紅魔館に拾われた少年はゆっくり暮らしたい   作:ユキノス

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こんにちは、ユキノスです。
今回はグロい、というより重いです、ハイ。
ではどうぞ。


紅魔の激昴

「……あ」

あれからしばらくして、瞼を開いた。ぼんやりとした視界の端に、見慣れた蝙蝠の翼がパタパタと動いていた。

「やっと起きた?つくづく、貴方は私を心配させるわね」

「レミィ……ごめん、本当に」

「……いいのよ。貴方が、私達を気遣ってくれていたのは分かっている。それに――貴方には恩もある」

「俺、に……恩?」

「ええ、大きな大きな恩。……でもだからこそ言わせてもらうわ。――歯を食い縛りなさい」

レミィは椅子から立ち上がり、俺に歩み寄り――パチンッ!という大きな乾いた音が響いた。何が起きたか分からぬまま、俺はベッドから落ちた。

「っ……!」

「――ふざけるな!お前は……お前は、まだ愚行を繰り返すつもりか!8年前に、1人で人里へ行こうとして野良妖怪に殺されかけた事を忘れたか!新月霊夜!」

相手が怪我人であることなどお構い無しに、レミィは怒りを顕にしている。

胸ぐらを掴んで引き寄せられ、尚も叱責された。

「自分が人間より勝っているとでも思ったか!お前は子供以下だ!聞き分けも無い、危険に自ら突っ込んでいく、それなのにいつでもヘラヘラと笑いながら……!私達が、どれだけお前を心配したか!殺されかけたと聞いて、どれだけ焦ったか!……お前は、愛を与えられるのが当たり前だと思っていたのか?大間違いだ!」

「っ…………」

その全てが心に刺さり、全てが正論だった。思えば、俺は大抵の事に首を突っ込み、大抵の事で助けられて生きている。西行妖の件が最たる例だ。

「愛を与えられない奴などそこらに居る、大勢居る!お前の様な例が珍しいだけだ、()()()運命に選ばれたからと自惚れたか!」

「レミィ、今……」

「お前は、紅魔館の皆に愛されてきた。だが……それは私達が妖怪だから。人間とは違う基準で、人間とは違う世界で生きてきた私達は、人間の世界で捨てられたお前を受け入れた。運命に選ばれたから、というのもある。だがそれ以上に、お前が不憫だと思ったからだ、あまりにも憐れだと思ったからだ!……なあ、これ以上私達を……悲しませないでくれ……!お前が望むなら美鈴だって、咲夜だって、小悪魔だって、パチュリーだって、フランだって、私だって共に行こう!だから……誰も知らない所で、死にかける様な真似は2度とするな!」

途中から泣きながらの説教だったが、それだけ大事に思われていたのだろう。……そう考えると、かりちゅまとか言って馬鹿にしていた自分を叩きのめしたくなってきた。

「……ありがとうレミィ、目が覚めた。誘拐でもされない限り、今度からは誰か連れてくよ」

「フン、是非ともそうしろ。私とて、お前を失いたくはない」

そう言い残して、レミィは去っていった。どうやら1人で来たようで、誰も伴わず飛んで行った。……良い事言ったのに、最後の最後で自分が出来てないのがとても残念だが。

「でも……そっかぁ……」

小さなモミジが頬に残ったまま窓を見上げ、改めてレミィの優しさを感じた次の瞬間。

ドタドタと廊下を走る音が聞こえて、雰囲気がぶち壊された。

「だっ、だだだ大丈夫でしたか!?なんか物凄い声で説教されてましたけど」

「え、あー……うん、大丈夫」

頬はまだ熱を帯びているが、首の骨は無事なので加減してくれたのだろう。その辺やっぱり優しい。

「良かったぁ……何かあったら私、師匠の実験台にされる所でしたよ……」

「怖っ……レミィが加減してくれて良かった……」

「ホントですよ……あ、汗拭きますねー」

「はいはい」

 

―*―*―*―*―*―*―*

 

さて、汗を拭いてくれている間に俺の出自でも考えてみよう。生まれたばっかの記憶は無いにしても、最初の記憶が霧の湖の辺りに転がされてたぐらいだから我ながら謎だ。

「紫に聞いてみるかぁ……どうせ知ってそうだし」

「あー……あの胡散臭い人ですね。何を聞くんですか?」

「俺の出自。ずっと分からないんだ」

「そうなんですか……」

暇なので、なんでなんですかねーと言いつつテキパキと仕事をこなしていく鈴仙をしばらく眺めている事にした。全部きっちりと揃っているので、こんな所にも癖が出ているのが笑えてしまう。

「はい、終わりましたよ。あとは永遠亭の中を散歩でもしててください」

「了解。それじゃあ、輝夜の所に行ってくるよ」

「分かりました、それでは」

ぺこりと頭を下げ、多少ふらつく足で輝夜の部屋に向かった。……飛ぶのはもう少し後で。

 

―*―*―*―*―*―*―*

 

「輝夜ー、霊夜だけど」

襖越しの為小さい声で「どうぞー」と返ってきたので入ると、寝間着から着物に着替えている輝夜が――待て、おかしいだろ。何が「どうぞー」だよ。駄目じゃないかよ。

襖を閉めると、大声で笑っている輝夜の声が聞こえたので「やられた!」と思いつつしばらく待っていると、着物に着替えた輝夜が笑いながら出てきた。

「あーおっかし、驚いた?」

「そりゃ驚くよ。仮にも健全な男性だぞ」

「ふふ、その割にはあんまり赤くないみたいだけど?」

「そりゃ詳しく見てないからな……って見せないでいいから!何がしたいんだお前は!?」

「冗談よ。……で、何か用かし……ら……」

余裕ありげに笑っていた輝夜だが、俺の右目を見た途端に笑みが掻き消えた。

「どっ、どうしたのよそれ!?治る!?治らない!?分かった治――」

「わっわわっ、分かったから落ち着け!正直に言うと分かる限りもう治せない、だからとりあえず俺に覆い被さるの止めてくれ!変な誤解生むから!」

「……そう。ダメなのね」

間近に迫った輝夜の瞳が半分閉じられ、右の瞼に華奢な指先が当てられた。

「……ねえ霊夜、約束してくれる?もうこんな怪我しない事。これからは永遠亭(ここ)には遊びに、またはお客さんとしてだけ来る事。……今度病人か怪我人として来たら、お仕置きするからね?」

「……ああ、約束する。指切り、やるか?」

「いえ、破ったら罰ゲームだけにしておきましょう。た、と、え、ばぁ……」

「……?」

 

―*―*―*―*―*―*―*

 

「……なあ、ほんとにこれで良いのか?」

「私が良いって言ってるんだから良いのよ。あー、柔らかい……クセになりそう……」

「そんなかなぁ……」

今何してるかと言うと、永琳に薬を作ってもらって、霊夜を一時的に小さくして私の膝の上に乗せてる、としか言えない。

霊夜の女性にしか見えない上に美人な容姿、そして狼の耳と尻尾は、何とも言えない魅力を放っている。

「は~……もこたんはこんな柔らかい感触をしょっちゅう味わえるのね~……ねえ霊夜、こっち向いてくれない?」

「え?良いけど……わっ、んっ、くぅっ……」

耳を擽っていると、何と言うか……エッチな声で喘ぐのは、狙っているのかしら?霊夜の声、女性って言ってもあんまり違和感無いぐらいの高さだから生々しい感じがして、聞いてるこっちが恥ずかしくなってくるんだけど……

「耳、はっ……あんっ、まりっ……んっ、やら、ないで……っ」

「その割には、尻尾振ってるけど?」

「いや、嬉しい、んっ、だけど……その、敏感だから……」

語尾がボソボソとしていたが、要するに性感帯だからあまり弄らないで、という事らしい。

「……ふふっ、分かったわ。代わりに、頭を撫でているのは良い?」

「……うん」

私の服をぎゅっと掴み、ほんのり赤い顔で頷く霊夜は、もしかしたら女性より女性だった。

……惚れそう。




レミィのカリスマは無限大(ブレイクも無限大)、いいね?
さてそんな訳で、重い話(前半だけ)でした。
しかし……霊夜みたいなのを男の娘と言うんでしょうか?それとも性格言動込みで男の娘?うーむ謎だ……
ではまた次回。
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