影狼「私と姫は久々に登場するわよ~」
わかさぎ姫「それではどうぞ!」
「おーいフラン、雪だぞ雪!」
「雪?って何?」
今日は12月24日、クリスマスイブ。今年は雪が降っているので、ホワイトクリスマスという訳だ。
それはそうと、フランは雪を見た事が無いらしい。なんと勿体無い。
「うーん…見てもらった方が早いかな。あ、外は寒いからしっかり防寒しろよー」
「うんっ、分かった!」
トテトテと部屋に―いやまあ地下室なのだが―戻ったフランを見送って暫くすると、いつも被っている帽子を紅白のパイロットキャップ―咲夜が編んでくれたらしい―に、アイボリーホワイトの手袋―同じく咲夜が編んだ―を填めて緑色のマフラーを巻いたフランがうきうきしながらやってきた。
「よし、じゃあ行こうか」
「えへへー、楽しみー!」
……フランがレミィより俺に懐いているのは気のせいだろうか。そうだと信じたい。
―*―*―*―*―*―*―*
霊夜がフラン(と何故か着いて行ったこあ)を連れて外へ駆け出していった後、こあの代わりに咲夜が淹れてくれた紅茶を飲みながら、窓から外を見ていたレミィがぽつりと呟いた。……やっぱり美味しいわね、咲夜の紅茶。
「雪が積もれば銀世界、とはよく言った物よねぇ」
「あらレミィ、それは
「……それもそうか。にしても」
霊夜を真っ直ぐに見たレミィの横顔は、感謝が色濃く出ていた。
「あの子が来てから良い事づくめよ、パチェもそう思うでしょ?」
「ええ。美鈴は稽古を楽しみにしてたし、こあは可愛がってるし、咲夜は同じ人間だから安心していた。私は魔法を教える弟子が出来たわ。レミィは?」
「私?いつも面白い運命が覗けるのよ。フランは言うまでもないでしょ?」
「ええ、勿論。…ほんとに、何年経っても楽しそうに笑うわね」
フランと雪合戦をしているらしく、時折「やったなー、それっ!」「あははは、楽しいね!」と聞こえる。その会話をBGMに、私とレミィは紅茶を飲んでいた。
―*―*―*―*―*―*―*
途中魔理沙やちびっこ3人衆も参戦し、思っていた以上にヒートアップした雪合戦で汗をかいたので、咲夜に驚かれてしまった。まあそりゃそうか。
「はう…暑い……」
「大ちゃん大丈夫なのかー?」
「汗びっしょりだから気持ち悪いよー…」
後ろでそんな会話が聞こえたので、風呂に入ってきたらどうだと聞いてみる。チルノは溶けるだろうが、まあ復活するから大丈夫だろう。うん。
咲夜には目線で「良いだろ?」と伝えるが、苦笑して肩を竦めたのでOKだと受け取っておく。
「よーしお前らー、風呂入って来ーい」
はーい、という唱和と共に、フランとこあが先導して風呂場へと向かった。俺?皆が出たら入るよ。尻尾の毛で排水口が詰まっちゃうからな。
―*―*―*―*―*―*―*
「っは~…気持ちいいぜ」
紅魔館の風呂は、住んでる人数に比べて異様に広い。畜生、羨ましいなおい…と言いたいが、私以外に入る奴居ないからいいや。
「気持ちいいね~」
「そうだな~…フラン」
「うん?どうしたの魔理沙?」
「いや、まあフランだけじゃなく全員に聞きたいんだが」
少し大きめの声で言うと、全員がこちらを向いた。単純な質問だが大事な事だ。
「お前らって、霊夜にどう接されてるんだ?」
「お姉ちゃんみたいにです」と小悪魔……ってなんかいきなり衝撃的なの来たぞ。何だお姉ちゃんって。
「ほんとの妹みたいに可愛がってくれてるの!」とフラン。まあ、フランは可愛いからな。同じ立場なら私も可愛がるぜ。
「昔から遊んでました(たのだー)」とルーミア&大妖精。チルノ…は溶けたか。あーでも、大分前にそんな事言ってた気がするなぁ。
「師匠の様に慕われてます」と美鈴…ん、美鈴?
「…うわぁ!?急に居るな!」
「え、いや…さっきから居ましたが……」
「え?…ほんとだな、皆居るぜ」
見れば、霊夜以外の紅魔館メンバーも全員来ている。何でだ?まあいっか。
「で、お前らにも同じ質問。霊夜からどう接されてるんだ?」
「弟子みたいな物ね」とパチェ。
「仕事の手伝いしてくれるわ。霊夜、結構器用なのよ」と咲夜。そういや魔導書も10冊持ってた事もあったな。
「んー……なんか、子守りされてる様な感覚ね……」とレミリア。いやお前子供だろ。
「…皆それぞれなのな。私なんか本泥棒だぜ?」
「いやいや間違ってないでしょ…短い間にかなり盗られたわよ」
「死ぬまで借りるだけだっての。いいだろ1冊ぐらい」
「駄目よ」
パチュリーの奴はケチだぜ……そろそろ出るかな。
―*―*―*―*―*―*―*
「はー、良い湯だったぜ。霊夜ー私は上がったぞー」
「………………」
「…あり?」
返事しないと思ってたらこいつ寝てやがった。風邪引くぞこいつ……
「おい、霊夜。霊夜ー?」
「う~…何だ?」
「風邪引くぞこの野郎」
「あー、悪い……」
頭を振り、しかしまだ眠そうにしている霊夜は、男にしては長い髪も相まって綺麗だった。ぐぬぬ…ストレートヘアが羨ましい……
「…へくしっ!」
「あーあ、マジで風邪引いたな…?」
「うぐ……」
―*―*―*―*―*―*―*
頭がぼーっとする。何となく怠い。分かりやすく風邪だ。恐らく、汗かいて放置していたのが原因だろう。
「…魔理沙、悪い……部屋まで運んでくんね?」
「へいへい、感謝するんだな」
「はいはい、分かってるよ…」
魔理沙におぶさった途端、物凄い眠気が襲ってきた。
「……う………」
「あ、起きました?」
「まだ怠いけどなー…」
「もう…しっかり汗を拭かないからですよ?」
起きたら美鈴が居た。気の流れを良くして治癒力を促進する事が出来る彼女は、紅魔館の医者―正確には違うのだが―なのだ。美鈴が来ているのも頷ける。…話は変わるが、風邪に限らず病気の時は寂しくなる物で。
「…めーりん……」
「ふふ、何ですか?」
「えっと…その……風邪治るまで、出来れば一緒に居てほしいなー、なんて……」
語尾をごにょごにょ濁した上、布団を口元まで上げたので後半聞こえづらかった筈…だが……
「はい、良いですよ」
「ほんとか?…ありがとな」
「いえいえ、これくらい構いませんよ。それと、しっかり汗をかいて早く治しちゃいましょう?」
勿論汗は拭きますよ、と付け加える美鈴にお礼を言って、早めに治そうと決意した。
―*―*―*―*―*―*―*
「霊夜、風邪大丈夫?」
はいこれ、とアイビーの鉢植えを渡してくれたフランは、ぎゅっと抱きついてきた。そのままスリスリと頬擦りしているので、頭を撫でてやると嬉しそうに笑っていた。だから耳元でぽそっと聞こえた「このまま私だけの物にならないかなぁ……」という声も幻に違いないのだ。
「フラン、風邪
「むぅ~……」
不服そうなフランの背中をぽんぽんと叩き、どうにかして離れさせると、「また今度な」と撫でる。それでようやく満足したのか、何度も後ろを向きながら退室していった。美鈴?…寝てるよ。
―*―*―*―*―*―*―*
霊夜が風邪を引いたらしい。珍しいわね……まあ、夕食ぐらいは持って行きましょうかね。
「霊夜、入るわよ?」
シーン………。
(…あら?寝てるのかしら……)
扉を開けて入ると、すやすやと眠っている霊夜(と美鈴)が目に入った。
「……すぅ」
「全く、こんなにはだけてたら風邪が酷くなるじゃないの…」
美鈴の手にタオルが握られていて、机にある洗面器にはお湯が入っている事から――ってちょっと待った。体拭いてる時に寝ちゃったの?どんな神経してるのよ……。
「はぁ……変な所が似たのね」
夕食を机に置き、霊夜の体を軽く―上半身だけだが、美鈴と稽古しているだけあって、細身ながらにがっしりしている―拭いてから、服を整えて布団を被せて出ていこうとしたら…服が掴まれていた。
「…どうかした?」
「いつもありがとう、咲夜」
「それが仕事だから。それじゃ、夕食は置いといたからね」
「ん、分かった」
「…ふんっ」
とは言った物の、内心ではかなり動揺していた。考えてみなさい、普段何もしてこないのにいきなりこれよ?…ああ、顔が熱い。こあも凄いわね……
―*―*―*―*―*―*―*
夕食を食べさせてもらった後、電気を消してうとうとしていると、微かに何か聞こえてきた。これは……鈴の音?
「美鈴、美鈴」
「むにゃ……ふぁい?」
「何か聞こえるんだけど…聞き覚え無いか?」
「え?あれって……」
「は?何言っ……て………」
空を飛んでいるのは、トナカイの引くソリ。そしてソリには大きな袋、そして赤い服の――
「サンタ……クロース…?」
「ですね…ってあれ、こっち来てません?」
「だな…あ?」
なんて言っている間に、サンタクロースは窓を開けて愉快に笑い始めた。いやいや鍵閉めてたんだけど。サンタ怖い。
「ほっほっほ、新月霊夜君に紅美鈴ちゃんだね?メリークリスマァース」
そう言ってプレゼントを手渡してくれた後は、恐らく他の部屋や家を回るのだろう、ソリに乗ってどこかへ行ってしまった。
しかし謎なのが、何故かその後の記憶が無いのだ。不思議な事に風邪も治っていたので、謎は深まるばかりである。因みにプレゼントは、俺が櫛で美鈴が指貫のグローブだった。美鈴のカッコいいな。
―*―*―*―*―*―*―*
「……っていう実話なんだよ」
「あ、私もプレゼント貰ったわよ。ほら」
「あれ、その櫛俺とお揃いだな」
「ええっ!?」
「あはは、サンタクロースさんも凄いですね」
「そう言う姫は何を?」
「私はこれですっ、じゃーん!」
わかさぎ姫が貰ったのは、なんとワンピースだったらしい。だからずっと顔だけ出してたのか。
「…あ、そうだ。影狼、ちょっと目ぇ閉じてくれ。姫も」
「え?良いけど……」
「はい、こうですか?」
2人が目を閉じたのを―正直姫は閉じなくても良いのだが、恥ずかしいので閉じてもらう―確認し、影狼に体を寄せ―――
「…ふぇっ!?」
正面からぎゅっと抱き締めた。
「…影狼。ほんとは2人きりで言う事なんだろうけど……」
「り、霊夜………」
その時、ガサガサッ!という音がした。
「「!!!」」
顔を真っ赤にしつつパッと離れて素知らぬフリをする。それは影狼も同様で、胸に手を当てて必死に落ち着こうとしていた。
「…姫、もう目ぇ開けて良いぞ」
「はいっ。……ふふ、霊夜君も隅に置けませんね~」
肘でつつかれ、今の台詞がしっかりと姫の耳に入っていた事を悟った俺は、穴があったら入りたい気分だった。
??「因みにアイビーの花言葉は《死んでも離さない》よ。愛されてるのねー」
霊夜「え、マジ?と言うか誰――って居ねえ!…あ、そろそろ時間だ…また次回!」
因みに、フランに風邪うつって顔赤い状態を想像したら死にそうになりました。ロリコン予備軍とか言わない。