紅魔館に拾われた少年はゆっくり暮らしたい   作:ユキノス

114 / 125
進路が!!!!決まりました!!!!

という訳でお久しぶりの投稿です。今回は霊夜サイドのお話になってます。


風萩日向

流石にそろそろ授業にも慣れてきた。と言っても、今使っている教科書より前のものについては知らない事も多いのが問題である。

 

それはともかく、それだけの時間が経っているのだ。それなのに、早苗からは何も情報が来ない。

勿論早苗を疑う訳ではないが、それにしたって不自然じゃないか?

 

「──と思ったんで、紫。お前に助けを乞うた訳だよ。……いや、助けと言うより相談か」

「なるほど。では、私からは1つだけお教えしましょう」

「…………」

()()()()()()()()()()1()()()()()()()()

「……何? 博麗大結界は簡単に抜けられない筈だろ? それに、外じゃ妖怪は否定されてるから──」

「では、後は貴方自身でお考えになってくださいまし。私から言えるのはここまでですわ」

「あっおい、待てよ! ……行っちゃった」

 

というか、妖怪が否定されてるってことは俺も結構まずい筈なんだよな。……いや、俺の場合は紫が境界をいじってるのかな?

 

いや、この際俺のことはいい。問題は、1枚噛んでいるという妖怪だ。なんだかとっても嫌な予感はするが、やるしかない。

 

 

なんてことを思っていた矢先、例の《あの女》から呼び出された。早苗ではなく、俺が。

 

***

 

幻想郷でもこんなにどんよりすることは無いぐらいの気分で、呼び出された屋上へ向かう。ドアを開けたら袋叩き、とかは勘弁してほしいが、果たして。

 

「こんにちは。来てくれたんだね」

「……まあ。それで、呼び出した理由ってのは?」

「もー、早いよ風萩くん。せっかちな男は嫌われちゃうよ?」

 

──お前のせいじゃい!

と叫びたかったが我慢。話だけでも聞くのは別に良いだろう。

 

「……あのね。私、実は……」

 

顔を赤くして、こちらから顔を逸らす。……おいおい、お前まさか……

どうやら嫌な予感というのは当たるものらしい。すたすたと近寄ってきて、顔を近づけ──

 

ぞぶり。という音がして、時が止まった。

 

いや、本当は止まってなどいない。ただ俺が、何が起きているのか理解できていないだけだ。

じわじわと熱を帯びていく腹に目を向ける。妖怪の頑丈さと、(力を抜いていたとはいえ)鍛えていた腹筋で相当な硬さになっているはずのそれは、この女の手に貫かれていた。貫通こそしていないものの、五指が全て入っているぐらい深く。

 

「っあ、つ───ッ」

「……ふふ。びっくりした? 風萩くんたら、いつまで経っても気づかないんだもん。だからこうして……ほーら、ぐちゃぐちゃいってるよ。グロテスクだね〜」

「て……めぇ……!」

 

──こいつだ!

 

相手が妖怪だと分かった以上、手加減してやる理由は無い。腹の激痛に構わず、上体を逸らして──一気に振り下ろす!

 

「ぎゃっ!? いっ、た……こんの石頭……!」

「うるせぇバーカ、何とでも言え!」

 

慧音先生直伝の頭突きは効果覿面で、臓器を引っ掻き回していた手が抜けた。深追いは危険だと判断して距離を取り、腹の傷を塞ぐ。完全に戻すことは無理でも、出血を止められれば暫くはもつだろう。

 

「……あーあ、ほんっとにくだらない」

「逃がすと思ってんのか?」

「逃げるんだよ。少なくとも今はね」

「!! お前……」

 

恐らく変装だったのだろう、声質が違う。この声は、間違いなく男だ。

 

「じゃあな、零。またどこかで会おう」

「待て!」

 

瞬間、視界が白で覆い尽くされ──回復した時には、もう誰もいなかった。

 

「……クソッ」

 

***

 

守矢神社 居住スペース

 

「……ただいまぁ」

「お帰りなさい。ごはんできて、ます……よ……」

「……ん? あ、そっか血が……」

「そうです、制服です!1日じゃ落ちないですよ、この量」

「いや、あー、その……気にするの、量なんだな」

 

本来なら、気にされるのは量ではなく血が付いていることそのものなのではないだろうか。……慣れてるとか? まさかね。

 

「もーこんな大きな穴まで空けちゃって……何があったんです?」

「そう! それだよ! あいつ、あの、えっと、名前忘れた……とにかく、あいつが──いや、あいつの姿をした妖怪に襲われたんだ!」

「……妖怪? 彼女が……?」

「あーっ、と……まだ『早苗が昔から知ってた』あいつと『俺が襲われた』あいつが同一人物かについては、まだ確証が無い。だから、とりあえずは別存在として見よう」

「となると、彼女以外にも化けられると考えるのが妥当ですかね……」

「だろうなぁ…………例えば美鈴とか、諏訪子とか、神奈子とか……ああ、あとお前だ。早苗、どこやった?」

 

途端、冷ややかに笑っていた早苗の顔が、いかにも嫌そうに引きつった。……カマかけただけだったが、本当に当たるとは思わなかった。

 

「まさか、即時見破られるとはね。──ああいや、臭いか。我ながら迂闊な事をした」

「いやね、1度ちゃんと話したいと思ってたんだ。出会い頭に腹穿たれた直後じゃ、しっかり話も出来なかっただろ?」

「まあ、それはそうだ。で、話ってなんだい?」

「とぼけるな。それと、変化の類だったら元の姿に戻ってから話す」

「……逃げようも無い、か。八雲紫も良い仕事をする」

「だろ? 一家に一台置いとくと便利だよ。……まあ座ってくれや。()()()()

 

風萩日向。それは自分の父にして、無二の恩人(小悪魔)をして「逃げろ」と言わしめた人物だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。