ではどうぞ。
さてあれからしばらくして、屋根の補修も少しは進んだ頃。 咲夜が帰ってきて、見てるだけで特に何もしていなかったレミィに対して報告していた。 近くで補修していたので聞こえたが、OKを
「……OK出したってお前なぁ」
「ふっ……私の能力に係ればこんなもんよ」
「今代の巫女はあらゆる物事から『浮く』事が出来る筈だけどなぁ……」
「うっ……」
「はいはい、あんまりいじめないの」
「はーい」
「うー、パチェと私で対応の差が酷い…主としての威厳が……」
まあ、とりあえずレミィはほっとくとして、恐らく無理に決めたんだろう。 ……用意や片付けは手伝うとするか。 流石に。
「で、誰が行くんだ? 全員か?」
「行くのは……私、パチェ、咲夜、中国、小悪魔ね」
「? 全員じゃんか」
「……いえ、居るのよ。あと、1人」
「……?」
何やら真剣な顔で「まあ座って」と、それもパチェに言われては事は最低限小さくない。 黙って椅子に座ると、レミィが少しだけ暗い顔をした。 ……レミィ関係か。
「実はね、霊夜……私には妹が居るの」
「え、何それ聞いてない」
「言ってないもの。……フランドール・スカーレット、って名前なのだけれど、今は訳あって幽閉しているのよ」
「……は? 幽閉『している』? なんでだよ」
「あの子は、昔……私が殺されそうだった所を助けてくれたの」
それのどこに問題があるんだ、と言おうとした。 事実、「それ」までは口に出していた。 だが咄嗟に美鈴が口を抑えたので、それ以上は言えなかった―が、美鈴の顔も暗かった。恐らく、その原因となる事を見たのだろう。
「あの子は、力を──『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』を使って、襲ってくる吸血鬼達を根絶やしにした。 でも、全てが終わって、こちらを向いたフランの顔は……愉悦に浸っていた。 だから、精神状態が不安定だと判断して、………地下室に、閉じ込めた」
俯き、膝の上で握った拳を震わせるレミィは、見ていてどこか痛々しかった。 ……恐らく、苦渋の決断だったのだろう。
「──レミィ、それって……何年前の話だ?」
「そうね……中国が来てからすぐ、だから……495年前になるのかしら」
「……よ、4……!? 嘘だろ、そんなに長く閉じ込めてたら……精神状態不安定でも、どうにか──」
「霊夜」
「っ……ごめん、言い過ぎた」
約500年。その年月を体験出来ない人の身としてはどうにも言えないが、それが途方も無く長い事だけは分かった。
「……ひとまず、フランドールの件は保留としよう。彼女には悪いが……宴会を楽しもうぜ」
「……そう、ね」
「じゃあ、俺は用意でも手伝ってくる」
何となく居づらくなってしまったので、申し訳ないけど離脱。
因みに図書室から地下に繋がる扉─確かめた事は無いけど、多分そこだ─は前に開けようとした所、パチェに「開けたら私が分かるからね?」と笑顔で言われた。そりゃもう、天使の微笑みで。
「ええと、博麗神社は……向こうだったな。 ……にしても、フランドールか」
扉を閉め、空へ駆ける。 何やらルーミア、チルノ、大妖精の3人が遊んでいるが……まあ、後で呼ぶか。
―*―*―*―*―*―*―*
暫く飛ぶと、ゴザやら何やら敷いている巫女が居た。十中八九、博麗の巫女だろう。
「失礼するぞ、博麗の巫女さん」
「はいはい、なんか呼んだ? ああ因みに、素敵なお賽銭箱はそこよ」
「……第一声が賽銭の要求とはたまげた」
「うっさいわね、そんだけ参拝客が来ないのよ」
「まあ、立地が立地だからなぁ……」
ところでこの巫女、腋が開いた不思議な巫女服を着ている。 袖とかどうやって浮いてるんだろう。 気になる。
「……で、何か用? 私今忙しいんだけど」
「ああいや、宴会の準備を手伝おうと思って」
「あのメイドから宴会やろうってグイグイ言われてOKしちゃっただけなんだけど、なんで知ってるのよ?」
「え、まあ……一応紅魔館の住人だから。 正確に言うと居候だけど」
「──アンタ、人間よね? 名前は?」
「新月霊夜、ただの人間。 そっちは?」
「博麗霊夢よ」
「霊夢…ああ、白黒が何やら『霊夢より先に異変を解決するんだ!』みたいな事言ってたな。 博麗の巫女の事言ってたのか」
「……あの子らしいわ。 アンタはゴザ敷いといて。 私は料理でも作っとく」
「ああ、頼んだ」
んー……風の影響で飛びそうだな。 石でも置いとくか。 えーと、手頃なのは、と……
「よっ……と、おお……」
「お?霊夜じゃないか」
「出たな白黒」
「親の敵みたいに言わないでくれ」
「冗談だ、手伝え」
「ちぇー……宴会だって聞いたから来たのに手伝いとはついてないぜ」
「働かざる者食うべからず、ってな。何もしない奴は何も食う権利は無いって訳だ」
「んなっ…!?」
いや、そんな事言ったら紅魔館の皆(と呼ぶ予定のちびっこ3人)は何も食えないな。 後で働くんだと説明しとくか……いや、働いた後の飯は美味いとよく聞くからそっちにしとこう。 うん。
「ほら、そっち持て」
「へーい……」
「あっ馬鹿、片手でやったら……」
―*―*―*―*―*―*―*
外から霊夜とは違う、聞き慣れた声が聞こえる。 魔理沙である事は疑いようもないけれど、まさか手伝わせるとは露ほども思ってなかった。
「……さて、何にしようかしらねぇ……やっぱり大人数なんだし、鍋でいいや。 季節外れだけど」
えーと、と呟きながら貯蓄を確認すると……あら、結構あった。 紫の奴、案外気が利くじゃない。
「……紅魔館の住人、か」
考えてみると、結構恐ろしい。 霊夜は人間だ、と言ったけど―――何故、
魔力は馴染んでいるから昔から持っていたのだろうけど……歪にも程がある。
「はぁっ……全く、ゾッとしないわ」
これから起きるであろう面倒事を想像しただけで、溜め息が出た。
霊夢は霊夜の秘密にちょっとだけ触れたみたいなもんです…が、勘の良い方はもう分かっちゃうんじゃないですかね?ネタバレは禁止ですよ皆さん。
ではまた。
キャラクターメモ
レミリア・スカーレット
種族:妖怪(吸血鬼)
年齢(紅霧異変時):500歳
能力:運命を操る程度の能力
説明:背は小さいが強力な妖力と魔力を持った、紅魔館の主。カリスマ性は、気を抜くとすぐにブレイクしてしまう程に低い。
最初に霊夜を見た時、その運命も含めて面白い物を見た、という理由から紅魔館での居住を許可した心の広い主で、霊夜はこれに溢れんばかりの感謝をしている。
吸血鬼異変後、結界に覆われていた紅魔館に必要な物資を紫に持ってきてもらう様に頼んでいたり、その後も様々な書類を整理したり財政管理をしたりと毎日多忙な生活を送っている。出番が少ないのはそのせい。