紅魔館に拾われた少年はゆっくり暮らしたい   作:ユキノス

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こんにちは、豹牙です。
今回も妖々夢EX。そして、この物語のターニングポイントになります。
俺からは多くは語りません。
ではどうぞ。


人の道と妖の道

「―こんにちは♪」

「うわぁぁ!?」

唐突に後ろから―何も無かった筈の空間から触られて驚くなと言われても無理だ。断言する。振り向くと、ゴスロリといった例えがよく合いそうな服装の女性が、中に目玉が幾つも浮かんでいる裂け目から上半身のみを出してにこやかに微笑んでいる。

――胡散臭い。

それが第一印象。どの仕草を見ても、それが演技であると一瞬で見破れる―が、その真意が全くもって分からない。

「びっくりした…なんか、用か?つか誰だ?」

未だ忙しなくバクバクと音を立てている心臓に手を当てながら出たのは、なんとも情けない声。

「私は八雲紫。ええ、貴方に興味がありまして」

「…興味?俺に?」

「ええ、ええ。他でもない貴方ですわ。貴方は、紅魔館の面々から殺伐とした空気を無くし、狂った妹から狂気を無くし――っと、元より狂ってはおりませんでしたわね」

俺の言葉に首肯した女性は、裂け目から出てきて腰掛け、扇子を口元に当てて話し始めた。

「貴方は今、自分が霊力以上に妖力を―しかも全く馴染んでいない物を持っている事を知っているかしら?」

「急に話変えたな…確かに持ってる。けど、それがどうしたんだ?」

「―貴方は人間かしら?」

「はぁ?何言ってんだ?俺は人――っ、げほっげほっ!」

肺に何かが入った感触があり、咳をしてから、自分の手に何かが付いていると分かり―その正体を見て、ぞっとした。

――血だ。

「…………!」

「やはり……貴方は今、人ではないのですわ。妖怪に近い…しかし、貴方が自分を妖怪と受け入れていない為に矛盾が生じているのですわ」

「矛盾……?げほっ!げほっげほっげほっ…」

「あぁ、無理に喋らないでくださいな。貴方は妖怪。でもそれを認めておらず、人間だと言い張る。…ほら、矛盾しているでしょう?」

解決方法は、と聞こうとして、聞くまでも無いじゃないかと思い直す。それはつまり、俺が()()()()()()()()()()()()()。勿論そうすれば、人間として人里には入れない。だが―ここでくたばるよりも何倍もましだ。

「ぜぇ…ぜぇ…」

息が続かない。意識が薄れてくる。たった数文字を言うだけだというのに、それすらもままならない。

その時、声が聞こえた。

――だからなんだ?お前の意思はそんな物か?

「―――っ!」

「あら?…どうやら、答えは出た様ですわね」

「ああ…出たさ……俺は…人の生を捨て、妖怪として生きる…生きてやる…!」

その言葉を聞いた紫が、薄く笑い―直後、意識が飛んだ。

 

―*―*―*―*―*―*―*

 

「ん…眩しい……」

瞼を開けると、柔らかな陽光が目に入ってきて、それを手で遮り――違和感を覚えた。声が高いし、手も小さい。更には、銀に少しの赤が混じった髪が腰まで伸びている。前髪は大して変わっていないが、お尻の辺りにふさふさした感触が…って尻尾?

「…俺、何の妖怪になったんだ?」

しかしいつまでも野原で―紫が運んでくれたのだろう―寝転んでいる訳にもいかないので、ひとまず紅魔館を目指す事にする。霧の湖に顔を写せば分かるだろう。

「…おお、妖力が増えてるし馴染んでる。魔力はそのまま、霊力は…消えたみたいだな」

うぅ、見た目的に目立つなぁ…あ、牙が生えてる。尻尾が生えてたから分かったけど獣の妖怪か。

 

―*―*―*―*―*―*―*

 

途中何度か毛玉や妖精と出会ったが、初対面なのもあり無反応。うきうきしながら「春ですよー!」と伝えて回っているリリーホワイトは一瞬きょとんとした物の、すぐに仕事(なのか?)に戻った。

…まあ、仕方無いか。

「あったあったー…っと」

紅魔館はそこそこ大きい上に目立つ為、割と目印にしやすい。(少々不本意ながらも)髪を靡かせて降下していき、湖に顔を映してみると―

「何だこりゃ、ほぼ女性じゃねぇか……何より目立つのはこっちか…」

さて、俺がどんな妖怪か判明した訳だが。答えはなんと、『狼男』。何で分かったかって?銀色の犬耳、ふさふさの尻尾が生えていたからだ。要するに銀狼。牙が生えていたのも頷ける。因みに、目の色は変わらず赤だ。

「…あの時喰ったからかな」

「あれ、霊夜君…が妖怪化してる!?何があったんですか!?」

「のわっ!?美鈴か、驚かすなよ…って、分かるのか?」

「ええ、霊夜君の気を感じるので。…さて、皆に説明してもらいますよ?」

「分かってる、説明するから…って、なんで撫でるんだよ」

「良いじゃないですか~」

「はぁ…3分だけな」

「はいはい、分かってますって~…わぁ、髪柔らかい!」

「うわ、擽ったいって!行くなら早く行くぞ!」

「ふふふ~…可愛いですね~」

美鈴は顔こそにやついている物の、撫でる手は不快にならない柔らかさを孕んでいる。…あ、ヤバい。これ癖になる。

「あ、嬉しいんですね?尻尾思いっきり振ってますし…」

「…正直言うと嬉しい」

美鈴に撫でられながら、尻尾はぶんぶんと振られているがもう仕方無い。そういうもんだ。多分。

「……あ、もれなく全員図書館に居ますね」

「悪いけどそれまでには撫でるのやめてくれな…」

「ふふふ、分かってますよ~」

なんて言ってる間に図書館前に着いたので、美鈴がノックして「失礼します」と続け、こあが扉を開けてくれた後、はしゃぎながら「わぁ可愛い!誰ですかこの子!」と言われる所までは―色々別人なので分からないのが普通だ―予想出来た。美鈴が説明し、俺が改めて自己紹介した辺りで10秒程硬直し、それを聞いていた面々が同時に「えええええええええええええええ!?」と叫んだ声は、幻想郷全土に―とはいかないものの、霧の湖にいた大妖精とチルノ、わかさぎ姫には聞こえたらしかった。

だが何より大変だったのはその後で、急に叫んだせいで発作が起きたパチェに薬を飲ませ、慌てたこあが薬を取るときに本棚をひっくり返したので手分けして戻し、終わった辺りでフランに抱きつかれてそのまま勢いで吹っ飛んだ―と言うのが30分の間に起きた、と言えば大変さが分かるだろう。

兎に角、俺はもう人ではない。これからは狼男―要するに妖怪として生きていくのだ。その事に複雑な感情を抱きながら、もう何度目かの壊れた扉を見詰めていた。

 

―*―*―*―*―*―*―*

 

―後日談―

 

―たまには博麗神社にでも行くかな。

と思った俺は、美鈴にその旨を伝えて―前にそれを忘れて騒ぎになった―、博麗神社へと飛んで行く。

「霊夢分かるかなぁ…紫が説明しといてくれれば話は早いんだが…まあ期待しないでおくか」

俺が妖怪化した事を知っているのは、俺が分かっている限りでは紅魔館の皆とちびっこ達、草の根の2人(この時、草の根に入れてもらった)、そして紫だ。リリーは見ていたが、完全に気付いてないのでノーカン。

「…ま、宴会の時に会うから大丈夫だろうけど…」

だったら意味無いとか言わない。霊夢の場合、問答無用で退治しそうだから知らせといた方が良いかなーと思ったからだ。

「お、見えてきた。…お茶でも飲んでるのかな?」

前に聞いた所、境内の掃除とお茶を飲む以外は家事しかやらないらしい。普通なら優良なのだが、妖怪退治が生業の巫女として修行はしないのだろうか。

「よっと…おーい霊夢ー」

「はいはーい素敵なお賽銭箱はそこよー…誰?」

「霊夜だよ」

「…は?」

「だーかーらー、元人間の新月霊夜だよ。今は銀狼だけど」

「嘘…は言ってないみたいね。…とりあえず入んなさい。詳しく聞くわ」

「あいよ…ん、魔理沙も居るのか?」

「え?ええ、居るけど…なんで分かったの?」

「いや…匂いが魔理沙のそれだから、かな」

「…嗅覚が発達したのね」

「みたいだなー」

 

~少年説明中~

 

「…って訳だ」

「…この可愛い狼があの霊夜だなんて信じられないぜ」

「黙れ元本泥棒。あのって何だあのって」

「あ、霊夜だ」

「…何それ」

結論、霊夢も魔理沙も、思っていたより驚かなかった。

「ま、変な事したら容赦はしないけど」

「しないよ…信頼無いなぁ」

「念押しよ。あんた酒弱いでしょ」

「ああ、なるぅあ!?」

「おー、柔らかいぜ…この野郎、男のくせにこんな髪しやがって…」

「俺だって好きでこうなった訳じゃないっての。…それと魔理沙」

「うん?」

「お前撫でるの下手だな」

「何をー?霊夜のくせに生意気だぜ」

「人の神社で馬鹿やんないでくれる?魔理沙」

「…分かったぜ」

「ほっ…」

割と…いやかなりもみくちゃにされたので、髪がボサボサになってしまった。許さん。

「…ところで、私にも撫でさせてくれる?」

「え?…霊夢こういうの好きなのか?」

「嫌いじゃないわね。…何より、アンタその状態で帰るつもり?」

「…まあ、いいけど…耳はあんま弄るなよ?」

「はいはい、分かってる分かってる。ほら、こっち来なさい」

手招きされたのでちょっとずつ近付き、互いの膝が当たりそうな所まで来た辺りで静止を掛けられたので止まる。すると、美鈴とも魔理沙とも違う、どちらかと言うと遠慮がちな動きで撫でられる。…うん、これはこれで心地良い。美鈴程ではないけれど。

「…あら、尻尾振ってる」

「ぐぬぬ…私の時はぴくりともしなかったのに…」

「魔理沙は雑なのよ、なんでも」

「むっ、酷いぜ霊夢…私程繊細な人間はそう居ないぜ?」

「じゃあ紫はなんだと思う?」

「え?えーと…」

繊細(1000歳)だよ」

「ぷっ…確かになー」

「1本取られたわねー」

「…霊夜、ちょっと来てくれるかしら?」

「…あ」

「いっ」

「う…」

紫本人ご登場に、一同揃って絶句するしか無かった。口元は明らかににっこりを通り越しているし、視線は射殺す様に鋭い。美人が台無しだ、とは最早言ってられない。

「…あー、あれだ。年上の言うことはタメになるという…」

「私は17歳よ?」

「え、じゃあ俺と2つしか変わらない…いやいや待て待て、それじゃあ吸血鬼異変の時は産まれてすらいないじゃないか」

「…さ、さぁてねぇ…」

「それに、17歳にしては大人っぽ過ぎるだろ。サバ読むにしても責めて26歳だ」

「…あら?褒められてるのかしら?」

「…そう受け取っといてくれ。大妖怪とはいえ女性だしな、深くは傷付けたくないさ」

「へー良かったわねー紫ー」

「霊夢の棒読みが酷い…」

「ははは…」

とりあえず…セーフ!

この後、4人で夕方まで話していた。…ただ、紫がぐうたら過ぎてちょっと引いた。藍も大変なんだなぁ…




結局弾幕ごっこしない(2回目)。いやーまずい、これ下手したらEXボス全部弾幕ごっこしないかもしれない。
さて、霊夜は妖怪になりました。この結果が正しいかどうか、それは俺にも分かりません(大真面目)。
ではまた次回。
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