紅魔館に拾われた少年はゆっくり暮らしたい   作:ユキノス

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そろそろ進路を考える時期なので、今更感ありますが投稿ペースがガタ落ちします。申し訳ありませぬ。


今回は時間を巻き戻して、霊夜が外の世界に行く少しだけ前の話です。


貴方を選んだその理由は

「はぁーい♪こんにちは。お元気かしら?」

「……こんな夜中に人を叩き起しといて、最初に言うセリフがそれか? 一応、小声で喋ってくれるのはありがたいけどさ」

 

外を見ても、夜はまだまだといったぐらいの、でも人間は眠っている時間。胡散臭い笑顔と言葉を振りまきながら、妖怪の賢者(八雲紫)は現れた。

 

「あらごめんなさい、妖怪は夜行性なもので」

「御託はいい。わざわざ本人が出張ってきた、ってことは()()()()()()でいいんだな? あと、ベッドごとスキマ送りは勘弁な」

「話が早くて何よりですわ」

 

相変わらずよく分からない奴だ……と溜め息をつき、寝間着から天狗装束に着替える。特に理由は無いが、強いて言うならたまには良いだろう、と思ったから。

 

しかしこの女、面倒事を押し付けるのはまだ良いとして、藍でも霊夢でもなく俺に持ってくるとはどういう風の吹き回しだろうか。

まあ、どうせいつの間にかこいつの利益にされるのがオチだから、あまり気にする必要は無いだろう。

 

「それでは、1名様ごあんなーい♪」

 

***

 

「……さて。久々のスキマはどうかしら?」

「どう、ってなぁ。『趣味が悪い』ぐらいしか言えないが」

「あら、趣味の悪さでは勝るとも劣らない場所に住んでいるのはどこの誰だったかしらね?」

「……なるほど、『見慣れればそうでも』ってやつ?」

「そういうことにしておきましょうか」

 

でも実際どうなんだろうか。真っ赤な屋敷(紅魔館)と、目だらけの空間(スキマの中)、どっちが趣味悪いかと聞かれたら。……五十歩百歩だな。うん。

いやそんなことはどうでもいいんだ。問題は()()八雲紫が、スキマの中に呼んでまで頼みたいこと。どんな無理難題を押し付けてくることか、分かったもんじゃない。

 

「で、要件を聞こうか。どうせ面倒事なんだろ?」

「あら、酷いですわうふふ。私がいつ、そんなことを頼みました?」

 

──色々あっただろ! とツッコミたいが、実はほんとに何も頼まれたことは無い。だからこそ疑う訳なんだけどさ。

 

「自分の式神である藍でも、調停者である霊夢でもなく、俺に持ってくるような要件だ。よっぽど面倒か、俺にしか出来ないことぐらいなことは容易に想像出来るさ。──それで、何をしてほしい? 人里の前に首でも置けってか?」

「まさか、そんな残酷なことはいたしません。第一、レミリア・スカーレットに貴方の外出禁止を言い渡したのは、他でもないこの私です。貴方の潔白を証明するために、ね」

「それだ。まずそれが怪しいんだ。確かに俺は、出自が特殊な妖怪かもしれない。でもさ、『妖怪の賢者』であり『幻想郷の管理者』であるお前がそんなに肩入れする程の奴じゃない。違うか?」

 

すると紫は、扇子で口を隠して笑った。そして、即座に表情を変え、「違いますわ。ええ、違いますとも」と返してきた。

自分で言うのも悲しいが、『なり損ない』である俺に対してそこまでする理由とは何なんだ?

 

「貴方に肩入れする理由。それは単に、貴方の父親に関係があります」

「風萩、えっと……日向、の?」

「ええ。貴方、魔女の使い魔にこう言われましたわね?『風萩日向という男に気をつけろ』と」

「あ……ああ、言われた。あそこまで動揺してるこあは見たことないから、余計に覚えてる」

「それは事実であり、また間違いでもあります。何故なら……と、これは貴方自信で見つけてくださいまし」

「おいおい、そりゃ無いだろ。そこまで言っといてハイおしまい、って……」

 

管理者は首を横に振った。……どうしてか、言えないのだろう。いや、言わないだけか。

だが考えてみよう。『風萩日向という男に気をつけろ』が正解なのは、……あのスライムのような『俺』が襲ってきた事と関係がありそうだ。

なら間違いは? これも何となく予想がつく。日向『以外』にも気をつけろ、ということか。敵は文かもしれないし、椛かもしれない。可能性としては低いが、通じている可能性はゼロじゃない。

 

「……いや、やっぱいい。案外早めに答えまで行きそうだ」

「まあ、それは結構。前置きが長くなってごめんなさいね、いよいよ本題に移りましょう」

「………」

 

そうだ、これはあくまで俺の質問に対する回答が来ただけだ。紫に「任せたい」とまで言わしめるものは──

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「………は?」

 

外の世界。一応、先生からもレミィからも聞いた事はある。幻想郷を覆う『博麗大結界』の外にはまた別の、妖怪や神が否定された世界が広がっていて、レミィ達はその世界から来た、と。

妖怪は『恐れられること』が重要な為、妖怪がの存在が否定されている外の世界では生きられないと判断したから──というのはレミィの話。確かに、存在が否定されているものを恐れることは無い。

 

でも、あるいはだからこそ、だろう。

 

「その『ある人物』ってのは……やっぱり、妖怪とか神様?」

「ええ、今回は後者です。『守矢神社』という場所の、二柱の──消滅する運命にある神。貴方にはその二柱と接触・説得し、幻想郷へ招いていただきたいのです」

「……そっか。でも、それほんとに俺で良いの? 下手したら、その神様が…下手したら俺も消えるんだろ?」

「はい。ですが、『貴方なら大丈夫』との声を貰ったもので」

「へ、へえ……。ちなみに聞くと誰から?」

「藍と幽々子の2人から」

「うわぁ思ってたより紫側のヒトだった。紅魔館の皆は、なんて?」

「『行かせたくない』が総意です。愛されている故でしょう」

「……なんか、嬉しいけど恥ずかしいな、それ………。ま、まあとにかく。その件に関しては受けよう。ただし、1つだけ《報酬》を貰いたい」

「あら、1つでよろしいのですか? 『報酬の数を増やしたい!』なんて言わせませんわよ?」

「言わないよ。そこまで子供じゃない。……でも、今浮かんでる訳じゃないから……完遂後に言うことにするよ」

「かしこまりました。そして今回の件、引き受けてくださったことに感謝致しますわ」

「そいつはどーも。ところで、発つのはいつだ?」

「二柱は既に消滅まで近づいているので、できるだけ早くがよろしいかと。可能なら明朝ですが」

「……よし、それで。つっても、説得出来るかどうかは分からんぞ」

「ええ、それぐらいは理解しています。ですが、私と藍は結界の点検。幽々子は冥界の管理。霊夢も妖怪退治と、主要な人物は大抵手が塞がっております。私は、可能な限りの支援はするつもりですが」

「なるほど、そいつはありがたいや……あ、萃香は? 主要かと言われたら首傾げるけど……あっいやダメだわ、多分酒飲んで終わりだ」

「……ご名答ですわ」

 

やったんかい。まあでも、あの酔っ払いならやりかねないか。……うん。

 

「ん、んっ。まあ、何と言うか……頑張る」

「ふふっ……ええ、健闘を祈っております。では、ゆっくりとお休みなさいませ」

 

またスキマが開き、俺の部屋に戻ってきた。

壁に掛かっている時計を見るに、時間にして20分ほどだったが……やはりあの胡散臭い笑顔と向かい合って話していると、疲れが凄い。

 

「……寝るか。いや、でもその前に書き置きぐらいしよう。止められてるのに、独断で行くわけだし……」

 

蝋燭に火を灯し、少し迷ってから、ルーマニア語で書き置きを残す。

……これが《家出》と言うのなら、今回で2回目だ。親不孝だな、一体誰に似たんだか。

 

***

 

「ん……眩しい」

 

翌朝。俺はベッドではなく、冷たくて固いものの上に寝ていた。

どうやら頭を打ったらしく、後頭部が少し腫れている。昨日の記憶も曖昧だ。

 

「……あ? ここ……どこだ? ……幻想郷じゃないのは確かだ、とりあえずここ出るか」

 

胸がかさりと音を立てた。記憶が曖昧な時の為──もしくは忘れない為の、紫からの手紙だ。そして、連絡用のリボン。

 

やる事は決まった。ならば、やるしかないだろう。




書く時はちょくちょく見返したりしてるんですが、フランが紅魔館出てから1年経ってもまだ地底着かなくて、リアルで「ヒェッ…」って声が出ました。
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