さて本編の話。
前回、悪戯兎詐欺ことてゐを嵌めた霊夜。今回はその種明かしみたいなもんです。
ではどうぞ。
「……霊夜、君?」
「うーん血が落としづらいな……うん?どうした妖夢」
「どうしたじゃあ……ありませんよ……こんのぉっ、バカ――――――――――ッ!」
「み、耳が……」
「うぅ~、妖夢~……」
流石にやり過ぎたらしく、妖夢に怒られた。なんか妖夢には怒られる事が多い気がする。最初に会った時と春雪異変の宴会後、あとは萃香の起こした異変の時以外全部怒られてるな、ちょっと自重しとこう。
「まあまあ~、あんまり怒ると可愛い顔が台無しよ~?」
「えうっ……」
「いやいや、今回のは霊夜が悪いよ。後で慧音に言っとくからな」
「…………はい、すんません」
先程のあれのタネを説明すると、まず俺がもこ姉の血を口に含み、丸太の罠にわざと掛かり、吹っ飛んでじたばたするフリをしながらもこ姉の血を顔や服に着け、口の端からも流してみたりして落っこちる。この時、受け身を取るのを忘れずに。
「ったく……驚かせてやりたいなら言えば良いのに……って、会った事無かったのか」
「うん、あれが初対面。……さて、と。てゐだっけ?起きてるのは分かってるぞ」
言いながらてゐの脇下に手を入れ、胡座を掻いてその上に座らせる。すぐに上を向いたてゐの顔に、「どうして分かったの?」みたいな表情が浮かんでいるので、俺は率直に思った事を口にした。
「ただの勘……って言って信じてもらえた事は少ないんだけどな」
「ま、そりゃそうさね。で、ほんとは?」
「倒れた後、一瞬だけ表情が歪んだろ?って事は気絶はしてないってのが分かる」
「むむむ……えーと、霊夜?あんた悪戯の素質があるね」
「そうか?あんがとさん」
……まあ、何度か悪戯受けてる事もあるしな。
という言葉を危うく飲み込み、微笑みに変える。だが完全には飲み込めなかったらしく、片頬がぴくぴく動いたが。
「あーそうそう、この先多分もこた……妹紅にも行きづらいと思うよー」
「おい今なんつったクソ兎。兎鍋にして食ってやろうか」
後ろで幽々子が、妖夢ですらちょっと引く量の涎を垂らした。
「ぎゃー!助けて霊夜ー!」
……まあ、当然こうなるわな。涙目になるのも頷ける。
「もこ姉、それから幽々子も、食うにしても食わないにしてもちょっと待った。てゐ、今の竹林の道って分かるか?」
「……分からないって、言ったら?」
「その時は……まあ、頑張って逃げてくれ」
「大丈夫です分かりますだから食べないでぇぇぇぇ!」
何故にここまで!?と思ったが、その理由はすぐに分かった。後ろから幽々子が来ている。目を爛々と光らせ、ダラダラ涎を垂らして寄って来たとなれば、食われないと分かっている俺だってビビる。
「お、落ち着けてゐ!妖夢、幽々子抑えてくれ!」
「は、はいっ!」
しゅぱっと飛び立ち、幽々子から遠ざかる。その後てゐに、道を分かっているのかどうか聞いてみた所、やっぱり知っているらしい。と言うかてゐの能力で、一緒に居ればそれで行けるらしい。それも任意らしいが。
「そうか。なら――――」
―*―*―*―*―*―*―*
「……何をやってるんだ霊夜の奴……一向に降りてこないけど」
「兎鍋~……!」
「幽々子様ーっ、落ち着いてー……っ!」
冥界の姫さんは従者がどうにかしてくれるとして、問題は霊夜とてゐだ。いくらなんでも遅い。……いや、降りてきた。霊夜は不敵に、てゐは心なしか嬉しそうに笑っている。
「やっ。ちょっと話して来たぞ」
「いや、それは分かってる。んで、どうだった?」
「食べないのを条件に案内する、って事になった」
ピキッ、と額に青筋が浮かんだ。
「ま、まあその辺のいざこざは一旦忘れて……ね?」
「……分かった、霊夜に免じて今回だけは見逃す」
「おおー、霊夜ってもしかして大物?」
「いや、ただの狼だ」
「幽々子様、兎鍋は食べませんよ」
「む~……残念……」
「おーい、置いてくぞー?」
「あー今行くー。妖夢、はぐれたら下手すりゃ出らんないから注意しろよ」
「ひぇぇ……わ、分かりました」
上空では「お主もワルよのぉ」的な事はしてません。大丈夫です。
……実は俺、小さい頃兎に噛まれてから兎が触れないんですよね。首に蛇巻いてもケラケラ笑ってたのに……(事実です)。
ではまた次回。