紅魔館に拾われた少年はゆっくり暮らしたい   作:ユキノス

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こんにちは、書き溜めていたEXをマジで書き直しているユキノスです。4話全部だわーい(白目)
さて置き、話す事が無いので本編どうぞ。
あ、話す事が無かっただけですよ?


血の海に沈む狼

嫌な予感はしていたが、先生に聞きたい事があったので、人里に行く事にした。そしたら、まあ……うん、人里の人間がほぼ総動員で出てきた。しかも武器持って、すんごい険しい顔で。……だよねぇ……そりゃそんな残忍な事件起きてんだもんねぇ……

「――信じてもr」

「黙れっ!貴様のせいで、何人もの人間が死んでいるのじゃぞ!」

「……弁明はダメか」

そうだそうだー!ふざけるなー!という声が爺さん―確か、元退治屋の頭領だった―の後ろから聞こえるが、天命に誓って俺じゃない。そもそも、幻想郷縁起に能力とか載ってなかったか?見てない?ならしゃーな……くない。と言うか人間を殺すだけなら妖怪全員が出来る。

「ふん、しらばっくれても無駄じゃぞ!証拠はあるんじゃ!」

「いや、そう言われても……」

「これが証拠じゃ!」

(あ、見せてはくれるんだ……)

爺さんが何やら紙を突きつけて来た。近過ぎて見えない。

「……えーっ、と……?」

少し離れて見てみると、どうやら人里の人間の死亡記録みたいだ。しかもよく見てみると、俺が人里に来ている日曜日()()()かなり多い。理由はバラバラ。実はこれ、数を考えなければそこまで珍しくない。知能を持たない獣妖怪―かなり前に小鈴に襲い掛かったネズミもそれに入る―が人を襲う事はよくあり、その為に退治屋が居る――と先生に聞いた。他には、太陽の畑の花を踏みにじったとかの自殺行為で変死するとか。……まあ、太陽の畑は極稀なんだけどさ。

「――そう言えば、あの宴会も日曜だったな……」

「何を言うか!貴様が何かしているに決まっておろう!」

「いや残念ながら俺は何もしてな」

()()()の逆ギレであんな事をしていたのか!この悪魔が!」

あの時?逆ギレ?何の――待て。俺は昔―正確には10年以上前―、この声を聞いている。思い出すだけで怒りが込み上げてくる、虫の死体を俺に喰わせて笑っていた声。

「……ああ、お前か」

「10年以上前、お前が人里に来てから、人里で亡くなる人が増えているんだ!なのにお前は、先生の元で猫を被って悠々と生き続けた!」

「……そうか。だから俺に虫の死体を喰わせて、ドブ水に突っ込んで、殴って蹴ったんだな。そして、だから誰も止めず、先生の耳にも入れようとしなかったんだな」

「ああそうさ!お前が人里から出てった時、皆大いに喜んだよ!勝手に死ぬだろうってなあ!なのに生きてた!妖怪という本性を現して!お前は、先生を脅してああさせていたんだろう!」

「それなら……それなら、聞いてみるといい。先生は――」

瞬間、激怒の奔流が押し寄せた。

「ふざけるな!」「責任転嫁もいい加減にしろ!」「お前のせいで父さんが亡くなったんだ!」「息子を返せ!」「小鈴嬢も阿求様も脅したんだろう!」「死んで償え!」「そうだ!」「死ね!」「殺せ!」「悪魔を殺せ!」「処刑しろ!」

口々に叫びながら武器を振るい、走り出す。

人々の雪崩の向こうで、1人の女性が駆け寄ってくるのが見えた。先生だ。

「何をしているんだ!」

「先生も悪魔を殺すのに協力してください!あいつのせいで、沢山の人が亡くなっているんです!」

そんな声が聞こえる。だが俺は、大量の人間が押し寄せ、それをミスディレクションにして脇腹に包丁を突き刺してきた子供を凝視していた。

「お前の、せいで……っ、僕は、母さんを亡くしたんだ!」

「よくやった!お前は英雄だ!」

「これで、亡くなった方々にも良い報告が出来るぞ!」

トドメとばかりに刀や槍を振り下ろし、その刃は俺の体と服を―辛くも心臓と首は避けた―大量の血で染めた。

「かはっ……」

「お前の赤い目は、今まで死んだ人間の怨念が溜まっているからなんだろう!だから……その怨みを、解放する!」

「ガッ、アアアアア!?」

ぐしゃっと響いた音が、俺の右目が潰された事を知らせた。頭がチカチカする。視界が紅く染まり始める。だが、嗜虐的な笑みを浮かべたままの顔には、後悔のこの字も無い。誇らしさ、とも違う。恐らくこいつは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

――だが、俺がそこまで考えてももう遅い。俺は今、ここで殺されるのだから。濡れ衣のお陰で、何も出来ずに。

 

 

でも変だな。死ぬ前の思考加速にしては長過ぎる。周りから音は聞こえないし、ゆっくり動くと言うよりも()()()()()()()()()()()()()……いや、止まっている。残念ながら突っ込む気力はもう残っていない。妖怪は精神攻撃に弱い分肉体攻撃に強いが、量は違えど失血死なんて普通にする。そうでなくても、俺は元々人間。しかもいわゆる『なり損ない』だ。

「何やら騒ぎになっているから何事かと思ったら……貴方だったのね、霊夜」

「げほっ、げほっ……原因は俺じゃねーのにこのザマだよ……」

愚痴っぽくなってしまったが、むしろこの状況下で愚痴以外が言えたら凄いと思う。尊敬するね。

「ま、今はどうでも良いわ。永遠亭、だっけ?そこに運ぶから」

「悪い……先生にだけはその事言っといてくれ。……あと、先生が考える安全な人に伝えといてほしいって言っ……とい、て……」

それを聞いた咲夜は、「何を今更」と言いたげな顔で瞬きした。やがて小さな溜め息を吐き、俺の血塗れの首元に手を当てた。

「……脈が弱い。急ぎましょうか」

「……頼む」

俺を姫抱きした咲夜―この時服に付いていた血が咲夜にも付いたが、構う事も無く飛び始めた―が、止まった世界を竹林まで駆け抜ける(正確には飛ぶ)間に、俺の意識がうっすらと遠退いていった。

「起きなさい。死なれちゃ困るのよ」

「……悪い、な……そうだ、もこ姉と行ってくれ……じゃないと……迷、う……」

「分かってる」

そう笑いかけてくれた咲夜の顔は、右半分が欠け落ち、失血によってぼやけた視界では見えなかった。




前書きに書けよって話なんですが、そろそろ2度目のターニングポイントです。次は霊夜の何が変わるでしょう?
ではまた次回。
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