という訳で特別編ですが、また書き方変わってます。多重人格か
あと、嘘吐きはほとんど出ません。エイプリルフールとは何だったのか。
紅魔館内部にある、ヴワル魔法図書館。高い天井までみっちりと本が詰まったそこで、霊夜と私とこあの3人で、新聞とクッキーを囲んで談笑していた。
「そっか、もう4月か。また皆で花見したいなぁ」
「そうですねぇ、ここにも桜があれば良いんですけど」
「……流石にそれは無理よ、こあ。桜の木は、折れたら2度と生えてこないんだから」
今日は4月1日。俗に言う、エイプリルフールという日だ。嘘を吐いても良い日、ではあるのだが……幻想郷では、あまり流行らない。何故かと言うと、最高裁判長殿が笑顔で迫って来るからである。by霊夜。
「そういや桜と言えばさ、いや桜関係無いんだけど」
「それ、日本語破綻してるんじゃない?」
「お、思い出したんだよ……。今日、エイプリルフールだろ?」
「そう言えば……そうね。嘘吐きが増える日だわ」
「うん。で、前に人里でそれやってたらさ、閻魔様に
「……何が言いたいのかしら?」
ここまで何が伝えたいか分からない話もそうそう無い為か、少々訝しむ。対して霊夜は、「あー」だの「うー」だのと言葉が見つからないようだ。じゃあ小悪魔はと言うと、ニコニコしながら見守っている。
因みにこの
「……そうだ、思い出した! その時、『嘘吐きは泥棒の始まり』って言われたんだ!」
「は、はぁ……? 日本ではよく聞くじゃない、それがどうしたって……むきゅっ、ケホッケホッ……!」
「薬取って来ますねー!」
咳き込んでからノータイムで飛んで行ったこあを見送り、霊夜はパチュリーの背中をさする事にした。
美鈴にも永琳にも「外に出て運動した方が良い」と言われる程の引き籠もりではあるが、実は(?)運動能力も低い。数メートル走っただけで息切れを起こすのは、最早手遅れに等しいだろうが。閑話休題。
薬を飲み、症状も落ち着いてきた頃、霊夜は頭に湧き上がってきたアイデアを話し始めた。
「えっと……どこまで話したっけ?」
「嘘吐きは泥棒の始まり、の辺りまでですね」
「おぉ、そうだったそうだった。んで、そっから子供達の間で流行りだしたのがあるんだよ」
「ふぅん……それって?」
「《泥棒捕縛戦》……って名前だったかな。泥棒役が、捕縛者役から逃げ回るやつ」
「……今の子供の語彙ってどうなってるのかしら」
「あはは……」
寺子屋に通う普通の子が、《捕縛》という単語を知るだろうか。あの半獣教師なら教えかねないが、それにしたって何故だろうか。
そんな疑問がはたと浮かんだが、もう気にしない事にした。人里は人里、紅魔館は紅魔館だと。
「んで、こっちでそれやろうと思ってさ。まあレミィ辺りの許可は居るだろうけど、ちょうど厚い雲で覆われてるし」
「私は出来ないけど、別に良いんじゃないかしら。現に、そこの白黒猫はうずうずしてるしね」
「ぷふっ」
「な、何だよ。笑うなよ!」
「いやぁ、悪い悪い。お前、こういうの好きそうだと思ってさ」
「はぁ? それってつまり、私が子供っぽいって事か?」
「いやいや違う違う、こういう対戦系の遊びと言うか何と言うか……」
「まあ、それは好きだぜ。それより、他のメンツはどうすんだよ? まさか私達だけとか言わないよな?」
それはただの追い駆けっこじゃない、とは口に出さず、パッと思いついたちびっ子達と草の根……だっけ? のメンバーを呼んではどうかと聞いてみた。霊夜はすぐに指を鳴らし、「それだ! ありがとうパチェ、早速行ってくる!」と言って、本当に飛び出してしまった。
どんな育ち方をすればこうなるのだろうか。親の顔が見てみたいものだ──と考えて、そう言えば育ての親は自分とレミリア、美鈴と小悪魔だった事を思い出した。
「……全く、誰に似たんでしょうね」
「知らないぜ。お前じゃないのは確かだ」
「当たり前よ。私に似てる所なんて、魔法が使えるぐらいだわ」
「それはそれで悲しいな……あ、これ借りてくぜ」
「1週間ね」
「あいよ」
***
「集めてきたぞー」
「ほんとに皆連れてきたのな」
チルノや大妖精、その他諸々のちびっ子達と、影狼や響子、ミスティアといった草の根メンバーが集まり、各々で談笑している光景を見て、霊夜の交友関係の広さを痛感する。……ところで人魚が来ていないが、走れないからだろうか。個人的には、あのヒレで走れるのかが気になる所である。閑話休題。
しかも全員に説明が済んでいるようで、とても半刻で集めたとは思えない。こいつ前から計画してたな……と薄々感じつつ、その計画性に舌を巻いていた所、どこにあったのか拡声器を持ったパチュリーが喋り始めた。
「……あーテステス、聞こえるわね? ルールの説明よ。1度しか言わないからよく聞くこと、いい?」
そう言うと、上からルールの書かれたフリップが降りてきた。紐で吊ってあるので、小悪魔が操作しているのだろうか。
①捕縛者は泥棒を捕まえた時、1箇所に集めておく
②泥棒が捕まった泥棒に触れた時、その泥棒は逃げ出せる
③時間内(今回は30分)に泥棒が全員捕まれば捕縛者の勝ち、そうでなければ泥棒の勝ち
④実力的に均等になるように組み分けする
⑤範囲は紅魔館の庭のみ
⑥能力、飛行は禁止
⑦敗者に罰は無いが、勝者には賞品が出る
「ざっくり言うとこんな感じよ。それじゃあ、組み分けを始めるわ」
集まった面子の中で特に身体能力に優れた者と言えば、やはり
少女選別中……
「……多い………」
「あはは………ゴメンナサイ」
「まあ、友人が増えるのは喜ばしい限りだけどね。昔は考えられなかったわ」
つっけんどんな言い方だが、喜びが隠し切れていないのだろうか。顔が緩んでいる。
普段から少し強い言い方をしてはいるが、パチュリーもある意味保護者なのだ。
「……さて、これで全員かしら?」
「「はーい!」」
やれやれ、と言いたげな表情でテラスの椅子に座り、開始の合図を出したパチュリーだが、1つある事に気付いた。
──第三の目を持った人物など、知り合いに居ただろうか?
***
「にゃろっ!」
「おっと(ヒョイッ)」
「っあー! ほんっとすばしっこいなお前!」
「何も鍛えてない人間がここまで持ちこたえるのも十分凄いんだけど、よっ、どわぁっと危ねぇ!」
「くっそ……っは、は……」
結局、身体能力高い組は、俺がレミリアと泥棒を、美鈴がフランと捕縛者をする事になった。開始から5分経つが、既にちらほらと捕まっている者も居るようだ。
魔理沙に追い掛けられている事にはデジャヴを感じるが、あれは単に遮蔽物があるから楽に逃げられたのだろう。現に、魔理沙は5分間ずっと俺を追い掛け続けている。ただの人間としては、このスタミナは無尽蔵と言っても過言ではない。
「ふぅ……いやー普通にお前凄いわ……」
「はいターッチ♪」
「ん?」
「え?」
この声の主は誰だろうか。フランじゃない。ミスティアでも、ルーミアでもない。かと言って、他の誰でもない。つまり、俺が呼んだ妖怪ではない。せめて一目見てやろうと振り向くが、誰も居ない。魔理沙も知らなかったようで、口をぱくぱくさせている。
「今の……」
「誰だ……?」
目を凝らして見ると、風景にぼんやりとした輪郭が現れた。頭に帽子を被り、黄色と緑のワンピースを着ていて、紫色の管が生えている(?)、小さな女の子。どれだけ見ても、記憶に無い。
「いやー、そんなに見られると照れるなー」
「あ、ああ……悪い(?)」
「わっ、さらふわ! 凄ーい」
「って、あれ? お前もしかして……」
「私?私ねぇ、捕縛者側に入ったんだ〜」
「へぇーそうなん……あああああぁぁ!?」
思わず声が裏返る。瞬間移動のように、瞬きした時には既におぶさっていたのもそうだが、こんな捕縛者相手にどう逃げろと言うのだろうか。
「ごめーん捕まった……」
「えぇ!? なんで!?」
「俺が聞きてぇよ……なんか見知らぬ女の子に捕まったって言って信じる?」
「「「全く」」」
「ですよねぇ」
ということで牢獄エリア。まあ当然ながら捕まった人が来てるんだが、面子が凄い。
ミスティアやアリスなんかは走るのが苦手そうなので理解出来るが、幽香に至ってはまず何故参加したのかが不明だし、何故捕まったのかも不明だ。一緒に居るだけで緊張感凄いし。
「ねえ霊夜」
「え、あ、はいっ」
「……私ってそんなに怖そうに見えるのかしら、ねえアリス」
「さあね。私は前から知ってるから、そうは思わないけど」
「……えっ、お2人さん前から知り合いだったの?」
「ええ。
「へぇー、そっちの話も聞かせてくれよ」
普段絶対に関わりの無さそうである2人が知り合いで、しかもそこそこ仲が良いとなれば、俺だけでなくミスティア達も興味を示すだろう。
「今はまだ話さないわ、もっと落ち着いた時に話しましょう?」
「そういう事。それじゃ、行きましょうか」
どこへ、と聞く前に幽香が立ち上がり、捕まっている全員に手を触れた。全員訳が分からずぽかんとしていると、幽香はふわりと振り向きながら人差し指を立てた。
「決まっているでしょう? 私、これでも捕まってないの」
「それ先に言おうね!? ありがたく逃げるけどさ!」
開始15分の事だった。風見幽香の活躍により、8人の泥棒は残らず脱走し、捕縛者は慌てふためいた。
「どっ、どどどどうしよう美鈴!? 皆逃げちゃった!」
「んごっ……はっ!?」
いやなんで見張りが寝てんだよ! と、またか、またなのか美鈴……が入り混じった微妙な顔をしていたが、獣の本能だろうか。再び誰かが来るような
「ターッ……うぅわぁ、避けられたー」
「楽しそうだな」
「うん、楽しーよー」
「そいつは良かった。で、名前は?」
「こいし、古明地こいしだよー」
小石?と一瞬だけ思ったが、いやそんな訳無いと取り消す。彼女は石などではない。ただ、存在感……いや、意識の内に留まる事がほとんど無いだけの、恐らく妖怪だ。
だが、何故急に来たのだろうか。
「ってあれ、居ないし……」
***
それからは特に何があった訳でもなく、ただ淡々と終わってしまった。こいしもあれから姿を見せなかったし、何度か捕まった者は居てもどうにかなった。と言うのも、幽香がニコニコしながら歩くだけで皆怖がるので、助けるのは幽香1人で事足りた。足りてしまった。
「という訳で、泥棒陣営の勝ち。……ただ風見幽香、貴女は今後の出場を自粛してもらった方が良いかもね」
「あら残念、楽しかったのに」
幽香本人はクスクス笑っているが、ちびっ子達の一部、特にリグルが顔を真っ青にしているので割と本気で考えてほしい。敵に回ってほしくないし、何より威圧感が凄いから。
「……ま、まあ、楽しめたなら何よりだよ、うん。……で、なんでこれやる事になったんだっけ?」
何気なく発した台詞に、参加していた全員がよろけた。……何故?
「あのねぇ霊夜、皆霊夜に言われて集まったんだよ? 理由も聞いたし、やる事も聞いた。でもさ、なんで本人が忘れてるのさ?」
「あ、いや……ハイ、スンマセン」
そう言えばそうだったと思い出し、飛びついてきたちびっ子達とわちゃわちゃしていると、魔理沙がパチュリーの方へ歩いて行った。何をしに行くんだろうか。
「で、パチュリー。お前、ルール説明した時の言葉覚えてるよな?」
「さて、何だったかしら。ルール以外何も言ってない筈だけど」
「はあ? お前、『勝者には賞品がある』って……「ああ、あれなら嘘よ」……何ぃぃ!?」
何じゃそりゃあああ、という魔理沙の絶叫が響き、続いてエイプリルフールだと言われて膝から崩れ落ちる様は見ていて面白かったが、他にも何人か嘘だと気付かなかった者もちらほら居たようで──
後日、紅魔館の一部が削り取られていた。某鴉天狗S氏によると、風見幽香が紅魔館に傘を向けていたそうだ。
ゆうかりん怒らせると怖い(周知の事実)。
因みに余談なんですが、泥棒捕縛戦(要するにドロケイ)に参加していたメンバーは、
・紅魔館の図書館組を除く全員
・ちびっ子達(橙含む)
・マリアリ、うどみょん、てるもこ、こいし、幽香
でした。
パチュリーが「多い」と言うのも納得ですね。
あと、俺の中で紅魔館の敷地はめちゃくちゃ広い事になってます。俺の中で。
ではまた次回。