ではどうぞ(おい茶番はどこ行った)。
「いやー、良かったよほんとに……おっ、見えた見えた」
「あっ、てゐ。お帰り……って、なんで侵入者を連れて来てるのよ!」
ほとんど膝の辺りまで伸びた薄紫の髪、それから、ええと……ブレザー、だったかな?兎に角それを着ている……兎の着け耳をした真っ赤な瞳の人が出てきた。いやだって根元にボタンみたいなのあるんだもん。偽物だろ。
「た、助けて
「貴方は……あの時の狼ね。異変の解決に来たのなら生きては返さない」
「は?やだよ」
「~~~っ……ま、まあ良いわ。私の目を見て狂った者は居な――」
「あ、そう?わざわざどーも、目ぇ閉じてりゃ良いんじゃん。妖夢ー、てゐ頼んだー」
「え、あっ、はいっ、分かりました」
てゐを妖夢に渡す際、
―*―*―*―*―*―*―*
「……大丈夫なんでしょうか、霊夜君……」
「さあ、どうだろ」
「あ、結構軽い……心配じゃないんですか?」
「まあ見てなって。霊夜に付き合うには度胸が居るって事を知るさ」
そこまで言った私は、誰かが向かって来る事を察知した。何故か短刀をてゐの首に当てている妖夢も、何やら感じた様だった。
「……あーもう、やっと着いた!ったく、なんでスキマ使わずに行くのよ」
「あら霊夢、異変解決は楽しまなきゃ損じゃない?」
「睡眠時間を削られて楽しんでられるかーっ!」
……どうやら、スキマの賢者と博麗の巫女だったらしい。仲良いなあの2人。
「……あら、妖夢に幽々子じゃない。2人も異変の解決に?」
「は、はい。今は霊夜君が戦っ……きゃあっ!?」
「あら危ない。物騒ねえ……」
扇子を口元に当て、おかしそうに笑うスキマの賢者。こいつ絶対楽しんでるな。
「霊夜の奴何やってんの?なんか目ぇ閉じてるけど」
「ああ、あれは……」
妖夢が説明している傍ら、霊夜の行動を見てみる。関係無いが、てゐはガン無視らしい。
指先から撃ち出される鈴仙の弾を、霊夜は危なげなく避けていく。これは……
「……なるほどな。霊夜の奴も成長したもんだ」
―*―*―*―*―*―*―*
「くっ……!」
何故、当たらない!?目を閉じているというのに!笑みまで浮かべて……!
「嘗めるな、獣風情がぁぁっ!」
サバイバルナイフを取り出し、鞘を投げ捨てて斬り掛かる。波長は全く乱れていない。これなら、当たる!
「あ、多分そこ危ないぞ」
「戯言を……っ!?」
何か、硬い物が後頭部を直撃した。そのまま無様に倒れた私を、狼がひょいと持ち上げた。目は既に開かれている。
「やー、大丈夫か?ぶっちゃけ賭けだったんだが……」
「何を……した……」
「え?まず音を頼りに避けて、適当な所で竹をしならせて……ぶち当てた」
「そんな……事で……っ」
「いやいや、それだけじゃないぞ?軽く挑発して平静を失わせたりとかな」
「くっ……」
全てにおいて、狼の方が1枚上手だった。そういう事だろう。結局、私が月で学んだ事は――
「まあでも、ナイフは気付かなかったなー。竹が外れてたらやられてたな」
「嘘を吐くな!」
「へえ……嘘に思えるか?」
狼は私の瞳をしっかりと見据えた。その口元が歪み、牙が覗き――――
私の『波長を操る程度の能力』が、解除された。
「ひっ、ひいぃぃぃぃぃ!」
「……って、なんで自分の能力で怯えてんだよ。あーもう、泣くな泣くな」
「ぐすっ、だってぇ……えぐっ、私元々臆病なんですぅ……だから月でも馬鹿にされてて、逃げて来ちゃって……それで、波長を操って……その、戦闘時は理想の自分をやりたかった、と言うか……」
「……なるほど。で、物は相談なんだが」
狼は「ちょっと失礼」と言って、私に耳打ちしてきた。その内容はなんと、
「どっちが良い?これ以上立ちはだかって月に送り返されるか、邪魔しない代わりにここで受け入れられるか」
というとんでもないものだった。
「……嫌、です……帰りたくない」
「そうか。そんじゃ、手は出さないでくれな」
ぽんぽん、と安心させる様に撫でられた時、私は心底驚いた。何故なら、今まで出会った人に――しかもほぼ初対面でここまで優しくされたのは、生まれて初めてかもしれない。
私の目から、堪えようもなく涙が溢れた。狼は、その涙を服の袖で拭い続けてくれた。
ではまた次回(だから茶番はどこ行った)。