今回から風神録突入!ということで、外の世界に行った方が良いかのアンケ取りました。小説垢作ったばっかなのもあり、1票だけでしたが……小説関連は今後そちらで報告するので、お気をつけください。という事でリンク↓
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ではどうぞ。 今回めちゃくそ長いです。
ミッションスタート / お守り
「……あ?」
臭いに、違和感がある。 自然の爽やかな臭いではなく、もっと硬い………鉄? 鉄が錆びたような臭いだ。 普通に嫌いなんだが。 空気汚な過ぎだろ、ここ。
「ここ……どこだ?」
どこか、建物の間だろうか。 辺りを見回しても、景色は灰色の壁しか無い。
「……幻想郷じゃないのは確かだ、とりあえず出るか」
1人でぶつくさ言いながら立ち上がると、胸の辺りにかさりとした紙の感触があった。 出してみると手紙のようで、内容はこうである。
前略、霊夜へ
先日萃香が外の世界の神を見付けましたが、大体の場所しか覚えていないそうです。 私と藍は受け入れの準備がある為探しに行けず、適任者は誰かと探してみた所、貴方に白羽の矢が当たりました。 どうかその神と接触し、神社の場所をお教えください。 左手首のリボンに話し掛けてもらえれば、私に繋がります。 では、よろしくお願い致します。
「って事は、ここは外の世界か。 ………まぁ、あの紫が珍しく真面目な文章送って寄越したって事は大事なんだろうけど……つったってなぁ、どう接触しろと……ん?」
追伸 貴方の姿は一般人には普通の人間に見えますが、力を持った者にはいつもの姿で見えます。探す時は、それを頼りになさってください。
……なるほど、随分とまぁ便利なこって。 否応無しに飛ばされたとは言え、帰る方法も分からないので従うしか無さそうだ。 ……にしたって、白狼天狗の制服のままってのはどうかと思う。
「こればっかりはしゃーないか……うわっ、眩し」
変わらずぶつくさ呟きながら歩いていたら外に出た。 ──そこで、大いに驚いた。
まず、地面が土じゃない。もっと硬い、石? のようなものが詰まっている。 木々も少ない、ビカビカ光る板もある、わんさか人が居る、etc……。 とにかく、幻想郷とは違う事があり過ぎるのだ。
「……なぁんじゃこりゃ」
ぽつりと呟いた言葉が人の波に消えるまで、そう時間は掛からなかった。
ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*
あれからしばらく歩いてみたが、それらしき人物はどこにも見当たらない。 と言うか人が多過ぎて、居ても分からないのだ。
いやまあ、弾幕ごっこのおかげで誰にも当たってないけど。 でもそれとこれは違うと思うんだ。
「と言うかよくよく考えたらアレだな、これ俺から分かる手段ねえな。 ……あれ? これ詰んでね?」
「あっ、あの子可愛いー!」
「何あのカッコ、映画の撮影? 写真撮っとこー!」
『えいが』とは何ぞや。 と言うかやっぱこの格好目立つよな。 うん、知ってた。
ところで試してなかったが、《外》では飛べるんだろうか。 やってみよう。
「……お、っと。 マジか、出来んのかぁ……」
結論、飛べる。 でも騒ぎは起こしたくないので、出来るだけ飛ばないようにしよう。
ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*
「ねえねえ東風谷ぁ、アタシら金無くなっちゃってさぁ。 こんだけでいいから貸してよぉ、お願ーい☆」
立てられた指は、3本。 3000円ならどれだけ良かっただろうか。 だが、現実はとことん非情な要求──3万円。 つい先週2万せびったばかりだというのに、この人達は何にお金を使ってるんだろう。
「……今は持ち合わせが無いので。 じゃ、私───」
「何言ってんの?」
早足で帰ろうとしたが腕を掴まれ、内心で舌打ち。 彼女らは、寄って集って金をせびる事に快楽でも覚えたのだろうか。
「アタシら
「そーそー、通帳にあんでしょー? ……知ってんだよ、バイト禁止なのにバイトしてんの」
「っ……」
「せーんせー、東風谷がー」
「や……やめて……っ!わた、渡すから……!」
──迂闊だった。 彼女らは皆、私の弱みを──いや、他にも色々なものを握っている。 住所、電話番号、通帳、合鍵。 全てが狂ったのは、どこからだっただろうか……?
ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*
「霊夜、霊夜」
「んん……紫? こんな夜更けにどうした?」
「貴方に吉報ですわ。 ──萃香が、もう1つ情報を教えてくれた」
「おっ、マジか。 助かる」
夜になったが見つからない……と言うか宿を考えてなかったので、今は木の上に居る。 ……仕方ないだろ、金持ってないんだし……いや、あっても馬鹿みたいに物価高かったから買えないけど。 120円とかどこの金持ちだ。
「原文そのままに伝えますわ。 『んー確かぁ、神社だったかなぁ?名前は覚えてないや、ゴメンゴメン。 あーでも、そこに居た人間の女が緑色の髪してた。それしか思い出せない』」
「……そうか、緑色の髪……結構大きいんじゃないか、それ?」
「ええ。 ……ただ、神社の名前が分からないのは少し面倒ではあります」
「だよなぁ」
萃香の声真似(しかもちょっと似てる)をしている紫も面白かったが、有益な情報を貰った。神社探しもそうだが、緑色の髪の女性も探してみよう。
ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*
「早苗。 ……早苗?」
「あ、うん……何?」
「ほんとにどうしたのよ、最近、帰ってきてからずっとそんなじゃない。 何かあったの?」
「ううん、何でもないから大丈夫。 ありがと、心配してくれて」
お母さんは優しい。 だけど、傷を逆撫でこそしないものの癒してはくれないのもまた事実。 彼女らからのイジメについては前に話したものの、「貴女にも原因があるだろうから」と言われ、それ以降は耳を傾けてくれなかった。
「今日
「……うん。 もう、消えるまで時間の問題だ、って」
「そう……。 でも、きっと何とかなる。 だから、私達には見えなくて、貴女に見えるんだと思う。 私達に無くて、貴女にあるものが、洩矢様を繋ぎ止める楔になってくれる。 多分、そんな気がする」
……私の、唯一──いや、ただ二柱の《話を聞いてくれる》味方。 洩矢諏訪子様と、八坂神奈子様。 お二人は守矢神社の神様で、信仰不足から消滅の危機に瀕しているとか。
「……うん、ありがと。 じゃ、私もう寝るね」
「うん、お休み」
足音が遠ざかったのを確認し、戸に寄り掛かり、ズルズルとへたり込む。 どうしようもなく涙が溢れ、それは制服に2つの染みを作っていく。
────悔しい。
悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい。
「ひっく……うくっ……」
前に、聞いてみた事がある。
何故私が責められるのか。 何故私から金をせびるのか。 何故、私は……殴られ、蹴られなければならなかったのか。
返ってきた答えは簡潔だった。
『──え? そんなの決まってんじゃーん』
『ねー、1つしか無いのにねー』
『え……?』
『『楽しいから?』』
『………』
『『キャハハハハハハ──────』』
「ッ────!」
あの時の彼女らの、あっけらかんとした笑顔。 悪行を悪行と思わない、罪を遊びと嗤う者の顔。 不意にそれがフラッシュバックし、私に激しい吐き気を催させた。
慌てて廊下を走り、洗面所の流しに着いた所で限界が来たそれは、びちゃびちゃと音を立てて雪崩を起こし、やがてそれが治まり、鏡に写った顔は、お世辞にも高校生とは思えなかった。
涙と汗でびっしょりと濡れた、青白く、血の気の無い顔。 瞳から生気はほぼ消えていて、薄く濁ってすら見える。 加えて泣き腫らしている為、余計に滑稽だ。
「……私、なんで生きてるんだろう」
他の人には黒に見えるこの緑の髪も、何故か周りで起こる不思議な事も、神奈子様と諏訪子様の事も。 全て無かったら、どれだけ幸せな人生が送れただろうか。 どれだけの涙を流さなかっただろうか。
不意に、ことり、と音がした。 拾い上げてみると、小さい頃に「お揃いだよ!」と作ったお守りだった。今にしてみると粗末な字で「おまもり」と書かれたそれは、長い年月を経た証として、所々が解れ、破れていた。
中を開けてみると、「きせきがおきる」と書いた紙が入っていた。
今はもう懐かしい、「ずっと一緒」という約束。 それは、まだ効果があるようだ。 私は、彼女から離れられないのだから……。
「……はは……この頃の私……何も知らなかったんだなぁ……」
乾いた笑いが、洗面所に虚しく消えた。
東方二次創作は数あれど、多分ほとんど無いのが「病み早苗」。なんか……そんな気しないですしね。勝手な妄想ですが。
そう言えば、早苗が高校生なのって公式じゃないんですね。だから下手したら霊夢よりずっと年上だった可能性も……?まあこの小説では高校生なんですけど。
さてさて、あちこち視点と世界が切り替わる(かもしれない)風神録、どうなるでしょうか。
ではまた次回。