「いやいやいやいやいやいや流石に多い! イナゴじゃねえんだぞ!?」
「どっ、どどどどうするのさ!?」
「んなこと言われたって……ええい、俺がやる!」
「りょ、了解!」
「お願い、この中で最大火力は間違いなく貴方だから」
1人でも手を焼いたのに、本当に群れとしか言えない規模で押し寄せてきた刀夜……いや字にすると本当に嫌だな、同じ顔した人の群れ…………。
とにかく大急ぎで詠唱を重ね、空中に幾重もの魔法陣を描く。寸分の狂いも無く何層にも重なったそれが群れに向いている事を確認し、その中心に向けた掌に魔力球を生み出す。更に魔力を注ぎ、外側の大きさを変えないままに詰め込み、抑えつけ、弾け飛ぶギリギリまで凝縮させ────撃ち出す!
「模
魔法陣を通る度にその威力を増していく光線が刀夜の群れを焼き、跡形もなく消し飛ばす。我ながら、未完成にしてはとんでもない威力だと思うが……いつか見た『ファイナルスパーク』には程遠いと………いや、まだ『マスタースパーク』にも届いていないと言わざるを得ない。
それでも奴らが"消えた"のは……多分複製体だったからだろう。一華の複製体の時も、妖怪相手とは思えない程に手応えが無かった。耐久性のコピーまでは出来ないらしい。
…………んで話変わるんだけど、あのミニ八卦炉。マジでどうなってんのアレ。魔力量自体は俺より劣る魔理沙が、俺よりも少ない魔力で遥かに高い威力の魔法を扱える理由はアレに詰まっていると言っても過言じゃない。
「……夜、霊夜」
「……っと、悪い。まだ本命が居るんだったな」
「ええ、行くわよ」
「よーし、わたしも良いとこ見せちゃうぞー!」
「目がこえーのよ目が……よっしゃ、急ごう! これ以上アイツに館ぶっ壊されちゃたまらん」
頬を叩いて気合いを入れ直し、音と臭いを頼りに美鈴の加勢に向かう。大太刀を持った相手に肉弾戦をして、ここまで美鈴の血痕がどこにも無いのは流石だがそろそろ辛いだろう。
第一、俺も一華もアイツには"礼"がしたい。
***
紅魔館の中は所々荒れているものの、そこまで大きな被害は無かった。……これから増えるかもしれないが。
ようやく辿り着いた戦場は1階正面、エントランスだった。こちらに気付いた美鈴が、攻撃を捌きながら声を張り上げた。
「霊夜くん! 加勢ありがとうございます! っふ、ホワチャアッ! そちらの子がっ! 一華ちゃんですかっ!? タァ!」
「そう! そこの刀夜が捕まえてた! 咲夜は!?」
「今はお嬢様の所に! ハッ! ──おふたりとも!」
「「当然!」」
アリスが人形を展開し、弾幕による目眩しを行ったことを皮切りに2人同時に駆け出す。一華が薙刀で大太刀を払ったことで構えが崩れ、がら空きになった米神に掌底を叩き込む。身体を捻って回し蹴りに派生させた一華と合わせ、二重の衝撃で固まった刀夜の鳩尾目掛けて美鈴渾身の正拳突きが炸裂した。
「ゴァッ……!」
そのまま壁まで吹き飛び、叩きつけられ、壊れ──こそしないものの壁にヒビを入れて落ちた。
「……本来なら
「同感。ボッコボコにするよ、零……とめーりーんさん?」
「美鈴な?」
「それは後でいいでしょ!? 油断しないの!」
「わ、わーってらい! 」
ぐぐ……と手を突いて起き上がろうとする刀夜に火球を叩き込むも、流石にそれは避けられてしまった。が、逃げた方に先回りしていた一華によって再び叩き落とされ、関節を極められた。
不意打ちとはいえ日向を追い詰める実力がありながら、美鈴とアリスもいるとはいえ日向の足元にも及ばない俺と一華がメインだったのに、ここまで攻撃が当たるものだろうか。
正直、もっと避けられても良い筈だ。美鈴と接戦だった所に手数が増えたから当たる……というのはしょうがないが、にしたって当たりすぎだ。日向だってもうちょい避けられる。
「ねぇ、アンタ本当に刀夜?」
「!」
「アンタと15年近く一緒にいたから余計に思うんだよね。アンタこんなに弱かったっけ、って」
「な、何を……」
「複製体なんじゃないか、って言ってんの! 違う!?」
「ぐぁだだだ!わ、分かった言う!言うから!」
同じことを思っていた一華の質問に対する答えは簡潔で、最悪だった。
「そうだよ、俺は複製だ。本物は今頃──どこかにいるさ! 見つけてみろよ! 殺してみろよ! お前の大事な"先生"が、無様に殺される前に゛ッ」
先程までの弱気な態度から一変、ゲラゲラと嘲るような大笑を繰り返す刀夜の脳天を潰す。ぐにゃぐにゃと崩れ落ちる肉体に目もくれず、俺は動いていた。足に肉体強化を施し、紅魔館を飛び出す。奴は先生について知っていた。俺との関係についても知っていた。ならば行かなくては。急がなくては。例え本当に居る訳じゃなくても。可能性が少しでもあるなら、潰さなければ。
聴覚が激しい脈動に支配されていることに苛立ちを覚えつつ、全速力で飛行する。速く、速く、少しでも速く!
***
「ッ、霊夜くん!」
今の霊夜くんは、刀夜の罠によって人間殺しの容疑が掛けられている。勿論人里に向かうのは言語道断! なのだが……
「 ……行っちゃった……」
「流石に止めないとよね。咲夜! お願い!」
「……良いけど、アリス。何をどうお願いするのか、説明してからにしてくれない?」
「うわっ、びっくりした!? え、えっ、この人は?」
「私からしたら貴女が『誰?』なのだけど……」
「えっと、斯々然々で……」
未だ説明出来ていなかった咲夜さんに事の経緯を掻い摘んで説明し、一旦納得してもらう。……事情が事情なので、不法侵入にはしないでくれるとは思うけど……それでも、一応。
「……霊夜の双子の姉? はぁ、まあいいわ。それで、理由は?」
「え、ええ。霊夜が人里に向かった。今の霊夜は──」
「なるほどね。分かった、連れて帰ってくるわ。今度は左眼が、なんて言われちゃたまらないもの」
なんとも小粋なジョークを挟み、咲夜さんの姿が掻き消える。改めて緊張の糸が解け、その場にへたり込んだ。
「ふぃ〜……。さて、今回の件に直接関係のある一華ちゃんはともかく、アリスは流石にこれ以上巻き込む訳にはいきません。図書館で彼らと待っていてください」
「……そうさせてもらうわ。あの子の戦い方じゃ、わたしも上手くサポート出来る自信無いもの。大人しく霊夜のお友達の相手でもしていることにするわね」
土埃を払って図書館に向かって歩き始めたアリスから視線を外し、所在無さげにしていた一華ちゃんに向き直る。恐らく今すぐにでも霊夜くんの元に行きたいだろうに、私を気にして留まってくれているのだろう。
「私は大丈夫、少し疲れただけですよ。それに、ここを守る為にも私は残らないと」
「……わたし、そんなに顔に出やすい?」
「それなりに。やっぱり双子ですね、キミたち」
「そっ……か。えへへ……。──じゃあ、美鈴さんの分も戦ってきます!」
「ええ、お願いします。……ご武運を」
「はい!」
互いに拳を打ち付け合い、笑顔で見送る。扉を丁寧に開け閉めする所に真面目さを感じつつ、えいやっと立ち上がって気合いを入れ直す。カッコつけておいて負けました、なんて恥ずかし──
「──霊夜と同様良い眼をする娘ね、美鈴」
「ふふっ、そうですねお嬢様……お嬢様!? お、お休みになられてた筈では!?」
「バカね、あれだけ騒げば誰だって起きるわよ。あの娘が霊夜の……」
「双子のお姉さん、だそうです」
「そう。なら無事に帰ってくるわよ」
「わたしもそう祈っていますが……随分と彼女を買うんですね?」
「当然よ──
***
頭の奥が熱い。
本物かと思えば偽物、をあと何度繰り返せば刀夜を倒せる?
道中、沢山の刀夜を見た。その全てを倒したが、全てがバラバラの場所を言い残した。人里だけでなく、紅魔館、冥界、妖怪の山、太陽の畑、無縁塚、博麗神社、そして迷いの竹林。
一部は俺が行かずとも勝手に解決出来る奴がいるので候補から切り捨てるが、そうなると一番気になるのが迷いの竹林────この前から姿が見えない、影狼のことだ。
したくもない想像が脳を過ぎり、頭を振る。今は人里に向かっ──
「霊夜」
「うおぁ!?」
全速力で飛ばしているその真横に突然咲夜が出現し、驚きのあまり大きく飛び退ってしまった。魔力の制御も崩れ、しばらく滅茶苦茶に飛んでからようやく止まると、苛立ちと呆れが半々といった顔でこちらを見ている。
「な、なんだよ咲夜……危ないだろいきなり」
「焦る気持ちはわかるわ。でも、貴方は人里に行ってはいけないの忘れた? 今度は左眼、なんて笑えないからね」
「ッ……! ……………………悪い。カッとなってた」
「人里には私が行く。何事も無いのが一番でしょうけど、場所が場所だから後で誰か増援に来るでしょうし。貴方は別の場所に行きなさい」
しっしっ、と払う動作をされるも、よく考えなくとも人里では一応死んだことになっているらしい俺が突然出てきたら無用な混乱の元なのは間違いない。右眼が潰されたのも事実だし、殺されかけた所を咲夜に助けられたのもまた事実なのだ。
「……そんな顔しなくても、『先生』は見ておく。だから早く行きなさい、それとも時間稼ぎにおいて私が信用出来ない?」
「いや。……すまん、咲夜。慧音先生を、頼んだ」
「任された」
咲夜と2人頷き合い、それぞれ別方向に別れる。咲夜は人里、俺は……迷いの竹林、影狼の家。まずはそこに行く。
「影狼……無事でいtあっっっづ! あ゛!?何!?」
影狼のブローチとお揃いの宝石を使ったペンダント。特別な力は何も無かった筈のそれが今、火傷しそうな程の熱と魔力を帯びている。今この瞬間、このペンダントはただのアクセサリーではなくなった。
魔力を持つ者が大切にしているもの、身につけているものはいずれマジックアイテムへと変化する、という話は聞いているし、その実例も知っているが……変貌の瞬間を見るのは初めてだ。意を決して服越しに握ると、魔力が注がれて淡く輝きを放つと同時に、微かに引っ張られるような感じがした。
「これは……ここに行け、ってことなのか?」
返事の代わりにより強く輝いたペンダントを慌てて服の中に戻し、導かれるままに飛ぶ。まるで思考をトレースしたように影狼の家への正確なルートを辿った先には、ボロボロになった影狼の家と争った形跡、そして傷だらけの日向が居た。
「──父さん!」
「あぁ……すまない、零。古傷というのは、嫌なものだな……ぐっ」
「喋るな、傷くらいは塞ぐ! ……何があったんだよ」
「刀夜だ。……ようやく見つけたは良いが、人質を取っていた。狼女の──」
「いい、それ以上は! ……全部片付けて、ちゃんと紹介するから」
「──!! ……ああ、楽しみにしておこう。お前の、大切な、ひとだ………」
「…………そんな、死ぬみたいなこと言うなよ。バカ親父」
槍を杖代わりにして座り込んだ日向が回復の為に眠りに入ったことを確認し、竹林の妖精たちに刀夜の行方を尋ねる。妖精によって方向感覚が狂わされているこの竹林では、ただ臭いを辿っても追いつけないことがほとんどな為だ。
もこ姉や影狼の家に通う過程ですっかり顔見知りになった妖精達は俺の顔を覚えていてくれたようで、刀夜の居場所に向けた道案内を申し出てくれた。行き着く先は───
「……ここは」
「アイツはこっちの方に誘導したよ。もー、アイツ霊夜と違って脅してくるからキライ!」
「案内ありがとう、キツく言っとくよ」
「よろしく! また遊んでね!」
「おう、また今度。…………しかし、よりによって太陽の畑かぁ」
この時期は向日葵が咲き誇り、風見幽香が居るという一点で超危険地帯として有名だが、今は何よりも花の香りで臭いが混じるのが辛い。と思ったが、日向と争ったことで血の臭いもあるようだ。これなら追えると飛んでいくと、無名の丘を過ぎ、幻想郷の西の方の荒廃した地域に出た。確か一部は山姥の領地だった筈だが、それも北の方だった筈。と思って南の方に目を向けると……1軒の家があった。気味が悪いほどに目立つのに、場所自体が目立たないせいで見つからなかったのだろう。考えるまでもなく刀夜の家だ。
「ハ。散々来たんだ、たまにはこっちから行ったって良いだろ? なぁ……刀夜」
ドデカい魔法を使った後は魔力の枯渇から来るふらつき、最悪気絶するのが恒例だが、今回はどうも違う。より強大な魔法を、より多く使える。使いたい。使うべきだ。理由も分からず、強大な魔力が身体の奥底から湧いてくる感じだろうか。
「今まで散々壊したんだし? 一回くらいやり返してもバチは当たらねぇよなぁ!」
苦手な筈の、雷魔法。精々手の先から飛ばす程度だったそれは今、雷雲を呼び起こすことすら可能にしていた。渦巻く黒雲は高く高くそびえ立ち、やがて雷を落とす。一発二発ではなく、何度も何度も何度も何度も。焼け焦げ、もう壊れなくなってもまだ、雷は止まらなかった。
その中──いや、その下から出てくる1つの影。知った姿とはあまりにも違うシルエットで一瞬別人かと思ったが、アレがどうやら本物の風萩刀夜……らしい。
今まで出会った偽物と同じ臭いがする為、こいつも複製かと思ったが、今回に関しては日向の血の匂いのオマケ付きである。
色んなとこタライ回しにされた結果がコレか……と肩の力が抜けたが、その肩に一羽の鴉が停まった上に喋り始めた。
「よっ、お疲れさん」
「は? その声……」
「俺だよ俺、天魔。風萩刀夜を見付けてくれたみたいでよ、礼を言いに来たのよ」
「……にしては、使い魔なんだな。こういうの、本人が来るもんだと思ってたけど」
「んーまあそこは許してくれや。こっちはこっちで、刀夜の息が掛かった裏切り者を炙り出して罪状纏めて〜ってよ……これがホンットにわんさか居てよォ、俺らの方でもどう立て直すかの会議やら何やらでまだまだ大忙しって訳」
「そ。……で、アレが刀夜だろ? そういうのしてんなら、
「なんでぇ、案外冷静じゃねえの。十何年越しの仇ってんだから、もっとグワァッといくもんだとばかり」
「行きてぇよ。ただそっちで何かしてんならそっちの方が良いと思っただけ」
鴉ににやけ面なんてものは出来ない筈なのにニヤつかれている気分になって少し苛立ちが戻ってきたが、更なる闖入者──遅れてきた一華によってまた冷静になれた。
「てっ、天魔様!? 何故────」
「おっ? お前一華か! デカくなったなぁ、前までこーんな……あ、そっちから見えねぇか。まとにかくだ、刀夜本人の処分はお前らに任す。日向が申し出たんだけどな、後始末はこっちでつけてやっから──」
天魔本人はここに居ない。これはただの使い魔だ。それなのに、スゥ、と文字通り肝が冷えるような殺気を感じた。……いや、これは……妖怪の山から放たれたものを、ここで感じている?
「──生死は問わん。好きにやれ」
「おう」「はっ」
その言葉と共に、鴉は飛び立った。
今までで一番の威圧感だが、それでも負けるつもりは無い。コイツに壊された俺たち一家の気持ちを考えてみろってんだ。
「追いかけっこはもう終わりだよ。……絶対に、許さないから」
「ククッ、ガキ2人にしてやられるような真似はせんわ」
「ハ。人質取っといてカッコつけられてもな」
「ほう、知っていたか。日向に会ったな?」
「それもあるけど。何より
「青二才どもが、やれるもんならやってみろ!」
夏にしては乾いた空に、打ち合う音が甲高く響いた。
***
「……おっ、やってんねぇ」
鴉を通して状況を眺めていた天魔は、ぽつりと零す。忙しい、という風なことを言っておきながら、天狗達の前で胡座をかき、肘を突いてさえいる様子は、むしろリラックスしているようにすら思えた。
「天馬様、その裏切り者と言うのは──」
「必ずや!必ずやこの私めが天馬様の御前にその首を──」
「ん? おぅ、そうだな。とりあえずお前ら全員クビ!」
「……は? 何を゚」
天魔が腕を一振りするだけで、その場に居た大天狗達が有り得ない形に捻れた。潰された。弾けた。両断された。
目の前に居ながら一滴の返り血も浴びぬまま、天魔は大天狗3人と1人を除いた部下全員を一息の間に《処分》した。
「俺も舐められたモンだよなぁ……バレてねぇとでも思ってたのかね?」
「あ……あっ、あぁ…………」
1人残された部下の鴉天狗は女性だった。残された、と言っても両翼はへし折れ、両腕が肩から無くなっているが。
全てを見透かす天魔の目。それを目の当たりにした彼女は本能で逃げようともがくも、腰が抜けた上に足だけとなった四肢では上手く立ち上がれない。顔から出る液体全てでグチャグチャになった顔を歪め、口の端に泡を吹きながら連呼される謝罪の言葉を、天魔は溜め息と共に聞き流した。
ああ、天魔が自分を残したのは気まぐれなんだ。ようやく理解した彼女は、アンモニア臭を撒き散らしながら、立てないなりに逃走を試みる。しかし虫のように畳を這いずって逃げる彼女にとって、天魔の1歩はあまりにも大きかった。足を掴んで持ち上げられ、遂に心が折れた。
「あっ……あ、あのっ! わた、わたしの、こと……娼婦として、使っ」
「んー、わりーんだけどさ。ソレで許せりゃお前は《こう》なってねーんだよな」
「あっ……あ、へへへ………しょ、しょおれすよね! こんなのじゃ、満足いただけな゛っ、あ゚っ?お゛っ」
「分かってねーみてぇだから言うわ。部下にあそこまで尊厳破壊させといて、テメーらがその程度で済む訳ねぇだろってんの」
ぐりん、と突然背中を反った鴉天狗の口が裂け、その口に足のつま先が捩じ込まれた。そのままミチミチと嫌な音を立てて入っていく自らの足を眺めながら、やがて鴉天狗の女性は動かなくなった。
「はーーーーーーー………ったくよォ、どいつもこいつも汚職ばっかしやがってコイツら……」
「……天魔様」
「おっ、どうだコレ?妖怪車輪」
「………………………コホン。その、部屋の掃除を致しますので」
「反応くらいあったって良いだろ……まいいや、畳もそろそろ替え時だったしな」
何人もの部下を殺したその足で、天魔は居間へ向かう。鴉天狗の遺体は放り投げ、空中で捻って∞の形にしたところで遺体は崩れていった。
「頭張るってのも面倒なモンだよなぁ……お前もそう思うだろ?」
「ですが、居なければならない人材かと」
「そ。さて、あと何人だ? 刀夜の野郎ごっそり引っこ抜きやがってクソ…………」
変わらず、己のすべき事をする。トップに立つということは、そういうことだ。