今回は人里編その2。これが終わったら今度こそ萃夢想になります。話は考えてないけど、戦う順番は考えてあります。最初はあの人です…が、今は慧音先生との再会を眺めましょう。と言う訳でどうぞ。
「霊夜…お前と、いう奴は……!」
半分泣きながら、と言うかもう既に泣いている先生が、俺の両肩を掴み、僅かにだが仰け反ったのを見た途端、「あー…まぁそうなるよなー…」と内心で諦めていた。寧ろ10年間も行方を眩ませていたのだ、怒られない方が珍しい。ぎゅっと目を瞑った俺に、頭突きの衝撃は来なかった。代わりに、胸にこつんと額を当て、そのまま声を上げて泣いてしまった慧音先生に暫し唖然としてから、その髪を撫でた。
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霊夜が今、稗田邸に居る。
そうアリスから聞いたのは、数分前だった。10年前に出ていってしまい、それから一切の情報が無かった為、誰もがその命を落としたと信じていた、私が拾い、短い間だが育てていた子供が。生きている。
その話を聞いた時、私は驚きのあまりに倒れそうになった。そこからの記憶は断片的で、気付いたら稗田邸に着いていたぐらいだ。そっと襖を開けたアリスに続いて部屋に入ると、長い赤混じりの銀髪を背中に流し、狼の耳と尻尾を生やした少年が居た。私は、それが霊夜であると確信出来た。
「えっ……先生!?」
「霊夜……霊夜なのか!?」
ああ、やはり霊夜だ。赤い瞳に宿した光はあの時のまま、力強く、それでいて暖かい。もう人間ではなくとも、彼は霊夜なのだ。
その事実を受け止めた時、私は嬉しくて涙が出てきた。無意識であそこまで泣いたのは、そう多くはないと断言出来る。
「霊夜…お前と、いう奴は……!」
その存在を確かめる様に肩を掴み、拭えぬ涙を少しでも止める為に少し仰け反った時、霊夜は瞑目した。恐らく頭突きされると思ったのだろうが、怒りより嬉しさが勝っている今回はしない。
そのまま霊夜の胸に体重を預け、恥ずかしながら声を上げて泣いていると、ややぎこちないながらも柔らかな手つきで、頭が撫でられていた。
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「…すまない、取り乱してしまって」
「ううん、俺…いや僕の方こそごめんなさい……」
「《俺》でいい」
「そうですか?…ただいま、先生」
「ああ…お帰り、霊夜」
その言葉と共に抱き締められ、俺の目にも熱い物がこみ上げてきた。それは頬を伝って落ち、先生の肩に落ちた。
そのまま、何分経っただろうか。抱擁を解く直前、パシャッ、という音がして、音源に視線を動かした。あの音は確か―――。
「…いやー、良い写真が撮れました!それでは、お邪魔しましたー、っと」
「あっ、文!……行っちゃったか」
「…こほん。お二人とも、ここが私の部屋だって忘れてません?」
「「う゛っ…」」
「《僕》、ねぇ…霊夜にもそんな時があったのね」
「~~~~~!」
阿求とアリスの2人には、多分弄られそうな気がした。
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「妹紅、居るか?」
「うん?どうしたんだ急に…って誰だそいつ」
迷いの竹林に程近い私の家には、全くと言ってもいい程―まあ望んだ結果ではあるのだが―人が来ない。来るとしたら、たまに訪ねてくる慧音か、竹炭を買いに来た夜雀ぐらいしか居ない。因みに今回は前者だ。いや、それも少し違うかもしれない。何故なら、慧音は1人の妖怪を連れているからだ。
「久し振り、もこ姉」
「も…もこ姉?」
いつだったか、私の事をそう呼んでいた小生意気な子供が居た様な……いや、しかしあいつは人間だ。妖怪ではない。…まあでも、一応聞いてみよう。確認は大事だ、うん。
「…お前、霊夜?」
「うん、霊夜」
「そうだよなーそんな訳…え?」
「ん?」
「どうした?」
目の前の妖怪が、霊夜?だって霊夜は…
「人間、だよな?」
「まあ、元々は。今は色々あって妖怪だけど」
「……うーん…やっぱり信じられない…」
「あ、じゃあ………これは?」
そう言って取り出したのは…札?あれ、この札……
「思い出してくれたか?昔、もこ姉が俺にくれた札だよ」
「…あー!やっぱりか!いやでも、まだ持ってたんだなー」
「お守りとしてね。人狼に食われそうに……」
がちん、と音がしそうな勢いで口を閉じた霊夜を――
「…その話、詳しく聞かせてもらえないか?」
にっこりと笑う慧音が、しっかりと掴んでいた。月に照らされた2人の銀髪は、きらきらと光っていて幻想的だった。
因みにこの後、霊夜が「先生とお揃いの髪になってるのが嬉しいんだ」とうきうきしていたのは別の話。
…やべえ、書き上げちまったぜい(12/15、22:20現在)。まぁ予約投稿ですし…いやでも、今日投稿するべきか…?と思いましたがこちらで。
いよいよ次回は萃夢想。宴じゃおらー!(ドーン)
ではまた次回。