暇人嘗めんなおらぁー!…はい、本題入りましょう。
前回、美鈴が萃香の存在に気付きました。で、今回は殴り合いです。なんとまぁ怖い。
ではどうぞ。
「はぁぁぁっ!」
「おりゃぁぁぁっ!」
拳と拳、また脚と脚が激突する度、衝撃波が空気を震わす―が、どういう訳か宴会場に響いている様子は無い。だが、そんな事を気にしている余裕は残念ながら無かった。
「はっはぁ、良いね良いねぇ!」
――強い。
一挙一動に一切の無駄が無い。更には防ぎづらい所を的確に攻撃してくる、例えるなら《技》の体現。いつしか私の顔には、荒っぽい笑みが浮かんでいた。
「すぅっ――――はぁっ!」
「おわぁっ!?っとと、まだ力を隠してたのか」
無駄な力を抜き、気を全身から局所――急所と手足だけに集める。
「おぉぉぉっ!」
「ぐっ!?」
拳を受け切れなかった鬼が、木々を巻き込みながら吹っ飛んでいく光景を見ながら、私は追い掛けた。
あの鬼は、これくらいじゃ倒れない。
「っつ~…いやぁ、今のは効いたよ、妖怪」
「ありがとうございます、小鬼さん」
「私は伊吹萃香。小鬼ってのはやめてもらいたいね」
「紅美鈴です。妖怪とは呼ばないでください」
今更ながらに名乗り、私達は何度目かの激突をした。
―*―*―*―*―*―*―*
「霊夜~…」
「ん、どうした?」
「私も、お酒飲んでみたいの…」
胡座を掻いた俺の膝にフランを座らせて撫でていると、不意にフランがこんな事を聞いてきた。しかし…俺に聞かれても…うーん……
「……ダメ?」
くるりと向きを変え、こちらを向いて上目遣いをされるとかなりぐらっと来る。何だこれ、可愛いな。
「…フラン、いつの間にそんな手を覚えたんだ……」
「えへへ、咲夜がこうすると男の人は喜ぶって言ってたの」
「…なるほど。ちょっと待ってな、用意してみる」
「ほんと!?」
フランを一度下ろし、咲夜に何か良い手は無いか聞いてみる事にする。困った時は咲夜に相談した方が良い事が多いのだ。
「えぇ…と、あれ……咲夜ー?咲夜ー?」
「なに叫んでんのよ」
「お、霊夢か。咲夜知らないか?」
「あー、咲夜なら……」
霊夢が顎で指した方向は、確か……そうそう、居住スペースがあった筈だ。あれ、って事は………
「そ。早々に魔理沙に潰されてたわ」
「あらぁ……咲夜にも弱点があったんだな」
魔理沙が一方的に飲ませてたからね、と付け加えた霊夢に軽く笑ってから、酔った咲夜をからかってやろうとフランを呼んでくる事にした。
因みにフランの酒だが、結局水で割る事にした。果実酒も考えたが、加減が分からない上やり方も知らないので今回は無し。
「…すぅ……すぅ……」
「…寝てるな」
「寝てるね」
酔っ払った咲夜はどんなものか、とフランと共に見てみた所、整った顔は綻んでいるし、メイド服は少しくしゃっとしている。印象としては、数年程幼くなったみたいだ。
「こんな咲夜初めて見た…咲夜~」
「ふにゃ……」
「可愛い…猫みたい」
枕を胸に抱き、幸せそうに微笑みながら寝返りをうつ咲夜は正しく猫の様だ。いつもはレミィに付き従う犬の様なのだが、これはこれで悪くない。畜生、文は居ないのか。写真に納めてもらいたいのだが。
「あやややや、呼ばれなくても出てきますよっと」
「わぁっ」
「おわっ……文!丁度良い所に来たな、ちょっと耳貸せ」
「何です何です?何やらいいネタの匂いがしますが」
「いいか、ごにょごにょ……」
「ふむ、ふむ……良いですね、その案乗りますよ」
そう呟いた文の口は、意地悪に歪んでいた。フラン曰く、俺も似た様な笑みを浮かべていたらしい。だが、咲夜を弄る数少ない要因が出来たのだ。これは仕方無いだろう。
因みにこの後は、現像してもらった写真を秘密裏に渡してもらう約束をした直後、少しボロッとした、しかしどこか清々しい様子の美鈴を見付けた。大方、何か掴めたのだろう。
さて、何やら別のが混ざりましたが、美鈴編はこれにて終了となります。次回は誰でしょう?
ではまた次回。