てな訳でどうぞ。
この暖かな感触から離れたくない。
この手に全てを委ねて、どこまでも沈んでいきたい。
でもどうだろう、瞼越しに届く光が、徐々に目を覚ましていく。だが、暖かな感触は消えていない。……となると、この感触は現実?
「う………」
「おや、起きたか?おはよう、霊夜。と言っても、昼過ぎだがな」
「あ……せんせー、おあよごじゃいます……くぁぁ……」
「昨日は……いや今日か?とにかくお疲れ様。煮物しか無いが、食べていってくれ」
「え、そんな悪いですよ……」
「いやいや、ここまでの量を進められたのは霊夜のお陰だからな。その礼も含めているという訳さ」
「はぁ……なら、ありがたく頂戴します。顔と手、洗ってきますね」
そういやなんでこうなったんだっけと思いつつ、昨日の回想をしてみる。えーと、確か……
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「やっほーもこ姉ー」
「うん?霊夜か。どした?」
「遊びに来たー」
「子供かっ」
「子供だろうに」
「そーいやそうか」
忘れてた忘れてた、と笑いながらも、もこ姉は竹炭を作っている。……そういやミスティアに売ってるんだっけか。屋台も行ってないなー、魔理沙の家の掃除にも行ってない。……結構前だけど未だに行けてないんだよ。だって咲夜会えないんだもんよ。
「まあそれは建前として、本音は?」
「この前先生に「妹紅は体術なんかも得意なんだぞ」って教えてもらったからどんなのかなーと思って来た」
「得意……得意なのか私……」
「えっ、違った?」
「いや出来なくはないんだが……自己流だから何とも言えん」
「んー、まあ実戦で使えれば充分じゃないかな?」
「実戦てお前……殺す為に武術習ってるのか?」
「自衛手段だよ自衛手段。やられたら殺さない程度で追い返すって訳」
「だろうね、本気でやったら慧音が激怒するから」
「そゆこと。……じゃあ、相手を頼めるかな?もこ姉」
もこ姉は言葉で返さずニッと笑い、体の力を抜いた。つまりは「いつでもかかってこい」と言いたい……のだろう。ちょっと自信無い。
「―――――――、ふ―――……セイッ!」
「よっと!へえ、中々どうして良いじゃないか!」
「そりゃ、まあ!毎日稽古は、してるから、ねっ!」
話している間も手は止めていないが、全てが腕の動きでいなされてしまっている。全て真正面から受け止める美鈴とは違う、剛ではなく柔の体術。
実の所、申し訳無いが技を習うだけなら萃香の方が100倍は早い。だがそれに比例して危ない。まともに喰らえば腕が
「っ……!」
「……なるほど、お前の弱点見付けたぞ。要するに
「ぐぬぬ……」
喉元に指を突き付けられ、的確に弱点を指摘されてしまった。……言われてみれば、確かにフェイントとかしてないなぁ……美鈴も得意じゃなさそうだし。ううむ、課題が増えた。
「でもまあ、筋は悪くない。でも、ただ殴る蹴るが体術じゃない……ってのは知ってるよな」
「うん、それは分かる。頭突き、体当たり、足払い、引き落としからの膝蹴り……」
「そこまでやってんのか!?あーでも、寝技とか拘束手段とかも身に付けておいた方が良いぞ」
「あー、なるほど……んー、萃香だと拘束と書いて粉砕しそうだからなぁ……もこ姉、その辺レクチャーしてくれない?」
「ん?良いぞ。暇が出来たらウチに来い。居なかったら……まあ、永遠亭か、夜は夜雀の屋台に居るから」
「うん、了解。……早速だけど、フェイントのやり方教えてー」
「元気な奴だなお前は……よし分かった、まずはだな……」
この日から度々、もこ姉の家を訪れる様になった。永遠亭に行った時、輝夜と殺し合いをしていた時には本気で怒鳴ったが、うるさくし過ぎたらしく3人とも永琳に叱られてしまった。因みにこの後、俺が居る時には2人とも仲良くする様になった……というのは鈴仙の話。あ、鈴仙も体術得意なんだっけか。ナイフ使う前提だったらどうしよ。
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「こんばんは、先生」
「お、おぉ、霊夜か。ブローチは喜んでくれたか?」
「はい、お陰様で。選ぶの手伝ってくれてありがとうございました」
そう、影狼に送ったブローチは、先生と一緒に選んだのだ。俺がうんうん唸っている所に先生が通りかかり、事情を小声で説明したら快く引き受けてくれたが、「赤飯でも炊こうか?」と言われてしまった。恥ずかしいから言いふらさないでほしい、と釘は刺したが……杞憂だったらしい。
「それで、お礼がしたいんですけど……」
「ふむ、お礼か?」
「えと、内容は考えてるんですが……その、嫌じゃないかなと……」
「ははは、礼をされて嫌な顔をするぐらいならそもそも遠慮しているさ。それで、何をするんだ?」
「歴史の
「それなら今から始める所だ。帰るついでに話しながら歩こうか」
「そうですね。……いてて」
「ん?どうした、筋肉痛か?」
「はい……昼間にもこ姉と色々やってて……」
「なるほど……無茶はしない様にな」
「はいっ、大丈夫です。あ、そう言えば大妖精が『チルノちゃんが宿題やらなくて……』って言ってましたよ」
「ああ、彼女は本当に優秀なんだが……チルノは本当に頭を抱えるよ……」
「未だに『子分になれー!』って言ってますからねぇ……」
「ふふっ、まだ言われてるのか?お前も子供に好かれるなぁ」
「えーと……あ、確かにそうですね。寺子屋に来てる面子は仲良いのが多いです」
「……と言うか人間以外はほぼ全員じゃないか?」
「……ですね」
2人して微妙な顔で笑っている内に、もう日の入りが訪れていた。よく見てみると、先生の髪も次第に緑がかってきているのが分かる。角も少しずつ生えてるし。……って、なんか違うと思ったら服の色か。
「思ったんですけど……先生って、満月になったらそれ用の服とかに着替えてるんですか?」
「ああ、流石に服の色が勝手に変わりはしないよ。そんな服があるとも思えないしな」
「確かにそうですね」
――気のせいだろうか?先生の顔に、悲壮感に似た感情が見え隠れしているのは。
「――今は気にする事でもないかな」
「どうした?」
「ああいえ、なんでもないです。ささっと始めちゃいましょう」
「ああ、そうだな」
すっかり仕事(?)モードになった先生は、下手に刺激すると頭突きによって物理的に沈められるので、ここからは俺も仕事に集中する事にする。……ん?何するんだって?巻物の用意や墨の補充、あとは休憩時のお茶とか。先生だけでなく皆そうだが、流石にぶっ通しで出来る訳じゃないのだ。むしろ出来たら凄い。
「「………………………」」
特に何を話すでも無く、黙々と作業を進めていく。昔はあの尻尾をぎゅっとした結果沈められたが(本当に床に沈んだ。更に、その数日前の記憶が綺麗さっぱり無い)、今回は自分の尻尾で我慢する。むぅ、やっぱり自分のだとなんかあんまり気持ち良くない……いや、もふもふはしてるんだけどさ。なんか違和感がある。
「……霊夜、巻物を頼む」
「はーい分かりましたー。……えーと確かこの辺に置いてた筈……あったあった」
「ありがとう。それとお茶も頼めるか?」
「大丈夫ですよ、今持ってきますね」
こういう時、魔法を効率良く使う事で時短になるのだ。ヤカンが焦げたりしない程度に炎で熱する事で、普通に沸かすより早く沸かせる。……実は温度も変えられる様になったのは割と最近で、前は超高温かぬるま湯ぐらいの熱さしか出せなかったから、かなり進歩した方だろう。
「はい、どうぞ。……どの辺まで進みました?」
「ありがとう。そうだな、今は永夜異変まで書き終えた」
「おおー、じゃああと半分ですね」
「ああ……と言っても、実は半分まではもう少し掛かるんだがな」
「そうなんですか……ふぁぁ……」
「おいおい、流石にもう寝た方がいいんじゃないのか?いつもならとっくに寝ている時間だろう?」
「ふぁい……でも、もうちょっと起きてます……先生、いつも朝まで作業じゃないですか……だから、すこ、しは……………んんん」
気を緩めたら閉じてしまう瞼を必死に開き、閉じたらまた開き、というのを繰り返し、ぷるぷると首を振ったりしてみるが、(大体)夜中の3時まで起きた事は1度たりとも無い為、襲いかかる睡魔に勝てる訳も無く……
「……すぅ」
「やっぱりな……まったく、いくつになっても可愛い奴め」
深い眠りに入る直前、柔らかな手が持ち上げ、もふもふとした柔らかな所に寝かされた。
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「……?」
「どうした霊夜、布団など触って……寝心地が良くなかったか?」
「いえ、やっぱり違うなぁと……と言うかあのもふもふした感触、やっぱり先生の尻尾ですよね!」
「分かってたのか?こいつめ」
「だってあんなに柔らかくて安心するのは先生のだけですからね」
「褒めても煮物しか出ないぞ?」
「それで大丈夫です」
その後も色々な事を話したが、紅魔館に帰った時にこっ酷く叱られてしまった。何も連絡を寄越さずに帰らなかったんだし、それはまあそうか。
結局EXは意見が無かった為どっちも書きました。いぇい。
さて!次回は何しよう!(おい)
ではまた次回。