前回、咲夜や美鈴の手当てをすると言ったな?あれは嘘になった。いやほんとすいません。こあが思った以上にぐいぐい来たんです。
それではどうぞ。
瞼を持ち上げると、混濁した視界に、赤と黒、そして少しの白が映る。 ……誰?
「ん……う……? わ、っと」
「わあぁ、まだ寝ててください!」
「……そうする、頭がくらくらするし」
「もう……」
あれからどれだけ経ったのかは分からないが、目は覚めた。 だが場所が明らかに違っている。 小悪魔ことこあが居る、という事は……
「図書館……か」
「そうですよ~。 外に出てすぐそこで倒れてたからびっくりしちゃいました」
「そっか……ありがとな」
「いえいえ、お気になさらず。 ──霊夜君の寝顔も拝めたんですし、ね?」
こあには何故か昔から可愛がられていて、それは今でも変わらない。 レミィにはあまり興味が無い様だが、まぁそれはパチェに召還されたから仕方無いか。 と割り切って、素直に寝ている事に──って、ちょっと待った。 美鈴と咲夜とパチェは?
「こあ、俺以外は大丈夫なのか?」
「パチュリー様は、霊夜君のお陰で大丈夫です。 咲夜さんはまぁ……結界に動きを封じられてただけでした。 ただ美鈴が……」
「怪我でもしたのか?」
「いえ、怪我はすぐ治ったんですが…その………また寝てるんですよ、門で」
「……まあ、何事も無くて何よりだよ」
美鈴はどんだけ寝てんだよ。 刺されたいのかあいつは。 と心の中で呟いたが、話を聞く限り、まだレミィはやられていないか、ただ報告を受けていないだけらしい。
「ふわ、ぁ……眠くなってきた……」
「ふふ、お姉ちゃんが久しぶりに膝枕してあげましょうか?」
「そりゃまた懐かしい呼び名だな……じゃあ、久々に頼もうかな。
クスッと笑い、一度俺を起こして──ソファに寝かされていたからだ──こあが座り、その膝の上に頭を乗せる。 後頭部に柔らかな感触が伝わり、俺はそっと瞼を閉じた。
―*―*―*―*―*―*―*
「むきゅう…こあー、紅茶入れてちょうだ……あら、寝てるの?」
「あ、パチュリー様……そうなんです、さっきまで気絶してて……起きたんですが、まだ頭がクラクラすると」
「……服が一部焦げてるだけだから、熱を発生させるもの……となると、光が原因かもしれないわね。威力も高いみたい」
「ええっ、また一人で無茶してたんですか?駄目だって言ってるのに……」
めっ、と霊夜の頬をつつくこあを見て、私は未だに霊夜を可愛がっているのは何故なんだろう……と考えていた。 考察を重ねていく毎に、1つの《可能性》が浮かび上がって――
「ねぇこあ、貴女が霊夜を可愛がり始めたのって…」
「やだなぁパチュリー様、そんなの決まってるじゃないですかぁ」
クスクスと心底楽しそうに笑いながら、こあは悪魔の様な──と言うか実際悪魔なのだが―事をさらりと言った。
「──
「こあ、貴女っ…」
「大丈夫です、食べようだなんて思ってませんよ。 食べたら食べたで後が大変ですし」
ぱたぱたと頭に生えている羽を動かしながら言ったこあの台詞には、傍から見ても嘘偽りは感じられなかった。
「……そう、なら良かったわ」
「それに──霊夜君は、殺伐としてた
「ええ。 まあ、
その後すっかり和んでしまった2人を、博麗の巫女にボコボコにされたレミリアが糾弾し、霊夜に宥められたのは別の話。
―*―*―*―*―*―*―*
「おーい咲夜ー、この木材で良かったかー?」
「ええそれよー、運んできてー」
「あいよー」
異変が解決されてから3日。 こう言ってはなんだが《超》動きが悪い妖精メイド達の仕事──木材を散らかしたり、ふざけ合ったりしているのを仕事と言うのなら、だが──を見ていて、流石にこれじゃあ終わらないと思った俺は、やっぱり眠っていた美鈴を叩き起こして、紅魔館の修復作業に当たっていた。 ……しかし美鈴のパワー凄いな。 あんな持ち方出来ないんだけど。
「よっと……あれ、ペンキ乾くの早くね?」
「塗ったペンキの時間を速めてるからね」
「なるほどなぁ……そんな使い方出来んのか」
呟きながら、腰からハンマーを取り出して釘を口にくわえ、屋根の木材を打ち付け始める。 こうでもしないと、正直時間が足りないのだ。
「そう言えば……どうやって美鈴を起こしたの?私はナイフを刺すけど」
「ああ、それなら簡単さ。美鈴なら、能力で人の『気』を感じ取れるだろ?」
「? ええ……」
「だから『殺意』を出したら物凄い情けない悲鳴と共に起きた」
「……具体的には?」
「裏返った声で『ひにえぇ!?』って」
「それは面白そうね、今度やってみようかしら」
「やるなら稀にやるぐらいにしとけよ? 泣きそうになってたからトラウシかもしれない」
「トラウマね」
「アッハイ、スイマセン」
「──それはそうと、もう少し早く釘打ち出来ない?」
「両手で持つか、小刻みにやれば。 打つだけならその方が早い」
「なら却下ね。 安全性を求めましょう」
咲夜も『最近掃除用具よりも大工道具を握ってる時間の方が多い気がするわ』と愚痴っていたし、さっさと終わらせてしまおう。 と考えていた俺も、ペンキ塗りに集中していた咲夜も、下からレミリアが飛んできた事には気付けなかった。
「ねぇ、2人とも」
「うぉっ、びっくりした……どうした? レミィ」
「どうされましたか? お嬢様」
「いやね、異変も終わったのだし、宴会でもしましょうよと思って」
「えぇー……それって解決した側がやるだろ普通……」
「普通はね。 でも、
「まあそりゃそうか。 で、勿論話は通して──」
「ないわよ」
「ねえのかよ! 通してから言え馬鹿野郎!」
「では、私が通してきます」
「頼んだわよー」
ぺこりと会釈して消える咲夜と、どこまでも身勝手なレミィ。 もう勝手にしてくれと叫びたかった。
こあは霊夜大好きです。何だかんだ言って、霊夜はこあに一番懐いていたり。次点にパッチェさん&美鈴、咲夜、レミリア、って感じに。フランにはまだ会ってません(ほぼネタバレ)。
ではまた次回。
キャラクターメモ
種族:悪魔
年齢(紅霧異変時):不明
能力:不明
説明:昔召喚された、パチュリーの使い魔。戦闘能力はほぼ持っていないが、本の整理は大得意。
紅霧異変以前から、霊夜を弟の様に可愛がっている。
パチュリーには使い魔として、霊夜には姉として接しているが、紅魔館そのものの主であるレミリアにはあまり興味を示していない。だが、フランや咲夜は可愛がっている。美鈴とはあまり接する機会が無い。
普段ニコニコしているが、その裏で何を考えているか分からない性格。
パチュリー・ノーレッジ
種族:魔法使い(魔女)
年齢(紅霧異変時):100歳程
能力:火水木金土日月を操る程度の能力・魔法を使う程度の能力(主に属性魔法)
説明:喘息持ちのもやしっ子。魔法使いとしての実力は高いが、喘息のせいで詠唱が出来ない事が多い。ヴワル魔法図書館に籠ってひたすら研究と読書に明け暮れる日々(因みに、霊夜はこれが喘息を酷くしているんじゃないかと思っている)。
読書をする時、霊夜に魔法を教える時は眼鏡を掛けている。度はそこそこあるらしい。
魔理沙の本泥棒には閉口しているが、きちんと許可さえ取れば(そして了承すれば)、返してくれるのなら数札は借りても良いと思っている。