ。


特別編:母の日の贈り物

あと数日もすれば、母の日。日頃からお世話になっているお母さんに、感謝の言葉と共に贈り物をする…という文化だ。

俺は母親が居ないけど、育ての親である慧音先生に贈り物をすることにした。血は繋がっていなくとも、15年近くも育てられたら、それはもう『母』だろう。

 

(でも、何を渡そう? 去年は髪留めだったから、同じのは流石に避けたいし……)

 

うーんうーん、と悩みながらゴロゴロしていると、見慣れた顔が逆さ向きになってこちらを向いていた。

 

「…何してんの?」

「あーもこ姉。丁度いいや、なんか無い?」

「何が。『なんか』だけじゃわかんないよ?」

 

おっしゃる通り。確かに、言葉が足りなさ過ぎた。

 

「ほら、もうすぐ母の日でしょ? だから、先生に何か贈り物したいなって思って」

「そっか、もうそんな時期か。前季も同じこと言われたっけね」

 

隣座るよ。と言って胡座をかいたもこ姉は、暫くうんうん唸っていたが、「よし!」と手を叩いて立ち上がった。

 

「じゃあ、今年は霊夜が考えてみなよ」

「俺!? でも、俺が思いついて出来ることは全部やり尽くしちゃったし…かと言って同じことするのもなぁ…って思うし……」

「あー、そう言えばそうだね。毎回違うことしてた。……平たく言うとネタ切れか」

「正解。だから、何か無いかなぁって」

「んーーー慧音がされて喜ぶこと、ねぇ……お前の伴侶、とかだったら間違いなく喜ぶだろうけど」

「それは思った。でもね、今から見繕って『伴侶です!』って言うのは流石に酷くない?」

「酷いな、却下。他には…」

 

…実を言うと、気になっている女性がいない訳ではない。単に勇気が無いだけだ。

 

「花でも贈ってみたらどう?」

「それ良いかも。…というか俺は何故今まで『贈り物』と聞いて物が出てこなかったんだろ?」

「それは……分からん。まあそれはいいとして、貸本屋にでも行こうか」

「貸本屋? そりゃまたどうして」

「実はね、花には『花言葉』ってのがあるんだよ。例えば、よく母の日に贈られるカーネーションは《愛情》とかね。沢山ある中で、霊夜が慧音に伝えたい花言葉の花を贈る…って、中々お洒落だろ」

「もこ姉……今日熱あるの?」

「………無い」

「ぷふっ」

 

もこ姉がそういう事を言うとは思わず、咄嗟に皮肉しか出てこなかったが、柄にもないことを言った、と言わんばかりに赤面してそっぽを向くもこ姉がおかしくて笑ってしまった。

 

「あっ、お前今笑ったろ!」

「わ、ワラッテナイデス……」

「笑ってるじゃんよ! こいつめ、こうしてやる!」

「いだっ、いだだだだだごめんごめんって悪かったって!!」

「こら妹紅。あんまり霊夜をいじめるんじゃないぞ」

「うぇっ、慧音!? 随分と早いじゃん、どしたん」

「思っていたより早く事が済んだんだ。少し早いが、夕餉はここで食べていくといい」

「はいはい、じゃあ何か手伝おうか」

「よしきた」

 

花言葉……確かに良いかもしれない。これで秋とか冬にしか咲かない花でした、ってオチもありそうなのが不安だけど。

 

***

 

訂正、あった。全然あった。カーネーション以外にもすっごいあった。図鑑を捲る度、身近な花が意外な花言葉だった──というのがほぼ無限に出てきて、当初の目的が半分近く揺らいだぐらい興味を惹かれた。いやほんと、すっごい……

 

「おーい? りょーやー?」

「へっ? あっ、えっ、な、何?」

「動揺し過ぎでしょ。ぼーっとしながら指挟んでたけど、そこにあった花がいいの?」

「えっどれ、………………」

「……? 何を…………あ〜〜〜〜〜〜私帰るわ〜〜〜」

「もう待って殺して……コロシテ……」

「殺しとうないわい。……あれだ、花入手までは手伝ってやるから。な?」

「うん……入手したら殺して……」

「殺さないから。慧音に何されるかわかんないし」

 

指を挟んでいたページに載っていた花は、ユキノシタ。花言葉は────。

 

***

 

母の日当日

 

「……ん、朝か……」

 

母の日、となると毎年霊夜が何かしてくれるのが定番になっているが……今年は枕元に何かある訳でも、かと言っていつの間にかアクセサリーが着いていた訳でもない。はて、今年はもう無いのだろうか?

 

「まあ、仕方ないか…何だかんだ18だしな」

 

これで「お嫁さんです!」なんて言ってきたら卒倒するが、流石にそんな事はしてこないだろう。………こない、よな?

 

「…………、ん? この花……」

 

この前萎れてしまい、暫く空っぽだった花瓶に、真新しい花が挿さっていた。あまり見たことはないので、花屋から買ってきたのだろうか。

 

「…今年はこれ、ということか。しかしこの花、何と言うんだ?」

 

確か小鈴が、「妹紅さんが花言葉の本を借りてったんですよ、滅多に借りないのでびっくりしました」と言っていたので、恐らくこの家にあるだろう。霊夜と読んで、帰る時も霊夜が熟読していたから置いてきた──という所だろうか。

 

「……ええ、と。……あった、開きグセがついてるな」

 

《ユキノシタ》

ユキノシタ科ユキノシタ属

学名:Saxifraga stolonifera

和名:雪の下(ユキノシタ)

英名:Strawberry saxifrage、Strawberry geranium

原産地:日本、中国

旬の季節:初夏

開花時期:5月〜7月

花言葉:()()()()

 

「……ふふっ。ませた奴め」

「ふぁ…おはようございます……」

「ああ、おはよう。それと、ありがとうな」

「…いえ、こちらこそ。これからも、よろしくお願いしますね」

「ああ。ところでこのユキノシタなんだが、萎れた時には押し花にして栞にしようかと思ってな」

「えっ、いや、あのっ、やめてください……」

 

本心か、そうでないかはともかくとして、男性にここまでストレートに愛を贈られたことは中々ない。…素直じゃない素直さ、とでも言うのだろうか。誰に似たんだろうか?

 

***

 

「はっ、くしゅっ」

「あらもこたん、風邪? 感染ってほしくないから、しっしっ」

「蓬莱人は風邪なんか引かないでしょ。誰かが噂してんじゃないの?」




この『ユキノシタ』という花ですが、実は12月6日の誕生花であり、この『ユキノス』の名前の元になった花です。
当時は花言葉一切見ずに決めていたので、今改めて検索して「そうなの!?」と驚いた、という裏話があります。実物見たこと無いのに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。