紅魔館に拾われた少年はゆっくり暮らしたい   作:ユキノス

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こんにちは、豹牙です。さて、萃夢想2人目ですね。次はあの人。原作では6人でしたよね……さてどうするか←
ではどうぞ。


とある小鬼の超岩石砲

「よっ、美鈴。どうだった?」

主語を入れずとも意味は通じたらしく、美鈴は微かに微笑んだ。

「やっぱり強かったですよ、彼女。背は低いですが、かなりの手練れです」

お陰で負けちゃいましたーと陽気に笑う美鈴だが、美鈴が負けたとなるとそれはもう肉弾戦で勝てる人間(と妖怪)はかなり少ないんじゃなかろうか。俺の知る限り居ないんだが。

「うーん…俺が挑んだとして勝てるか微妙なんだけど……」

「大丈夫です、何事も挑戦ですよ」

「美鈴……よし、んじゃ手合わせ頼むよ」

「ええ、その意気です」

この後滅茶苦茶説教された。誰にだって?当然の如く咲夜だよ。

 

―*―*―*―*―*―*―*

 

「うぅ…まだ痛い……」

「稽古で壁を壊したりするからよ」

「だからってナイフはやめてくれよ…俺にはそんな趣味無いのに…」

「あら、もっと欲しかった?」

両手と顔を同時にぶんぶんと振って―そうでもしないとされそうだからだ―拒否の反応を示すと、クスクス笑いながら歩き去っていった。

「…ふぅ、助かった――」

「わっ」

「ヴェアア!?」

「ひゃう!?…霊夜さん私です、ミオです!」

「へ?あ、ミオだったのか…」

ミオ。数多の妖精メイドの中でも一番仲が良く、また俺の世話係だったメイドだ。

「そうですよ、ミオです。今回は何しちゃったんです?」

「美鈴との稽古で、ちょっと壁を……ね」

「壁壊しちゃったんですか…ありゃりゃ」

それは怒られちゃいますねーと苦笑いしていたミオだが…俺の記憶が確かなら、今は料理係に就いている筈だ。仕事は大丈夫なんだろうか。

「なぁ、ミオ…仕事、戻らなくて良いのか?そろそろおやつの時間だぜ?」

「えっ!?……うわわほんとだ、教えてくれてありがとうございました~!」

ライトブラウンのセミロングヘアを揺らして出来る限りの速度で飛び去るミオを見送り(洒落では無い)、俺は人里の方で情報収集をしてみようと思う。先生なら知っているかもしれないし、幻想郷縁起にも載っているかもしれない。

 

―*―*―*―*―*―*―*

 

「うーん暖かい…日向ぼっこしてたいなぁ…」

正確には夏なのだが、今日は(夏にしては)涼しげだ。しかも晴れなので、日向ぼっこには丁度良い天気である。そこ、狼は日向ぼっこしないだろとか言わない。出来なくはないし、たまに屋根の上で昼寝する程度には好きだ。

「…じゃない、今は人里行かなきゃ駄目だ。先生知ってると良いなー……」

希望的観測だが、情報が欲しいのは確かだ。しかしその前に。

「…甘味処、行こ……」

 

 

「失礼しまーす」

甘味処に着いた。大丈夫、人里だから。さて置き、やたら筋肉質で、口には無精髭が浮いたおっちゃんが出迎えてくれた。あ、店主さんか。てっきり流離(さすら)いの格闘家かと。

「おう、いらっしゃい!席は…ありゃ、空いてねーな」

「あ、相席良いですよ」

「そうかい?悪いなねーちゃん」

「いえいえ、お気になさらず」

「ありがとうございます。おっちゃん、餡蜜1つ」

「へいよ、ちと待ってな」

さて、相席になった女性だがすんごい気になる。髪も目も服もピンク、頭には……えーと、名前忘れたな。なんだっけあれ?あと右腕に包帯がある。

「あ、あの…私の顔に何か…?」

うんうん唸っていると、その女性から声を掛けられた。

「あ、いえ何も……と言いたいけど、ここに餡蜜付いてますよ」

「あ、すみません…」

「あともう1つ、良いですか?」

「はい、何でしょうか…あむっ」

まあこれは気になった事だ。疑問形ではあるが、ほぼ確信している事。それは――

「こう言っちゃ何ですが……貴女、人間じゃないでしょう」

「んむぐっ!?」

「だ、大丈夫ですか!?」

よりによって餅が詰まったらしく、慌ててお茶を渡すとゴクゴクと飲み干してしまった。……そんな驚く事かなぁ?元人間にはよう分からん。人外と接する事が多かったってのもあるか。

「…ふぅ……」

「なんかすいません……」

「いえいえ、ただ…質問させてください」

「大丈夫ですよ」

「――どうして分かったんですか?」

「…は?ええと……まずピンク色の髪はそう見ないですし、右腕に包帯巻いてるのは大抵カッコ付けたがりですけどそんな感じはしませんでしたし…ああ言いづらい、敬語外して良いですか?」

「え?ええ、構いませんが」

「んじゃ外す。あとはアレだな、妖力だよ」

「…なるほど、納得です。ええと、お名前は…」

「……あ、そういや名乗ってなかった……新月霊夜、見ての通り狼男さ」

「茨華仙です。仙人をしています」

妖怪が仙人?アリなのかそれ?と思ったが、そもそも俺は何を以て仙人と言うのかを知らないので、まあいいかと納得。

ここでようやく―と言っても5分も経っていないのだが― 餡蜜が出てきたので、スプーンを取って一口…って美味いな。

「…仙人様?なんか前に聞いた様な聞かなかった様な…」

そうだ思い出した。前に『あの説教大好き仙人なんかもう来てほしくないわー!』って叫んでた人が居たわ。確かその仙人も華仙って名前だと聞いたんだ。因みにその《叫んでた人》は霊夢である。

「そうですか?私は貴方と初対面ですが…」

「…ん、いや待てよ?……12か13年前に、寺子屋に来たか?」

「12か13年前…?はい、来ましたが…」

「ああ、やっぱりか!あの時先生の後ろにくっついてた赤髪の子供、覚えてるか?」

「ああ……そう言えば居ました。珍しい髪だなと思っていたので」

華仙の髪も充分珍しいと思うんだが。まあ兎に角……

「その時の子供だよ!」

「ええっ!?」

その後華仙にそれとなく異変の話をした所、その様な事をする鬼が居るのだと言う。美鈴を疑った訳ではないのだが、その犯人が嘘を吐いている可能性が捨て切れなかったのだ。鬼は力が強く嘘を嫌うそうなので、その線は無いと考えて良いだろう。……多分。

 

―*―*―*―*―*―*―*

 

所変わって先生の自宅。今日は寺子屋お休みだからね。因みに餡蜜のお代はちゃんと払った。

「先生ー、居ますかー?」

ドンドンと戸を叩き、「少し待ってくれー」と聞こえたので5分(少し)待っていると、急いで着替えた感満載の先生が出てきた。

「…あの、これは本題と関係無いんですけど」

「ん?どうした?」

「……下着の紐、見えてますよ」

「~~~!」

慌てて直す先生。髪が濡れてるから風呂にでも入っていたのだろう。…邪魔しちゃったなぁ……。

「…こほん。で、どうしたんだ?」

「実は斯々然々で……」

「ふむ…過去にそんな異変は無かったぞ。ただそうだな、1つ言うなら……ここ数日、人里全体が妖霧で覆われているな」

「妖霧…妖力を持つ霧…ですか…誰が何の為に……」

「阿求の所で聞いてきたらどうだ?そうしたら絞れるだろう」

「あ、やっぱりそれが一番ですか?」

「『やっぱり』と言う事は分かってたのか?ならなんで…」

「いやぁ、結論より過程が大事だーってよく言ってたじゃないですかー」

「…なるほどな。頑張れよ、霊夜」

先生の柔らかな手で撫でられると、どうしても泣きそうになってしまう。懸命に涙を堪え、どうにか「はい」とだけ口にすると、額にキスされて見送られた。

「…よし、頑張るぞ」

微笑みながら稗田邸まで歩いていく途中、文が飛んでいるのを見かけた。やけにアクロバティックだな、飛びづらくないのか?

 

―*―*―*―*―*―*―*

 

「幻想郷縁起を見せてもらいたいのだがよろしいか?」

という俺の問いに、門番の男はこう返してきた。

「阿求様は只今、小鈴嬢と遊びに行かれております。ご用件があるのでしたら、またお訪ねください」

ふむ、居ないのか。鈴奈庵に居るかもしれないな。

「分かった、日を改めてまた伺うよ」

鈴奈庵にも居なかったら…まあそう無いだろうけど、人里を出てるかもしれないな。まだ日は高いけど、知能の無い妖怪は襲ってくるから危ないし。

「んー…と、鈴奈庵鈴奈庵……」

10年前の記憶を頑張って掘り起こしながら、鈴奈庵へと向かってみる。居るかな阿求……

 

―*―*―*―*―*―*―*

 

「にゃ~」

「よしよし、良い子良い子」

「…ねえ小鈴ー、こんな外れまで来ちゃって大丈夫ー?」

「だーいじょうぶだって、ここらは妖怪なんて居ないし……」

十数メートル後ろに普通に居るんだが…いくら何でも警戒しなさすぎじゃなかろうか。

因みにだが、―まあ人里の外れに居る時点で予想は出来るだろうが―鈴奈庵には居なかった。代わりに小鈴のお母さんが「どこかへ遊びに行ったよ」と言っていたので阿求の匂いを辿って―最初からこうしろと思っただろうが、実は普通に忘れていた―ここまで来た訳だ。

「う゛みゃ~!う゛みゃ~!」

「わわっ、暴れないで!どうしたの急に…」

「あっ…小鈴逃げて!」

「えっ…?」

「キーッ!」

柵を飛び越え、人里に浸入してきたのは巨大な、それこそ阿求程もある妖怪ネズミだった。ネズミは真っ直ぐに小鈴へ牙を突き立て――る前に間合いを詰めてぶん殴るっ!

「おらぁっ!」

「ギーッ!」

「へ…?」

…弱っ。知能無い妖怪ってこんな弱いの?1発で死んだんだけど。

「り、霊夜さん!?」

「よっ、怪我は無いか?」

「は、はい…お陰様で」

「うぇぇ~~…~怖かったよぉ~阿求~……」

「だからこんな所まで来て大丈夫かって……あーよしよし、泣かない泣かない」

さっきから鳴いていた猫だが、きちんと保護してある。小鈴の元を離れたので俺が抱き上げている状態だが、まあ大丈夫だろう。

「…あ、そうそう。阿求、幻想郷縁起見せてほしいんだが」

「はい、構いませんよ。…ってちょっと小鈴、涙で服が濡れちゃうって!」

「うぇぐ…うぅ…」

「あ、あはは…とりあえず戻ろうか」

 

―*―*―*―*―*―*―*

 

「本っ当にありがとうございました!このお礼は……」

「ああいや、お礼はいいですって。たまたまですし」

「いえ、そんな…ほら、小鈴もお礼言いなさい!」

「あ、ありがとうございました…」

「だぁかぁらぁ、お礼が欲しくてやった訳じゃないんですって…」

本居夫妻を説得するのには、なんと1時間以上掛かった。頭痛いし、引きつった笑みのし過ぎで表情筋が死にそう。

 

 

「…あー、頭痛い……」

「あはは…大丈夫ですか?」

「まあ、なんとか。…うん、大丈夫だ」

「良かったです。さて、どなたの縁起をご覧になります?」

「あ、えーと……美鈴に名前聞いとくんだったな…鬼について書かれている物は無いか?霧でも構わない」

「霧…ですか。ここ最近だと紅霧異変の赤い霧ですが」

「うーん、それとは違うかな。ここ最近、人里と博麗神社に妖力を持つ霧が出てるんだ。害は無いんだが…3日毎に宴会が起きてる。場所も幹事も一緒の、な」

「ふぅむ……探してみます」

 

少年少女捜索中…

 

「…ん、鬼?密と疎を操る……背が低い………これだ!」

「あ、ありましたか?」

手に俺の縁起を持ち、横から覗き込んだ阿求だったが、やがて得心した様に頷いた。

「…はい、その鬼ですね。伊吹萃香さんです」

「なるほどな……ってちょっと待った、阿求の求聞持の能力ですぐ分かるんじゃ…」

「あら、バレちゃいました?」

舌を出してクスクスと笑う阿求と一緒に、少しの間笑っていたが――

「あ、そうそう。霊夜さんの縁起、見てみます?」

「ああ、ついでだし見てみるよ」

……阿求め、これを狙ってたのか。言われりゃ見るのに。

「えーと、何々……」

 

《新月に吠える銀狼》

新月 霊夜

 

種族:狼男

年齢:15歳

危険度:低

人間友好度:低

弱点:耳

特徴:銀に赤の混じった髪と赤い瞳

 

「…うん、ほんとにそのままだな。と言うか似顔絵もあるのか」

「はい、ありますよ」

「…普段鏡見ないから顔分かんないんだよなぁ……」

「あ、あはは…」

 

―*―*―*―*―*―*―*

 

「――で、後の2日間稽古して今に至る」

「…いやー、長いね。ほんとに1日の話かい?」

「ほんとに1日の話だ。…さて、大変長らくお待たせしましたっと」

「お、やっとか!いやぁ待ちくたびれちまったよ!」

「…そんじゃ、えーと……まあ殴り合いだよな」

「当ったり前だろ?散々待ったんだ、かかってきな子犬!」

「子犬じゃなくて狼だ、遠慮はしないぞ!」

「はっ、その台詞返すよ!利子付で、なっ!」

開幕早々に岩がぶん投げられる。石ではない、岩だ。

「すぅっ―――だぁぁぁぁ!」

岩が割れる。いや違うな、砕ける。因みに今の、ただ叫んだ訳じゃないからな?妖力を音に乗せて撃ち出したんだ。妖力波…って言うのかな?

「っ…へぇ、やるじゃないか」

「乱発はしたくないけどな、喉痛めるし」

「お?自分から弱みを晒すたぁ、お前さん正直者だね」

「…さぁてどうだか」

俺は美鈴程には笑えないが、それでも最大限楽しめそうな―美鈴としか闘った事が無い為、他の誰かと殴り合いをするのは初めてなのだ―気がした。

 

翌日、境内の一部が豪快に抉れていた為、霊夢が悲鳴を上げていた。謝りに行っても殺されるだけだと思ったので、萃香と合意の上で黙っている事にした。すまぬ霊夢。




…あ、1話で収まった。どうしよ、戦闘シーン見たいですか?ぶっちゃけ美鈴で充分ですか?
とりあえずまた次回。
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